岩泉丹洞氷柱ドラゴンアイスクライミング

2023年２月14日（火）
　メンバー：藤原　豊さん、小田中　智、カメラマン：岩淵　一雄さん
　ルート：岩泉丹洞ドラゴン　Ⅵ-

岩泉丹洞岩
　丹洞岩は、岩泉町西野地区にある高さが約100mにおよぶ石灰岩の岩壁で、岩泉三十景に選ばれている観光名所である。
　岩泉町役場の裏から東側の住宅地を越え、鼠入川に向かう道路を小本川へ降りるように下って行くと、右側の川べりに白い岩肌の岩壁が見える。高さは100mと言われているが実際には80m位、幅が100m位と思われる。すぐ下には小本川が流れ、川のせせらぎと岸辺の岩場の渕が美しさをかもし出している。
　しかし、2016年８月30日台風10号の通過により、住宅地は激しい濁流にのまれ、多大な被害と犠牲者が出た場所である。

丹洞氷柱ドラゴン
　丹洞岩のすぐ左の岩壁に、垂直に落ちる氷柱がぶら下がっている。垂直部の高さ30m、傾斜90度、グレードⅥ-。　氷はツララ状で、その上は高さ８m程の緩傾斜の氷がビレイ点となる大木まで続いている。
　 2012年１月28日、萬徳清孝氏が初登しグレードⅥ-をつけ、ドラゴンという名前をつけた。氷柱の左右には翼のような氷がぶら下がっているので、ドラゴンが飛び立つように見える。
　正月明けに偵察に行ってみると、氷瀑は例年の半分の量しかなく、取付きと中間部は細いので、上から下降してみないと登れるかどうか分からない状態だった。
　それ以降ようやく寒さが続いているので、ダメ元で行ってみることにした。
　昨年はリードで登ったが、今回は氷の状態が悪いので上から懸垂下降し、氷の状態を確認しながら下ってみるしかない。最悪では途中で下降を止めて、登り返すことも視野に入れなければならない。
　パートナーとして藤原ちゃんと行ってみることになった。さらに、盛岡山想会の先輩であり、プロのカメラマンである岩淵さんが撮影することになった。

14日（曇り）
　途中の駐車場で岩淵さんと合流し、私の車で岩泉へ向かう。今朝サラッと雪が積もり、道路はツルツル状態でスピードは出せない。私は安全運転主義なので無理な運転はしない。ただし、安全なところではスピードは出す。
　岩泉町役場で藤原ちゃんと合流であるが、２人とも道路の状態で遅刻である。ドラゴンが見える対岸で眺めると、正月明けに見た状態と変わらないようだ。２ヵ所が極端に細くなっているので、果たして登れるだろうか？やはり、上から下降してみての判断だ。
　道路わきの駐車スペースに車を停め、下流に向かって歩いて橋を渡り、ドラゴンの上部へと登って行く。膝と股関節は最悪の状態で、痛み止めはだんだん効かなくなってきた。手術するともう登れなくなる可能性があるため、引退の花道として３月まで頑張ってアイスクライミングをしたい。
　下り口から緩やかな斜面を、30m懸垂するとビレイ点でもある大木に着く。ここは初登した萬徳さんがビレイ点を作った所である。藤原ちゃんは今回ドラゴンは初めてであるが、ちょっとおだてたら先に下るという。氷の状態が悪かったら登り返すようにと言ったが、一気に下降しオーケーの合図が出た。
　さっきの下りで新調した片方のアイゼンが外れたが、面倒くさいのでそのまま下るとスベルスベル。やはり２ヵ所が氷が細いところがあるが、下ってしまったので登るしかない。最悪、下降点にセットしたスリングとカラビナ３枚は残置になってしまうが、それもいたしかたない。
　のんびり過ごしていると、藤原ちゃんが行くと言うので先陣をゆずる。ラッキー！　やることはやったので何時死んでもよいと思っているのであるが、やはり恐さはたまらなくあるので、その言葉は口だけにすぎないようだ。
　シャワークライムだと言いながら、細い氷にアイゼンを刺し登って行った。今年は氷が薄いぶん難易度が高いように思える。中間の細いところは、右の岩に右足を決めて登って行った。
　彼はドラゴンが初見で、さらに状態も悪いのであるが、持ち前のバランスで登っており、アイスクライミングを今年から始めたようなものであるが、もうすでに追い越されているようなものだ。
　最後の垂直部を越えると傾斜は緩くなるので下降してもらう。今度は私の番であるが、なんか気乗りがしない。取付くと一歩から雨降りで、メガネに水滴が付き前が見えない。そうしていたら滑って、ぶら下がったというより落ちた。時間が経ったせいでシャワーは、最初の時よりも強いのではないかと、止める口実を探していた。
　しかし、最初で止めたら恥だとばかりにアックスを振るって登り出す。新調したアイゼンは良いような悪いようなで、こんな悪い状態では定かではなく、アックスが頼りである。前にもシャワーの時はあったが、今回は以前より長いように感じられる。
　中間点の細い所はやはり細く、太めのツララ状態で、強く蹴り込むと崩れてしまいそうだ。藤原ちゃんは右の岩を使いながら登ったが、私はアックスにぶら下がり氷に足を軽く蹴り込み登る。この部分は95度のかぶりで、アックスにぶら下がって越えた。
　最近、４kgほど体重が増えたので腕にかかる負担は大きく、止める口実をさがすが、休みながらではあるが根性で登って行く。垂直部を終えると緩傾斜ではあるが、ビレイ点まで10mの距離がある。
　ビレイ点でトップロープするのであればザイルは40m必要になるので、２本のロープが必要になる。昨年リードした時は、スクリューとV字スレットを組み合わせてビレイ点にしたので、60mシングルロープで大丈夫だった。最後はV字スレットだけでの下降になるが、思うより意外と効いている。
　あまりにも氷の状態が悪くシャワーでもあるのでこれで終了とし、ザイルを掛け替えて懸垂下降の準備をする。握力はすでにパンパン状態で、ザイルを引き上げるのも疲れた。
　ドラゴンのグレードはⅥ-であるが、今回の状態ではワングレード高いように思われる。そんな状態で登ったので、１本しか登らなかったが十分満足したドラゴンだった。
　岩淵さんは対岸から望遠レンズで撮影している。彼は山想会の先輩で、ガルワールヒマラヤでの仲間でもある。定年まで杜稜印刷のカメラマンとして勤務し、いわての名峰徹底ガイド　岩手山の書籍では、監修と撮影をしている。

左の少し凹状を登り右の岩峰の後ろに下降していく

最初の下り始め、懸垂下降が無難

ドラゴンを下部から眺める

登り出し、ここはシャワーだ　登る藤原ちゃん

中間部の一番細い所

上部、段状になっているが例年は大して段状になっていない

下降する小田中

右端がドラゴンで、下流を見ている

丹洞岩とドラゴン

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