宇樽部川から犬吠峠 雪中行軍の足跡
 


2022年4月18日(月)〜20日(水)
 メンバー:嶋脇 光男さん、小田中 智
 コース:十和田山登山口〜宇樽部川〜犬吠峠〜十和利山〜迷ヶ平〜国道454号〜宇樽部


 1902年1月、弘前31連隊の八甲田雪中行軍隊が通ったと言われる、宇樽部川から犬吠峠に行きたいという依頼があった。数年前にも依頼されたがその時は興味が無かったので断っていたので、今回は承諾した。
 調べても雪中行軍の確かな工程は分からなく、地図で見る限り宇樽部川を通って三ッ岳と十和利山の鞍部である犬吠峠(アグリ峠)を越えたと思われた。宇樽部川の中間点には滝が数ヵ所あり、この時期にその場所を通れるかは分からないが行ってからの判断しかない。
 工程は、宇樽部川を遡り犬吠峠付近で雪洞泊し、十和利山を経て国道454号から宇樽部に下る計画とした。私は矢巾からで現地まで遠いので、十和田湖畔休屋に前泊させてもらうことになった。

18日(曇り)
 矢巾を13時に出発し下道を走って行くが、宿までは3時間半の工程である。余りスピードを出さずそれなりの速さで走って行く。
 十和田湖に着いてまず道路の上体を偵察をする。国道454号は宇樽部から迷ヶ平まではまだ冬期閉鎖されていた。
 宇樽部川北側に道があったので入ってみるが違うので戻り、十和田山の登山口に行き細い林道をたどるが雪が邪魔して戻った。
 ここは地図にも奥まで林道があることになっているが、道は狭いのでちょっと走っただけでも小枝で車体は傷だらけになってしまった。山に使う車なので仕方ないかと思いながらも、嶋脇さんに請求しようかなとも思った(笑)。
 宿に戻り風呂に入る。この宿は民宿で改装したばかりというほどに真新しい作りだ。夕食には十和田湖名物のヒメマスの焼きものとそれの刺身が出て、その他にもいろんな食材が出た。初めて食べるヒメマスは肉厚でとても美味しかった。
 民宿 ひめます山荘 青森県十和田市奥瀬十和田湖畔休屋16-15 1泊食 7,800円
 嶋脇さんから連絡があり、明日の朝に迷ヶ平に車を置き、そこから自転車でこちらに向かうとのことである。それであれば十和利山から迷ヶ平まで下山すれば、嶋脇さんの車で私の車を回収できるので楽チンである。


夕食の御膳


十和田湖名物のヒメマス

19日(快晴)
 早朝に電話があり、雪があるので自転車では行けないとのことで、帰りは迷ヶ平から国道を歩かなけらばならなくなった。6時に宇樽部の駐車場で待ち合わせることにした。
 宿から作ってもらった朝食と昼食のおにぎりを頂き、待ち合わせの駐車場に向かう。私の車で十和田山の登山口に行き、川の脇の林道を歩き始めた。その辺は雪はなかったが、進むにしたがって雪が出てきたが、川が埋まるほどの雪はなくブッシュ漕ぎが予想された。
 地図を見ないうちに進んでいると枝道に入り込み、国道454号に出る支流に入ってしまったので、10分ほど戻った。本流の脇にある道をたどるが所々崖になり巻かなければならないので、対岸を歩くことにする。
 川に架かった丸太をおっかなビックリで渡るとピンクテープがあった。段差によろめいた拍子にストックが曲がってしまい、大笑いとなる。今度は川を渡る所で片方のストックを川に流してしまった。それも曲がったストックではない方で、踏んだり蹴ったりだ。
 渡った所の左の支流にはGPSを見ると、25000の地図にない登山道が犬吠峠へと表示されており、ピンクテープもそちら側にある。このまま本流をたどっても滝が続く場所は雪もなさそうなので、登山道の表示がある左の支流へ入ることにする。
 このルートは雪中行軍が通ったルートかは分からないが、うっすらと道らしき跡がありピンクテープも迷わない程度にあるので沢道を伝って行く。
 しばらく行くと今度は大きく迂回してまた本流に戻る表示が地図にあるので、雪の急斜面を登って近道した。また沢を渡るのであるが、登山靴では厳しく長靴の世界である。このまま沢を詰めても時間がかかるので、ブッシュを漕ぎながらでも尾根に上がることにする。
 薄いブッシュを漕ぎ、稜線に出ると雪が出てきて歩きやすくなった。885mピークに出ると三ッ岳と十和利山が見え、やっと山を登っている雰囲気になってきた。
 すでに15時になっており、川渡りとブッシュ漕ぎでだいぶ時間がかかってしまった。キャッパリせずに済んだのは良かったが、3年前に拾ったストックが無くなってしまった。若い者は片方のストックで十分とばかりに、嶋脇さんからストックを奪い取って歩いた。
 1,014mピークを巻きながら進むと犬吠峠に出たが、標識は見つけれなかった。ここは3年前、十和田山〜三ッ岳〜十和利山を冬期縦走の折に嶋脇さんと通っていた。また、嶋脇さんは単独で数回訪れているみたいだ。ならば、わざわざ宇樽部川からここに来なくても良いようなものであるのだが?
 緩やかな尾根を鞍部近くまで下った所に泊まることにした。この辺は雪庇はなく雪も多くはないので、雪洞は掘れないためツエルトを張る。私のツエルトは3人用なのでしっかり設営すると快適な内部スペースがあるのである。
 冷たく冷やしたビールもどきは美味しい。嶋脇さんは昨夜3時間しか寝てないというので、一眠りさせながら水を作った。雪で冷えた水割りもおいしく、それぞれの食材を2等分しながら食べ合う。
うす暗くなった頃でまだ早いがシュラフにもぐる。


歩き始めの林道


倒木を渡る


青いキクザキイチゲ








今日の熊の足跡


三ッ岳


十和利山


犬吠峠からの下り


ツエルトを張る

タイム:十和田山登山口(7:00)→犬吠峠(15:30)→テン場(15:40)


20日(晴れ)
 6時起床。11時間眠ったがまだ眠い。山ではいくらでも眠れるから不思議だ。嶋脇さんは山で泊まった時しか長時間眠れないので、山に行って寝だめしているようだ(笑)。
 今朝は冷えたので雪はカチカチで硬い。緩やかな斜面から山頂直下から急な登りとなった。昨日も熊の足跡があったが、この辺でも昨日の足跡が鮮明に残っている。今の時期はまだ登山者が来ないので、熊は大手を振って歩きまわっているのだろう。もともと山は熊の住処だから、万が一襲われても仕方のないことだろうけど。
 十和利山山頂にも登山者の足跡は無い。新郷村から迷ヶ平までの国道は開通しているので、2日間もこんなに天気が良いのだから誰か登ってきてもよさそうなものなのだが。
 青く輝く十和田湖が美しい。遠くの山々は雲で見えないが、青空を背景にした近くの山々だけで充分である。風もなく穏やかな山頂でしばしのんびりする。
 十和利山から鹿角市の県境を伝った尾根には雪があるのだろうか?嶋脇さんに言わせると作業道があるはずだと言うが、行ってみないと分からない。
 途中まで夏道に沿って雪道を下りて行き、夏道から分かれると雪は無くなり、濃い竹藪になり作業道らしき道は見当たらない。仕方ないので戻って夏道を下って、迷ヶ平へと下って行く。登山口に出ると遠回りになるので、右寄りに残雪を選んで下って行くと丁度国道104号に続く分岐に出た。
 あとは国道454号を宇樽部まで歩くのだが10kmの距離があり、県境までは登り道だと言う。しかし、まだ12時であと3時間ほども頑張ると着くかもしれない。雪があまり残ってないことを願うばかりだ。
 国道を歩き始めると所々にしかなかった雪が、本格的な登りとなると雪道になってしまった。日に照らされた道路は暑くてしかたがない。やっと県境に着くと道路に座り込んだ。
 雪がない下りは楽であるが、今度は爪先が痛くなってきた。この靴は道路を歩く靴ではなく、氷や岩稜を歩くために購入した靴である(笑)。下って行くと八甲田連峰が見えてきた。
 車を回収し休みやで食事して、高速道に乗った。来る時は下道を来たが、今日は疲れたので早く家に帰りビールを飲みたかった。


朝の出発時


十和利山


十和利山にて 三ッ岳(右)と十和田山(左)


山頂からの十和田湖


迷ヶ平の国道


青いキクザキイチゲ

白いキクザキイチゲ

タイム:テン場(7:20)→十和利山(8:50〜9:20)→迷ヶ平(11:45)→宇樽部(14:50)
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