小川山 クライミング
 


2020年6月7日(日)〜9日(火)
 メンバー:清水 薫さん(雲表倶楽部、盛岡山想会)、小田中 智(雲表倶楽部、盛岡山想会)
 登攀場所:小川山 八幡沢左岸スラブ、ソラマメ下部スラブ、屋根岩3峰、屋根岩2峰、マラ岩


 今は新型コロナの影響で県境越えは自粛になっているが、そのため東京の友人は仕事ができなく時間があり、私も4月から仕事が無くお互いに数日を共にできる時は今しかないので、家族の反対を押し切って2人で小川山に行くことにした。
 盛岡から東京へと夜行バスのチケットを購入していたが、近日になって東京アラートが発令になったため、東京経由は避け現地へ車で行くことにした。
 小川山は9年前に行き、ソラマメスラブ下部、屋根岩2峰、屋根岩3峰の3本を清水ちゃんと登ったことがある。
 小川山は山梨県北杜市と長野県南佐久郡川上村の境にある標高2,418mの山で、奥秩父山地に属する。近辺は花崗岩の岩盤で構成されていて、1980年代以降、フリークライミングのメッカとなっている。
 小川山という呼び方が定着しているが、山頂はクライミングエリアから遠く、正確には「廻り目平周辺の岩場」が正しい名称だ。金峰山の北側に位置する廻り目平は、広大なキャンプサイトを有しており、クライマーだけではなく、キャンプを楽しむ人も数多く訪れる。
 小川山にはいくつもの岩場があり、キャンプ場周辺の「廻り目平周辺」、カモシカ遊歩道周辺の「金峰渓谷」、圧倒的存在感を誇る「屋根岩」、西股沢を渡渉した先にある「西股沢対岸」、金峰山方面へ向かい右手にある「八幡沢周辺」の5つのエリアに分けられ、あとはいたるところにボルダーが点在している。
 岩質は花崗岩。大きく荒い粒子で、フリクションが良く、この岩質を好むクライマーは多い。ヨセミテも花崗岩なので、これもあって「日本のヨセミテ」と言われるようになったのだろう。
 廻り目平は標高1,570mという高所にあるため、暑い夏場でも涼しくクライミングをすることができる。

6日(晴れ)
 5時過ぎに家を出て国道を走って行く。今回は旅費節約のため高速道は走らず下道を走る予定だ。道案内はグーグルマップに任せ、音楽を聴きながら走って行く。
 最上峡舟下りの駐車場で仮眠をする。最近車に手製のベットを作ったので初めて寝てみたら快適だった。今夜は清水ちゃんの別荘にお世話になりバーベキューをご馳走になるので、新潟から高速道に乗る。
 ガソリンの残量警告が出たがスタンドは見つからないので一旦高速道を降り、満腹にしてから再び高速道に乗る。この警告灯も1年に2回はやるパターンである。
 別荘は山梨県北杜市にあり、小川山までは1時間以内で行くと言い、八ヶ岳も近く登山するには最高の場所だ。奥さんともども5年ほどぶりの再開で、楽しい夜となった。
 清水ちゃんは、43年前に盛岡山想会に入会してきて、登山経験はほとんどなかったが、同年に入会した者が3名ほどいた。私のザイルパートナーはほとんどいなく、自分が登るためにパートナーを育てている時期だった。
 毎週クライミングの練習をし、秋からは冬山合宿のトレーニングに入った。彼は新人ながら頑張り、その冬には前穂北尾根、翌年には北鎌尾根を一緒に登った。
 ようやくパートナーができたと思ったら東京に転勤になり、雲表倶楽部に入会し現在に至っているが、もう43年もの付き合いになる。若かりし頃にはヨセミテのエル・キャピタンに登り、最高グレードは5.13Cを登っているみたいだ。

7日(晴れ)
 朝食をごちそうになり、小川山へ向かう。道路から見る屋根岩には雲がかかっていたが、キャンプ場に着くと晴れとなった。昨日清水ちゃんはテントとタープを張ってくれていたので、隣に私のテントを張る。
 最初のルートは左岸スラブで、金峰山への道路を少し行き八幡沢に入って行く。左岸スラブ春のもどり雪は4ピッチのルートで、準備をしている最中にメガネが無いことに気がついた。帽子に差し込んでいたが途中で落としたらしい。
 リードは清水ちゃんでグレードから比べるとなかなか難しい。小川山のスラブは特に難しいと言う。るーとはカンテラインで回りが良く見え気持ちが良い。終了点からは王冠岩と、烏帽子岩、マラ岩などが見え、天気が良いわりには気持ちがいい。
 道路付近まで下りメガネを探すが残念ながら見つからなかった。このメガネはクライミング用で、無いと細かいスタンスが見えなく、スラブの凹凸を探すのに苦労した。
 「トムといっしょ」は、トップは難なく登ったので取り付くと、かぶり気味の乗り越しで手間取り、テンションのあらしでようやく登った。
 「ブラック&ホワイト」は実質一歩が核心となっているが、私にとっては複数の核心があった。隣の隣にある「ジャーマンスープレックス」であるが、徐々にルートグレードを上げてくれたのは嬉しいが、無いもないように感じるスラブはどうにもならなくカラビナをつかんで登った。
 立ち止まっている時間だけが長いので時間だけは過ぎていき、やっとというか、もうというか終了に時間になった。
 川上村役場の近くにあるスーパーナナーズに買い物に下がり食料を買い、もどって途中の川上山荘で入浴をする。冷や汗と脂汗を流すとスッキリし、ビールとバーベキューが楽しみだ。
 キャンプ場の手前では小鹿が道路を横切って行った。もう真っ暗な時間になっていた。キャンプ場の夜は涼しく、炭火で焼く肉は美味しく、例によって昔話に花が咲く。


廻り目平キャンプ場


春のもどり雪 1ピッチ目 リードする清水ちゃん


対岸に見える烏帽子岩とマラ岩


3ピッチ目付近


終了点


トムといっしょ リードする清水ちゃん


ジャーマンスープレックス リードする清水ちゃん

八幡沢左岸スラブ
 春のもどり雪 4P 5.7
 ビスタの夏休み 5.9
 トムと一緒 5.10a
 ブラック&ホワイト 5.10b
 ジャーマンスープレックス 5.10c


8日(快晴)
 7時に起床しゆったり食事するが、涼しい代わりにハエが沢山寄ってきた。空には雲がなく、駐車場から見る屋根岩が美しい。
 今日は屋根岩のマルチを登る予定だが、まずはソラマメ下部スラブに取り付く。「生木が倒れたよ」は前回カラビナをつかんで登っていたが、今回は1度のテンションで登れた。いくらかスラブになじんできたのだろうか?しかし、隣の2本はカラビナをつかみながら登った。
 屋根岩3峰に向かいJMCCに取り付く左隣は南陵レモンで前回登っていた。最初のピンが遠くカムを噛ませて清水ちゃんがリードしていった。傾斜は強いが見た感じホールドはありそう。
 トップロープで取り付くと出だしの幅の広いクラックが難しく体が上がらない。2本目のピンからは凹状部となったがカラビナをつかみながら登り、後半はカンテラインとなり高度感がある。一歩一歩に時間がかかり、冷や汗と脂汗でグチョグチョだったが、迫力と高度感がありリードできたら楽しいだろうと思う。
 いよいよ屋根岩2峰「南稜下部」であり、しばらく下っていった。ルートは7ピッチで最終ピッチは11aある。1ピッチ目はグレードが5.6なので私がリードするが、それでもそれなりにスタンスは少なく、おまけに2ピッチ目も登ってしまった。難しくてカラビナをつかみながらやっと登ると、そこは2ピッチ目の10aだった。
 ルート図の4ピッチ目をリードするが、2B目に届けずトップを交代する。しかし、セカンドながら2回スリップし、ザイルをつかんで登る。5ピッチ目は下降してから取り付くのであるが、時間が遅くなってしまったのでここで止めにしてテントに戻った。
 スーパーに買い出しに行き、川上山荘で入浴する。炭をおこしながらビールで乾杯するが今夜は寒い。ダウンジャケットを持ってこなかったので毛布をかぶりながら飲む。今夜は昔話となり盛り上がるが、酒の量は進まなかった。


駐車場から見た屋根岩


生木が倒れたよ リードする清水ちゃん


JMCC リードする清水ちゃん


南陵下部 1ピッチ目


4ピッチ目 リードする清水ちゃん

美味しいバーベキュー

ソラマメ下部スラブ
 生木が倒れたよ 5.9
 三食すみれ 5.10a
 甘食 5.10b
屋根岩3峰
 JMCC 5.9
屋根岩2峰
 南稜下部 7P 5.10a(3P割愛)

9日(晴れ)
 今日は火曜日であるが朝からクライマーが集まってきた。今日は午後から清水ちゃんは仕事なので、奥さんが迎えに来て3人で登ることになった。
 マラ岩に行くため金峰山川西股沢を渡るのであるが、転石飛び中にキャッパリして靴は水浸しになってしまった。急な登りを20分登るとマラ岩の基部に着いた。先客がいて5.12ルートに取り付いていた。
 朝一のルートは5.9であるが、トップはスルスル登って行ったので楽勝かなと思ったら、下部が難しくカラビナをつかんで登る。やはりスラブは難しい。
 次は5.9+の「ホリデー」で、中間部はクラックをレイバックで登って行った。下部も難しくカラビナをつかんでクラック下まで登ったが、レイバックの体制に入れず撃沈した。
 最後はマラ岩のピークに立つ5.8のルートで、ピークからの眺めは最高だと言う。このルートは楽しみながら登れ、ピークからはそそり立つナイフエッジ、小川山ピーク方面、屋根岩が見渡せ、下を見ると新緑の樹林へと絶壁が続いていた。これを最後に見せてくれた清水ちゃんに感謝だ。
 妹岩の基部に下りキャンプ場に戻る。駐車場で清水ちゃんと別れ、私は入浴した川上山荘へ宿泊の予約をする。3日間私のために付き合ってくれ、登れない私のためにほとんどをリードしてくれ、キャンプでは語り合ってくれた清水ちゃんに感謝だ。


金峰山川西股沢


屋根の上のタジヤン トップロープで登る小田中


隣の12Cを登る若者


ホリデー トップロープで登る奥さん


川上小唄


マラ岩頂上のナイフエッジ


妹岩と対岸の屋根岩


烏帽子岩

マラ岩
 屋根の上のタジヤン 5.9
 ホリデー 5.9+
 川上小唄 5.8

 川上山荘で観光場所をたずね、近くにある天然水晶洞に行った。ここは世界で一つという緑色のハート形水晶が見つかった所で、本人が掘った洞窟にそれを展示し世界の水晶まで展示している洞窟だった。
 宿泊する川上山荘はキャンプ場から10分ほど下った場所で、山荘内にはオートビレイのクライミングボードがあった。食事はエスニック料理が得意で、そばを打ちパンも焼くと言い、女性に人気の食事みたいだ。


湯沼天然水晶洞






10日(晴れ)
 9時に宿を出てナナーズでお土産を買う。今日もいい天気だが、もうすぐ梅雨に入るという。今夜は福島の渡邉ちゃんの家にお世話になるので、とりあえず下道を走って行く。
 日光から高速道に乗り、17時過ぎに邉ちゃんちに着いた。彼との付き合いは45年で、昔は盛岡勤務で盛岡山想会の後輩であったが、転勤で東北を転々とした。近年になって親しく付き合うようになり、年に2度ほど私のツアーに参加している。
 近年体の調子が悪くなり始め、数ヵ月前には顔面神経痛になったが近日治ったという。歳を重ねると痛い所が出てきて年々痛い所が増えてくるように思う。
 話題はやはり昔話となり、ビールからワインに移行し楽しい夜を過ごさせてもらった。

11日(曇り)
 朝から蒸し暑く、すでに26℃だ。家までは下道を走って6時間ほどなので、今日は楽勝だ。事故らないよう最終日に気をつけることだ。
 途中で昼寝をして、家に着いたのは16時頃だった。  

 昨年からクライミングに復帰し、今年は頑張りたいと思っていた時、新型コロナのおかげで小川山に行くことができた。スラブは経験がほとんど少ないので思うように登れなかったが、登れないことに悔しさを感じた。
 しかし、スラブは岩手近辺にはなく、岩手から小川山に通うわけにもいかないので、登れる所を数多く登るしかない。残念ながらパートナーがいないので単独が多くなると思うが、年齢の関係で今登らないと登れなくなってしまうので、楽しみながらゆっくり登りたいと思う。
 清水ちゃん、3日間付き合ってくれてありがとう!
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