秋田駒ヶ岳 国見温泉 快晴の全山を登り、スキー滑走。感動の山!
 

阿弥陀池から見る男岳

平成25年4月4日(木)〜6日(土) メンバー:小田中 智

 コース:国見ゲート〜国見温泉〜横長根〜横岳〜阿弥陀小屋〜男岳〜男女岳〜阿弥陀小屋〜男岳鞍部〜女岳下〜
     女岳〜駒池〜小岳〜横長根〜国見温泉〜ゲート


 冬の秋田駒ヶ岳を国見温泉側から登りたいと思っていたが、アプローチが遠いのでなかなか機会がなかったが、春になってようやく機会が訪れた。
 秋田駒ヶ岳は、男岳、女岳、男女岳、小岳、横岳などの周囲に広がる湿原や火山原を含む山域の総称で、日本海側の影響を受けるため雪深く天候も安定しない山である。
 国見温泉まで7kmのアプローチは遠く、なかなか冬に訪れる登山者は少ない。しかし、だからこそ私にとっては魅力あふれる山域である。
 2日間天候が良い予報なので、2泊3日で全山をのんびり登り、スキーで滑ろうという計画になった。

4日(晴れのち曇り)
 5時過ぎに家を出て、国見温泉の冬期ゲートに向かう。古いスノーモービルの跡をフリートレックをつけて歩いて行く。
 間もなく交通安全の旗があり迷いもなくそちらに行くと、しだいに国道46号から遠ざかり、雫石方面の街並みが見えてきた。
 一休みとともに地図を見ると、太平山方面に向かう林道だった。すぐに引き返し、ビックリマークの標識の先に県道266号の車道があった。なぜ間違ったのか不思議な間違いだった。
 荒沢橋、鹿倉橋を過ぎるが、国見温泉はまだまだ遠い。仙岩トンネルの手前から竜川を渡り一気に266号に登った方が早いことはわかっていたが、そこを登る勇気がなかった。上から確認すると間違いがないことがわかったので次回はここを登ろうと思う。半分の距離を短縮できると思う。
 ロスタイムのせいで国見温泉に着いたのは昼を過ぎていた。この時間では阿弥陀小屋までは入れなく、天気も悪くなってきていたので温泉に設営地を求めるが、風を避ける快適な場所はないため急斜面を登り樹林帯の中に泊まることにする。
 今回の荷物はなぜか重く22kgになっており、スキーまで背負うと急斜面の登りは息が切れた。傾斜が緩くなった所でスキーを付け歩き出すと、上空からヒューヒューと風の音が聞こえる。風があたらないブナ林の中にテン場を見つけ、ツエルトを張る。
 入口と奥に付ける内フレームを自作したので快適な空間ができ、ツエルトは2人用のテントに引けをとらない居住性だ。不要物をザックに詰め木に吊るす。
 まずは熱いコーヒーを飲み、荷物を整理する。整理が終わると缶ビールに手が出た。まずは、タコワサのツマミで冷たいビールを飲む。汗を流した後のビールは格別である。
 時が過ぎるとともに風の音が強くなってきているが、風は30m程上空を通過しているのでツエルトにはさほど風は当たらない。林道でのロスタイムがなければ確実に阿弥陀小屋へと向かっていたはずである。途中でこの風に合うことを考えると、ロスタイムのおかげだったことに感謝する。
 水を作り、牛焼肉の準備をし、まだ早いがホット焼酎を飲み始める。まだ明るいがシュラフにもぐり込む。夜半からはさらに上空の風が強くなっていた。

県道の歩き出し
県道の歩き出し

大荒沢
大荒沢

国見温泉 森山荘
国見温泉 森山荘

樹林帯の幕営地
樹林帯の幕営地

タイム:国見ゲート(6:30)→鹿倉橋(9:30〜40)→国見温泉森山荘(12:20〜40)→幕営(13:00)


5日(快晴)
 最近は5時になると明るくなっている。朝食をすませ外に出ると陽は登っており、上空には青空が見える。キリッと冷えた朝で雪は締まっている。
 外でパッキングをするが荷物はさっぱり軽くなっていない。フリートレックを付け、ブナ林の中を歩いて行く。しだいにダケカンバに変わると横長根の稜線が見えてきた。
 横長根に出ると展望は一気に開け、目の前には女岳が迫り、南方に和賀連峰、焼石連峰、南西には遠く鳥海山、東方には早池峰山が青空のかなたに浮かんで見える。
 登るにしたがい女岳の脇からは田沢湖が見え、間もなく男岳も姿を現し始めた。歩くより景色を眺め、写真を撮っている時間の方が長いようだ。
 分岐を過ぎと雪が途切れたのでスキーを脱ぐが、しばらくして右の斜面移ると雪が続き、再びスキーを付ける。北東には岩手山が見えてきた。山頂のトンガリから鬼ヶ城の姿は、盛岡側から望む姿とは異なり雄壮で美しい。
 横岳に立つと男女岳が目の前に飛び込んできて、八合目から登ってくる登山者が見える。天気に誘われて、みんな休みをとって来ているのだろうか。
 阿弥陀小屋への分岐で、登って来た2人パーティと出会う。さっき男女岳から滑ってきたが、ザラメ雪で最高の滑りだったと言う。これから横長根から大焼砂沢側へ滑り、登り返してくると言っていた。
 阿弥陀小屋に着くと、男岳から急斜面を滑る者、男女岳へ登って行く者と結構な人達がいるのには驚いた。冬期入口から小屋に入り、必要な物だけザックに詰め替え、下り用の補助具を付け、スキーで男岳へと登って行く。
 鞍部にスキーをデポし、ナイフエッジ状になった稜線を登って行く。登り切ると眼下にたざわ湖スキー場が見え、遠く森吉山が見えた。稜線をたどると雪に埋もれ、頭だけ出した山頂の鳥居があった。  360度の大展望は素晴らしく、こんな天気の良い日に来れたことに感謝する。
 これから阿弥陀池に下り、男女岳に登りスキー滑降だ。男女岳は駒ヶ岳の最高峰であるが、まだ登ったことがなかった。まずは鞍部から阿弥陀池に滑るが、滑り出しはぎこちがない。
 男女岳へはスキーを付けダイレクトに登って行く。荷物が少ないザックは軽く、足どりも軽やか?に登って行くと間もなく山頂に着いた。13時を過ぎているので登山者は1組だけ下方に見えたが、他は下山の途についたようだ。
 いよいよ滑降であるが一年ぶりの滑りには勇気がいる。滑り出すと雪面はザラメ状で、下降用の補助具を付けているので曲がりやすく、「俺ってこんなにスキーが上手かったっけ」と勘違いするほど快適で楽しい滑りだった。
 標高差100m程の下りは滑るとアッという間だった。まだ物足りないので、八合目側へと標高差50m程を滑って登り返した。楽しかった滑走に大満足だった。
 小屋に入り荷物を整理し、備えつけの毛布を借用し日当りの良い所に快適な寝室を作る。日差しにあたり、熱いコーヒーを飲みながら楽しかった滑走をしばし振り返る。
 両側にある窓からは、男岳と岩手山が見える。なんと贅沢な避難小屋なんだろうか。冷えたビールに昨日の残りのタコワサは最高だ。冬の山はこんなにのんびりはできないが、天候が安定し始めた春山ならではののんびりとした一日だ。今日は何もかもが素敵で最高の一日だ。
 ホルモン焼きを食べながらホット焼酎を飲み始める。ゆっくりと時間は過ぎていき、酔もまわり始めた頃、陽が傾き始めてきた。外に出て夕暮れの景色をカメラに収める。
 ラジオでは明日からの悪天候を予報しているが、岩手県で崩れるのは夜からの予想である。明日も天気が良さそうなので、明日の予定を考える。
 やはり明日も滑走したい。女岳も登っていないので、明日は女岳を滑走して下山することにする。女岳山頂近くまで雪が続いていることは今日確認している。
 そんな明日の光景を抱きながら、まだ早いがシュラフに潜り込む。外からはどこかのトタン板がバタバタする音が聞こえ、風が強くなってきた様子だ。

横長根の稜線
横長根の稜線

女岳
女岳

早池峰山を望む
早池峰山を望む

鳥海山を望む
鳥海山を望む

横長根から横岳
横長根から横岳

女岳、小岳、男岳、馬ノ背
女岳、小岳、男岳、馬ノ背

和賀連峰
和賀連峰

志和三山
志和三山

岩手山を望む
岩手山を望む

女岳と田沢湖
女岳と田沢湖

馬ノ背から男岳
馬ノ背から男岳

阿弥陀小屋と男女岳
阿弥陀小屋と男女岳

馬ノ背のピーク
馬ノ背のピーク

岩手山から三ッ石山への縦走路
岩手山から三ッ石山への縦走路

男岳手前のピーク
男岳手前のピーク

男岳の鳥居
男岳の鳥居

森吉山を望む
森吉山を望む

男岳から見る馬ノ背
男岳から見る馬ノ背

男岳と田沢湖
男岳と田沢湖

男女岳から見下ろす阿弥陀小屋と横岳
男女岳から見下ろす阿弥陀小屋と横岳

男女岳の滑走斜面
男女岳の滑走斜面

阿弥陀小屋から見る馬ノ背と男岳
阿弥陀小屋から見る馬ノ背と男岳

暮れゆく男岳
暮れゆく男岳

暮れゆく岩手山
暮れゆく岩手山

タイム:幕営地(7:05)→横長根(8:05〜20)→横岳(11:10〜15)→阿弥陀小屋(11:30〜12:10)→男岳(12:40)→
    男女岳(13:45)→阿弥陀小屋(14:30)


6日(快晴のち風霧)
 5時に目が覚めると男岳が赤くなり始めてきた。外に出て朝日に染まる男岳と岩手山の写真を撮る。今回はたくさんの写真を撮った。帰ってから見るのも楽しみの一つだ。
 チャーハンを作りゆっくりと食事する。あまり早く女岳に行っても、ザラメ雪になっていないと楽しく滑れないのである。
 パッキングを終え小屋を掃除して、今日も快晴の青空の下、アイゼンを付けて男岳鞍部へと登って行く。鞍部から女岳側の急な斜面はすでに雪が柔らかくなっており、30度はある急な斜面にサイドステップを切りながら右下降して行く。
 真っ直ぐ下ると下には岩があるので、スリップしても安全な右方向へ下降していった。万が一スリップしたとしても下にいって止まるだけなのだ。ひさしぶりに下る急斜面はさすがに緊張した。
 若い頃、盛岡山想会の新人残雪期訓練で、よく男岳の急な斜面で登下降の訓練をした。最大傾斜45度の斜面である。その訓練が、その後の北アルプス山行への基礎となったのである。急な登りは誰でも登れるが、下りを確実に下れないと北アルプスのバリエーションな山々へは行けないのである。
 女岳の下にザックを置き、サイドバックだけ持ってスキーで斜面を登って行く。間もなく山頂に着くとケルンがと三角点があり、眼下に青い田沢湖が見えた。女岳は現在も活動中の火山のようだ。
 ザラメ雪の斜面は、自分でもビックリするほどのスラロームを描いていた。すぐにザックに着いてしまい、まだ物足りないので駒池へと下り、小岳も滑るべく登って行く。山頂に着くと、横長根の稜線には岩手県側から雲が湧き始めていた。
 少し遊びすぎたせいか、天候は早くも下り坂になっていた。雪の斜面を登りザレ場を稜線へとトラバース気味に登って行く。転ぶと下まで滑りそうなザレ場に、登山靴でステップを切りながら登って行く。
 稜線に着くと今まで快晴だった空は一転して視界が悪くなり、風も強くなってきた。山の天気は変わるのが早い。下りは快適にスキーでと思っていたが、この天気では危ないのでツボ足で下って行くと潜るので、ワカンを付けオーバーヤッケを着込む。
 一昨日のトレースは暑さで消えかけ、昨日下ったと思われる登山者の足跡がうっすらと残っていた。視界は30m程になった。こんな視界が悪い時に頼りになるのがGPSだ。現在位置を確認しながら横長根分岐を探す。
 地図と磁石で国見温泉に方格を合わせ下って行くが、同じような雰囲気の斜面はどこがルートかわからない。磁石の方向に沿い、GPSで現在位置を確認し、凹んだ沢状を超えるとマーキングが見つかった。
 しばらく休んでなかったので、一安心しながら行動食を食べる。マーキングを見かけながら下って行くと国見温泉が見えた。天候は霧雨となり、温泉からスキーを付ける。
 県道266号に出ると傾斜がゆるくさっぱりと滑らない。しかし、2時間ほどでゲートに着いた。晴天の後には風霧という一瞬のうちに天国と地獄みたいな気象の変化は、山はまだ春には少し早いようだ。

朝日に輝く岩手山
朝日に輝く岩手山

朝日に輝く男岳
朝日に輝く男岳

女岳下から見る男岳
女岳下から見る男岳

女岳
女岳

女岳から見る男岳
女岳から見る男岳

女岳山頂
女岳山頂

女岳から見下ろす小岳
女岳から見下ろす小岳

女岳の滑走斜面
女岳の滑走斜面

霧雨の国見温泉
霧雨の国見温泉

タイム:阿弥陀小屋(7:20)→女岳下(8:15〜45)→女岳(9:00〜15)→小岳下(10:00)→国見温泉(12:50〜13:05)→
    ゲート(15:20)
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