蔵王仙人沢ミニ氷柱アイスクライミング

　蔵王仙人沢アイスガーデンミニ氷柱アイスクライミング

2022年３月５日(土)～６日(日)
メンバー：Ｓさん、小田中　智
ルート：ミニ氷柱（Ⅴ）

　蔵王連峰仙人沢右俣の糸滝周辺の懸崖に発達する氷瀑群があり、仙人沢アイスガーデンという名前がついている。近年に芸能人がやらせで登ったテレビ番組が公開されたので一躍有名になった。
　また、リフトの終点からは刈田岳が近いので登山もでき、樹氷原は広く樹氷散策もできる。蔵王ならではの冬の観光地だ。
　蔵王ライザワールドスキー場リフト終点から30分ほどとアプローチが短く、標高が高いので氷結状態が安定し長い期間登ることができる。
　氷柱は糸滝、ミニ氷柱、大氷柱とあり、眺めるだけでも素晴らしい景色が楽しめる。
　糸滝は、階段状で傾斜が70度と緩いので、初級者のトップロープや中級者のリードの練習に適した氷瀑である。30m、Ⅲ+～Ⅳ－
　ミニ氷柱は、ボリューム感のある80～90度の氷柱で、トップロープ、リードと自由な課題を選べ、ルートも中央、左右と選べ、日に当たると氷はブルーに輝く。25m、Ⅴ
　大氷柱は、糸滝左の幅が広い氷瀑で、左のラインが大氷柱、右のラインをツララ状氷柱と呼ばれている。右ナメコースから回り込んでトップロープができるので、バーッチカルな25ｍを楽しむことができる。25m、Ⅵ
　
　昨年から憧れていたアイスガーデンにようやく行けることになった。今年は地元の大峠と岩泉に９回行っているので、準備は万端である。
　せっかく行くのだから１泊２日とし、リフト終点の先にテントを張ることにした。

５日(晴れ)
　５時半に家に集合してもらい、私の車で高速道に乗る。車窓から見える朝日がとてもきれいで、今日の天気を約束しているようだ。山形蔵王ICで高速道を降り、ライザワールドスキー場に向かう。
　スキー場はリフトが２基だけの小さめのスキー場であるが、土曜のせいか先日の冬期オリンピックのせいか人は結構いた。空は真っ青で日差しが強く風も無いので春のような天気だ。
　リフト終点に着くといきなり大きな樹氷が現れ、素晴らしい景色である。登って行くと正面に熊野岳に通じる馬の背の稜線が見え、左には仙人沢へと落ち込む中丸山が見えている。ここの標高はすでに1,400mある。
　間もなくスキーのデポがあり、仙人沢への下り口のようだ。さらに少し前進し樹氷の中にテントを張った。登攀用具だけザックに詰め込み、沢へと下って行く。間もなく急な下りとなり、沢状を尻滑りする。これが残雪期の楽しみの一つでもある。
　氷柱見物の観光者がポツポツ登ってきた。沢に降りて少し登るとミニ氷柱が見え、間もなく大氷柱が見えた。太陽に当たっているミニ氷柱は氷がブルーに輝いており、確かに観光するだけでも素晴らしい光景を味わえる。
　ミニ氷柱には２人のクライマーがおり、さっそく取付きへと向かう。大氷柱にはトップロープをセットしているクライマーがおり、氷柱は太陽に隠れいるので日陰である。
　男女ペアのクライマーは登るのが終わった所で、いろいろ情報を聞かせていただく。明日は大氷柱を登りたいのでその情報もいただいた。気さくで親切なペアは下って行った。
　今まではツララ状の氷ばかり見ていたが、ここの氷は平らな氷でブルーに輝いている。初見でのリードは心もとないが、大峠より簡単そうで氷もしっかりしているので行くっきゃない！ただアイゼンがモノポイントでないことが悔やまれる。
　段状から真ん中の凹状に入ると傾斜はきつくなるが、多くの人が差し込んだアックスの穴が浅いポケットになっており、アックスも刺さりやすい。比較的短い間隔でスクリューを決め、ソロリそろりと登って行く。
　中段になると傾斜はいくぶん弱くなり、ビレイ点の木が見える。氷が硬いので安心感があり、岩泉のドラゴンに比べると数段に余裕がある。
　ビレイ点には残置カラビナが５枚もあり、ザイルを通して降りていく。Ｓさんもカロヤカに登って行く。最近回数を重ねているせいもあり、昨年に比べるとだいぶカロヤカだ。大氷柱からは女性の声が聞こえ、ノーテンションで登っているみたいだ。
　２回目は左の強い傾斜を登った。ラインとして右に最後まで急なラインがあるが、時間も時間なので来年の楽しみとしよう。
　Ｓさんが下る頃には突然雪が降り出しできた。大氷柱の取付きへ行ってみたかったが明日の楽しみに残し、ガチャを詰め込んでテントに向かう。
　来る時の滑った斜面は登りはきつく、しばらくトラバース気味にトレースをたどるとリフトに出てしまった。途中で直上しなければならないのを忘れていた。風が吹き視界も悪くなり、テントを見つけた時はホッとした。
　テントに入り整理し、ラッパ飲みしたウイスキーがなんと美味いことか！それぞれに食事を作り、タコ刺とホルモン焼きを食べながらのホットウイスキーの美味しいことか。このためだけにテント泊しているようなものだ。

スキー場から中丸山

リフト終点にて

リフト終点の樹氷

リフト終点の樹氷

アイスガーデン降り口手前と中丸山

樹氷の中にテントを張る

急な下りを尻滑り

大氷柱

大氷柱

ミニ氷柱

ミニ氷柱中央をリードする小田中

上部を登る小田中

登り始めるＳさん

上部を登るＳさん

６日(強風、ホワイトアウト)
　夕方から降り出した雪で朝にはテントが狭くなっていた。テントから顔を出すと視界が悪いので今日のクライミングは止めにして、ふたたびシュラフにもぐる。最近は寝るのが楽しみになってきており、年老い感がますます強くなってきた。
　テントを撤収して出発したのは９時半過ぎだ。風はそんなに強くはないが、視界は殆んどなくホワイトアウトだ。まあ、リフトはすぐ近くだしとたかをくくっていたら、この辺一帯は平原でどこがどこだか分からない。視界は２～３mで途中からGPSを出してポールを見つけて安心した。
　しかし、エコーラインに出たもののスキー場の方向が分からない。Ｓさんの携帯ＧＰＳを頼りに歩いて行くが、樹氷を回り込んだとたんに方向感覚が失われ、視界も全く良くならない。
　しばらくさまよいながらＳさんの携帯ＧＰＳと磁石で方向を定め、歩いて行くとスキー場の標識が見つかった。今回はスキー場の近くなので地図を持参していなかったのだ。いつもなら地図とＧＰＳと磁石で方向が分かったのであったのだが。いつでも「初心忘れるべからず」を大いに感じた。しか、し時とともに忘れるのは歳のせいなのだろうか？
　スキー場に出たものの視界は全く回復しなく、ブリザードで目を開けるのも大変だ。下るにしたがいゲレンデがしっかりしたものとなり、中間駅の明かりが見えた。そして、リフト乗り場に出て、さ迷い歩行は４時間をかけて終わった。とくに感慨は無かったがやっと着いたという感じだ。
　スキー場は朝から休みで、駐車場にはポツンと私の車が１台だけ雪に埋もれていた。整理して坂道を登る時にタイヤがハマリ動けなくなってしまった。そしたらスキー場の従業員が通りかかり、トラックで引っ張って誘導していただいた。
　倶楽部と家に下山届をすると妻から電話があり、スキー場に車を１泊させたことで、スキー場から警察への通報で警察が探し回っているという。山に行って車の駐車で警察が騒ぐのは、今日に始まったことではないが、迷惑のかけどおしである。
　温泉で入浴し食事をして、Ｓさんの運転で家に帰った。
　今日は最初から最後までいろんなことで楽しませてもらい、心に残る忘れられない山行となった。

テン場にて

スキー場リフト乗り場に下山

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