丁岳 観音森〜萱森〜丁岳〜観音岩 周回
 



2021年4月1日(木)〜2日(金)

 メンバー:嶋脇さん(青森県)
 コース:水無除雪留〜大平キャンプ場〜373m地点〜665m地点〜観音森(付近泊)〜萱森〜丁岳〜398m登山口〜水無


 嶋脇さんから、秋田の丁岳(ひのとだけ)に登りたいとの依頼をいただいた。調べてみると標高が1,145mで、2時間半で山頂に立てる山である。
 さらに調べてみると、標高が低い割には片側が切り立っており起伏が激しく、山頂から観音森コースへと周回できる。しかし、周回ルートは起伏が激しくやせ尾根があるため、けっこう厳しさがあるコースのようだ。
 記録を整理し、観音森コースから入り観音森付近でテント泊し、萱森から丁岳を通って登山口へと周回することにした。想像するに、この時期は稜線はナイフリッジになっているため、十分楽しめる山だと感じた。

丁岳(1,145.6m) 東北百名山
 秋田県と山形県の県境には、1,000m級の山々が連なる丁(ひのと)山地が広がっている。 その主峰である丁岳は、ブナなどの天然林のほか、亜高山性植物や高山植物など、豊かな植生に恵まれている。
 山全体が、激しい浸食によるむき出しの岩肌と絶壁で構成され、険しい山容を見せる。登山道も急な登りの連続となっている。地蔵岩や観音岩などの奇岩も多く見られ、険しい岩場には、「荒倉の滝」、「五階の滝」といった数多くの瀑布も見られる。
 起伏が激しく、滝へ向かうにも沢歩きが必要になるため、健脚者向けの山だ。その昔、丁行者と呼ばれた男が岩場から下界に飛行する術を披露し、村人を驚かせたとの言い伝えや、幻の花「黒菊」が咲くと言われる伝説が残るなど、険しい外見の中に、豊かな自然と人々を誘うロマンを秘めた山である。
 登山口から西に登るとブナ平(823m)、観音森(1,053m)、庄屋森(1,100m)、萱森(1,067m)、中道コースへの分岐、痩せ尾根の鞍部で風が強い「風のコル」(950m)、真室川コースへの分岐を通る「縦走コース」となる。このコースは距離が長く、起伏も大きいので健脚者向けのコースである。

1日(曇りのち快晴)
 自宅に5時半に来てもらい秋田へと出発する。由利本荘市から鳥海町上笹子へ向かい、林道奥に採石場がありそこが車止めとなった。
 採石場地の片隅で準備していると管理者から車の移動を求められ、指定された場所に停めさせていただいた。
 丁川にかかる橋を渡ると林道となり、登山口へと続いている。古い足跡があるので登山者は入っているようだ。間もなく大平キャンプ場があり、川沿いの林道を進んで行くと左の斜面が崩れた崩壊地があり、日差しが弱いので崩れてくる心配はなさそうだ。
 373m地点から観音森に向かう尾根が降りてきているので、登山口まで行かないで尾根へと入って行く。雪がある時期はどこでも歩けるので、遠回りをして夏道沿いに歩く必要はない。急な登りをブッシュをつかみながら尾根に登る。
 日当たりが良いせいで雪が無くなり、かるいブッシュとなった。665mピークで夏道と合流し、歩きやすい雪道となった。しかし半分ほどは雪が消え、夏道をワカンを履いたまま登って行く。
 しばらくすると右の樹間の隙間から、断崖になった丁岳が見えた。丁川側はスッパリと切れ落ちた崖が続いており迫力満点であるが、山頂は平坦なように見える。
 ようやく観音森が見えたが、ピークへの登りは崖になっているように見える。進むにつれ急な登りの崖が近づき、ワカンを外して登って行く。途中から雪が無くなり急な登山道になるが、歩きずらい道で滑りそうだ。
 ブッシュと細い木の根にしがみつきながら登って行く。ここを夏に下るのは歩きずらそうだ。ここは観音森という名前がついているが、どう見ても森とは言えない山容だ。
 細いリッジからピークに着いた時は17時を過ぎていた。下ったところが雪の斜面なので、そこにテントを張れそうだ。下りは急な斜面でステップを切りながら下って行く。
 平坦地を見つけるが片側は雪庇状になっており、ぎりぎりブッシュに寄ってテントを張る。ちょうど夕日が沈む時間で、水を作って夕食にした。今日は良い天気で勇壮な姿の丁岳を見れたが、明日は丁山地全体の素晴らしい全容が見れることだろう。


林道の崩壊地


丁岳の山容


ブナの大木


観音森へ


観音森への登り


観音森手前の馬の背


観音森からの下り


観音森下の幕営地

タイム:水無除雪留(9:20)→373m地点(9:20)→観音森(17:20)→幕営地(17:35)


1日(晴れ)

 4時に起床し準備を整える。入り口を開けるとちょうど日の出で、今日も良い天気だ。朝の冷え込みで雪面が硬いのでアイゼンを着けて出発する。今日はどんなコース状態なのか楽しみである。
 萱森の間には2つのピークがあり、それぞれに登り下りが急で所々雪が途切れており、それぞれにイヤラシイ部分があり気がぬけない。
 1,100mピークに立つと視界は一気に開け、尖った萱森と大きく雄大な鳥海山が目の前に見えた。観音森と萱森はどう見ても森ではなく剣の穂先である。どこから見れば森に見えるのだろうか?
 急な下りから萱森の登りにかかるが、全体が急な登りで所々が雪が切れているのでヤバそうな感じだ。雪はだいぶ柔らかくなってきておりステップが深く作れ、ピッケルを深々と刺すと問題はないが、雪が切れた部分は急な草付きで、ブッシュを握る指に思わず力が入った。
 2ヵ所のイヤラシイ所を登り、急な雪壁を登るとピークだった。ここから眺める丁岳は、昨日見た丁岳に比べるといくぶん優しさがあり、隣にそびえる鳥海山は大きく雄大な山容だ。
 萱森からの下りは長く、丁岳までには989mの大きなピークがあり先はまだ長い。ここは1,000mの県境分岐であるが、傾斜の緩い所には太いブナが生えている。隣接する山はやはり起伏が激しく、片側は切れ落ちている。丁山地全体がそんな山のようである。
 山頂が近づいてきた所から眺める観音森と萱森は、確かに森のようにも見える。その名前は山頂方面から見た時の名前のようだ。
 山頂への最後の登りには崩れそうな雪庇の通過があり、最後まで気がぬけないイヤラシイ部分の連続だった。山頂はだだっ広い平坦地で、あまりにも今までとは違う雰囲気に驚いた。とにかく近くに見える鳥海山が美しい。
 下りも緩やかな斜面で、視界が悪い時は迷いそうだ。ワカンに履き替えて方向を確認しながら下っていった。
尾根から右の小沢を越えるところがあるが、少し過ぎてしまったのでもう少し下からと思っていたらだんだん険しくなってきて、急斜面を小沢に下り正規の尾根に戻った。ここからが単純な尾根ではなく、ちゃんと読図をしないと間違ってしまう。
 だいぶ下って行くと左の樹間から2段になった荒倉ノ滝が見えてきた。日が当たる登山道にはまっ白いイワウチワが咲いていた。今年初めて見る花である。登山口はもうすぐである。
 出合から橋を探すが見当たらなく、やっと橋の台座を見つけた。3年前の冬の記録には橋はあったが、近年に流されてしまったと思われる。橋のあったところの丁川本流は水深が深そうなので、支流側に降りてみた。
 こちら側は膝下までの深さであるが、川を2度渡らなければならない。靴を脱ぐには水は冷たそうで、買ったばかりの新しい12万円の登山靴ではあるが、意を決してそのまま川に入る。
 支流を渡り、さらに本流を膝下まで浸かって渡った。このキャッパリ姿であと1時間半ほど歩かねばならないのである。帰りだからキャッパリができたが、登る時だったらどうしただろうか?脱いで渡るしかないと思うと、帰りで良かったと思えた。
 途中で暗くなりヘットランプを点けたが、春一番の山行は13時間行動となってしまった。しかし、自分自身が歩けたことに嬉しさがこみあげてきた。
 横手市で夕食をし自宅へと向かい、着いたのは23時近くだった。嶋脇さんはさらに2時間かけて帰り、早朝には新聞配達のアルバイトをし、本業の仕事になるので眠る時間はない。タフな男である。
 丁岳はコース全体が起伏が激しく厳しいコースで、周回するのは体と気持ちと全身で楽しめるルートだ。夏は登りたくはないが、3月上旬ならさらに楽しいことだろう!この山を見つけてくれた嶋脇さんに「あっぱれ」である。


テント入り口から見える朝日


庄屋森へ


登ってきた尾根 奥が観音森





萱森、丁岳、鳥海山


月山 拡大


鳥海山


萱森


庄屋森(左)


左から観音森、庄屋森 ここから見ると森に見える


丁岳、鳥海山


これから向かう稜線と丁岳


萱森方面をふり返る


丁岳へ向かって


左から観音森、庄屋森、萱森


丁岳へ向かって


スノーブリッジを越すと丁岳


山頂から鳥海山を背景に


山頂から鳥海山を背景に小田中


荒倉ノ滝


イワウチワ


丁川支流


丁川本流


登山口

タイム:幕営地(6:20)→萱森(9:30)→丁岳(13:20)→登山口(17:30)→車(19:40)

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