鳥海山 5合目 秋田県の最高峰を厳冬期に行ったが悪天候で5合目で敗退
 
いくらか視界が効くようになった駐車場の下

平成23年1月4日(水)〜6日(金) 天候:終日 吹雪 メンバー:梅田 正弘(盛岡山想会)、桜庭、小田中 智
 コース:矢島スキー場〜祓川ヒュッテ 往復

 厳冬期の鳥海山(2,236m)は、日本海に面している独立峰のため風が強いと聞いていたが、一度も訪れたことは無かったので梅ちゃんと日程を合わせて、今年初めての山を鳥海山と決めた。
 コースは、北面にあたる矢島口が駐車場に適していると言うので、前日に矢島スキー場に泊まり、翌日は祓川ヒュッテに泊まり、早朝に頂上を目指し下山すことにし、梅ちゃんの友人を含めた3人での山行となった。

●4日(小雪)
 秋田高速道が有料となったため交通費を節約するため国道を走るので、矢島スキー場までは4時間程かかると思われるので、早目に出て午後からスキーをすることにする。
 妻からナビを借り、9時に家を出る。沢内に行くとさすがに雪が多くなってきて、秋田県に入ると更に雪が多くなった。
 横手からはナビ任せでナビの案内に従い、初めて使うナビの快適さに地図を見ないのでどこを走っているか、現在位置が分からなかった。
 矢島町で昼食を食べ、正味3時間半で矢島スキー場に着いた。梅ちゃんは3時頃着くというので、4時間券を買ってゲレンデ用のスキーを履く。
 クワット1基のみのスキー場で斜度も緩く、家族向けのスキー場だった。3年振りのゲレンデスキーではあったが、2本も滑れば十分で7本も滑ると飽きたので、レストハウスでビールを飲んでいると梅ちゃんが来たので、2本一緒に滑る。
 2泊する駐車スペースを指示してもらい、私の車でさっそく宴会を始める。2ヶ月ぶりの再会を祝して乾杯をし、すき焼きをしながらワインをいただく。7時過ぎに桜庭さんも来て、宴会は更に盛りあがった。

●5日(吹雪)
 朝5時に起床し食事をして、6時半過ぎに圧雪車が整備しているゲレンデをシールを付けて登り出す。降っていた雪も止み雲の切れ間もあり、天気は悪くはなそうである。

スキー場の出発時

スキー場を登る

 桜庭さんはスノーボードであるが、縦半分に分割でき少し幅の広いスキーと変わらない。下りではワンタッチで合体でき、スノーボードになるという初めて見る代物だ。

桜庭さんのスノーボード

 スキー場の傾斜は緩い筈であったが、それでも上に着くと一汗かいていた。風が出てきて、上空ではゴーゴーと風が唸る音が聞こえ、上部はかなりの強風が予想される。
  スキー場からは、登山者のためや春スキーのため、祓川ヒュッテまで希望に応じて雪上車が走るということで、うっすらと雪上車の跡が残っていた。その上を歩くと大して潜らないが、跡から外れると踝くらいまで潜った。
  地方道70号からの道路と合流し、近道をするため道路から外れると潜るので、距離はあるが楽な道路をたどって登って行く。やがて雪が降り出し、積雪もグンと多くなり、踝の上まで潜るようになってきた。

林道をトレース

 雪景色は美しく、久しぶりに雪山に来た感触を味わい嬉しくなる。岩手の雪山を歩いていると至る所に動物の足跡が見えるものであるが、ここでは殆んど見られないのは何故だろうか?
 1,017.3mのピークからは稜線上となり、一気に風が強くなり視界も悪くなる。猿倉温泉からの道路と合流すると、祓川まで1kmの標識があった。
 やがて駐車場に着くと視界は50mとなり、梅ちゃんはGPSを随時見ながら方向を定めていた。キャンプ場の便所に着いた時には視界は20mとなり、GPSを頼りに離れないように進むとヒュッテに着いた。吹雪くとヒュッテを見つけるのは難しく、よく便所でビバークをするパーティも多いらしい。
 スキーを外して小屋へ入ろうとして脇を通ると、氷が割れ水の中に入った。幸い靴の中には入らなかったが、荷物を置いてスキーを取りに戻る時、先程のもっと上を歩いたら再び氷が割れ、今度は深く靴の中まで水が入ってしまった。まさか冬にキャッパリをするとは夢にも思ってなかった。
 そう言えば昔、北鎌尾根を仲間と行った時、偵察に行かせた後輩が足を踏み外して湯股川に落ち、全身ずぶ濡れになった者がいた。湯股の小屋で焚き火をして乾かしたため、敗退を免れ目的を達成したことがあったことを思い出した。
 ヒュッテは、夏期は営業しているが冬期は登山者に開放しており、鉄筋コンクリート製で頑丈で中に入ると強い風の音も全然聞こえない。明るい小部屋を選びストーブを焚く。灯油は1リットル持参していたが、満タンに入っていたため帰りに給油することにする。
 畳を敷き靴を脱ぐと中には水がたまっていた。反射式のストーブの上に靴下とインナーシューズを吊るし、前には靴を置き、殆んどストーブを一人占めにしていた。しばらくすると大分部屋の中も暖かくなってきた。
 宴会の支度をしながら、ホットワインで乾杯をする。ここに着くまでは7時間程要していたので、疲れた体に暖かいワインがとても美味い。まだ夕方ではあるが、明日は暗い中を出発するので、早目に宴会をして早く休むことにする。
 今回の食当は梅ちゃんで、昨晩はすき焼きだったが、今夜はこだわりのキリタンポ鍋ということで、ステンレス製の鍋まで持参していた。ホットワインからホットウイスキーへと進み、上手いキリタンポ鍋を食べながらの会話はつきない。
 ストーブのお陰で靴下も乾き、インナーシューズもだいぶ乾いて来た。明日の天気を願って7時前にはシュラフに潜る。ダブルの羽毛のシュラフがあるのに、更に羽毛の上下を着こんでシュラフに潜る、寒がり屋(?)の者もいた。
タイム:スキー場下(6:50)→スキー場上(7:20)→1,017.3mピーク(12:20〜30)→祓川ヒュッテ(13:40)

●6日(吹雪)
 朝3時半の先発偵察からの起床合図は無かったので、そのまま眠りこむ。昨日背負った15kg程の荷物のせいで腰が痛い。ストーブに火が点いたのでシュラフから抜け出す。
 外は昨日と変わらない吹雪のため、今日はここから下山ということである。下りは5時間程かかるであろうから、明るくなってからの出発とする。
 昨日作って置いただまっこを温めて朝食とする。明るくなる時間に合わせて出発の準備をする。給油をすると1リットルは全然使ってなかった。素晴しい小屋に泊めさせてもらって、楽しく快適な一夜を送らせてもらって感謝である。
 外に出ると相変わらずの吹雪で、視界は10mと昨日よりも悪い。GPSで方向を定め進むと便所があり、駐車場に着いた。
 シールを外して、緩やかな斜面を少し下り降り返ると視界がだいぶ良くなった。猿倉温泉への道路と合流すると、下界の景色が見え一瞬だけ赤い空が見えたが、またすぐに見えなくなってしまった。

標高1,100m付近

標高1,100m付近から下界を見る

桜庭さん

筆者

左から桜庭さん、梅ちゃん

猿倉温泉への分岐を振り返る

 緩い下りを転びながら滑り、1,087mピークから左に行くと雪庇があり、先頭の梅ちゃんは雪庇が崩れ2m転落した。側に行くと大丈夫であったが、脇には大きなブロックが転がっていた。埋まったら先に帰ったなどと冗談を語りながら、しばし崩れた雪を眺める。

雪庇から落ちた梅ちゃん

 昨日から30cm程の積雪があり、道路の下りはラッセルとなる。所々林道から外れ滑るが、下りでは転んでしまうので起き上がるのに体力を消耗してしまう。私の技術では登山靴での滑降は無理みたいであるが、プラスチックの兼用靴を買う金がないのである。軟弱な手はかじかんでしまうので、温めながら先頭から遅れて下って行く。

左から梅ちゃん、桜庭さん

筆者 右の物体が邪魔だ

 最近特に手のかじかみが激しく、工夫をしながらやっているが、今回はホッカイロを手袋の中に入れてみた。だいぶ良いがもうひと工夫必要そうだ。
  鞍部からはスキー場まで登り返しなので、シールを付け膝下までのラッセルを交代しながら緩い登りを進むが、体力はだいぶ消耗しきっていた。
  スキー場の下りでは、腿が張っているので立ち止まりながら滑り駐車場に着いた。駐車場でも20cm程の雪が積もっていた。

スキー場で、最後の記念写真

 猿倉温泉に行き、ゆっくりと湯につかると疲れが癒された。山から下り、お湯に浸かってビールを飲むのが最高である。もしかすると、このために山に行っているのかもしれない。残念ながらレストランは開いてなかったのでここで清算し、それぞれの車で家路へと向かう。
タイム:祓川ヒュッテ(6:50)→矢島スキー場(12:10)

 帰りは雪が降っていて視界が悪く思うようにスピードが出せなく、更に沢内では吹雪となり前が見えなくなり、4時間半かかって家に着いた。
  今回の山行は一番天気が悪い時で、風と視界の悪さに悩まされて、5合目までしか行けなかったが、鳥海山は日本海側の独立峰のため、これが普通だと言っていた。
  雪景色が美しく、3人での登山はとても楽しかった。さらに、山に復活してから山に泊まるのは初めてなので、小屋泊の生活も楽しく、宿泊山行にハマリそうだ。
  体的には、荷物を背負っての山行はしてなかったので腰が痛くなり、しかも骨折した足首にもだいぶ負担がかかっていた。この状態では3〜4泊の山行は無理で、アイゼンを履いての岩稜歩きも無理である。
  今年1年頑張って歩いて、来年は北アルプスの冬山を登りたい。

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