鳥海山 大台野から冬コース 風速35mとホワイトアウトで頂上直下で敗退
 

鳥海山南面の全容
鳥海山南面の全容

平成25年3月22日〜24日 メンバー:梅田 正弘、桜庭、小田中 智

 コース:大台野牧場〜滝ノ小屋〜行者岳〜新山直下 往復


 鳥海山は昨年の正月に矢島口から初めて行ったが、悪天のため祓川ヒュッテから引き返しており、リベンジの意味もあり今回は大台野牧場から登ることにした。
 今年の日本海側は異常な豪雪と悪天のため、1月や2月には行く気になれなかった。
 高速道を使わないで麓まで行くにはからりの時間がかかるため、前日に麓まで入り車に泊まり、早朝に仲間と待ち合わせることにした。

22日(金)
 15時半頃自宅を出発し、沢内経由で走る。20時過ぎにようやくにかほ市に着き、梅ちゃんに連絡し待ち合わせ場所を、道の駅鳥海で朝5時に待ち合わせることにする。
 10時頃道の駅に着き、しゃぶしゃぶで晩酌をする。

23日(晴れ)
 車の窓を叩く音で梅ちゃんに起こされる。昨年の正月に一緒だった桜庭さんが急遽一緒に行くことになった。今夜は楽しい宴会になりそうだ。
 通い慣れた梅ちゃんの先頭で県道345号から366号に入り、大台野牧場の除雪終了点に車を止める。
 天気は晴れで鳥海山が薄い雲の間から顔をのぞかせている。身支度を整え、スキーをつけて出発する。5cm程の新雪を踏みしめ、真っ直ぐにのびる鳥海公園青沢線を歩いて行く。
 山は大きいため山頂は遥か遠くに見える。しかし、梅ちゃんは冬に日帰りで山頂を往復するという。
 荒木沢の橋を渡ると、青空にくっきりと浮かぶ鳥海山が見え真っ白い姿が美しい。右には神室山の山並みが望まれる。標高は860mで、今日泊まる滝ノ小屋は標高1,300m位なのでまだまだ遠い。
 つづら折の道を真っ直ぐに登って行くと、標高1,200mの駐車場に着いた。夏はここが湯ノ台道の登山口となる。
 間もなく2階建の滝ノ小屋に着いた。入口は雪が降っても開けられる造りになっており、中は板の間とご座が敷いてあるスペースがある。2階はご座の間と小部屋があり、小部屋を陣どり畳を敷く。
 間もなく2人パーティがやってきて、しばらくして単独行者がやってきた。夏は営業するというだけあって立派な小屋である。冬期に開放してくれるのはありがたい。
 まずは桜庭さん特性のコーヒーをいただく。彼のコーヒーは豆を引くことから始まり、ドリップでいれる本格派のコーヒーである。
 水を作りながら、まだ昼過ぎではあるが、ビールの栓があき乾杯する。飲み始めると更に飲みたくなるもので、まだ早いが夕食を始めて早く寝ることにする。2人は夜中に出てきているので睡眠不足である。
 今夜の献立は、野菜と生ハムのオードブルとホルモン鍋である。久しぶりに合う桜庭さんとの会話も楽しく、焼酎のお湯割りを飲みながら、話題は山から私生活へと飛んでいった。楽しい時間はゆっくりと過ぎていった。
 まだ明るい5時頃にはシュラフに潜り込んだ。夜中、外からはヒューヒューと強い風の音が鳴り響いていた。

歩き始め地点から望む鳥海山
歩き始め地点から望む鳥海山

見え隠れする鳥海山をバックに
見え隠れする鳥海山をバックに

荒木沢の橋を渡った付近から望む
荒木沢の橋を渡った付近から望む

駐車場への登り
駐車場への登り

駐車場
駐車場

滝ノ小屋手前からの鳥海山
滝ノ小屋手前からの鳥海山

タイム:大台野牧場(6:40)→滝ノ小屋(12:00)


24日(快晴のち風雪のち快晴)
 4時起床のつもりが寝坊をしてしまう。さっそくうどんの朝食をすませ、必要なものだけザックに詰め出発の準備をする。他のパーティは出て行った。
 外に出ると上空は青く、小屋の影から鳥海山の上部がくっりきと見えている。まさしく快晴である。アイゼンを付け白い外輪を目指して登って行く。
 30分も登ると傾斜の緩い河原宿テラスとなり、鳥海山南面の全容が見えてきた。後ろを振り向くと、どっしりとした月山が見え、右に朝日連峰が重なっている。この天気であれば山頂からは岩手山が見えるのではとの期待感が湧いてくる。
 外輪に向かって左には湯ノ台道の稜線があり、その左には月山森が見える。我々が登るコースは右のカールから右の稜に登り、真っ直ぐ外輪を目指す冬コースである。前方には先行パーティが小さく動いている。
 雪は硬くしまり歩きやすく、稜に近づくにしたがって白い氷まじりとなり更に硬くなってくる。むかし歩いた冬の北アルプスの稜線が思い出されてくる。高度が上がっても青空と望む山々は変わりがなく、今日の新山の登頂は確実なものと思われた。
 氷を踏みしめながら登って行くと、外輪の手前で先行パーティが下ってきた。外輪では悪天の兆しがあるので下ってきたという。そういえば上空にはスジ雲が出始めていた。
 外輪に着くと絹雲が上がってきた。帰りのための目印に、ストックにピンクテープを付けストックを埋める。外輪を右へと登って行くと、間もなく雲が新山を渦巻き風が強くなってきた。
 行者岳まで来ると風は更に強さを増し風速35m位と思われたが、まだ下るつもりもなく姿勢を低くしながら歩いて行く。新山に降りる崖はルンゼ状の氷で、ピッケルのピックを打ち込み、アイゼンの前歯を蹴り込み慎重に下っていく。
 下に降りると新雪が風で飛ばされブリザードとなり、新山目指して登って行くと間もなく完全なホワイトアウトになった。頂上までは40分も登れば着くであろうが、この状態で頂上の風速35mの風ではどうにもならない。頂上を目前にしながら、危険を回避するため引き返すことにした。
 9合目までは頂上は確実と思っていただけに残念であるが、これ以上の前進は危険となり、死の確率が高くなるのである。
 風が強い外輪に再び登り、強風に注意しながら下って行く。しばらくすると登る時に付けたマーキングが見え、ホットひと安心する。マーキングを付けておかないと突然の吹雪に襲われた時には下山路を見いだせなくなるのである。
 視界20mの氷の斜面を、梅ちゃんのリードで一歩いっぽ慎重に下って行く。下るにしたがい徐々に風が弱まり、視界も広がってきた。稜からカールに下ると天候は回復し始め、やがてまた快晴となり外輪がくっきりと見えた。鳥海山は日本海に面しているため、よけいに海の影響を受けやすいのだろう。山を下ると天気が良くなるのは常である。
 河原宿テラスで昼飯とし、お湯を沸かしカップラーメンを食べる。今いる上の斜面を春スキーしたら楽しいだろうと、その時の光景を想像しながら、また来ようと鳥海山に誓う。
 滝ノ小屋で荷物をパッキングし部屋を掃除し、スキーで滑って下る用意をする。今回は山スキー用として、フリートレック用補助具に足首が曲がらないようにするため新たな補助具を作ってきた。
 それを着用するが、3個のパーツを組み合わせるため着用するまで時間がかかりガサもある。それならスキー靴を持ってきたほうが早いとも思われるが、結果を確かめてみなければわからない。
 滑り始めると感じは良いのであるが、荷物があるので体が振られてしまい転ぶ。転ぶと起き上がるのにザックを外さないと起き上がれない。梅ちゃんからボーゲンをするよう言われるが、それすらままにならない。
 見かねた梅ちゃんは私のザックを背負って滑る。体が振られるのでザックにナイロン袋をかぶせて引きずりながら滑っていった。なんとも頼もしいヤツ。いつも彼には迷惑をかけているのである。
 急な所を過ぎると私もザックを背負い、転びながらゆっくりと滑って行く。牧場の下りは傾斜も緩く、スピードもあまり出ないので楽だ。快晴になった鳥海山に見送られながら、やっと車に着いた。
 国道で仲間と別れ、矢巾へとひたすら走っていく。家に着いたのは10時を過ぎていた。

滝ノ小屋の横から望む
滝ノ小屋の横から望む

滝ノ小屋
滝ノ小屋

登り出すと徐々に見えてくる
登り出すと徐々に見えてくる

月山と朝日連峰
月山と朝日連峰

鳥海山南面の全容
鳥海山南面の全容

冬道からの外輪
冬道からの外輪

冬道からの外輪
冬道からの外輪

月山森
月山森

新山に渦巻く絹雲
新山に渦巻く絹雲

七高山方面
七高山方面

下るとまた快晴
下るとまた快晴

スノーモービルが走った車道
スノーモービルが走った車道

見送ってくれる鳥海山
見送ってくれる鳥海山

田園から望む
田園から望む

タイム:滝ノ小屋(5:40)→外輪(9:00)→新山直下(10:40)→河原宿テラス(12:00〜40)→滝ノ小屋(13:00〜14:00)→
    車(16:30)
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