神室山 東稜からパノラマコース縦走 ガイド登山
 


2017年3月4日(土)〜6日(月)
 メンバー:嶋脇さん、小田中 智
 コース:鬼首道路かもしか橋手前の駐車場〜1,154mP〜東稜〜神室山〜前神室山〜パノラマコース〜役内集落


 真冬の神室山は雪深く天気も悪い。標高1,365mの山でありながら、日本海の影響を受け雪深く湿雪で風も強い。山は深く大きく尾根筋はナイフリッジの稜線で、東北の山で痩せ尾根が続くのは珍しく、冬は雪庇が大きく張り出している。
 今年2月に挑んだが風雪のため敗退し、今回は予備日を入れて挑むことになった。

4日(風雪)
 4時に駐車場で待ち合わせ秋ノ宮温泉に向かう。今回の天気は1日目が風雪、2日目が晴れ、3日目が曇りの予報だ。
 前回は雪が降ったばかりで雪が多く感じたが、今は雪がだいぶ解けた感じがある。問題はどれだけ潜るかであり、それによってどこまで入れるかがある程度決まる。
 出発しようとしたらカメラを家に忘れてきたことに気づいた。明日は好天なので素晴らしい写真が撮れるのにと思うと残念でならない。仕方ないので携帯で撮影することにする。
 駐車場から沢沿いに入っていくが、潜りはスノーシューを履いて10cm程度と楽勝だ。前回は膝近くまで潜ったためキツイ登りだった。
 ラッセルを交代しながら高度を稼いでいく。この辺では天気は穏やかであるが、雪壁を乗り越え1,035mPに立つと風が出てきた。天気が良いと神室山の稜線が見え始めるのであるが、1,154mPさえ見えない。
 やがて風雪となり1,154mPに立つ。前回は強い風雪で前が見えなくなり付近にテントを張ったが、今日はそこまで悪くはない。
 山頂小屋までは行けないにしても、せめて1,114.4mP付近までは進みたいので先へ進む。しばらくして直角に右に曲がるところを下ると1,114.4mP手前の鞍部に出た。この曲がり角は尾根が小さいので間違いやすい場所だ。
 鞍部にテン場を求め整地しツエルトを張る。今回の食事は嶋脇さんが用意してくれた。


ブナの樹林帯


雪壁の乗越


1,035mPから前方


1,114.4mP手前のキャンプ地

タイム:駐車場(7:40)→1,035mP(11:05)→1,154mP(12:05)→1,114.4mP手前(14:30)


5日(曇り時々晴れ)
 5時に起床し食事をしていると明るくなり日が差し始めてきた。泊まったところから1時間ほどまではテン場はあるがその先は尾根が細くなるのでテン場はない。山頂は雲に隠れてぼんやりしているが、そこまでの尾根ははっきり見えている。
 尾根が細くなり始めた頃にアイゼンに履き替える。左側に雪庇が張り出し雪も締まってきて、潜らないので快適に歩くことができる。昨日から1週間ほど前のトレースの跡があったが、この付近では見えなくなっていた。
 3mの雪壁を乗り越えると間もなく1,160mPに立ち、小又山と火打岳が見え山頂は雲に隠れていた。ここから先は両側が切れ落ちた細い尾根となり、右側は役内沢へと雪庇が張り出している。
 雪庇に注意しながら2ヵ所の急斜面を越えると九合目の標識が見え、火打岳に続く尾根に合流した。正面には山頂と避難小屋が見えている。登るごとに天気は良くなってきたが風が強くなってきた。
 山頂には頭だけ出ている標柱があり、前神室山が見え続く稜線は強風で霞んでいた。明日の午後から天気が崩れる予報なので今日は前神室山を越えたかったが、寒さと強風のため小屋に泊まることにする。
 山頂からは虎毛山、高松岳、小又山、火打岳が見えている。冬の山は美しく縦走する尾根に魅力を感じる。
 小屋の冬期入口は埋まっており、30分程かかって掘り起こす。この小屋には多くの毛布が常備されており、冬はとてもありがたい。石油ストーブはあるが、減量のため灯油を持参しなかったが、ストーブは芯が外されており使用できないようになっていた。
 時間はまだ早いのでシュラフに潜り昼寝する。夕方まだ明るいが夕食にして早めに休む。夜になると強い風の音が聞こえるようになった。前神室山手前の暗部までは気が抜けない稜線なので、天気が持ってくれることを祈る。


1,114.4mPから山頂への稜線


いよいよ尾根が細くなる


雪庇が張り出す尾根


1,160mPから九合目への稜線


天狗森と小又山


九合目分岐へ向かって


天狗森と小又山


美しい雪庇と神室山


山頂と避難小屋


山頂から登って来た稜線


前神室山

タイム:1,114.4mP手前(7:05)→1,160mP(10:25)→神室山(12:45)→小屋(12:55)


6日(風雪のち時々晴れ)

 6時に出発するつもりで準備して外に出ようとしたら、風は弱いが視界が悪いので靴を履いたまましばらく待つ事にする。
 最大8時まで待つつもりだったが、天気は変わりそうもないので出発する。山頂に立つと風速15m、視界は3〜5mで、最悪に近い状態だ。しかし今日は下山しなければならないので下ることにする。
 右側は役内沢に雪庇が張り出しているので、頂稜に寄り過ぎないように目とストックで確認し、足場は潜りがあるので下りでは転んでしまうため、超ゆっくり慎重に進んで行く。
 西ノ又コース分岐を確認すると尾根は少し広くなり、1,325mPから先が分かりづらい。視界が良ければ問題ないが視界が5mでは先の尾根が見えない。GPSで現在地を確認しながら慎重に道筋を探す。
 下っていくと視界が開けてきて、前神室山への稜線や来た稜線が見えてきた。ここまで来るともう安心で、張りつめた緊張感が一気に解けていった。
 前神室山からは神室山がうっすら見えるまでに天気が回復し、青空も見えるようになっていた。あとはドンドン下っていくだけだ。
 第1ピーク付近からはブッシュの境に落とし穴があり、お互いにハマり笑いながらのんびりと下っていく。第2ピークの下あたりからは古いトレース跡があった。神室山の冬は殆んど登山者が入っていないみたいだ。
 パノラマコースの登山口に下ると、あとは林道を役内集落まで歩くのみだ。集落手前でタクシー会社に電話して、駐車場に置いてある車を回収する。
 結局2泊3日にはなってしまったが、嶋脇さん念願の神室山を東稜から役内まで縦走することができて、嬉しさがこみ上げてきた。
 雪庇が張り出した稜線を歩くのは醍醐味があり、視界が効かない下山ルートでは物凄い緊張感を味わうことができて充実した神室山縦走だった。


山頂小屋


前神室山


前神室山


神室山を振り返る


前神室山と神室山方面


パノラマコースの雪庇


登山口への鳥居

タイム:小屋(7:45)→前神室山(10:10)→パノラマ登山口(14:15)→役内集落(16:00)
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