岩手山 屏風尾根から焼走り
 


2020年3月23日(月)〜24日(火)
 メンバー:嶋脇さん、小田中 智
 コース:七滝登山口〜七滝〜屏風尾根〜赤倉岳〜平笠不動小屋(泊)〜岩手山〜第一噴出口跡〜焼走り登山口


 2泊3日で和賀岳縦走の依頼があったが、初日が雨のため日程を1日ずらし、岩手山屏風尾根から焼走りへの依頼に変わった。

 岩手山屏風尾根は、岩手山山頂の北西にある平笠不動避難小屋から西北西に伸びている岩稜の尾根で、尾根の中間にある赤倉岳は南面が岩壁帯となっている。
 稜線上には岩峰は3つあり、平笠不動が1峰、赤倉岳に向かって2峰、3峰があり、3峰は高さが30mある大きな岩峰である。尾根は赤倉岳からは七滝コースに沿うように伸び、七滝付近で尾根が終わる。
 八幡平市側から屏風尾根に突きあげる沢はイタザ沢と洞ヶ沢があり、多くの滝がある沢なのでクライミングが対象となる沢である。山頂から平笠不動小屋、3峰を経てお花畑へ通じるコースがあり、平笠不動小屋から焼走りへ続くコースはあるが、3峰から先の屏風尾根には登山道は無い。
 夏は深い竹藪に覆われているため、登山の対象は雪がある冬から残雪期となり、冬に屏風尾根を歩く登山者はほとんどいない。赤倉岳から見る岩手山の姿は美しく、お花畑を挟んで対峙する鬼ヶ城のギザギザの稜線も素晴らしい。
 こんな景色を見ながらの登行は素晴らしくきれいで、冬は1泊を要する魅力あふれる尾根だ。

23日(晴れ時々風雪)
 5時半に焼走り駐車場に集合し、嶋脇さんの車を駐車場に残し七滝登山口に向かう。昨日は山では雪だったみたいで山容は真っ白だ。あまりラッセルが無いことを願う。
 登山口からはトレースがあり、潜らないので楽をして七滝まで歩くことができた。休んでいると単独の登山者が来て声をかけられた。知人である「パソコンスクールむげん」の小笠原さんだった。
 昨夜までの新雪は20cm程あったが、屏風尾根に一直線に向かうトレースがあったので後をたどる。単独者のトレースで、下りにはスノーボードで下ったみたいだ。尾根の主稜に出ると小笠原さんのトレースがあった。
 今日の天気は移り変わりが激しく、雪が降り始めたかと思うと日が差し始め、天気が回復したかと思うと風雪となったりであるがトレースに助けられ、ゆっくりではあるがワカンで登っていく。間もなくトレースは下山のトレースとなり、ラッセルとなった。
 赤岳が見える始めると雪が硬くなり、アイゼンに履き替える。鬼ヶ城の稜線から続く黒倉岳東壁が日に照らされて美しい。一昨年の1月に来た時には深いラッセルで、風雪のため何も見えなかったことが思い出された。
 赤倉岳に着くと岩稜の先に見える山頂のラインがみごとだ。もうすでに12時を過ぎており、平笠不動小屋はまだまだ遠い。しかし、これからは岩稜と急な雪の斜面もあるので飽きずに楽しく歩けるし、景色も美しいので楽しみだ。
 3峰鞍部の手前に20m程の断崖があったので、少し戻ってイタザ沢側の斜面をトラバースする。新雪は30cm程あり急斜面のトラバースであるが、雪崩れる可能性は低かったので大丈夫だ。この斜面は条件が悪ければ雪崩れる確率も高くなる。
 時々青空になるので山頂のラインは優美で、3峰の岩場は新雪で白く迫力があった。ここを越えると1時間かからないで平笠不動小屋に着くので、一口飲むウイスキーが待ち遠しい。
 小屋に着くと屋根の上部だけ残してスッポリと雪に埋まっていた。冬期入り口は北東側であるが深く埋まっており、反対側は上部の窓は見えているが鍵がかかっていた。今回はスコップもテントも無いので、ピッケルで掘り起こすしかない。
 雪はそんなに硬くはないが中々はかどらない。冬期入り口は上部にあるのでそんなに深くはない。やがて入り口が見え始め、交代しながら掘っていくと入り口を開くことができた。
 この小屋の冬期入り口の作りが悪く、下に降りる入り口には取っ手が無く、階段はつかまる所が狭く、降り口にはつかまる所も無い。滑ったら3m近くも落ちてしまうのである。文句を言っても仕方ないが、泊まれるだけでも有難いか!
 荷物を整理しながら一口飲むウイスキーはたまらなく美味い。雪を溶かして水を作り夕食にする。私の献立は刺身とホルモン焼きである。嶋脇さんとは先々週に太平山を一緒に登ったばかりである。いつも冗談を言い合っている仲である。


七滝登山口


尾根から見る黒倉岳東壁


赤倉岳方面


赤倉岳


赤倉岳から見る上部屏風尾根と岩手山


山頂と鬼ヶ城


黒倉岳、姥倉岳、三ッ石山、大深岳


3峰と山頂


嶋脇さん


3峰と山頂


3峰


山頂


3峰を振り返る


1峰と山頂


平笠不動避難小屋

タイム:七滝登山口(6:30)→七滝(7:30)→赤岳(12:30)→3峰手前(15:45)→平笠不動小屋(16:20)


24日(曇り時々晴れ)
 窓から差し込む光で目覚める。11時間近い睡眠なので快適な目覚めである。嶋脇さんは新聞配達もしているので、山に入るとたくさん眠れるので寝だめができるみたいだ。
 外に出ると風は冷たいが日が差しており天気が良い。始めは浅いラッセルだったが、進むごとに雪は硬くなっていった。ふり返ると昨日登った屏風尾根が朝日に照らされて美しい。
 雪は更に硬くなり、アイゼンで踏みしめる雪がキュッキュッと鳴り小気味よい音がする。今日は真っすぐ頂上に登るように登っていく。遠くの山々は雲に隠れ見えないが、裏岩手の道のりは大深岳までは見えていた。
 山頂は風は強い方ではないが冷たい風が頬をさす。気温は氷点下8度ほどだ。寒いので写真を撮っただけで下っていく。下るルートは外輪から第一噴出口跡へ一直線に下る予定であり、雪が硬いと下るのに面白みがある。
 外輪を少し下ってから下り始めたので、最短ルートから下に向かって右側を下り始めた。最初の5mは急な下りで、ステップを深く刻んで下る。ストックの雪輪を取った先は、硬い雪に食い込むのでピッケルの代わりとなり下りやすい。これは太平山の弟子返りで試した方法である。
 雪の斜面からザレ場となり、右寄りに下って雪の斜面に出る。この斜面は風に飛ばされてか通年より雪が少ないように感じた。雪の斜面を噴出口跡に向かって左寄りに下るが、硬めのラッセルとなり歩きづらい。時折雪となり、今回は早変わりな天候だ。
 噴出口跡に下るとトレースがあり、ワカンを付けてトレースをたどって行く。ルートは夏道沿いから溶岩流へと下っており、真っすぐ下るこのルートは残雪期には良いルートだ。ふり返る岩手山の山容は、青空がバックとなり薄い雲が模様を作っていた。
 焼走りの湯は休業だったため、八幡平温泉森乃湯で遅い昼食を食べ入浴をする。山から下りて来ての風呂は気持ちがいい。ここで酒を飲めたら天国だ。


朝の山頂


小屋と1峰


樹氷と山頂


山頂


屏風尾根


山頂にて


焼走りへの下り口


外輪の岩場 左が故杉村君のレリーフ付近


硬い雪のラッセル


第一噴出口跡から


溶岩流から岩手山

タイム:平笠不動小屋(8:20)→山頂(9:50)→第一噴出口跡(12:05)→焼走り駐車場(13:55)



岩手山パノラマラインから見る屏風尾根
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