羅臼岳〜硫黄山縦走 ツアー登山
 


2015年8月21日(金)〜27日(木)

 メンバー:渡邉 正一(福島県)、加藤さん(千葉県)、小松崎さん(神奈川県)、櫻田さん(岩手県)、小田中 智
 コース:岩尾別温泉〜羅臼平〜サシルイ岳〜二ツ池〜知円別岳〜硫黄山〜カムイワッカ湯の滝バス停
 観 光:知床クルージング、知床岬、羅臼町、サロマ湖


 知床半島で唯一の縦走路である羅臼岳から硫黄山の縦走を企画したところ、いつものメンバーの参加と友人の邉ちゃんが参加することになった。
 邉ちゃんは友人であり、昔ザイルを組んだザイルパートナーでもある。一緒に歩くのは30数年ぶりにもなるだろうか。彼との再会も楽しみだ。
 知床はヒグマの生息地で、縦走路はヒグマの目撃も多いコースだ。そこにテント泊するのであるから、クマさんとの出会いは避けたいものだ。
 クマさんが居る所に行くのであるから出会っても仕方がないが、対策としてクマスプレーを持つことにした。
縦走後は斜里岳を計画し、最終日の観光はサロマ湖に行くことにした。

21日
 盛岡駅で3人を迎え、桜台でもう1人乗せて、滝沢ICから高速道に乗る。小雨が降る夜の高速道は目が疲れる。最近、めっきり目が疲れるようになってきた。
 船で邉ちゃんとのしばらくぶりの再会を祝って乾杯する。

22日(曇り)
 千歳恵庭JCTから道東道に入り、朝食と給油を十勝平原SAでと思っていたら、SAでありながらトイレしかなかった。高速道の終点から足寄町まではガソリンがもたないので、仕方なく一旦高速道を降りる。
 腹とガソリンタンクを満腹にし、再び道東道に乗る。トマムでは小雨が降ったが、東に向かうにしたがって青空が広がってきた。
 足寄で高速道を降り、国道241号から242号に入って行く。邉ちゃんと運転を交代しながら走っているので、今回は助手席でのんびりもできた。後ろの席では休むことなく、お姉さまたちがおしゃべりをしている。
 双岳台でペンケトーを眺め、摩周温泉で昼食にする。天気が悪くなり始めたので摩周湖には立ち寄らず、斜里に向かいウトロを目指す。
 今日の宿泊はウトロの「知床温泉民宿 たんぽぽ」だ。高台にあり知床プリンスホテルのすぐ近くにある。温泉は小さいながらも源泉かけ流しで、低料金の割には料理が有名な宿だ。
 風呂あがりに飲むビールは格別だ。食事は地元でとれた新鮮な魚介類と野菜で、明日からの天気を願って乾杯する。

23日(小雨)
 5時に宿を出発し、登山口の岩尾別温泉に向かう。日曜日とあって駐車場は満杯で、路上の片隅になんとか止める。パラパラと小雨が降っているのでカッパを着て出発する。
 登り始めて間もなく急な登りになる。羅臼岳は百名山のためか整備された歩きやすい登山道だ。下からは登山者が来て追い抜いて行った。
 弥三吉水の水場で登山者から、縦走路の三ツ峰キャンプ地の水場は現在涸れているという情報を聞いた。二ツ池キャンプ地は池に溜まった水なので、ここで5リットルの水を持参することにする。
 登り始めの私のザックは18kgだったのが、これで23kgとなった。皆さんには食料を分担したが、私は装備なので18kgは最後まで背負わなければならない。
 羽衣峠から大沢に入ると、この辺は雪が解けたばかりで、エゾコザクラ、チングルマ、エゾツツジ、エゾノツガザクラ、チシマツクモグサが一面に咲くお花畑だった。
 家に帰って分かったが、縦走時は小雨とガスのためカメラのレンズが曇り、花の写真は全滅で、風景もボケたりしていた。ショックだった。
 羅臼平までは予期しない花に励まされながら登ることができた。羅臼平は天気が悪く寒かった。山頂から下って来る方は山頂付近だけ快晴だと言う。
 時間が押しており、山頂を往復すると二ツ池キャンプ地まで行けなくなるので、明日の行動を考えると羅臼岳山頂はあきらめざる負えない時間だ。みんなの了解のもとに、縦走コースの先へ進む決断をする。
 縦走路に入ると、今までの整備された登山道とは異なり草がかぶっていた。進むにしたがいハイ松がかぶり、雨露でグチャグチャになる。
 三ツ峰キャンプ地にはフードロッカーがあり、いよいよクマさんの住む世界に入ったことを告げてくれた。水場は雨のせいか少しは流れていた。
 しだいにハイ松の背丈が高くなると、シャワーを浴びているようになる。サシルイ岳手前で単独のお兄ちゃんが追い越して行った。宿泊地を訊ねると我々と同じ所だった。
 サシルイ岳の下りでハイ松に足を取られて転ぶと、カッパの下が破れてしまった。今年買ったばかりの最新モデルである。そしてストックも曲がってしまった。
 ミクリ沼からハイ松がかぶった急な登りでオッカバケ岳の下に着く。時おり明るくなり雲が流れるが、いっこうに晴れてはくれない。ここは稜線沿いなので晴れると硫黄山の展望が素晴らしく、オホーツク海も見える。
 霧の向こうに地の池が見え、単独者のテントも見えた。付いたのは17時を過ぎていた。5人用テントを張り、荷物入れにツエルトも張る。今日は11時間行動で、邉ちゃんは超過勤務だと笑っていた。
 荷物を整理して、まずはビールで乾杯する。今夜のメニューは、野菜サラダ、きりたんぽ鍋だ。山で宿泊して一番の楽しみは食事である。今夜の食事も皆さんから大好評をいただいた。
 夜トイレに起きるとは星がまたたいでいた。
 レンズが曇っていて写真はダメでした。

タイム:岩尾別温泉駐車場(6:20)→羅臼平(11:40〜12:00)→三ツ峰キャンプ地(13:10)→二ツ池キャンプ地(17:10)


24日(曇り)
 4時に起床し、日本ソバ、焼モチの朝食をすませテントを撤収する。朝は青空が見えていたが出発時には曇りになった。
 南岳付近に一輪だけ咲くシレトコスミレを見つけた。開花時期は6月から7月なので、見つけた時は感動した。私たちのために頑張って咲いていてくれたのだろう。
 下った湿地帯には沢山のコケモモが咲き、コケと相まって庭園を思わせるような景色だ。草原にはエゾオヤマリンドウが咲き、下草は朝露でキラキラ輝いている。これは晴れている時には見れない光景である。7月初旬だったら素晴らしいお花畑が広がることと思う。
 急な登りで知円別岳分岐に登る。急斜面のトラバースから白い火山灰の稜線を過ぎると、岩峰が突出し両側が切れ落ちたナイフリッジになった。岩が脆いので注意しながら2つの岩峰を越えると急な登りとなり、そこはエゾノツガザクラやイワブクロ等が咲くお花畑だった。
 急なお花畑を越えると、前方にボンヤリ硫黄山が見えた。振り返ると雲の上に羅臼岳の上部とサシルイ岳の山頂部だけが浮かんでいた。ここまで来てようやく姿を見せてくれた。
 1,500mを境にして上は快晴なのだ。硫黄山の上空も青空が広がっている。素晴らしい眺めだ。ここから下るとまた雲の中になるので、景色を眺めながら昼食にする。
 硫黄山の斜面をトラバースしていくと山頂に登る道があった。縦走者は荷物を置いて山頂に向かうと楽なのであるが、そこには標識はない。少し下った所にザックを置いて、空身で山頂に向かう。
 間もなく斜面は急になり簡単な岩登りとなる。もちろんフィックスロープやハシゴがあるわけではない。ザックを置いた所から青空に変わり、気持ちがいい岩登りを楽しむ。
 所々急な岩を登ると目の前に青空が広がった。標識らしいものはないが大きな石にTOPと書かれていた。ここまで長く険しい道のりであった。海は見えなかったが羅臼岳の山頂だけは見せてくれた。
 岩場を慎重に下って行くが、ザイルは必要なかった。ここからカムイワッカ湯の滝バス停までコースタイムで3時間かかる。15時のバスに乗ろうと思っていたが無理で、16時50分の最終のバスになりそうだ。
 下り始めるとまた雲の中になり、硫黄川の踏み跡をたどって行く。ガレ沢はやがて石が出てきて、岩盤のナメ滝となった。巻き道はやがてなくなり、ナメ滝を下るようになり雪渓も出てきた。
 今朝まで小雨が降っていたので岩は濡れており滑りそうだ。さらに下るとナメ滝もいくらか急になり、安全を期してザイルを使用する。そんな下りなので思わぬ時間をくっていた。
 ようやく沢出会いから急な登りで尾根上に出ると携帯が通じたので、今夜泊まる清里町の宿に遅くなることを告げる。
 頑張って下っているわりには時間だけが過ぎていく。バスに間に合うかギリギリの時間であるが、みんな疲れていて走って下ることはできなかった。新噴火口からも遠く、バス停に着いたのは17時半を過ぎていた。
 携帯は通じないので携帯が通じる場所まで歩く。エゾシカが近くまで来て迎えてくれた。30分ほど歩くと開けた高台になり携帯が通じた。
 車を止めた場所まで歩くとなると20km程ある。夜の歩きはクマとの遭遇が大きくなる。国土交通省を退職した邉ちゃんは、斜里警察署に電話して今の現状を伝え、救助要請ではなくこれからの対処の仕方を聞いた。テント、食料もあるので泊まることも可能である。
 10分ほどして電話があり、パトカーとタクシーで迎えに行くという返事が来た。しだいに暗くなり始めてきた。ヘッドランプを点け、ラジオをつけ、クマにこちらの存在を伝えるようにした。
 30分ほどでパトカーとタクシーが迎えに来てくれた。正直助かった。邉ちゃんの適切な対応に助かり、時間外に駆けつけてくれた方たちに感謝しながら駐車場まで送っていただいた。
 宿泊先に連絡すると着く時間が遅いので泊めれないとお言われた。遅くなっても予約しているのだからと食い下がったがダメだった。この電話は間違って明日泊まる所に電話したのだが、それを分かったのは翌日のことだった。
 これから宿を探すとなると大変である。もう20時になっているのだ。ウトロに向かって走っていると1件目のホテルがあり、駐車場に着くとおばちゃんが出てきて、泊めていただけることになった。
 料金は夕食なしの朝食付なので、立派なホテルにしては安かった。食事ができる所を紹介してもらい、みんなにはビールを飲んでいただく。
 ホテルで風呂に入り横になると、今日の出来事が走馬灯のように流れていった。


二ツ池から眺めるオッカバケ岳


二ツ池キャンプ地にて


メアカンキンバイ


シレトコスミレ


エゾノツガザクラ


イワブクロ


羅臼岳とサシルイ岳


硫黄山にて


カムイワッカのエゾシカ


カムイワッカ川の滝

タイム:二ツ池キャンプ地(6:25)→知円別岳(9:10)→硫黄山(12:05〜15)→カムイワッカバス停(17:55)


25日(晴れ)
 今日は斜里岳の予定であったが、みんなの意見で観光することになった。美味しい朝食をご馳走になり、知床観光船の予約をして港に向かう。
 時間が早いのでオロンコ岩に登ると、青空の下にウトロ港と知床岬が見えた。岬の上には雲がうっすらと取り巻く硫黄山が見えている。最高のロケーションだ。
 平日にもかかわらず観光船は満杯で、予約しないと乗れないようだ。2階に席を取り座っていると間もなく出航した。ここは外海に面しているので波がありけっこう揺れた。小松崎さんは恐いらしく帰ると言っていた。
 思ったより岸に近い所を走るので観光ポイントが近くで見れる。走って間もなく青空の中に硫黄山が見えた。羅臼岳は雲に隠れて見えなかったが、南岳、知円別岳、硫黄山への縦走路がきれいに見えた。登山中は回りの山々は全然見えなかったので感動した。
 残念ながらクマは見れなかったが、海から見る知床はとても素晴らしかった。
 天気がいいので知床峠に向かう。峠でも羅臼岳山頂は見えなかったが、屏風岩が見えた。そして、西側に羅臼町側のオホーツク海が見え、その先に国後島が見えた。青森港から函館間よりも近い感じだ。これがロシア領とは信じがたい。これは日本の領土だ。
 天気もいいし時間もあるので、羅臼町まで行ってみることにする。峠から下って行くとお目当ての爺爺岳がかすんで見えた。爺爺岳は国後島の最高峰で1,822mある山だ。かすんでボンヤリとしか見えなかったが、私はこの山が見たかったのだ。
 羅臼町に行くと羅臼橋ごしに羅臼岳が見えた。やっと間じかに姿を現した羅臼岳は素晴らしい山容だった。今回はこの山頂をパスしているので来年にもリベンジしなければならない。
 今日の宿泊場所はサロマ湖の船長の家である。この宿は友人の藤原さんから紹介されたのだが、なんでもカニが食べきれないほど食卓に出ると言う。今夜はカニざんまいだ。
 ウトロに戻り海岸沿いの知床国道を走って行く。網走から238号を走り17時過ぎにようやく船長の家に着いた。ここで昨夜間違って電話した先は、ここだということが分かった。
 しかし、予約しているのは昨日で今日ではないと言われた。最初は昨日の予約をしていたが、ツアー日程が変更になったので予約を翌日に変更していたのだ。あきらかに宿側のミスである。今日は満杯みたいだったが、調整してくれて泊まることができた。
 部屋の窓からはサロマ湖が見え、夕日が沈むところだったので急いで岸辺に向かう。岸辺に着くとちょっとの差で太陽は沈んでしまっていた。それでも十分美しい夕日だった。
 温泉に入り、いよいよ食事の時間になった。食卓に座ると1人分のおかずが1mもの幅に並べられていた。カニは毛ガニ1杯、花咲ガニ、タラバガニ。刺身、焼魚、シャブシャブ、その他たくさんある。
 まずは乾杯して食べ始める。どうみても食べきれる量ではない。さらに3品ほど持ってきた。向かいに座ったお姉さまは、ビールも飲まず、話もしないでカニに夢中だ。私のカニも剥いてもらいいただく。ビールと日本酒を飲みながらのごちそうは、食べきれるわけもなく半分ほど残した。
 女性陣は、しばらくカニは見たくないと言っていた。こうして最後の夜はご馳走に苦しめられた。


オロンコ岩


オロンコ岩頂にて


ウトロ港と知床岬


ハマナス


観光船から眺める硫黄山


カムイワッカの滝と硫黄山


知床岬から望む国後島


国後島の爺爺岳(1,822m)


羅臼橋から望む羅臼岳


羅臼岳拡大


サロマ湖に沈む夕日


26日(曇り)
 朝食はそれなりで、ゆっくりといただく。サロマ湖の西側の突端である三里浜に行く。行ったはいいが何もない浜で、オホーツク海を眺めて帰途につく。
 遠軽から旭川紋別自動車道に入り、旭川から苫小牧港に向かう。今回のツアーは山を登るよりも道路を走る方が長く、あらためて北海道の広さを思い知る。
 明日は三陸海岸の観光予定であったが、明日は天気が悪いので、24時近く出向の船の予約を早い船に変更し、早く家路につくことにする。

27日
 八戸駅に関東組をお送りし、我々3人は盛岡へと帰る。邉ちゃんを盛岡駅に送り一人になると、急に静かでなぜか寂しさがあった。今まで1週間5人でワイワイしていたせいである。


 知床連山の縦走ではバスに乗り遅れてしまいウトロの駐在さんに迷惑をかけてしまったことは申し訳なく思う。
しかし、登山道の状態が悪く早く歩けなかったのでいたしかたない。道路に出てから警察に相談したのは的確な判断であり、それを速やかに実行したのは邉ちゃんである。
 反省することは何もないが、運が良く良い方向に切り抜けれたと思う。今後このツアーを組む時は、2泊3日で花が咲く時期にのんびり歩いて見たいと思う。
 クマとの出会いがなかったのが残念だったが、知床の観光は天気も良くなり素晴らしい景色をたくさん見ることができた。
 邉ちゃんには運転を手伝っていただき、その他にもいろいろ手伝ってくれた。ありがとう。また一緒に歩けたことがとても楽しかった。



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