岩泉丹洞岩氷柱 ドラゴン アイスクライミング 
 


2021年1月31日(日)〜2月1日(月)

 メンバー:佐藤 博さん、松田さん夫妻、下野 徳之さん、はじめさん、鈴木 博隆さん、熊坂さん、小田中智
 場 所:岩泉丹洞岩氷柱 ドラゴン


 2019年徳べえさんこと萬徳さんから、丹洞岩氷柱のことを聞き資料をいただいた。2020年は暖冬のため諦めたが、今年登ってみたいと意気込み、正月明けに偵察に行った。
 氷柱は見事に下まで続いており、対岸の岸辺から見ると名前のごとく、ドラゴンが飛び立つ姿に似ており感動した。観察すると、氷柱の左から上部に斜面を登れそうなので、トップロープも可能みたいだ。それからは訪れる日が待ち遠しかった。
 佐藤君と行くことにしたら、新しくパートナーになる鈴木さん、先日大峠の氷瀑で出会った松田さん夫妻など総勢8名の参加となった。

岩泉丹洞岩
 丹洞岩は、岩泉町西野地区にある高さが150mにおよぶ石灰岩の岩壁で、岩泉三十景に選ばれている観光名所だと言われている。
 岩泉町役場の裏から東側の住宅地を越え、鼠入川に向かう道路を小本川へ降りるように下って行くと、右側の川べりに白い岩肌の岩壁が見える。
 高さは150mと言われているが実際には岩壁は高さが80m位、幅が150m位と思われる。すぐ下には小本川が流れ、川のせせらぎと岸辺の岩場の渕が美しさをかもし出している。
 しかし、2016年8月30日台風10号の通過により、住宅地は激しい濁流にのまれ、多大な被害と犠牲者が出た場所である。

丹洞岩氷柱 ドラゴン
 丹洞岩のすぐ左の岩壁に、垂直に落ちる氷柱がぶら下がっている。高さ30m、傾斜90度、グレード6-、氷はツララ状で、その上は高さ10m程の緩傾斜の氷がビレイ点となる大木まで続いている。
 2012年1月28日、萬徳 清孝氏が初登しグレード6-をつけ、ドラゴンという名前をつけた。萬徳氏は現在、階上クライミングジム North rock のオーナーである。

31日(晴れ風強し)
 みんなとは9時に岩泉町役場で待ち合わせた。最近は寒さが続いているので氷の状態は良好と思われる。
 対岸でドラゴンを観察し、今回は人数が多いので最初からトップロープとし、トップロープセット組と川沿いに取付きへ向かう組とに別れることにした。私と松田さんがトップロープを張ることにした。
 萬徳さんの記録を読むと、橋を渡って小本川沿いに取付きへと歩いたようなので、橋のたもとに車を駐車し、私と松田さんはもう少し先の鼠入橋を渡ったところに車を置いた。
 山腹をトラバースするように歩き、急な斜面を登ってドラゴンの岩場の頭に立つ。そこから下ってドラゴンの終了ビレイ点に降りるみたいなので、懸垂下降すると萬徳さんが作った終了ビレイ点があった。
 支点は大木にロープを結びカラビナがかけてあったが、9年の風雨にさらされている支点なので新たにスリングをセットし、50mザイルをダブルにして松田さんが懸垂下降していった。
 10m程の緩傾斜を下ると垂壁となり、下にはメンバーの姿が見えた。氷は硬く最高の氷質だ。取付きの左の岸辺は淵になっており、回り込むことはできないので、事前に登り方を考えなければならない。
 身支度をして私がスタートにつく。もう11時判を過ぎているので8人で回すには何回登れるだろうか?私と佐藤君は1泊して明日も登るので、今日は予行演習でも構わないのである。
 氷は硬くアックスの刺さりも良い。先週の大峠で分かったことは、ツララ状の氷にはモノポイントよりデュアルポイントが有効だと知ったので替えてきたら、やはり刺さり具合は抜群である。
 このドラゴンには、中間部の左に翼を広げた部分があり、翼の下が半分の位置にあると思われる。まずは翼の下の下まで登って降りる。左の翼が大きく、龍が翼を広げて飛び立つような感じに見える。ドラゴンとはこの氷瀑に似合った最高の名前だ。
 登っている時は暑いが下にいると寒風が吹きすさび寒い。次は松田さんであるが、登り方は軽やかで上手だ。上手な方の登り方を見ているだけでも参考になる。
 佐藤君は登るのが早い。カシンのアックスがビシバシ決まっているような感じがする。
順番は3巡し、私の2回目は左から登り、3回目は右の氷柱の陰から取付き右の翼の下から中央に出るバリエーションを登って途中で降りた。
 昨夜は今日のことを思い興奮して寝つけなかったが、今夜はどうだろうか?酒が入るので大丈夫と思うが。
 川べりを歩いて車に戻り、松田さんの車で私の車を回収する。役場で皆さんと別れ、私と佐藤君はホテルの温泉に向かう。今日は思うように登れて気分が良いのと、先日私の誕生日でもあったので居酒屋を探すが、ここには2件の居酒屋しかないらしく残念ながら休みだった。
 いつものスーパーで買い物をし、いつもの駐車場に泊まることにする。私の車で宴会するが、今年初めて一緒に飲むことと先ほどのクライミングの楽しさを語り合う。明日は完登だ!少しの酒で酔いが回り、それぞれの車で休む。


岩泉三十景 丹洞岩


左から登るとドラゴンの上に出る


ドラゴンの頭の岩峰


トップロープのセットから松田さんが懸垂下降


ザイルのセット下から見上げるドラゴンの頭の岩峰


対岸から見るドラゴンの全容 右は丹洞岩


ドラゴン直下の岸辺


登る小田中 鈴木 博隆氏撮影


3巡目の右端のライン 鈴木 博隆氏撮影


登る松田さん


登る松田さん


登る松田奥さん 鈴木 博隆氏撮影


登る松田奥さん 鈴木 博隆氏撮影


登る佐藤君


登る佐藤君


登る下野さん


登る下野さん


登る鈴木さん


登る鈴木さん


登る熊坂さん


登る熊坂さん


登る小田中 素敵なアングルです 鈴木 博隆氏撮影


1日(曇り)
 朝8時近くに起床。ラジオでは盛岡の最低気温が-11度を下回ったという。これではますます氷の状態が良いだろうと思う。今日の完登が楽しみだ。
 ひょうたんケイブの駐車場を出てコンビニで買い物をし、取付きへ向かう。今日は風も無く穏やかな天気だ。
 橋を渡って左の林に入って行くと、ペットボトルが散らばり小枝にはケーブルやトタンが巻き付いている。これが2016年の台風10号の爪痕だろうと思われる。ここは水面から少なくても5mは高い位置だと思う。大変な水量と恐ろしい濁流であったことが想像できる。
 川辺に降りると丹洞岩が見えてきた。この岩場にもルートがあるのだろうか?2ピッチあるので登ったら楽しいだろうと思いながら、前方に見えてきたドラゴンに見入ってしまう。
 準備をしてビレイしようとザイルを手繰るが、ザイルは動かない。2人で引いても、反対側を引っ張ってもザイルが動かないのである。上部の緩傾斜部分でザイルが凍っているとしか思えない。
 どうしようか?戻って反対側から登り、懸垂下降するのも面倒くさい。氷っているのであればそのうちに解けるだろう。アッセンダーは持ってきてないので、仕方なくプルージックで登ることにする。
 まずは私から登ることにし、プルージックを2本のザイルそれぞれにセットする。今朝は冷え込んだにもかかわらず、左側からは水滴が落ちる音がしている。登れるのは今回が最後なのだろうか?再来週も来る予定なので、もう少し寒さが長引くことを願う。
 単独の時に使っているシャントがあれば、登るごとにシャントが付いてきてくれるのであるが、プルージックでは登るごとに結び目を引き上げなければならない。少し登ってアックスにフィフィを掛け、結び目を引き上げ、バックアップとしてザイルを結びプルージックが効かなくてもそれ以上落下しないようにした。
 ザイルそれぞれにプルージックをセットしたこともあり、下でザイルを引っ張ってもらってはいるが結構な労力だ。10mほど登って降りる。佐藤君はザイル2本にプルージックをしたら、いくらか楽なようだ。恐さが先立ち、こまめにプルージックを引き上げなければならない。
 もう昼である。まずは昼飯にする。今日は鮮やかに完登できると思ったら、とんだ災難である。昼食後もザイルを引っ張るが動く気配がない。
 今度こそはと2度目のチャレンジだ。1回目よりは順調であるが、スピードはトロい。いかにトップロープが楽であるかが分かる。
 左の翼を越える頃には腕力が疲れてきた。中間部を越えた辺りでアックスに掛けたフィフィに横の力が加わり、アックスが抜け2mほど落ちた。プルージックはしっかり効いてくれて、打ちどころはなく再び登り返す。結び目のバックアップがあるので大きな墜落の心配はないが、気持ちはやはり恐い。
 このドラゴンには、中間部の左に翼を広げた部分があり、翼の下が半分の位置にあると思われる。右の翼の上が10m、左の大きな翼の下が20m、それから緩傾斜地帯の下までの3つのブロックに分かれると考えた。斜度は90度でブロックの切れ目には小さなステップがある。
 いよいよ上部の垂壁である。そこを乗り越すときにまた落ちた。今度は半分逆さになっているので、態勢を戻すのが大変だ。何かに引っ掛かって横になっているみたいで、アックスを刺して態勢を立て直さなければならないのだが、アックスに力が入りづらく中々アックスが効いてくれない。
 腹筋に力を入れて、ようやくアックスが効き態勢を立て直すことができた。もう腕力もきびしく脹脛の筋力も低下しており、下ろうかとも思ったが、下ったらザイルの回収ができなくなるので、あと5mの登りに全精神力を集中して登りだした。
 垂直部は終わり緩傾斜になり、ザイルはブッシュに引っかかっていたようだ。緩斜面ではあるがまだ氷なので気を抜かず登り、やっとビレイ点に着いた。小便が漏れそうな感じで、セルフビレイをとって気持ちと下腹部が落ち着いた。
 懸垂で下降し、佐藤君はトップロープで登って行った。彼もフィフィで休みながら完登し、ビレイ点を回収し大木を支点にして下ってきた。
 登ったとはいえ、トップロープとさほど変わりはなく、最終ブロックはフィフィによる人工みたいになってしまい、完登はおろか第2登はリードして登ってこそのものであり、第2登は次回の持越しになった。別に第2登にこだわりはなく、登れればよいのであるが。
 一昨年から60歳の手習いとして始めたアイスクライミングであるが、これほど楽しいものとは思わなかった。登るごとに実力がアップしているのを感じると、もう止めることはできそうにもない。次回のアイスクライミングが楽しみだ。
 このドラゴンの情報を提供していただいた萬徳さん、ありがとうございました。おかげさまで何とか登ることができました。この場を借りてお礼を申し上げます。


この橋を渡って川辺へと入り取付きに向かう


川辺から丹洞岩と奥がドラゴン


右下小翼 翼の上までが第1ブロック、中間部大翼 翼の下までが第2ブロック、緩傾斜の下までが第3ブロック


2回目の登り 第1ブロックの終り


2回目の登り 第2ブロック


2回目の登り 第3ブロック

2回目の登り 第1ブロックの始め


2回目の登り 第3ブロックの終り


懸垂下降する佐藤君
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