岩手山洞ヶ沢 アイスクライミング
 


2019年3月17日(日)〜18日(月)
 メンバー:佐藤 博さん、小田中 智
 コース:旧プータロ村〜洞ヶ沢〜標高700m付近(テント泊)〜標高1,030m付近 往復


 洞ヶ沢は、岩手山屏風尾根の北面に位置する沢で、夏には水流があり大小の滝がたくさん続き、登攀を対象とした困難度の高い沢である。
 昭和33年頃盛岡山岳会により初そ行されたが、昭和39年に盛岡山想会が全ての滝を登る完全そ行がなされた。
大きい滝は20数mあり、オーバーハングやシャワークライム、急傾斜のツルツルの滝などがあり、人工でなければ登れない滝が5ヵ所ある。滝はF16まで数えられているが、小さい滝も合わせると30を数え、登りがいのある登攀そ行が楽しめる沢だ。
 冬は、廊下の側壁や滝には氷が張り、アイスクライミングができるが、アプローチが遠くラッセルも強いられるので、アイスクライミングを楽しむためだけの登攀には時間がかかりすぎる。
残雪の時期は、雪が滝を埋め尽くしているので歩きやすく、急な斜面を登る登高を楽しめる。雪の状態により滝の下や出口はシュルンドが開いているので、部分的には緊張感も味わえる。
 最近、60過ぎの手習いとして始めたアイスクライミングが楽しく、氷瀑だけを登る目的で1泊2日で偵察がてらに訪れてみることにした。

17日(晴れ)
 前日は佐藤君の別荘で、昔のザイルパートナーだった砂子君と3人で酒を飲みながら楽しい夜を過ごした。
 今は閉館となったプータロ村に車を置き洞ヶ沢へ向かう。数日前に積もった雪は山では結構積もったみたいで、一面が真っ白で林道も雪で奥まで入れず、平年に比べると積雪は多いみたいだ。
 沢に向かってスノーシューで歩いていくと八幡平スキー場に通じる林道に出て、洞ヶ沢に向かって林道をたどる。洞ヶ沢に作られた土石流対策の鉄の塀から沢に入る。
 先日降った雪はこの付近でも20cmは積もっており、スノーシューは正解だった。登攀具の入ったザックは重く、最近特に重い荷物は応えるようになってきた。しかし、泊まって酒を飲むことの比重が高いため、重いのは我慢して頑張るしかない。
 標高700m付近にテントを張ると、ラッセルで潜ったわけでもないが疲れていた。登攀具だけをザックに詰め、登って行くと潜るようになってきた。間もなく滝が現れ空身で登りだす。
 この滝はF1 5mで、いつもは左から登るのであるが雪が多く、傾斜の強い右から登るしかないようだ。20cmの雪を払いのけるとベルグラでアックスが効かないながらも騙しながら進み、傾斜が強くなった中盤から2cmの氷となった。
 プロテクションは取れないが、落ちても雪のクッションがあるので恐さは大して感じなかった。ザックを吊り上げ佐藤君を迎える。再びスノーシューに履き替え登って行く。
 しばらくすると急に沢幅が狭くなり両側の側壁が高くなり、オーバーハングする滝にぶつかった。滝には氷柱もなく岩がまるまる出ており、上部はオーバーハングになっていた。たぶんF8 15mの第3セットだと思われ、夏はシャワークライムとなりアブミで乗り越える。
 もう15時になろうとしており、早く飲みたいのでテントに戻ることにする。明日は滝の手前から右の脇稜を登って上に出ることにする。
 F1をスノーシューのまま懸垂下降し、ザイルを残置してテントに戻る。昨晩も美味しい酒を飲んだのであるが、今日の酒も格別の味だ。気心の知れた山仲間と飲む酒ほど美味しいものはない。


岩手山の北面


洞ヶ沢から見るクラウンピーク


F1 5m 70〜80度


F8 15mの第3セット 出口はオーバーハングで夏はアブミで乗り越える


18日(晴れ)
 今朝は冷えて昨日のトレースは硬くなっていた。ザイルを残置した滝をスノーシューの前歯で登ろうとしたが敗退し、アイゼンを着けて登る。ふたたびスノーシューに履き替え進む。
 オーバーハングの滝の手前から右の急斜面を登り、途中から懸垂下降で沢に降りると滝の上に出た。沢を登って行くと再び両側が高くなった廊下になり小さな氷柱が現れた。
 その上に進むと沢幅が狭くなり段々となった岩には多くの雪が積もっており、突破するのに時間がかかりそうなので先ほどの氷柱で遊ぶことにする。
 高さ6m程の氷柱であるが下まで続いていないため、下部は左の雪壁からトラバースしなければならない。上に回り込んでトップロープにできないため、アイススクリューをセットしながらリードで登らなければならない。
 氷壁のリードは初めてであるが、とりあえず取り付く。表面の雪の下は岩で氷は5mmしかなくアックスが効かず、岩にアックスが引っかかる場所も全くない。
 2歩を登ると何とかなるがアイゼンすら掛かる凹凸も見つからない。左にアックスが引っかかるリスを見つけ、右手は岩を押し付けるだけで体重を移動し、安定した氷のスタンスに立てた。
 もう少し上から氷となり、厚いような氷にスクリューをセットしてランニングをとる。右には氷柱があるのでアックスは確実に効き、スクリューも確実に効いた。氷柱の上は段々になった柔らかい雪で登る意味もないので、氷柱の天辺にスクリューをセットしてトップロープにし下降した。
 佐藤君もやはり下部で苦労しており、短い氷壁ではあるが、今日はここで遊ぶしかない。次は下部のハングを登ろうとしたが、岩にツァッケが引っかからず落ちて敗退した。時が経つのは早いもので14時になろうとしているので撤収しなければならない。
 下降はV字スレットでするしかないが、それも初めての経験だ。動画で見たことを思い描き、長目のスクリューで天辺のスクリューの下にV字に穴をあけ細引きを通すのだが、マルチフックが無いためアックスの先で紐を引っ張り出しセットした。
 こんなので体重を支えれるか分からないが、スクリューにセルフをとってぶら下がってみた。12cm程の幅に穴の氷はしっかりと効いており、スクリューを回収しながら下降した。
 短い距離の登攀ではあったが、初めてのリードと初めて作るV字スレットをやれたことはとても楽しく思い、またまた氷が登りたくなった。どうやらすっかりアイスクライミングにはまってしまったようだ。


段々になった雪、左の氷瀑を登る


雪の造形


ここで登行を止めた


氷柱の左から氷柱へ

箸が無くストックで食べる佐藤君


小田中がリードで登る


佐藤君がトップロープで登る


氷柱は快適にアックスが刺さるが距離が短かすぎる


上部を登る佐藤君


V字スレットで下降した
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