立山〜剣岳縦走 ツアー登山
 


2017年8月5日(土)〜9日(水)
 メンバー:三浦 功さん(盛岡山想会)、渡邉さん、吉田さん、小橋さん、小田中 智
コース:室堂〜雄山〜真砂岳〜別山〜前剱〜剱岳〜早月尾根〜馬場島


剱岳は、飛騨山脈(北アルプス)北部の立山連峰にあり、山域はその特別保護地区になっている。立山とならび、日本では数少ない氷河の現存する山である。
日本国内で「一般登山者が登る山のうちでは危険度の最も高い山」とされる。一般ルートが、一服剣〜前剣〜本峰の間で、岩稜伝いの鎖場やハシゴのルートになることによる。難所としてカニのヨコバイ・カニのタテバイと呼ばれる鎖場がある。
最終氷期に発達した氷河に削り取られた氷食尖峰で、その峻険な山容は訪れる者を圧倒し、登山家からは「岩の殿堂」とも「岩と雪の殿堂」とも呼ばれている。

別山尾根ルート
前剱から山頂間は岩場のルートで、岩場の核心部には鉄梯子や鎖がセットされている。
ルートは登りと下りに別れ、登りは「カニのタテバイ」、下りは「カニノヨコバイ」と呼ばれる岩場で、土・日や夏休みなどのハイシーズンには鎖場が渋滞する。カニノタテバイを登り切れば核心部が終了し、簡単な岩場を登れば剱岳山頂に着く。
剱岳の事故は、鎖場での事故よりも、一服剱から前剱間の浮石や落石による、下山時の滑落事故・スリップ転倒事故が多発生している。

早月尾根ルート
冬山登山の代表的なルートだが、その高低差は約2,200mときつい登りだ。しかし頂上付近の鎖場以外には、整備された歩きやすい道である。
2,200mの早月小屋までは展望のきかない登りだが、小屋を過ぎると展望が一気に開け、小窓尾根や剱尾根の黒い岩峰群がそびえたちエキゾチックな眺めとなる。
2,400mのピークを過ぎると岩場が出始め、核心部であるシシ頭の岩場のトラバースからカニのハサミの岩場を通過すると緩い岩場の登りとなる。
別山尾根に比べて順番待ちはそれほどなく、静かな剱岳を楽しみたいのであれば、このコースが一番だ。

5日
それぞれの方々を迎えて高速道に乗る。今回は運転手が多いので心強い。8月に入りようやく日差しがあり、車の中はかなり暑い。
立山に着いたのが早い時間だったので、称名滝に行ってみた。いつもはバスから遠く眺めていたが、滝のそばにある展望台から眺めると、迫力と威圧感に圧倒され素晴らしかった。
立山駅の駐車場に車を止め、宿の千寿荘に入る。今回の剱岳の岩場に備えて、ハーネスと自己確保具を持参したので使い方の練習をする。
風呂に入ってまずはビールを飲む。この宿は駅のすぐ隣にあるため便利で、観光地でありながら宿泊料9,000円の割には食事が良い。
食事とともに明日からの天気祭りをして早々に休む。山に来ると天気祭りをしているが、だからといって晴れるとは限らない。つまり飲みたいだけのこじつけなのである。


称名滝




6日(曇りのち小雨)
食事を済ませロープウエイのチケットを買う。5月連休の時には4時半から並んだが長蛇の列だった。朝一番の便には乗れず次の便になった。
室堂付近は最近まで残雪が残っていたみたいで、チングルマとイワイチョウがたくさん咲いていた。今年は遅くに雪が降ったので、遅くまで雪が残っていたと見える。
天気は高曇りだが、上部は晴れているみたいだ。地元の小学生の遠足で多くの子供たちが先生に引率されながら登っており、いつも老人ペースの我々ではあるが小学生を追い越した。登山者に追い越されることはあっても、追い抜くことは希にしかないことだ。
一の越付近にはたくさんのイワギキョウが咲いており、花弁についた朝露の雫が光っていた。青空が広がっているが雲は低いため遠くの山々の姿は見えない。
雄山付近になると雲がわき始めるが前方の視界はまだ良い。山小屋に着くまで雨に当たらないことを願う。
大汝山の小屋で昼食を食べ、歩き始めると小雨が降り始めカッパを着る。7月からツアーが始まったが全日程でカッパを着なかったのは大朝日岳だけである。今年は7月から天候が不順で、今回も台風が接近しているのである。
別山の登りは長くきついため、更にゆっくりとしたペースになる。山頂では雨が上がりガスとなった。ここから眺める剱岳の姿は素晴らしいのであるが、見れないのが残念だ。
剣御前小屋に着いたのは15時で、泊まる予定の剣山荘までは1時間少々かかるため、明日に疲れを残さないためにもここに泊まることにする。
小屋の宿泊は余裕があると見え、急な宿泊ではあったが8人部屋をあてがわれ、ゆったりと過ごすことができた。軽く天気祭りをして休む。


室堂から見る立山三山


チングルマ





シナノキンバイ


チシマギキョウ


一ノ越と龍王岳


雄山神社


真砂岳と別山


イワギキョウ


エゾシオガマ


別山にて

タイム:室堂(7:40)→雄山(10:30)→真砂岳(13:05)→別山(14:25)→剣御前小屋(14:50)


7日(晴れのち曇り)
 外は青空で剱岳から八ッ峰の岩稜がクッキリ見えている。台風は北陸へ直撃の予報ではあるが、進行が遅いため午前中はもちそうだ。
 小屋から剣山荘に向かって剣沢をトラバースする夏道には雪渓が残っていた。小屋からの情報では5ヵ所の雪渓が残っているという。
 歩き始めて間もなくハクサンイチゲとイワカガミが現れた。くろゆりのコルまでは沢沿いのため一帯はお花畑である。ハクサンイチゲの花弁は朝日に当たり眩いばかりに輝いていた。
 コルに出ると前剱と山頂が見え、早月尾根のギザギザした岩稜が見えた。午後にはそこを下るのである。青空には巻層雲がたなびき早くも秋の空模様だ。
 進むごとに山頂への稜線は岩稜になり始め、前剱の迫力ある姿が近づいてきた。雲の位置が高いため、白馬岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳の特徴あるピークが間近に見えている。最近剱岳に来てはいるが、こんなに間近に見えたことはなかった。
 前剱から眺める源次郎尾根は一昨年の5月に登っているが、その光景が思い出される。春の剱岳は白と黒のコントラストが美しく、私の一番好きな剱岳である。
 いよいよこれから本格的な岩稜になるので、ハーネスとヘルメットを装着する。平蔵の頭付近から鎖場が始まるが、危険な部分は鎖場よりもその前後のガレ場の方が危険は隠れているのだ。
 平蔵のコルでしばらく休憩し、カニノタテバイを登り始める。30m程の高さの岩場であるが鎖がポイントごとに張ってあるので問題はなく、危険な箇所は鎖が途切れた部分にある。
 ゆっくり足場を確認しながら登るとガレ場となり、山頂直下の岩稜が見えている。早月尾根の分岐を過ぎると山頂は間もなくである。
 ちょうど12時、「岩の殿堂」と呼ばれるにふさわしい剱岳の山頂に着いた。午後から天気が悪くなり始め台風の上陸のせいか山頂には誰もいなく、私たちだけの貸切の頂きである。人気ある山頂に誰もいないことは希である。
 さっきまで見えていた白馬岳や五竜岳の山々は雲に閉ざされ、青空から灰色の雲に変わりつつある。天気は確実に悪くなり始めていた。
 下り始めると早月尾根だけにはまだ日が当たっており、かなり下に赤い屋根の早月小屋が見えている。雨に当たらないことを願って下っていく。
 このコースは上部にシシ頭の岩場帯がありカニノハサミの鎖場がある。岩場は登りよりも下りの方が危険度が高く、岩は乾いてはいるが、部分的に自己確保しながら慎重に下っていく。
 岩場の片隅にはイワウメやオダマキなどが咲いており、緊張感を和らげてくれた。アッという間に空は灰色の雲に覆われ暗くなりはじめてきた。
 岩場地帯が終わりしっかりした登山道を下っていくと、道脇にはマツムシソウやクルマユリが咲いていた。剱岳は花が豊富な山であった。
 雨がパラパラ降り始めた頃、やっと早月小屋に着いた。さっそくコカ・コーラを飲むと炭酸が喉と胃にしみた。部屋に入りビールで乾杯する。外は雨が降り始めていた。
 夜中はかなり風雨が強かった。


朝の日を浴びる剱岳


ハクサンイチゲ


コイワカガミ


剱岳の全容


アオノツガザクラ


剣山荘と剱岳


前剱と剱岳


前剣


前剱から山頂


平蔵の頭と山頂


カニノタテバイ


山頂稜線


剱岳山頂にて


早月尾根


シシ頭


鎖場


ミヤマタネツケバナ


ミヤマオダマキ


イワベンケイ


毛勝三山


ミヤマトリカブト


タカネマツムシソウ


クルマユリ


早月小屋


キヌガサソウ

タイム:剣御前小屋(5:30)→くろゆりのコル(7:20)→前剱(9:35)→剱岳(12:00)→早月小屋(16:10)


8日(雨)
 外は雨、今日は下るだけなので雨が降ろうが何も問題はない。カッパを着てただひたすら下るだけだ。
急な下り、木の根の下りと急な坂を下っていくが、沢の音はなかなか聞こえてこなく、まだまだ長い道のりである。
 展望台から急な階段を下るとやっと沢の音が聞こえ始め、馬場島が近づいてきた。馬場島はウマサシが多く、私だけがたくさん刺された。何故かいつも私にだけ多くの虫が寄ってくるのである。
 食堂で昼食を食べ、タクシーを呼ぶ。予定では上市駅から電車に乗り車を回収するつもりだったが、雨で大変なので立山駅までタクシーで向かう。
 立山駅の駐車場に停めていた車はバッテリーが上がり、エンジンがかからなかった。ドアが半ドアになっていたためである。古い車のため、小型の充電バッテリーを装備していたので助かった。
 今夜の宿は糸魚川の民宿を予約しているので向かう。「民宿 彦左衛門」はネットで探した海のそばの民宿で、美味しい海の幸を食べたいため追加料金で予約していた。
 雨は上がり台風は低気圧になって過ぎ去ったみたいだが、各地に大きな被害をもたらしたようだ。私たちが剱岳の山頂を越えるまで、他の地域で悪さをして進行を遅らせていたみたいだった。
 風呂上がりのビールは格別である。夜の食卓は魚づくしで、お目当ての舟盛りがあった。やはり刺身といえば日本酒である。剱岳での余韻を話しながら酌み交わす酒は、まさに絶品である。


早月尾根入り口

タイム:早月小屋(6:40)→馬場島(11:10)

9日
 帰りに寺泊「魚のアメ横」に寄って行くことにする。昼前に寺泊に着いたが、朝ごはんをいっぱいご馳走になったのでまだ満腹状態のため、昼食はしないで買い物だけにする。いつもはここで海鮮丼を食べるのが常である。
 私はまだ食したことのない、高級魚と言われる「のどぐろ」を購入した。家に帰って食べるのが楽しみだ。
あとはひたすら走るだけだが、運転を交代してもらいながら走っていく。

 台風が直撃という時にも関わらず、不思議に天気の日に山頂に立ち、素晴らしい景色を見ることができた。
 みんなからは「念願の剱岳に登れてありがとう」と言われとても嬉しい。ガイドをしていて、喜んでもらえるのが一番うれしいことだ。
↑ページの先頭に戻る