羽後朝日岳・和賀岳・高下岳 ガイド登山 今の時期しか登れないルート
 
大荒沢岳と羽後朝日岳

4月29日(日)〜5月1日(火) 天候:晴れ メンバー:嶋脇様、小田中 智
 コース:貝沢集落〜郡界分岐〜県境分岐〜大荒沢岳〜羽後朝日岳〜大荒沢岳〜根菅岳分岐〜鞍部(泊)〜和賀岳〜
     コケ平〜和賀川〜高下岳〜高畑コース〜大荒沢川(泊)〜林道〜大荒沢集落


 羽後朝日岳は4月上旬から計画されていたが、他の山の天候待ちで延び延びになっていたが、ようやく下旬になり天候が安定した。
  嶋脇様が2日の連休だったので、和賀岳から高下岳への縦走を結び付けての山行となった。羽後朝日岳は嶋脇様にとって、登りたいと思ってから2年越しの山だったようだ。

■29日(日)
 5時に南インターで待ち合わせ、2台で沢内に向かう。行きは貝沢からであるが、下山は高畑コースを下るので大荒沢集落に私の車を置き、嶋脇様の車で貝沢集落へ向かう。
 道路は集落最後の家の先で行き止りとなり、すでに5台の車が止まっており、秋田ナンバーの車もあった。羽後朝日岳まで行く登山者なのだろうか?

ここから歩き始める
ここから歩き始める

 身支度を整え、重いザックを背負って歩き始める。昨年より少し雪が多いみたいだ。空は雲一つない天気で晴れ渡り、もうすでに暑いくらいだ。
 沢を2回渡り、登山口から大小屋山への尾根に取りつくと雪はなくなり、登山道の片隅にはもう高山植物が咲き始めていた。

登山口
登山口

 郡界分岐からは雪がありトレースの跡をたどりながら、ゆっくりではあるが快調に登って行く。

郡界分岐
郡界分岐

県境分岐を見る
県境分岐を見る

カタクリ
カタクリ


キクザキイチゲ

 1,091m付近で下山してきた単独行者と話を交わす。3時間半で羽後朝日岳に登ってきたと言う。いくらサブザックとはいえ早すぎる。
 左右には高下岳とモッコ岳が見え、振り向くと遠く早池峰山、岩手山が見える。天気が良いとついつい休憩時間も長くなってしまう。のんびりするのも山の楽しさの一つである。
 県境分岐に着くと正面に、大荒沢岳と羽後朝日岳が目の前に飛び込んでくる。その左には秋田駒ヶ岳の雄姿が美しく、その左には遠く森吉山が望まれる。南西にはこれから向かう和賀岳が小ピークの奥にどっしりとあり、今日どこまで行けるかわからないが大分遠くに感じられる。

大荒沢岳と羽後朝日岳
大荒沢岳と羽後朝日岳

 雪のない登山道の真ん中にテントが張ってあり、前に進むのに邪魔だ。後から登って来る人のことを考えないのだろうか?マナーの悪い登山者だ。
  大荒沢岳へと稜線をたどっていると、男女7人の老人クラブのパーティが下りてきて、秋田から来て大荒沢岳まで行って来たという。顔は日に焼けて真っ赤になっていた。自分の顔もそうなっているのだろう。
 大荒沢岳でサブザックに食料とジャンバーを入れ、羽後朝日岳に向かう。体は軽く走って行けるような感覚だ。生保内川側に張り出した雪庇は間もなく崩壊する感じなので、登山道のない羽後朝日岳に行けるのもあと1週間ほどであろうか。

和賀岳
和賀岳

秋田駒ヶ岳、左奥が森吉山
秋田駒ヶ岳、左奥が森吉山

羽後朝日岳
羽後朝日岳

岩手山をバックに
岩手山をバックに

 景色を眺めながら天気の良い日に歩く山は最高に楽しい。荷物も軽く気分はルンルンである。緩い雪の斜面を登ると羽後朝日岳に着いた。昨年はしっかり雪があったが、今年は雨が降ったせいもあり陽のあたる所はだいぶ雪解けが早いようだ。

羽後朝日岳山頂で
羽後朝日岳山頂で

羽後朝日岳山頂で
羽後朝日岳山頂で

 今回のサプライズは苺で、ミルクをつけて嶋脇様に食べていただく。風に揺れるカタクリの花を見ながら食べる苺は、何とも言えない美味しさがある。前方には田沢湖の湖面が太陽にキラキラ輝いている。
 冬の山は晴れて風が吹かないことは稀にしかないので、こんな良い天気でのんびりできるのは、これからの時期だ。とにかく嬉しく楽しい。


頂上に咲くキクザキイチゲ

頂上に咲くカタクリ
頂上に咲くカタクリ

 大荒沢岳に戻り根菅岳へと下り始めると、和賀岳に行って来たという3人パーティに合った。登山道の真ん中にテントを張っていたのはこの連中だった。
 稜線は日当たりが良いので登山道が出ていた。根曲がり竹に足を滑らせ転ぶと、膝からゴキッと嫌な音が聞こえた。さほど痛くも無く歩くには支障はなかった。
 根菅岳分岐からは登山道はなく、ここから和賀岳への稜線は廃道になっているみたいだ。トレースを追うが所々ブッシュがこまかく大きいザックでは歩きずらい。
 鞍部の少し手前の和賀川側の斜面に雪洞を掘ることにする。交代で掘っていくとブッシュが出始めたので雪洞はあきらめ、斜面側に雪を積み重ねてツエルトを張る。先程まで痛くなかった膝はしだいに痛くなってきた。
 風も当たらないツエルト内は快適で、コンロをつけると暑いくらいだ。今夜の食事は、前菜とジャガイモを添えたステーキ、鶏ダシのスープと温めるだけの炊き込みご飯というフルコースである。
 水を作っている間にサラダを作り、つまみにしながら焼酎を飲む。嶋脇様は飲酒しないので、一人で美味しい酒を味わう。長い時間荷物を背負って歩いていたので、けっこう疲れていた。
 今回のために新調したフライパンにバターを溶かして、下地をつけてきたステーキを焼く。食べながら、今回で3度目の山行となった嶋脇様と山の話に花が咲く。

タイム/貝沢集落(7:00)→尾根取付き(8:00)→県境分岐(11:50)→大荒沢岳(13:00〜15)→羽後朝日岳(13:55〜14:15)
    →大荒沢岳(14:45〜15:05)→根菅岳分岐(16:00)→鞍部手前幕営(16:50)

■30日(月)
 4時過ぎに起床する。昨夜は膝が痛くなり、翌日の行動が心配で熟睡できなかった。メニューはうどんに温めるだけのおかゆなので、素早くお湯を沸かし支度にかかる。
 荷物をパッキングするが、ゴミもあり昨日よりも荷物が増えている感じだ。和賀岳に向かって歩き出すと、足は思っていたより痛くなく、歩くごとに痛みは薄らいできた。

宿泊地
宿泊地

 今日は高曇りの天候で、朝の冷え込みはなかったので、すでに雪はグサグサだ。左に高下岳が見えるが、和賀川に下りてこの高さまで登り返すかと思うと遠く感じられる。

左奥が和賀岳
左奥が和賀岳

 思ったより早く頂上に着いた。風は少しあるが寒いくらいでもない。昔は貝沢から白岩まで日帰りで縦走したものであるが、今は登山道が廃道になり根菅岳分岐から和賀岳まで夏に歩けないのは残念だ。

和賀岳にて
和賀岳にて

 笹に隠れた登山道をコケ平へと下って行く。ここではまだ高山植物は咲いていなかった。コケ平から下って行くと雪の斜面となり歩きやすくなった。兎が横切り、呼ぶと立ち止まりこちらを覗いていた。
 沢音が高く聞こえるようになるとだいぶ高度を下げ、沢筋も見えてきた。高下岳へと登り返しの尾根も見える。下って行くと急な下りとなり、雪を見つけながら部分的に急な所を慎重に下って行くと和賀川に下りた。
 下りた所は夏に徒渉する場所より100m程下流のため、急流で深いため渡れない。少し上にスノーブリッジがあるが、そこまでトラバースもできないため、あまり危険を冒さず300m程の高度を登り返す。

下流に下りた和賀川
下流に下りた和賀川

 地図を見ると標高950mの所で左の枝尾根に入ってしまい左に寄ってしまっていた。コケ平からの下りは常に左の沢に沿って下れば、視界の悪い時でも間違いはないようだ。結局1時間半ほどのロスタイムとなってしまい、体力的にも疲れた。
 夏の徒渉点も雪解けで水量は多く膝まで潜りそうだったが靴を脱ぐのが面倒なので、忍法水とんの術を使ってそのまま渡るが、やはり忍法は使えずキャッパリをした。嶋脇様はかしこくサンダルを持参していたので、靴を脱いで渡った。膝までもぐり流れもあるのでストックがないとバランスを崩しそうだった。

夏の徒渉点
夏の徒渉点

 急な雪の斜面を登って行くと夏道が出ており、また雪が出てくると分岐にはトラバースしないでそのまま尾根へと登って行く。
 新しいスキーの跡があり登山者が入っているようだ。広い尾根に出ると登山者がいて、栃木から公共交通機関を使って来たと言い、高下から和賀岳に行って和賀川を渡りたいと言うので、コース状況を説明する。
 思ったより高下岳は遠く感じられ、時間もかかっている。それもそのはず、もうすでに10時間行動しているのである。高下岳南方には登らず鞍部へと雪の斜面をトラバースする。雪が切れた所にザックを置き、頂上へ向かう。
 18時高下岳の山頂に立つ。ここから車に着くまでは、あと3時間はかかるだろう。古いトレースはあるが、連休に来た登山者はいないようだ。

遠かった高下岳
遠かった高下岳

暮れゆく和賀岳
暮れゆく和賀岳

 やがて暗くなりヘットランプをつけて下るが、暗くなるとやはりコースは分かりずらい。所々雪の切れた所では登山道を確認するが、また雪道となってしまい踏み跡もはっきりとは見えない。
 沢音が大分大きく聞こえる頃になると尾根を間違えたみたいで、ドンドンと急な下りで沢へと下りていった。後で地図を見ると、836mピーク下の800mで右に曲がるのを真っ直ぐ下ったみたいだ。
 川に下りると運よく砂防ダムの滝が落ち込む下に下りていた。残念ながら林道はなく、入り組んだ小沢を渡り砂防ダムを越えながら頑張って歩いたが、ついに流れのある川にぶつかり進路を断たれてしまった。
 この暗い状況では判断できないし、時間も22時を過ぎていたので、嶋脇様にお詫びと了解をとって、止むなくビバークをすることにする。ツエルトを張ってまずは寝袋に潜る。今日は16時間以上の行動をしていた。
 地図と地形から判断すると、林道はすぐ近辺にあるはずだった。明日になり明るくなると分かるだろう。

タイム:鞍部手前幕営地(6:15)→和賀岳(8:50〜9:15)→和賀川(13:00〜40)→高下岳(18:00〜10)→大荒沢(20:30)
    →ビバーク地(22:40)

■1日(火)
  ビバークしたことにより嶋脇様には仕事を休ませてしまって申し訳ないと謝る。予備食の朝食をご馳走になり身支度を整える。川は渡れる水量ではなくしかも急流だ。右には50m程上に尾根が見えるので、そこまで登って行くしか進路はない。尾根上の向こうは林道に続いているはずなのだ。
  尾根上の期にはは測量のテープが巻かさっており、ブッシュも無く歩きやすい。杉林を右寄りに進んで行くと林道にぶつかった。あと40分も歩くと車に着くのである。

林道に到着
林道に到着

タイム:ビバーク地(7:00)→林道(7:40)→車(8:15)

■反 省
 和賀川への下りで1時間30分をロスした時間が、最終的にはビバークにつながってしまった。明るかったならば高畑コースでは間違わなかったと思われる。
 和賀川への下りは、コケ平から左の沢を見ながら下れば間違いはなく、時折地図を見る習慣が必要と改めて認識した。
 高畑コースの下りもやはり、暗くなってからも地図を見ながら下っていると間違わなかったかも知れない。下ってしまってからは、全て状況判断と勘で行動した。
 今回の山行は、体力がある嶋脇様だったから大事には至らなかったが、この失敗を謙虚に受け止め反省し、今回の問題点を今後の山行に生かしていきたいと思う。
 嶋脇様、迷惑をかけて申し訳ありませんでした。

■嶋脇様の言葉
 今回の山行は、天気は最高!晩御飯最高。そして残雪期ならではの貴重な体験ができた。下山中、ちょっとしたアクシデントがあったが、誰にでも起こりうる山慣れの怖さを学んだ。
 来年はリベンジを含め、単独での2泊3日の目標ができたが、それまでにはコンパスを使っての地図読みを覚えて、道迷いをカバーし、暗くなってからの無理な行動はなるべくさけたいし、さけるべきだと思った。
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