奥入瀬渓流 アイスクライミング
 


2022年1月30日(日)〜31日(月)
メンバー:佐藤 博さん、藤原 豊さん、小田中 智
ルート:対岸エリア?不明 2本
 

 十和田湖から焼山までの約14kmにわたって流れる「奥入瀬渓流」は、十和田八幡平国立公園内に位置し、特別保護地区に指定されている。冬になると、渓流の随所にある滝は極寒の寒さのなかで凍りつき、大迫力の氷瀑や氷柱となる。
 エリアは馬門岩エリア、対岸のエリア、網タイツエリアの3か所が主なエリアとなっているようで、落差は20m弱くらいでグレードは5級から6級-くらいあるようだ。
 若い頃に一度行ったが場所も忘れ、数mしか登れなかった記憶がある。昨年は岩泉のドラゴンを登ったので、今年はいろんな場所に行きたいと思っていた。

30日(曇りのち小雪)
 佐藤君を迎え、二戸の藤原君宅に向かう。藤原君は正月明けの八ヶ岳で足の指が凍傷になったので、登るわけではないが撮影と宴会参加である。
 二戸から三戸を通り県道45号から国道102号の奥入瀬ラインに入る。青森は思ったより雪が少なかったが、さすがに奥入瀬に入ると多くなってきた。
 石ヶ戸休憩所を過ぎて間もなく馬門岩の氷瀑があり、ここが馬門エリアのようだ。まずは全体のエリアを確認するため、ゆっくり走りながら眺めていく。滝は随所にあるが氷ってはおらずエリアは分からない。
 銚子大滝を過ぎると間もなく、十和田湖に出たので戻って行く。道路の右奥に掘れたような滝が見えたので、とりあえずラッセルして行くと全然氷っていなかった。
 さらに下って行くと川の対岸に氷柱が見えた。近くに橋がありトレースもあったのでたどると20m近くの手ごろな氷瀑があった。この橋はたぶん「雲井の流れ」にある橋と思われる。あったトレースは下流へと続いているので、冬のトレッキング用のトレースみたいだ。思いがけず楽をして氷瀑に着いた。藤原君は先へと散策に行った。
 この氷瀑は18mほどあり真ん中が段になっており、下部は85度、上部は90度ほどで楽しめそうだ。佐藤君リードで、アックステンションを使いながらスクリューを刺し支点を作っていった。
 3本目をセットしたところで、カラン、アッと音がしたので見上げると、片方のアイゼンが外れて落ちたのであった。簡単すぎるので片方のアイゼンだけで登るのだろうか?片方のアックスは少し上に残っていたので、苦労してぶら下がり下ってきた。
 リード交替である。登り出しはツララの集合で登りづらいが、途中までトップロープなので安心だ。段の下は氷が薄く黒々とした岩がうっすらと見え、中から水が流れる音がした。
 スクリュー2本を刺した所で疲れたので下った。氷は水分を多く含んでいてアックスが刺さりにくく思いのほか疲れた。
 昼食を食べ、再び佐藤君がリードしていった。出口の上にビレイをとり、懸垂で下ってきた。
 私がトップロープで登って行くと、出口は岩が出ておりスラブのためツルツルで手掛かりがなく、しかも左右は柔らかい雪のため力を掛ける所が無かった。リードでよくぞ登ったものだと感心する。
 すでに15時を過ぎていたが、もう一本登るべく移動する。100mほど下ると20mの氷瀑があった。下部はツララの集合体で90度、上部はボコボコで75度くらいだ。
 小田中リードで登って行く。ツララなので支点場所を選びながら登って行くと、中間部に穴が開き空洞になって水が流れている。その近辺は氷の厚さが3cmほどのため、いつ割れてもおかしくない状態だ。落ちると空洞に入る恐さ、穴の淵に立つ恐さ、さらには支点を作る場所も限られ恐いのなんのって。
 中間部を過ぎると傾斜は落ちるが、氷の層は薄いのでこれまた怖い。途中で下ると言ったものの、あと7mほどで終わるので、グッとこらえて登って行く。出口には残置ロープの支点があった。
 前の出口の残置ロープは古すぎて使えなかったが、今度のはしっかりしたロープなのでセルフをとる。質の悪い氷のせいか、下手な登り方のためか、ヘルメット内は冷や汗でびっしょりだ。ロープにぶら下がり安心して下った。
 佐藤君のトップロープでの登りは早く、岩ではすでに追い越されており、氷でも追い越されてしまったと思うとザイルを引っ張ってやりたくなった。佐藤君が下ってくるともううす暗くなり始めていた。
 車では藤原君が暖房を効かせてくれていて、テン場は休憩所脇に良い場所があるという。さっそくテントを張り宴会の準備だ。
 今日は精神的に疲れた登りで2本しか登れなかったが、十分満足のできるクライミングだった。まずはビールで乾杯だ。
 それぞれにおかずを作り、熱燗を飲みながら語り合う。ここで泊まらず宴会なしで日帰りしたら、楽しみも半減以下になってしまうので、泊まって宴会することを心がけているのである。


銚子大滝から少し上流の左側


この橋を渡って右に行った


18m位の氷瀑


下部は氷が薄い


リードする佐藤君


リードする小田中


ここが出口で、乗り越しが悪い


20m位の氷瀑


トップロープで登る佐藤君


トップロープで登る佐藤君


31日(小雪)
 夜中にはサラッと雪が積もったせいか、ひんぱんに除雪車が動いていた。テントの近くにはトイレもあるので、頻尿で数回起きるのも楽である。
 自販機の場所は屋根があるので、そこで朝食を食べる。小雪が舞っているが、馬門氷柱を1本登って早めに帰ろうと思う。先に行った所に車を駐車し、ハーネスを装着して現場に向かう。
 現場に着くとちょうど観光バスが止まり、人が降りてきて「ここを登るのですか」と尋ねられた。写真でも撮るのかなと思い「はい」と答えると、観光省の者ですが「ここは国立公園の景勝地で、道路からすぐ側なので観光者に危険のため、数年前から登るのを止めていただくようお願いしています」と言われた。
 そのような感じのことは聞いていたが、観光者がいなければと思い登ることにしたのであった。調度良いタイミングで八合わせしていまったが、あと10分も遅ければ良かったのにと思ったが、仕方なく止めることにした。
 彼に氷の状況を聞いたたことによると、最近は少し気温が緩み氷の発達が遅れており、通年の適期は2月中旬頃だと言う。
 あとは帰るのみである。ゆっくり車を走らせながら帰っていった。


馬門エリア 雪が無ければここも登れる


馬門岩氷柱


下部は傾斜が緩いし上部も段々になっている
↑ページの先頭に戻る