岩手山御神坂沢大滝 アイスクライミング
 


2020年3月1日(日)〜2日(月)
 メンバー:佐藤 博さん、小田中 智
 コース:御神坂駐車場〜御神坂沢〜大滝 往復


 岩手山南面にある御神坂沢には、標高1,100m付近に大滝と呼ばれる落差50m程の滝がある。夏は水が涸れた沢で、昔は沢登りというよりもクライミングの対象として登られていた。大滝には左の側壁を登るルートがあり、その上には8つ程の滝があり楽しんでクライムできる沢である。
 昨年初めて氷った大滝に訪れ、傾斜80度、高さ40mの氷瀑に魅了されてしまった。昨年は滝の左わきから巻いて上からザイルを垂らしトップロープで登ったが、今年はリードで登ろうと思っていた。この滝をアイスクライミングしたという記録はないので、リードでノンテンションで登れば初登になると思われる。
 アプローチは、御神坂駐車場から夏道沿いに登り、標高900m地点から左に折れて沢へと下っていく。沢に降りるとちょうど最後の堰堤の上に出て、後は沢を登って行くと1,000m付近に大滝がある。
 今年は暖冬で川井の「大峠の滝」は凍っておらず、この大滝も凍っているかどうか分からなかったが、今年初めてのアイスクライミングでもあるので行ってみることにした。

1日(曇り)
 6時に家を出て佐藤君を迎え御神坂へ向かう。小岩井農場付近はかなり雪が少なかった。全体的に登山口付近は雪が少ない割には、山の上にはそれなりに積雪がある昨今である。何にしても下界に雪が少ないのは楽である。
 駐車場にはテントが張ってあり、一足先に登って行った単独者もいた。ザックの重さは23kg程あるのでザックが肩に食い込む。トレースがあるのはありがたいが、スノーシューを履いて歩く足取りは重い。
 途中で一休みし、900m地点から沢に下りテントを張る。このままテントで寝たらどんなに気持ちがいいだろうか。最近眠くて寝るのが楽しみになってきた。もう少しでずっと眠るのも近いであろうがとにかく眠い。
 ザックには登攀用具だけの荷物であるがそれでもけっこう重い。ラッセルは10cm〜20cmではあるが、のんびり行くべぇと交代しながら登って行く。天気は曇りで風も穏やかであるが、氷の状態が心配だ。
 氷瀑は側壁に隠れているため近くまで行かないと状態が分からないが、どっしりとした大滝全体の岩場が格好いい感じだ。近くまで行くと氷は上から下まで続いているが、氷の厚さが20cmないとアイススクリューをセットできないのでまだ分からない。
 氷瀑の落ち口から見上げる氷はなんと素敵だろうか、見ているだけでも楽しい。氷の末端には上から降り落ちてきた雪がたまり、体が埋まりそうな位いの深さだ。氷は中央部が何とか20cmをクリアしており大丈夫のようだが、薄い氷が張り付いているので掃除をしながら登らなければならないようだ。
 少し登って1本目のスクリューを埋めた。氷は表面が剥がれやすいが、アックスがガッチリ効くところもあるので登ることができる。短い間隔で3本埋め込み、下って一番下を抜いて登っていく。スクリューにテンションをかけてみると効いているようだ。
 10m程登っていったん下る。風とともに時々上部からスノーシャワー降りてきて寒い。次に佐藤君が登って2本のスクリューを埋めて下ってきた。氷の掃除をしながら登るのでそれだけでもけっこう疲れた。
 2度ほどツリークライミングをして登る練習をしていたが、やはり本物での1年ぶりのアイスクライミングは楽しい。15m程スクリューをセットして今日は止めることにする。
 登攀用具は私のザックに入れて置いておくので、整理してザックに詰め込む。荷物が重すぎたので空身で歩くのは楽ちんで、ツボ足で歩くのも更に楽だ。スノーシューは潜らない代わりに歩きづらく、下りとなると更に歩きづらく余計に疲れる。
 テントに入るなりに一口飲むウイスキーは格別の味だ。水を作り、刺身をつまみに日本酒で乾杯する。いつも思うことではあるが、このために山で1泊するようなものである。


積雪は少なめだ


御神坂沢 最後の堰堤


沢を登っていく


大滝付近の全容


大滝の落ち口


大滝アイス全容


見上げる大滝


小田中が登る


小田中が登る


落ちるスノーシャワー


佐藤君が登る


佐藤君が登る

タイム:御神坂登山口(7:45)→御神坂沢テン場(9:50〜10:40)→大滝(13:15〜16:00)→テント(17:00)


2日(晴れ)
 昨夜は月夜で、今朝は青空が見えている。最高の登攀日和だ。たどるトレースは硬くなっているので潜らず快適であるが、空身であるにもかかわらず昨日の重い荷物のため腰が痛い。
 空は青空で風もないが今朝は冷え込んだため寒く、ダウンジャケットを着こむ。佐藤君が先に登りだし、残置したスクリューにザイルをかけていく。昨日に比べると氷はいく分硬くなっているようだ。昨日の最高点よりスクリューを2本伸ばして下ってきた。
 昨日アックスを刺した穴を拾いながら登り始め、下部のスクリューを回収しながら登っていく。昨日もそうであるが、老人クラブに属する私たちは完璧なリードは難しいため、スクリューをセットする時にはアックスにテンションをかけてやっている。登って楽しければ良いのである。
 だいたい30m弱くらいの高さを最終点とし、下降点とする支点を作る作業をする。V字スレットを作ろうと思ったが、1個の穴を開けるだけで細引きを通せる空洞の氷があった。1個の支点では心もとないので、もう1個にセットして懸垂下降点とした。
 引っ張ってきたもう一本のザイルをダブルにセットし、スクリューを間引きして回収しながら下る。V字スレットは昨年1回しかセッティングしたことはないが、スクリューを部分的に残したのは、スレットが外れても墜落を防ぐためである。
 全体的に氷が薄いので、登っているラインから左右に外れるとアックスは岩にはじかれた。いよいよお楽しみもラストワンである。最後に私が登りスクリューを回収した。V字スレットの幅は20cm程であり、その容積が体を支える強さがあるのであるから、氷の強度は凄いものだ。
 あー楽しかった、もう一度訪れたい。これから日に日に気温は上昇するわけだが、日中に溶けた氷が朝の寒さがあれば更に氷るので、まだ今後も遊べる期待はある。
 テントを撤収して、再び重い荷物を背負って駐車場へと下っていくと、大粒の雪が降ってきた。もっともっと寒くなってほしいものだ。これからは岩手山北面の氷瀑があるのだから。


朝の御神坂沢


盛岡市中ノ橋にある居酒屋「たそがれ屋」岩手県盛岡市中ノ橋通二丁目6番1号 たそがれ始めた店主 佐藤 博さん


登る佐藤君


登る佐藤君


登る小田中


さらば大滝

タイム:テント(6:45)→大滝(9:00〜13:20)→テント(14:20〜40)→駐車場(15:50)
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