早池峰〜剣ヶ峰縦走成功 ガイド登山
 
早池峰剣ヶ峰
早池峰剣ヶ峰

2015年1月29日(木)〜2月1日(日)
 メンバー:嶋脇さん、小田中 智
 コース:吉部沢除雪終了点〜平津戸登山口〜六合目〜八合目〜早池峰山〜剣ヶ峰〜1,177mピーク〜吉部沢林道〜
     吉部沢除雪終了点


 冬の早池峰山剣ヶ峰縦走は嶋脇さんにとって憧れの縦走コースで、昨年2泊3日で挑んだが山頂まで2日間を要してしまったため失敗に終わっていた。
 昨年は門馬コースから登り始めたが、今回は平津戸コースで長いため、山頂まで2日間を想定して、予備日を設けて日数をかけて挑むことにした。
 剣ヶ峰からの夏コースは、高桧山を過ぎタイマグラコースの反対側に廃道となった吉部沢林道がある。そのコースは林道がかなり長いので大分時間がかかってしまう。
 雪がある時期はどこでも歩けるので、高桧山手前の1,177mピークから北に延びている尾根を下ると、林道をショートカットして早く林道に合流できるのである。
 下山時のポイントは2つある。徳兵衛山からの下りと1,177mピークからの下りである。ここは実際に歩いてみながらのルートファインディングとなる。

29日(曇り)
 平津戸駅に5時半集合する。ここ川井も雪が少ないので、ラッセルの軽減を祈る。吉部沢の最後の民家で除雪は終わり、そこに車を置く。
 スノーシューを履いて出発すると、林道の潜りは15cm程だ。材木沢分岐から右に入るが、この分岐が下山時の合流点になる。
 平津戸コースの登山口で一休みするが、どこに行っても今年は雪が少ない。早い時期から雪は降ったが、今年になってからはさほど積っていないようだ。 
 材木沢に架かる丸太の橋には雪が積もり、おっかなビックリでソロソロと渡る。底雪が硬いため潜りは少なくラッセルは楽であるが、荷物があるためスピードはでない。
 大きな倒木がけっこうあるため乗り越すのに結構な体力を要する。ラッセルは交代で行うが、若い嶋脇さんは頑張って先頭に立ってくれた。
 ようやく六合目で門馬コースと合流するが、すでに14時を過ぎていた。昨年は七合目半あたりに泊まっているが、今日はそこまで行けそうにない。
 時間もたちもう七合目は越えたと思っていたら、七合目の標識がでてきた。道々には目印のマーキングが狭い間隔で目立つが、だれか冬のために付けたものなのだろうか?昨年はこんなに多くはなかったのであるが。
 今夜はここに泊まるべく整地をする。雪が硬いと整地が楽なのであるが、行動で疲れた後の整地は余計疲れるものである。
 荷物を整理して、熱いコーヒーが美味しい。コンロ2台を点けるとテントの中は暑いくらいで、吊るした手袋もすぐ乾いてしまう。今夜のメニューはきりたんぽ鍋である。
 焼酎の晩酌を飲みながら、話す会話は最近少なくなった。最近一緒に山に行く機会が多いのである。外に出ると樹林のてっぺんからは星が輝いている。

吉部沢林道
吉部沢林道

材木沢林道分岐
材木沢林道分岐

平津戸コース登山口
平津戸コース登山口

丸太橋を渡る
丸太橋を渡る

高桧山方面
高桧山方面

タイム:吉部沢除雪終了点(7:05)→平津戸コース登山口(8:15〜25)→六合目(14:15)→七合目幕営(15:45)


30日(曇りのち風雪) 
 最近トイレの回数が多くなり、寒い思いをしてシュラフに潜ると、また外に出なければならなくなるのが辛い。
 食事をすませお茶を飲み、荷物の整理をしてパッキングを始める。外に出ると穏やかな天気で、テントを撤収して出発する。
 尾根上に出ると曇りではあるが、上空は明るく日差しも見えているところがある。八合目を過ぎると大きな岩峰が見えてきた。風も弱く穏やかである。
 傾斜が急になるとラッセルが苦しくなるが、傾斜が緩いと20cm程の潜りだ。九合目手前になると積雪も増え、木々にはこんもり雪が積もっている。
 九合目を過ぎると雪は締まり傾斜がきつくなってくる。風がで始め視界も悪くなってきた。時計を見るごとに、時間はあっという間に過ぎている。
 風速8m程、視界10m程とまずまずの天気で、小田越の稜線に合流した。間もなく山頂避難小屋の屋根が見えた。
先週来た時に冬期入口が埋まっていたが、今回も埋まっていた。時間は13時を過ぎていた。これから剣ヶ峰を越えて、徳兵衛山を下るには少々遅い時間である。
 ネットで明日の天気をみると今日と同じ予報なので、今回も山頂泊まりとする。小屋の中にテントを張り、熱いお茶を飲み一息入れる。
 暇なのでシュラフに潜り昼寝する。なんと贅沢な時間だろうか。山ではめったに昼寝することはない。
 夕方、まだ時間は早いが雪を溶かし水作りを始める。今夜のメニューは牛タン焼と餃子である。晩酌は、先日2日間寝込んでからあまり飲めなくなった。

七合目の樹林帯
七合目の樹林帯

八合目の上の岩峰
八合目の上の岩峰

九合目付近
九合目付近

樹氷のトンネル
樹氷のトンネル

早池峰山山頂
早池峰山山頂

山頂避難小屋
山頂避難小屋

タイム:七合目(7:25)→早池峰山山頂(13:05)


31日(風雪のち小雪)
 小屋を掃除して外に出ると、風はそんなに強くはないがブリザードのため視界が悪い。下り始めると、風速10m程、視界5m程、斜面の傾斜が分かりずらいためストックで前をさぐりながら、けっこうきつい下りだ。昨年の皮投岳では視界が2mで歩いたこと、その光景を思い出す。
 GPSで現在地を確認しながら小田越分岐に着く。まず一つ目のポイントをクリアした。残るは徳兵衛山からの下りと、1,177mピークからの下りである。
 これからはしばらく稜線を歩くのでルートファインディングは問題ないが、ちょこちょことハイマツに潜るのがきつい。2番目を先頭と同じく歩いていても潜るのであるからどうにもならない。
 何も見えない剣ヶ峰に到着した。視界はやはり5m程、しかし時折明るくなるので上空は晴れているようだ。先週の早池峰山は快晴で、美しい樹氷と三角錐の剣ヶ峰の姿を思い出し、今日の光景とすり替えてみる。
 岩場の頂稜を巻きながら歩くので雪は柔らかく、ハマる回数も増え体力がドンドン消耗していく。徳兵衛山を巻いてしまったので、嶋脇さんのみ空身で山頂に立ち万歳をする。
 ここからの下りが2つ目のポイントだ。樹林帯に入るとルートが分かりづらく、視界がない稜線を歩くのと同じだ。地図、磁石、GPSで方向を確認しながら下っていく。
 時折マーキングを見つける。このコースを冬に歩いている登山者がいるのだろうか?昨夜の新雪で下りもラッセルだ。
 やっと1,177mピーク手前の鞍部に着いた。このピークを越えるとあとは下りになりテン場が無くなるので、この鞍部をテン場に決める。
 疲れた後の整地は辛いものがある。テントを張り終え中に入り荷物を整理する。熱いお茶が冷えた体を温めてくれた。
 今夜からは予備日なので、夕食はドライフードである。乾燥白米とチキンシチューであるが、この辛口のシチューはなかなか美味しい。

避難小屋
避難小屋

小田越分岐
小田越分岐

剣ヶ峰に向かって
剣ヶ峰に向かって

剣ヶ峰
剣ヶ峰

徳兵衛山に向かって
徳兵衛山に向かって

徳兵衛山
徳兵衛山

タイム:山頂小屋(7:20)→小田越分岐(8:05)→剣ヶ峰(9:35)→徳兵衛山(11:55)→1,177m手前鞍部(15:40)


1日(曇りのち小雪)
 10cm程の新雪が積もっていたが上空は明るい。1,177mピークへ登ればあとは下りだけである。しかしながら、ここからの下りが最後のポイントである。予定の場所の林道にうまく合流するかによって林道を歩く距離が変わってくるのである。
 いよいよ下りとなるが、下り始めが分かりずらい。方向を合わせた磁石を見、GPSで現在地を確認しながら下っていく。
 顕著な尾根になった付近には道らしき跡がついていた。木の調査のための道なのだろうか?そのあとを追うと沢に下りていたので少し戻り尾根筋を下る。
 もう沢の音が聞こえている。林道も間近かなはずである。尾根を末端へ下ると遠回りになるので左に寄って下る。林道のどこに出るか楽しみである。
 下に林道が見えた。林道に下りる30mの斜面は急である。尻滑りで下ると、そこは橋の手前で、ピッタシカンカンの場所だった。あとは2時間ほど歩くと、材木沢林道分岐を経て車に着く。
 林道を下っていると雪が降ってきた。入山時から20cm程の新雪が積もっているようだ。対岸に最後の民家が見えると雪が積もった車が見えた。

テン場
テン場

テン場付近
テン場付近

吉部沢林道へ合流
吉部沢林道へ合流

吉部沢林道
吉部沢林道

タイム:1,177m手前鞍部(7:20)→1,177mピーク(7:30)→林道(10:05〜20)→車(12:15)

 車のイグニッションキーをひねると全く反応がなかった。そうなのです、バッテリーがあがっていたのです。ルームライトの消し忘れなのでしょう。
 嶋脇さんの車を平津戸駅に駐車していたので取りに行ってもらって、バッテリーコードを接続することにする。しかし車は前向きで奥へ入っているので、バックさせないとコードが繋がらないのである。
 ギアをニュートラルに入れ二人で力強く押すとなんとか動いた。嶋脇さんが車を取りにいっている間、車の雪払いをして待つ。
 昨年11月にはハンドルの強打、2月はバッテリーあがり、今回で3回目のトラブルである。早池峰山との相性が悪いのだろうか。
 時間も早いので、宮古方面に向かい、山の駅 静峰苑で入浴する。

 剣ヶ峰縦走はようやく成功した。しかし、3泊4日と1日予想日程をオーバーしての縦走ではあったが、悪いながらもある意味天候に恵まれ、予定のルートを走破できたことは良かった。
 全然景色も山容も見えなかったが、目的をやり遂げたという満足感は大きかった。


★嶋脇さんからの声
 冬山に魅せられて約4年がたった。そして更なるロマンを求め、そして何より自分の今後の参考にしたいと思い、一度敗退していた縦走に再びガイドを依頼し挑戦した。
 頂上付近での視界が悪い中での行動は、最も難しく感じた、徳兵衛山からの樹林帯でのコンパスを使いながらの確実なルート取り、最終日の地図上から尾根をダイレクトに下る発想力など、小田中ガイドには「流石としか」言いようがないほど感謝している。
 もし、単独ならば確実に遭難してたと改めて感じた。だが、厳冬早池峰北面縦走はこれで終わりではない。単独で計画し達成してみたいという新たなる目標ができた。
 その為には冬場での地図とコンパスの使いながらの山行を経験を重ねていく必要があるだろう。
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