太平山 前岳〜奥岳 敗退
 


2020年2月9日(日)〜10日(月)
 メンバー:嶋脇さん(青森県)、小田中 智
 コース:金山滝登山口〜前岳〜中岳(泊)〜鶴ガ岳の少し先 往復


 冬山だけガイド依頼をいただく嶋脇さんから太平山の依頼をいただいたので、金山滝から1泊2日の予定で奥岳に向かうことにした。このルートの冬はほとんど登山者は入らないため、それを狙っての登山である。
 盛岡から登山口までの道のりは150kmあり、車で2時間30分ほどかかる。初日は鶴ガ岳付近まで入りテントを張りたいがラッセル次第であり、そこまで入れないと奥岳の往復は難しくなる。金山滝登山口から奥岳までは約10kmの道のりである。

太平山(1,170m) 日本三百名山
 太平山は、秋田県中央部、秋田市と上小阿仁村とにまたがる山で、太平山地の主峰である。古くから信仰の山として知られ、現在でも大小の社殿や登山道のかたわらには多くの石仏が残っており、奥岳には太平山三吉神社の奥宮が設置されている。
 山頂からは西方に弟子還岳、宝蔵岳、剣岳、鶴ガ岳、中岳、前岳へ続き、北方へは旭岳、笹森、赤倉岳、馬場目岳へと1,000m前後の山が続いている。登山道が整備されているので前岳から馬場目岳への長い距離を縦走ができる。
 太平山地は日本海側の影響で冬は雪深く、奥岳まで近いコースの旭又登山口への林道は除雪されていないので、金山滝登山口から前岳、中岳、剣岳を経て奥岳に達するルートしかない。
 しかし、真冬は前岳までは登山者が多いが、その先からはトレースもなく入る登山者はほとんど皆無に等しい。3月中旬になると雪が締まってくるので登山者も入るようだ。

9日(曇り時々風雪)
 4時に自宅に来ていただき、秋田市街に向かって走っていく。田沢湖付近を過ぎると山道が続きコンビニはなく、秋田市街に寄り道して食料を買う。今回の食料は各自であり、冷蔵庫に入れた食料を忘れてきたことをコンビニの駐車場で初めて気づいた。最近、忘れ物、落とし物をする回数が増えてきた。帰る家を忘れなければいいのだが。
 金山滝コースの登山口にはすでに車が駐車しており、準備している間にも登山者の車が来た。アプローチが近く登りやすいためか前岳までの登山者は多いようだ。
 登山者に話を聞くと最近雪が降ったばかりらしいが、林道には立派なトレースがついていた。間もなく金山滝が現れ、急な登りをスノーシューで登って行く。雪は硬くしっかりしたトレースのため、みんなはツボ足で追い越していく。荷物の重さと歩きづらさでスピードはゆっくりである。スノーシューを背負うと2kg重くなるので歩きずらさは我慢だ。
 始めは日差しがあったが登るにしたがい風が出始め、スキー場からの合流点手前で先に登った方々が引き返してきた。風が強く踏み跡が消えているためだという。みんながみな足回りが長靴であり、それだけ気軽に登れるコースなのだろう。
ここからがスノーシューの威力発揮である。女人堂で最後の登山者も引き返し二人だけの山となり、ラッセルを交代しながら登って行くと前岳に着いた。この先は踏み跡はなく、みんなはここから帰るのであろうが、目印のピンクテープはしっかりとついていた。
 徐々に雪が深くなり、最近積もった新雪で木の枝は垂れ下がっていた。中岳に着いたのはすでに15時で、避難小屋があったので中に泊まろうと埋まった入り口を掘り起こす。中を開けると3人が寝れるスペースがあったので、お世話になることにした。
 夕食は刺身、ステーキ、湯豆腐のはずであったが、お湯で温めるインスタント食品に化けてしまったがけっこう美味しかった。忘れ物をコンビニで気がついてほんとうに良かった。食べて飲むために1泊山行をしているようなものなのだから。


駐車場からの林道


金山滝登山口


金山滝


女人堂


前岳


中岳へ向かって


中岳避難小屋

タイム:金山滝登山口(8:30)→前岳(13:00)→中岳(15:10)


10日(曇り時々晴れ)
 少し狭かったが快適に過ごせた小屋だった。これから向かう先は雲で見えなく、付近の木々は新雪が降り積もり雪が深そうだ。尾根を下り始めると雪がかぶった小枝が邪魔で歩きずらく、膝まで潜ったが雪が柔らかくザックが軽いのでまだ余裕はある。
 上空は青空で、 真っ白い枝の間から除く青空の青が美しい。枝に積もった雪の重みで枝が垂れ下がり、まるで真っ白いやなぎ幽霊みたいだ。樹間には落とし穴があり、何故か嶋脇さんのラッセル番になるとハマっていた。
 稜線の頂点は被さった枝が邪魔のため少し腹を歩き、鶴ガ岳付近の樹間から奥岳の奥へ連なる赤倉岳と馬場目岳が見えた。先に進んで間もなく雲がかかった奥岳と剣岳が見えたが、目的地は遠いかなただ。
 休憩の時にこれからどうするかを話し合う。時間的にここから先に行けるのは剣岳までで下山しなければならない。剣岳まで行っても大して意味がないということになり、ここから下山することにした。
 冬は条件が良くないと1泊2日で奥岳への往復は難しいようだ。何しろ往復約20kmの道のりである。嶋脇さんから3月中旬までにリベンジしたいと言われる。
 日が照って暖かくなったので、枝から雪の集中爆撃が始まった。ジャケットのフードを被ると暑いので、爆撃に当たるのを覚悟で中岳へと進んで行く。トレースの上を歩くことはなんと楽なことだろうか。
 中岳から振り返ると、日に照らされた奥岳が鮮やかに見えた。小屋に残した荷物をパッキングして進む前方を見ると、すぐ下に鉄骨の建物みたいなものが見えた。何だろうか?その先には秋田市郊外が見え、更に先には日本海がうっすらと見えた。
 鉄骨の建物が気になりコースから外れて行ってみると、鉄骨で組んだ大きな看板みたいなものだった。昨日のルートに戻るとトレースは風で消えていたが、赤テープの目印があった。
 前岳からはしっかりとしたトレースがあり、平日にもかかわらず登山者が訪れたようだ。途中でアイゼンを外し下っていくが荷物はだんだん重く感じられてきた。急傾斜を下りると滝が現れ駐車場は間もなくだ。
 ここから自宅まで2時間半、嶋脇さんは更に家まで2時間かかる。アプローチも遠ければ山頂も遠い太平山だ。それに恋焦がれてしまった嶋脇さんなので、敗退してしまったからにはまた近い日に来なければならない。


中岳からの下り


鶴ガ岳方面


真っ白いやなぎ幽霊


赤倉岳と馬場目岳


剣岳と奥岳


白と青のコントラストが美しい


鶴ガ岳の先 最高到達点


枝のトンネルから見る奥岳と赤倉岳


剣岳と奥岳


中岳から見る秋田市郊外と日本海

タイム:中岳(6:30)→鶴ガ岳付近(9:30)→鶴ガ岳の少し先(10:05)→中岳(12:30〜13:25)→登山口(17:00)
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