新雪積もる船形山 升沢コース
 


2020年11月9日(月)〜11日(水)
 メンバー:加藤さん(千葉県)、小松崎さん(千葉県)、渡邉 正一さん(福島県)、小田中 智
 コース:旗坂キャンプ場〜三光ノ宮分岐〜升沢小屋(泊)〜升沢コース分岐〜船形山 往復


 コロナの関係で、春から東北にいらしてなかった加藤さんより依頼があった。3年年前に船形山を計画したが体調不良により山へは入らなったので、リベンジを兼ねて再び船形山を計画した。
 時期的には山の紅葉が終わり、新雪があるかどうかの時期であるが、山頂部では樹霜が見れるかもしれない。関東から来ることを考え、途中の山小屋に泊まり、ゆったり初冬の山を楽しめるように計画した。
 前回は台ヶ森温泉山野川旅館に泊まったら、良い所なので再び泊まりたいと言うので、もう1泊し最終日は観光をすることにした。

船形山(1,500)m 日本二百名山

 船形山は、奥羽脊梁山脈のほぼ中央、宮城、山形の県境の船形連峰の主峰である。連峰と呼ばれているが、実際は南北に25km、東西に30kmの山稜が続き、1,200m以上の山を20ほど数える一大山塊となっている。
 船形山は宮城県側で呼ぶ名である。北東側から山頂を向いたとき、緩い傾斜を急な崖が縁取るのが浮かぶ舟のように見えることから名付けられたとか、東から見たとき山頂が船底をひっくり返したような形をしていることから名付けられたとか言われる。
 一方、山形県側では御所山と呼ばれており、北西麓の尾花沢に伝わる伝説に由来する。承久の乱で佐渡島に流刑になり、佐渡島で没したと伝えられている順徳天皇が、実は佐渡島から脱出して尾花沢まで落ち延び隠れ住んだ。山の名は天皇の居所、すなわち御所にちなむという。または船形山を中心とする5つの峰(五所)が由来という説もある。
 かつては広い山塊全域が、樹齢200年を超す見ごとなブナ原生林に覆われていたが、国有林の無秩序な伐採で激減してしまった。大部分が失われたとはいえ、奥深さとブナ林の美しさがこの山の魅力である。

9日(曇りのち小雪)
 5時半に家を出て、高速道には乗らず下道を走って仙台に向かう。10時に仙台駅前で待ち合わせし、旗坂キャンプ場に向かった。邉ちゃんとはキャンプ場で待ち合わせだ。
 泉ヶ岳スキー場付近に来ると小雨が降りだしてきて、桑沼付近から林道となり悪路となった。激しく振られる悪路の途中で、前方から車がやってきたので待ってすれ違う。キャンプ場までもう少しの所で道路は通行止めになっていた。
 さっきすれ違った車は何も教えてくれなかったが、普通の方なら教えてくれるであろう。さすが仙台ナンバーだ。
 また悪路を戻って、更にかなり戻って県道147号から行くとなるとかなりの時間がかかってしまう。邉ちゃんからはキャンプ場に着いたとの連絡があったが、それ以後電波が入らなくなってしまった。地図を見ると147号にある種沢に近道する林道があったので、また通行止めにならないことを願いながら入って行く。
 147号に出ても電波は通じず、間もなくキャンプ場に着いた。邉ちゃんは捜索に出たらしく車がなかったが、間もなく合流した。
 予定時間を大幅に押しており、小屋に着くのは暗くなってしまうが、雪は無くヘットランプがあるので道に迷う心配はない。
 登山口から急登を終えるとナラ木からブナ木に変わり、進むごとに幹は太くなっていった。やがて雪が出てきて、広くて歩きやすいブナ林帯をゆっくりと登って行く。
 先行者のトレースは無かったが、三光ノ宮付近からトレースがあった。足跡は丸く蹄の跡はないので熊の足跡であり、ごく近い時間の足跡のようだ。
 やがて暗くなり始め、小雪が降り始めてきた。積雪も10cm程になり、熊のトレースは蛇ヶ岳分岐まで続いた。やがてぼんやりと小屋のシルエットが見えてきた。
 こじんまりとした小屋であるが、天井が吹き抜けになっているので寒そうだ。小屋の裏には沢水が流れているので、水くみに行く。水が有ると無しでは格段の差があるので、水は山では貴重である。
 今回、このために購入したガスストーブに火をつける。間もなくバーナーを覆う網が赤くなり暖かくなってきた。ガスはOD缶250Tの使用、サイズは190×190×160mm、重量は900g、料金は6,000円程だ。
 テント泊では必要ないが、寒い小屋泊では重量と大きさ的にも持ち込める大きさなのであると快適だ。まずはワインで乾杯する。今夜のディナーは刺身、きりたんぽ鍋、ジビエのエゾ鹿肉焼きである。
 みんな気が知れ合った仲なので、語りながらグラスを傾ける。楽しい時間もつかの間、睡魔とともにシュラフに入る。


暑い落ち葉を敷き詰めた登山道


昨夜積もった新雪

タイム:旗坂キャンプ場(13:25)→鳴清水(14:50)→升沢小屋(17:30)

9日(小雪のち風雪のち曇り)
 昨夜残ったきりたんぽ鍋に日本そばを入れ朝食にする。山頂からの下山は蛇ヶ岳を回って下る予定であったが、一気に35cmの新雪が積もったため、荷物を少なくして往復コースとする。
 コースは沢沿いで、沢を渡りながら進むのでこの新雪では歩きにくい。ましてや帰りは結構な時間がかかってしまうことだろう。下手すれば今日もヘットランプの使用になるかもしれない。
 11月10日にしては異例の新雪である。しかし真新しい新雪をかき分けて歩くのは楽しい。沢から離れ急登を終えると千畳敷で稜線に出た。
 吹き溜まりになると股まで潜り、一人でのラッセルは疲れてきた。艫ノ峰付近で小屋が見えたが風が強くなり、ここで帰ると言われるが、もう少し頑張ってみようと邉ちゃんが説得し先へ進む。
 上空は天気が良いらしく、時折青空や日差しが見えた。しかし山頂からの展望はなく、握手をし写真を撮り合って下山にかかる。小屋で休みたいところであるが、冬期入り口から入るのも面倒なので先へと下る。
 艫ノ峰手前の木陰で昼食にする。あー寒かった、真冬並みの寒さだ。この時期は寒くなると真冬並みで、標高が低い所では雨が降るので、まだカッパの世界であり、微妙な装備選びとなる。
 心配した沢の下りは、トレースがあるので思ったより早くに小屋に着いた。この分では暗くなる前に駐車場に着けるかもしれない。残した荷物を整理して小屋を出る。
 小屋の背後は青空に変わり、山頂方面も見えてきた。あー良かった、うっすらとでも山頂方面が見えたことに感謝する。
 三光ノ宮分岐付近になると、前方からのトレースがあった。足跡は丸いので熊の足跡で、下から登ってきた足跡である。足跡を観察すると、登山道の中でも歩きやすい所を歩いているようだ。
 下るとともに徐々に積雪は少なくなり、熊の足跡はまだあるが鹿の足跡も混ざってきた。一群平を過ぎると雪道は滑るようになり、厚く重なった落ち葉で滑るようだ。
 16時半、うす暗くなったころ車に着いた。駐車場は雪がまばらで、タイヤ交換していない邉ちゃんの心配は解消された。邉ちゃんと別れ、我々は台ヶ森温泉山野川旅館に向かう。
 暖かい温泉に入浴し、食卓での冷たいビールが美味しい。料理もおいしく、話しながらゆっくりいただく。


升沢小屋 35cmの新雪が積もった


沢沿いのコース


千畳敷


この付近は40cmの積雪


樹霜


山頂と避難小屋


山頂にて


霜におおわれた避難小屋


三峰山(中央)、泉ヶ岳と北泉ヶ岳(左)、美しい樹霜


升沢小屋にて


中央に船形山方面

タイム:升沢小屋(8:10)→千畳敷(10:10)→船形山(11:10)→升沢小屋(12:40〜13:10)→キャンプ場(16:30)

10日(曇り)
 朝には雨が降っていた。本来は、大滝キャンプ場近くにある色麻大滝を観光するつもりであったが、昨日の新雪で中止にし、秋保大滝を観光することにしたが、急遽そのまま帰ることになった。
 途中の道の駅で買い物をし、仙台駅前でお別れする。私は下道をゆっくりと帰っていった。

 11月上旬にしては早い新雪が積もり、避難小屋での一夜、新雪のラッセル、小枝が白くなった樹霜、薄っすらと輝く山頂、風雪の山頂、熊のトレース、家庭的な雰囲気漂う宿と美味しい料理と、変化にとんだ楽しさを体感できた3日間で、心に残る思い出となった。みなさん、ありがとうございました。

 台ヶ森温泉は、宮城県中央部に位置し船形山登山口の下方にある。江戸時代、半身不随の武士の病を治した伝説をもつ霊泉で、山野川旅館は台ヶ森温泉郷 唯一の温泉旅館である。
 延宝年間より三百年の伝統を誇る幽玄境で、名優 故・田村高廣氏もこよなく愛した東北の秘湯だ。

台が森温泉 山野川旅館 宮城県黒川郡大和町吉田台ヶ森 tel.022-342-2057
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