八ヶ岳 赤岳・三叉峰 初めて訪れた八ヶ岳は厳しい初登山となった!
 
八ヶ岳 赤岳
八ヶ岳 赤岳

2014年1月8(水)〜10日(金) メンバー:清水 薫(雲表倶楽部)、小田中 智

 コース:8日/赤岳山荘〜行者小屋〜文三郎尾根〜赤岳〜文三郎尾根〜赤岳山荘
     9日〜10日/八ヶ岳山荘〜赤岳鉱泉〜行者小屋〜地蔵尾根〜地蔵の頭〜三叉峰〜地蔵尾根〜八ヶ岳山荘

 八ヶ岳は今まで一度も訪れたことがない山域だった。若い頃は北アルプスばかりに目がいき、八ヶ岳は対象外の山としてみていた。
 昨年になり冬の八ヶ岳に魅力を感じ、東京在住で雲表倶楽部と盛岡山想会に在籍する若い頃のザイルパートナーであった清水さんに連絡をとった。
 正月明けの日程が合ったので一緒に登ることになった。彼は清里に別荘があるので、そこをベースに、赤岳、阿弥陀南稜、硫黄岳から赤岳の縦走というコース計画をした。
 せっかくしばらくぶりに東京に行くのであるから、早い日に岩手を出て東京の友人である雲表倶楽部代表の藤原さんと飲むことにもした。
 東京での酒飲み、山に登っての酒、女っけはないが、田舎者の大名山行が楽しみの毎日となった。

 5日の夜行バスで盛岡を出発し、藤原さんの出迎えでお宅におじゃまする。用意してくれた鍋を突っつきながら朝酒が始まった。一休み後、外に出て昼食にファミレスでワインを2本飲む。
 また一眠りし、風呂帰りに居酒屋で一杯。今日は朝から酒びたりの一日であったが、友人と語る時間は楽しい一日だった。6日は、清水ちゃんとの待ち合わせは19時なので、夕方までゆっくりと飲みながら過ごす。
 淡路町で清水ちゃんと合流し、清里の別荘へ向かう。別荘で風呂に入り、ビールとワインで昔話に花が咲く。


行者小屋手前から望む赤岳
行者小屋手前から望む赤岳

8日(曇りのち風雪)
 朝5時に起床し、文三郎尾根から赤岳を登るため美濃戸へ向かう。八ヶ岳の主稜線は雲に隠れていたが、右に位置する三角錐の編笠山だけが見えている。
 雪が少ないため車は八ヶ岳山荘まで入った。正月明けで連休前のためか登山者の姿はなく、車も3台しか停車していなかった。上空には所々青空があり薄日も差してはいるが、山の姿は望めなかった。
 美濃戸山荘から赤岳鉱泉への道と別れ、南沢沿いに行者小屋へ向かう。積雪は10cm程度でしっかりした足跡は樹林帯の中を続いている。一旦急な登りから緩やかな登りとなり、しだいに積雪も増え、やがて開けた樹林帯の中を低く垂れこめた雲に隠れた山裾を眺めながら歩いて行く。
 やがて冬期閉鎖した行者小屋に着いた。天気が良ければ赤岳の稜線が見えるというが、この天気では見えるすべもない。
 アイゼンを履き、地蔵尾根と別れ右の文三郎尾根へと向かう。阿弥陀岳への分岐を過ぎると間もなく急な登りとなり、急な階段に雪がつき鎖が張られた登りを終えると阿弥陀岳の稜線に着いた。風速10m程の風は雪を伴い視界が悪くなった。
 鎖場や鉄梯子がある岩稜帯を登ると赤岳の稜線に出て、すぐそこに赤岳の山頂が見えた。風速約10mで寒く、何の景色も見えない赤岳の山頂だ。私にとっては初めての山頂で、ここに立てただけでも嬉しい。
 岩稜帯を慎重に下り、雪の急な階段を下ると風雪も止んだ。後は駐車場目指して下るだけだ。登山道で靴滑りをしてはコケながら下り、ついに赤岳の山容を見れないまま駐車場に着いた。
 夕方から雨となり、いよいよ強い寒波が訪れる気配になった。途中で食料を仕入れ、寄せ鍋の支度をして飲み、語り、短い楽しい夜の時間はゆっくりと過ぎていった。

赤岳山荘駐車場で 山車の新車
赤岳山荘駐車場で 山車の新車

閉まっている美濃戸山荘
閉まっている美濃戸山荘

行者小屋へのアプローチ
行者小屋へのアプローチ

行者小屋
行者小屋

赤岳へ向かう
赤岳へ向かう

階段の急な登り
階段の急な登り

阿弥陀岳稜線手前のガレ場
阿弥陀岳稜線手前のガレ場

阿弥陀岳稜線手前のガレ場
阿弥陀岳稜線手前のガレ場

赤岳山頂の清水ちゃん
赤岳山頂の清水ちゃん

赤岳山頂にて
赤岳山頂にて

タイム:赤岳山荘(7:25)→行者小屋(10:05〜20)→阿弥陀分岐(11:50)→赤岳(12:25〜30)→行者小屋(13:45〜14:00)
    →赤岳山荘(15:20)


赤岳鉱泉のアイスキャンディー
赤岳鉱泉のアイスキャンディー

9日(曇り)
 朝5時に起床し外に出ると新雪が10cm程積もっていた。今日は阿弥陀南稜を登る予定なので舟山十字路に向かうが、25cm程の新雪のため別荘地の奥には新雪のため入れなかった。
 この雪では南稜は日帰りできないので赤岳鉱泉に入り、ジョウゴ沢の氷で遊び、小屋に泊まり翌日硫黄岳から横岳へ縦走することになった。
 昨日は赤岳山荘まで車では入れたが、新雪のため少し行っては戻り、八ヶ岳山荘から歩き始める。ジープが走った跡の林道でラッセルはないが、昨日車で通ったと思うと歩くのが嫌になる。
 美濃戸山荘から左の林道に入り赤岳鉱泉に向かう。林道が終わり登山道に入ると、新雪は30cm程となり東北の冬山を見ているような雪景色となる。北沢は上部に鉱泉があるせいか、沢底の石は赤茶色になっていた。
 昨夜から積もった新雪ではあるがトレースはしっかりついており、連休前で登山者が少ない割には立派なトレースで助かる。沢沿いの道は急な登りもなく緩やかな登りで、進むごとに陽が差し始め天候回復の兆しだ。
 樹林が開けると氷のビルディングが目に飛び込んできた。アイスクライミングをする15m程の人口の氷柱で、アイスキャンディーと呼ばれている。ちょうど登っている人がおり、氷柱は90度の角度で青く光っていた。
 この雪ではジョウゴ沢の氷は無理があるので、今日はアイスキャンディーで遊び、明日硫黄岳を登ることにする。宿泊の手続きをし、アイスキャンディーを登るべく用意をする。
 清水ちゃんが階段から上に登りザイルをセットしていると、隣を登っているガイドらしき方から8mmロープは禁止だと言われ、小屋にザイルをレンタルに行くがレンタルはできなかった。
 ガイドの方がザイルを貸してくれるというのでお借りし、清水ちゃんがダブルアックスで登って行く。昔に黄連谷などを登っているだけあって、しばらくぶりとはいえども格好良く登っている。
 私はと言えば今まであまり氷を登っておらず、3mも登らないでテイクアウトした。清水ちゃんはもう一回登って、アイスキャンディーを美味しく味わったみたいだ。ガイドさんに厚くお礼を言って小屋に入る。
 まだ時間は早いが、ストーブの前で座りビールで乾杯する。小屋は木造りで感じがよく、従業員の態度も優しい感じだ。夏は風呂もあるという。北アルプスの小屋に比べると温かみがある雰囲気である。
 ビールも2杯目になると酔ってきて、会話しながら飲むビール、ストーブで温まりながらボーッとしている時間に幸せを感じる。寝所の大広間に行き、衣類を干したり荷物を整理して夕飯を待つ。
 宿泊者は15名程で、各テーブルではそれぞれに酒と会話で盛り上がっていた。夕食は厚いトンカツで、ワインを飲みながら、この満たされた夜を楽しむ。結局ワインは、最終的に2本空けていた。
 明日も早いので早々に布団に潜る。部屋やトイレにはストーブがたかれているが、外はだいぶ冷え込んでいるみたいだ。

美濃戸山荘への車道
美濃戸山荘への車道

車道の終点 赤岳鉱泉へ向かう
車道の終点 赤岳鉱泉へ向かう

北沢のせせらぎ
北沢のせせらぎ

しっかりとしたトレースがついている
しっかりとしたトレースがついている

赤岳鉱泉のアイスキャンディー
赤岳鉱泉のアイスキャンディー

アイスキャンディー
アイスキャンディー

登り始める清水ちゃん
登り始める清水ちゃん

雲に隠れる硫黄岳方面
雲に隠れる硫黄岳方面

タイム:八ヶ岳山荘(8:25)→美濃戸山荘(9:45〜55)→赤岳鉱泉(12:40)



三叉峰

10日(晴れ時々風雪)
 5時に起きると冷え込んでおり、外は-20℃とキーンと冷え込んでいて、空は満点の星が輝いている。硫黄岳は雪崩の危険性があるので、急遽地蔵尾根から横岳方面に登ることにする。
 ヘッドランプに照らされる行者小屋への道はしっかりとトレースされ、雪を踏みしめると寒さでキュッキュッと音が鳴った。行者小屋に着くと明るくなり、小屋の向こうには阿弥陀岳がそびえている。
 登りはやがて急になり始め、森林限界手前でアイゼンを履く。傾斜はますます急になり稜線は間近に見える。急な階段には鉄パイプと鎖がつながり、指は冷たく休み休み指を温めては急傾斜を登って行く。指が冷たくて写真を撮る余裕もない。
 初めての山での緊張のせいか、毎日の酒量のせいか、今日は特に体調が悪い。登るのに必死になっている自分が滑稽である。風雪舞う地蔵の頭に着くと、目の前に風にかすむ赤岳が見えた。一昨日に行者小屋から登った山であるが、山容を見るのは初めてである。
 稜線はとにかく寒く手が冷たい。赤岳の下には赤岳展望荘があり、ここからは間近にある。まずは小屋に行き一休みすることにする。
 小屋は営業しており、中に入るとまるで天国である。甘酒を飲むとやっと体の中が温まってきた。気温は-24℃、風速は15m程、体感温度は-35℃を超えているのである。この寒さは初めての経験である。
 これからの行動は、赤岳を越えて行者小屋に下りたい気持ちと、横岳方面に行きたい気持ちが交差するが、意を決してトレースがない稜線を三叉峰まで行くことにする。 
 地蔵の頭に戻ると雲が流れ、赤岳の横に富士山が見えた。そして三叉峰方向の稜線が風雪にかすんで見える。なんと素晴らしい光景だろうか。今度来る時は是非とも赤岳展望荘にのんびりと泊まってみたいものである。
 地蔵の頭からはトレースはなく、深いところでは膝までのラッセルとなり、岩稜と軟雪が交差する登りを清水ちゃんがトップでトレースをつけた。そして、やっと三叉峰のピークに立った。
 峰々は風雪であまり見えなかったが、素晴らしい頂きだった。もう11時を回っているので前進はここまでである。今日は東京発の夜行バスに乗らなければならないから時間に余裕はない。
 下りは軟雪で胸までハマり、下のハイマツからなかなか抜けれなくなった場面もあった。とにかく指が冷たく、また小屋に行き一休みする。熱いラーメンがとても美味しい。
 地蔵の頭からの下りは更に風雪が下から吹き込み、前が見えなくなり、軟雪の下りは思いのほか厳しい。清水ちゃんはスタスタと下り、だいぶ待たせてしまった。
 危険地帯を過ぎた所から尻滑りで滑った。行者小屋でアイゼンを外し、阿弥陀岳と中岳を眺める。稜線は寒く、急な下りでは軟雪にビビリどうしの八ヶ岳登山も終わろうとしている。
 下りながら振り返ると、山頂部分だけが雲に隠れた赤岳が見送ってくれた。素晴らしい八ヶ岳と先頭をラッセルしてくれた清水ちゃんに感謝である。

行者小屋から望む阿弥陀岳
行者小屋から望む阿弥陀岳

横岳の稜線
横岳の稜線

地蔵の頭から望む赤岳
地蔵の頭から望む赤岳

展望荘から見る地蔵の頭
展望荘から見る地蔵の頭

赤岳の隣に富士山が見えた
赤岳の隣に富士山が見えた

三叉峰
三叉峰

三叉峰のピーク
三叉峰のピーク

阿弥陀岳
阿弥陀岳

赤岳への稜線
赤岳への稜線

行者小屋から望む横岳方面の稜線
行者小屋から望む横岳方面の稜線

阿弥陀岳と中岳
阿弥陀岳と中岳

赤岳が見送ってくれた
赤岳が見送ってくれた

タイム:赤岳鉱泉(5:40)→行者小屋(6:25)→地蔵の頭(8:25)→赤岳展望荘(8:40〜9:05)→三叉峰(11:10)→赤岳展望
    荘(12:30〜13:00)→行者小屋(13:55〜14:05)→八ヶ岳山荘(16:20)


 車に戻り携帯電話を開くと、千葉県の親戚のおばちゃんが亡くなった訃報の知らせがあった。今夜、夜行で盛岡に帰る予定であったが、明日の葬儀に出席するため平塚に向かうことになった。
 清水ちゃんの別荘で風呂に入り、東京駅に送ってもらう。明日は告別式で、明後日は娘の成人式である。全てに都合よく運んでくれたおばちゃん、安らかに眠ってください。
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