白峰三山縦走 ツアーガイド
 


2015年8月5日(水)〜9日(日)
 メンバー:佐藤 博(盛岡市)、渡邉さん(盛岡市)、吉田さん(盛岡市)、加藤さん(盛岡市)、木島さん(神奈川県)
      小田中 智
 コース:広河原〜大樺沢二俣〜八本歯のコル〜北岳山荘〜北岳〜北岳山荘〜間ノ岳〜農鳥岳〜大門沢下降点〜
     大門沢小屋〜奈良田


 北岳は昨年から依頼をいただいていたので日程を決め、コースは三山の縦走としメンバーを募った。
8月始めはまだまだ高山植物も豊富で、花と展望を満喫できる時期だ。神奈川県からの参加者があり、甲府駅で合流することにした。
 コースは、大樺沢二俣からバットレスを眺めながら八本歯のコルに登り、北岳山頂に立って北岳山荘に宿泊。翌日は間ノ岳から農鳥岳を越えて大門沢小屋泊。農鳥小屋に泊まると縦走の工程が楽になるのだが、前回の縦走時で農鳥小屋の親父の対応とトイレのひどさに閉口したので、無理をしてでも農鳥小屋には泊まりたくなかった。
 3日目は、奈良田第一発電所に下り、駐車場まで歩き登山が終了となる計画とした。

5日(晴れ)
 家を4時半に出て、各自の自宅に迎えに回る。今日も天気が良く、登山中もまずまずの天気の予報だ。
 2時間ごとに休憩をしながら走って行くが、陽が高くなるにつれ暑くなってくる。走行する道路は、栃木県久喜白岡JCTから八王子に抜け、中央自動車道を走って甲府に出る予定である。
 甲府の待ち合わせが4時であるが、甲府から奈良田温泉まで2時間かかるので、早めに着きたいと思う。
 久喜白岡JCTから間違って東側の圏央道に入ってしまい、1区間で降りて戻る。八王子に向かう圏央道は建設中ですぐに終わってしまった。
 迷いながら桶川ICを目指し圏央道に乗る。宇都宮から中央自動車道に入り、甲府南ICで高速道を降り、甲府駅で木島さんを迎える。これでメンバーは全員そろった。
 6時頃ようやく「民宿 えびなや」に着いた。電話が通じなかったため、宿のご主人が心配して外で待っていてくれた。
 ご主人に外の温泉に連れて行ってもらい、露天風呂に入る。明日の好天を願って乾杯する。バスは5時半なので早々にログハウスの寝室で休む。

6日(晴れのち曇りのち小雨)
 5時前に朝食を出していただき、駐車場に向かう。昨夜は簡単な天気祭りではあったためか夜半は雨が降っていた。しかし、朝から青空が広がっている。バス停には列が並び、北岳登山の人気がうかがえる。
 ギューギュー詰めのバスに立っての50分は辛く、広河原でバスを降りた時にはすでに疲れていた。身支度をととのえ、いよいよ出発する。
 登山口に架かる吊り橋からは、青空を背景にした北岳が聳えている。ゆっくりと登り始めると次から次と追い抜かれ、沢の冷たい冷気が清々しく気持ちがい
 しばらく歩くと道脇には花が咲き、まだ8月の初旬ではあるが秋の花が咲き始めていた。花の種類は登るごとに増えて行くので、歩くよりも写真を撮って立ち止まる時間の方が長いようだ。その中で、写真を撮るふりをして休んでいるのは私だった。
 赤紫色の筒をぶら下げたホタルブクロがいたる所に咲いていた。二俣から左俣コースに入ると沢には雪が残っており、右の登山道を登って行く。徐々に傾斜が急になってくるとバットレスも近くになってきた。
 青空だった空は白い雲に変わり、天気が崩れてきているようだ。宿のご主人の話では、ここ2〜3日は夕方雨が降ると言っていた。
 ガレた沢の上部にはバットレスの大岩壁があり、Dガリーから四尾根が見えている。若い頃は壁を登っていたが、夏の北岳バットレスには興味がなく、このバットレスは一度も登ってはいなかった。年齢を重ねた今になって、四尾根を登ってみたいと思う。
 12時を過ぎるとバットレスには雲がかかり、上部は見えなくなってきた。ガレた急登を越えると階段が現れ、この階段は八本歯のコルまで続く。更にペースを落とし、立ち休みを繰り返しながら木の梯子を登って行く。
 八本歯のコル付近にはタカネビランジュが咲き、急登から階段登りの疲れを癒してくれた。コルからは岩場となり、岩の割れ目や急傾斜で落ちる斜面にはチシマギキョウなどが咲いている。
 遠くで雷の音がすると間もなく小雨が降ってきた。これから北岳山頂を経由して北岳山荘に行くつもりであったが、雨が降ってきたので山頂は明日にして、トラバースルートから北岳山荘に向かう。
 トラバースルートは更に多くの花が咲いていたが、雨の岩場ではゆっくり眺めることができず、横目で見つめながら小屋に向かう。小屋で手続きをすませ部屋に入るが、思ったほどの客はおらず部屋は広々としていた。
 まずはビールで乾杯していると雨があがり、窓から頭が雲に隠れた富士山が見えた。間もなく青空となり、雲の上に浮かんだ富士山が見えた。
 明日は北岳山頂に行かなければならないので、朝食時間まで待っていられないため、返ってきてから食べれないかを交渉すると、冷めた朝食でもよければとのありがたい返事をいただいた。先月泊まった白馬岳頂上宿舎もそうであったが、若い従業員の方が多く、親切な対応でとても気持ちよく過ごせた。
 美味しい夕食を食べながらビールで乾杯し、早々に布団に潜りこむ。


吊り橋から望む北岳


大樺沢


イブキトラノオ


ミヤマアキノキリンソウ





モミジカラマツ


ミヤマハナシノブ


タカネナデシコ


タカネナデシコ


ホタルブクロ





北岳バットレス


Dガリーと四尾根(左)


ミネウスユキソウ


八本歯のコルから上のハシゴ


チシマギキョウ


タカネビランジ


トウヤクリンドウ


キンロバイ


ミヤママンネングサ


イブキジャコウソウ


イブキトラノオ


キタダケトリカブト


北岳山荘の部屋の窓から見た富士山

タイム:広河原(6:45)→大樺沢二俣(10:50)→八本歯のコル(13:25)→北岳山荘(15:00)


7日(晴れのち曇り)
 3時半に起床して、空身で4時に出発する。まだ真っ暗なのでヘットランプをつけて歩いて行くと、東の空が明るくなり始めてきた。空が赤くなり始めてきたが池山吊尾根上部の稜線に阻まれてご来光は望めなかった。
 急なガレを登り、岩稜を越えると登山者が集まる山頂に着いた。雲が高く遠くの山々は見えなかったが、遠くでは八ヶ岳、雲に浮かぶ富士山がぼんやりと見えた。よかった、晴れてよかった。今日も昼過ぎまでは天気が良さそうだ。
 みんなで記念写真を撮り、朝食が待つ北岳山荘へと下って行く。山荘の食堂には我々だけの朝食が用意されていた。ありがたく頂き、荷物を整理する。
 昼弁当をもらって、間ノ岳目指して歩き始める。山頂を往復した分、今日の行動は長丁場だ。計算では、小屋の到着が17時過ぎになると思われる。
 振り返る北岳は何とも言われない山容で、花をめでながらゆっくりと進んでいく。間ノ岳山頂付近は雷鳥の生息地であるが、運よく雷鳥が見えた。佐藤君が追って行くと下の方に下がって行き、写真を撮ることはできなかった。
 ガレ場を下り農鳥小屋に着くと、汚い格好のオヤジが話しかけてきて、どこを何時に出てきたかを訊ねてきた。無言で通り過ぎると、「そのペースで先に行くと遭難だな」と言った。この小汚く口の悪い老人は、名物の農鳥小屋の馬鹿オヤジである。
 みんなもその言葉を聞いており無視して通り過ぎるが、以後この言葉が話のタネになり、話題のバカオヤジになった。あるお姉さまは農鳥小屋を鳥小屋と呼び、私はオヤジをトサカオヤジと名付けた。
 鞍部から急な登りを、さらにゆっくりと登って行く。14時前にようやく農鳥岳に着いた。間もなくご夫婦の方が来て、話していると、鳥小屋のトサカオヤジに「これからじゃ、三途の川を渡るな」と言われたという。
 その言葉は我々よりもひどい言葉で、登山者に対して言ってはならないひどい暴言である。自分の小屋に泊まらせるために吐いた言葉であろうが、そんな暴言を履いたら自分で自分の首を絞めることが分からないのだろうか。本当に馬鹿オヤジである。
 農鳥岳から大門沢小屋までのコースタイムは3時間10分である。下りではあるが急なゴロ岩混じりの下りで、足がトコトン疲れる下りだ。急いでも危険が伴うだけなので、ゆっくりと下って行く。小屋は予約しているので遅くなっても大丈夫だろう。少し小雨が降ったが間もなく晴れた。
 18時ようやく小屋に着いた。予約しているにもかかわらず、食事の時間は終わっているので食事は出せないと言う。何とかお願いしてモチラーメンを出してもらう。部屋は5人部屋の個室で少し狭かったが、我々だけの夜を過ごすことができた。
 軽くウイスキーを飲んで布団に潜る。


八本場のコルの朝焼け


山頂手前から見た富士山


間ノ岳


ウサギギク


山頂への岩場


北岳山頂


甲斐駒ヶ岳(左)、八ヶ岳(右奥)


八ヶ岳 赤岳


雲に浮かぶ富士山


山頂からの下り


シコタンソウ


北岳山荘と間ノ岳


北岳山荘から見る北岳


チシマギキョウ


イワベンケイ


間ノ岳にて


農鳥小屋と西農鳥岳


西農鳥岳


農鳥岳にて


シモツケソウとキタダケトリカブト

タイム:山荘(4:00)→北岳(5:45〜6:00)→山荘(7:00〜7:40)→間ノ岳(9:50)→農鳥岳(13:50)→大門沢小屋(18:00)


8日(晴れ)
 5時に起床し、朝食をいただく。おかずは玉子と佃煮が少しという朝食だ。ずいぶん質素な食事である。北岳山荘に比べると宿泊料金が700円しか違わないのに、雲泥の差である。
 そして、トイレがこれまたひどい。足元に敷いただけの板から、ウンコがそばに見えるのである。板が外れたらクソツボにドブンだ。農鳥小屋はもっとひどい。沢に垂れ流しで、落ちていくのが見えるのである。
 21世紀の今の時代に、自然を一番に大切にしなければならない山小屋が、汚物を垂れ流しにしているのである。
 こんな状態を行政が見逃しているのだから、山梨県のモラルの低さがうかがえる。それに比べ北アルプスの山小屋はきれいに管理されている。小屋の経営者は、登山者が満足し清潔に過ごせるようにもっともっと考えるべきではないだろうか。
 奈良田第一発電所に11時、民宿のご主人が迎えに来てくれることになっているので、急いで下る必要はない。ゆっくりモーニングコーヒーを飲んでから出発する。
 今日も晴れである。丸木橋を数回渡り、朝の木漏れ日を浴びながらのんびり下って行く。いったん沢から離れゆったりした雑木林を下るが、急な坂を下り沢沿いの道を歩く。
 大きな吊橋を渡ると取水口に着いた。間もなく工事用林道に着いて、林道を歩くと発電所のバス停だ。
 日陰で30分ほど迎えを待つが来ないので歩いて行く。車に着くと、駐車場の手前の橋が見える付近に珍しい花があったと言うので車で戻ってみる。オレンジ色のフシグロセンノウだ。
 奈良田の温泉で入浴し、名物の手打ちそばを食べ、甲府駅で木島さんと別れる。一緒に温泉に泊まれないのがとても残念だ。我々は石和温泉に泊まり明日盛岡に帰るので、温泉民宿 やまとに向かう。
 宿の方にワイナリーに案内していただき買い物をする。ここの名物は、ほうとう、馬刺し、鳥もつであることを知っていたので、食べるのを楽しみにしていた。
 待ちに待った夕食だ。昨夜は粗食だっただけに、全てが美味しく感じる。実際に美味しいのである。明日は帰るだけなのでゆっくりの出発である。話しながら酌み交わす酒は美味しく、楽しく、幸せを感じるひと時だ。木島さんがいなかったのが残念でならない。


朝のコーヒータイム


大門沢小屋


大門沢小屋の便所


丸木橋を渡る





早川水系発電所


ツリフネソウ


フシグロセンノウ


早川

タイム:大門沢小屋(6:50)→奈良田第一発電所(10:40〜11:30)→駐車場(12:00)


9日(晴れのち曇り)
 7時に朝食をいただいて、8時過ぎに出発する。中央道に向かって走って行くと、道路際の果樹園で桃を販売していた。山梨県は桃の産地でもあるので、食べていくことにする。1人1個の割り当てなので、私は皮をむいて丸のままかぶりつく。ダラダラと汁が滴り落ちるが美味しい。
 朝飯を食べたばかりでの桃1個は満腹である。高速道に入ると眠気が襲ってきた。佐藤君と運転を交代しながら走り、19時ころ家に着いた。


桃を丸かじり


 天気と花に恵まれ、最高に楽しい素晴らしい白峰三山縦走だった。2日目の道のりはかなり長かったが、みんな頑張って歩いてくれた。
 山頂から見つめた山々、それを見て今度はあの頂に立ちたいと言う目標が出てくる。みんなはどこに行きたいと思っているのだろうか。私は甲斐駒ケ岳の右に尖がって見えた八ヶ岳の赤岳に雪がある時期に行きたいと思った。
 今回は、登ったり下ったりしながら峰々を越えながら歩く縦走登山だったが、ピークへ登って戻る日帰り登山に比べると、数日にわたって歩くため体力的に厳しさがあるが、高所に泊まって眺める展望は素晴らしく楽しさも倍増する。私はそんな縦走登山が好きだ。



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