焼石岳 天竺山〜牛形山縦走
 


2020年5月6日(水)〜8日(金)
 メンバー:藤原 豊さん、小田中 智
 コース:つぶ沼〜銀明水〜焼石岳〜東焼石岳〜金明水〜天竺山〜金明水〜牛形山〜夏油温泉


 剱岳を中止にしたので県内での縦走を考えた。焼石連峰の中で、三界山、天竺山、焼石岳縦走路から牛形山は登山道が無いため、雪がある時期しか行くことはできない。
 せっかくだから縦走形式とし、南本内岳から三界山へ行き、金明水から天竺山と経塚山を往復し、牛形山から鷲ヶ森山を経て夏油温泉に至るルートを考えた。車2台で行き、それぞれの登山口に置くことにした。
 このコースは我々のんびり老人クラブにとって2泊3日でもギリギリであるが、途中をカットできるので体調と天気しだいである。前から行きたいと思っていたルートなので楽しみだ。

焼石連峰
 奥羽山脈中部に属し、岩手県南西部、奥州市と和賀郡西和賀町の境にある標高1,000メートル級の14の山々が連なる。
 こんもりした山頂部が特徴的な焼石岳を主峰とする焼石連峰は、北に南本内岳と三界山、南に横岳と獅子ヶ鼻岳、東には東焼石岳と天竺山と経塚山、北東に牛形山と鷲ヶ森山などがある。
地形的な大きな特徴は、いたる所に雪田、草原、湿原が見られ、遅い雪解けの始まる6月頃から多くの高山植物が次々と花を咲かせる。ことに山頂直下の姥石平は、貴重な湿性植物のあるお花畑として有名である。
 連峰はブナの原生林が豊富で、渓谷や湖沼・滝などバラエティーに富んだ景観が魅力だ。山ふところを縫うように走る国道397号線は焼石連峰ビーチラインと呼ばれ、ブナ原生林の樹海が広がる。

山界山(1,381m)
 旧胆沢郡胆沢町、旧和賀郡湯田町、雄勝郡東成瀬村の三郡にまたがる三角形の魅力ある山だ。焼石岳から見る三界山は、周囲に広がる湿地(胆沢川源流)のせいか、一種独特の雰囲気をかもし出している。
 湿地帯を通る焼石岳東成瀬コースの途中からは標高差200mもないが、登山道は無い。雪がある時期であれば容易に登ることができる。

天竺山(1,318m)
 東焼石岳から経塚山への縦走路の中間にあり、南面が天竺沢へと切れ落ちているため遠くから見ると迫力ある山である。金明水避難小屋から肩である天竺峠までは縦走路の登山道であるが、峠から山頂まで標高差80m、距離約0.6kmたらずであるが登山道はない。
 山頂には三等三角点と標識があり360度の展望で、西方は横岳、六沢山、南本内岳の山頂部分だけが見えている。北方には三森山、牛形山、鷲ヶ森山、夏油高原スキー場が見える。雪がある時期であれば容易に登ることができる。

牛形山(1,339.4m)
 牛形山は北上市と西和賀町にまたがり、焼石連峰の北東に位置する。登山口は秘境温泉で全国でも有名な夏油温泉で、経塚山や駒ヶ岳とともに夏油三山として知られている。
 深いブナ林の中にあり、山頂からは北方に白っ子森山から鷲ヶ森山、横岳から夏油高原スキー場へ続き、南方には東焼石岳から経塚山への縦走路へと続くが登山道はない。
 山頂から1,277mピークの縦走路へ続く尾根の途中には3つのピークがあり、距離は3.3km程で大きなギャップはない。雪がある時期であれば容易に通れ、展望も素晴らしい。

6日(曇りのち小雨)
 矢巾に6時に待ち合わせ、2台で夏油温泉に向かう。登山口の駐車場に藤原君の車を残し、つぶ沼へ向かう。胆沢ダムの湖水がエメラルドグリーンで美しい。この色になるのは時期的な影響によるものなのだろうか?
 つぶ沼から歩き始めると新緑が美しく、真っ赤なユキツバキとショウジョウバカマが咲きいっそう春山を感じさせてくれた。
 ユキツバキは、奥州市胆沢区の猿岩で発見され、当初サルイワユキツバキの名で発表されたものである。その後、日本海側各地のブナ林に分布することがわかり、ユキツバキに改められた。
 猿岩は、胆沢川の上流、石淵ダムの右岸にそびえる石英安山岩質凝灰岩の一大岩峰で、その頂上部に猿岩神社があり、ユキツバキが自生するのは、ここの境内地にあたる標高500m付近と考えられた。
 ユキツバキは本県沿岸部に見られるヤブツバキの変種で、ヤブツバキに比べ背丈が低く、幹が地際から斜上し、高さは1〜2m程度である。近年、胆沢川の左岸上流に、見事なブナ林に覆われたユキツバキが密生している地域が発見され、このうち大荒沢地区の22haが追加指定され、名称も猿岩ユキツバキ群落から胆沢川流域ユキツバキ群落に改められた。
 雪は金山沢手前からあり、ワカンを付けて歩く。岳山からは迫力ある天竺山が見え、下方には石沼が見えた。石沼の残雪と湖水の接点がグリーンに光っていた。これを見るのも初めてである。
 中沼コースに合流すると古い足跡があったが、近日には誰も入山していないようだ。銀明水の水は出ており、冷たい水を飲み山頂へ向かう。登るごとに雲は黒くなり始め、山頂へ雪渓を直登し始めると小雨が降ってきた。
 今日は山頂から南本内岳へ下った鞍部に設営するのであるから、あと1時間ほど待ってほしかったのであるが。山頂は展望もないので通り過ぎ、雪がない登山道をワカンのまま下っていく。さすが岩場帯でワカンを外し、焼石神社に手を合わせる。昔は神社を素通りしていたが、近年はお参りするようになった。何回も入院と手術を繰り返しているので、神頼みしかなくなったのである。
 鞍部にテントを張りようやく今日の行動が終わった。まずはウイスキーを二口飲む。私の夕食は例によって刺身、牛ステーキである。日本酒で乾杯する。


登山口のつぶ沼


ブナの新緑


ユキツバキ


ショウジョウバカマ


天竺山


石沼と天竺山


銀明水避難小屋


横岳


焼石岳


右の雪渓から直登する


焼石岳山頂


南本内岳鞍部手前にある焼石神社

タイム:つぶ沼(9:00)→銀明水(13:50)→焼石岳(15:30)→南本内岳鞍部(16:55)


7日(ガスのち曇り)
 朝も小雨が降っていたのでゆっくり起きる。今朝がたに雪なったようで、うっすらと新雪が積もっていた。南本内岳行きを止めにして、金明水に向かうことにする。経塚山は金明水に着いてからの判断である。
 小枝には氷が付着し白い花が咲いているようだ。進むごとにガスは深くなり方向感覚がおかしくなり、現在地を確認しながら方向を定める。東焼石岳の登山道に合流すると風が強くなった。
 風速は15m程で視界はだいぶ回復してきた。東焼石岳は一面が氷化した草や小枝が真っ白で、日が当たったらもっと美しいことだろう。
 登山道には雪がないがワカンのまま歩いて行く。牛形分岐を過ぎると雲が切れ始めたが、金明水への下りは雪原となり分かりづらかった。雪が続いているとどこを歩いても良いのであるが、今の時期は雪が途切れた時に夏道から外れているとブッシュ漕ぎとなってしまう。
 小屋は掃除されきれいで、荷物を出して昼飯にする。昼過ぎには天竺山がきれいに見えたので、経塚山は止めにして天竺山を往復することにする。
 天竺山へは一直線に登って行った方が早そうだったが、夏道沿いのコースをとる。登るごとに青空が増えてきて遠方も見えてきた。峠からは雪が少なくなったが、雪を拾いながらブッシュを分けて登って行く。
 肩に出ると雪は無くなりブッシュとなった。この辺は背丈が低く薄いので踏み跡らしさがあり頂稜をたどって行く。山頂には三等三角点と山頂標識があり360度の展望だ。
 雲が取れた経塚山、東焼石岳方面、明日向かう牛形山とそこに続く尾根が遠いように見えている。夏のこの深いブッシュは好みではないので、今度は冬に訪れたい。しかし、歳も歳なので叶う時があるかはわからない。
 下りは肩から真っすぐ小屋へ向かって降りていく。林間が広くなると当然のごとく尻滑りだ。今回は尻滑りパンツを持ってこなかったので尻が濡れることを覚悟の滑りである。
 雪を溶かし、まだ早い時間だが宴会タイムとする。私の夕食はシメサバとホルモン焼きだ。ウイスキーで乾杯する。今回藤原君の食料は豪勢で、分け合いながら食べ、語り合う。ウイスキーが無くなったら終わりと思っていたら、おもむろに焼酎が出てきた。
 もう酔っぱらってきたので、まだ明るいがシュラフに潜る。


小枝に付着した氷雨


金明水から見る牛形山 この時期は山頂へ直登が楽する


肩から天竺山


天竺山山頂にて


東焼石岳方面


経塚山


牛形山分岐から牛形山への尾根


金明水避難小屋

タイム:南本内岳鞍部(7:15)→東焼石岳(8:20)→牛形山分岐(10:00)→金明水(10:30〜12:20)→天竺山(13:25)→
    金明水小屋(13:55)

8日(快晴)
 朝早くに外を見ると丸い月が輝いていた。雪は硬く空は青空で小屋の前からは栗駒山が見えていた。牛形山分岐に登るとガスったが、これは晴れる前兆である。
 牛形山へ続く尾根に入って間もなく、頂稜の脇が崩壊する所が出てきた。時期的にはそろそろ終わりの頃で、これからはブッシュが多く出るだけとなる。所々はブッシュを漕ぎ右左へと移動しながら歩く。
 ブッシュが濃い所で片方のストックを紛失するが、藤原君にみつけてもらった。右にどっしりして黒い経塚山、左に焼石岳と南本内岳が青空を背景に輝き、前方の牛形山もだいぶ近くなってきた。
 山頂への長い登りになり、後ろを振り返ると真っ白い鳥海山が見えた。ブッシュ漕ぎもなく山頂に着いた。憧れのコースからの山頂、空は青く山々は白く輝き、誰もいない二人だけの山、なんと素敵な一日だろうか。ここで昼寝したら気持ちいいだろうなーと思う。
 鷲ヶ森山へ行くのは止めて下山しようということになった。夏油へ下る登山道の下り口は雪がある時はヤバいというので、南に回り込んで1,248mピークの鞍部から夏油川方向に下り左にトラバースするルートにする。
 鞍部から最初の急傾斜を下り尻滑りだ。雪はグサグサで楽しい滑りだ。右にはスキーで滑ったようなラインがあるが、スキーは楽しいだろうなと思う。新雪は滑っても担いで降りた方が早い私であるが、ザラメ雪ならば私でも滑れるのである。
 沢に入ると風は全くなくなり、太陽がことのほか暑い。山頂からの落石と落雪の跡はあるが崩落はまだ大丈夫だ。左にトラバースし、小さな尾根を越えて登山道に合流する。下には温泉が見えてきた。
 雪が途切れてきたと、き登山道を外すと藪漕ぎになってしまうので、現在位置を確認しながらある意味慎重に下る。だいぶ下るとブナの新緑が美しく、高山植物が現れてきた。
 木にはタムシバとムラサキヤシオツツジ、カタクリ、ニリンソウ、サンカヨウ、キクザキイチゲ、シラネアオイが咲いていた。今は5月始めであるが咲くのが早い気がする。4月も寒かったが一気に暖かくなったせいだろうか。
 駐車場では桜も満開で、お花見登山ができた一日だった。山はショートカットで目的通りにはいかなかったが、天竺山が登れ、快晴の中で牛形山への稜線をたどれたことだけで充分である。季節ならではの縦走は心から楽しかった。


小屋の入り口から見える栗駒山


金明水小屋と天竺山


薄い雲がかかる牛形山への尾根


崩落しそうな尾根の雪庇


牛形山への尾根と牛形山


牛形山への登り


左から東焼石岳、焼石岳、南本内岳、三界山、蜂巣山、上に鳥海山


牛形山山頂


経塚山


山頂にて


山頂にて 背景の左から南本内岳、蜂巣山、上の左に鳥海山


南本内岳と鳥海山


左から天竺山、六沢山、東焼石岳、焼石岳


尻滑りの跡を歩く藤原君 ゴアのカッパがもったいないと言う


後ろから見るカタクリ


ブナ林の新緑


ムラサキヤシオツツキ


ニリンソウ


サンカヨウ


シラネアオイ


駐車場に咲く桜

タイム:金明水小屋(5:15)→牛形山分岐(5:50)→牛形山(9:40〜10:00)→夏油温泉(12:20)
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