猿岩 KGカンテ・右ルート登攀
 


2021年10月24日(日)〜25日(月)
 メンバー:藤原 豊さん、小田中 智
 ルート:24日/KGカンテルート、25日/一ノ壁 右ルート〜KGカンテ


 猿岩は、胆沢川の上流、胆沢ダムの右岸にそびえる石英安山岩質凝灰岩の一大岩峰で、その上部に猿岩神社がありユキツバキが自生する。標高549mピークの西側に形成された柱状節理の岩壁帯は、高さは約200m、幅は300m程に広がる柱状節理の岩場で、山頂直下から一気に胆沢ダム湖に落ち込んでいる。
 胆沢ダムは10年ほど前に建設された大きなダムで、以前には小さな石渕ダムがあり、それを拡張したダムである。当時は集落や温泉があり、ピークの下には猿岩隧道があり、林道は一関方面へと続いていた。
 当時は隧道の手前に車を止め、山を右から回り込むようにダム湖のわきを通って岩場の取付へ向かっていた。登攀するピッチは4ピッチ〜6ピッチあり10本程のルートがある。
 岩は岩質の性質上クラックはなく、リスも少ないためボルトが多く使われ、フリクション主体の岩のためオーバーハングでなくても人口になる部分が多い。上部帯は柱状節理がぶら下がるオーバーハング帯で、逆階段状の登りとなる。大ハングルートでは4mの庇がありボルトにぶら下がりながら登る。
 当時のグレードは4級下〜5級下で、人工はA1〜A2ある。以降にフリー化され、KGカンテは5.10a、右ルートが5.10bのグレードがある。
 胆沢ダムができてからは前にあった林道と隧道が水没してしまったため、ピークから急斜面を下り4回の懸垂下降をしないと各ルートに取付けなくなってしまった。

 ここ10年間ザイルパートナーがいなく登れなく、一昨年前にようやく登ってからもまた登りたいと思っていた。若い頃のザイルパートナーであった二戸の藤原君が、長い時を経て岩登りに戻ってきてくれたので、38年ぶりにザイルを組むことになった。
 若い時には猿岩でトレーニングし、穂高、谷川、剣の岩を目指したものだった。私にとって猿岩は、夏も冬もゲレンデとして親しんだ岩壁だった。

24日(晴れ)
 ようやく天候が安定してクライミング日和となった。つぶ沼の駐車場で待ち合わせ、猿岩神社の駐車場に向かう。ダム湖の道路から見ると猿岩が胆沢ダムに浮かぶように見え、一ノ壁から三ノ壁までの全容が見える。素晴らしい眺めである。
 駐車場に着くと北上山岳会の諏訪木さんら3名がおり、クライミングの支度をしていた。猿岩の岩壁へは駐車場からすぐ上にある猿岩神社を経て、猿岩のピークへと踏み跡がある。この付近にはユキツバキの群落がある。
 山頂から北に50m程進むと下降点のフィックスロープがあり、ロープを伝って左へと下れるようになっている。諏訪木さんが自分のロープで懸垂下降していったので、そのザイルを使わせてもらいKGカンテ終了点へと下降する。
 カメラを上に忘れてきたことがわかり、撮影は携帯で行うこととなった。そこからは自分たちのザイル2本を使い、KGカンテ4ピッチ目終了点へと懸垂下降する。ここから中央ルンゼンへ向かって2回の懸垂下降し、ブッシュから濡れた中央ルンゼを下る。50mロープ2本で4回の懸垂下降をしてKGカンテ取付きに着くのである。
 仕度して藤原君トップで登り出していると、ザイル操作でアプローチシューズが転がってしまい、途中で止まらずに見えなくなってしまった。この下は一気にダム湖に落ち込んでいるので、ズックはダム湖で泳いでいることだろう。
 山頂からの下山はクライミングシューズで下らなければならないことが心配である。最近は何かかにかのヘマをするようになってしまったのである。
 トップは軽やかな身のこなしで見えなくなり、50mいっぱいでピッチを切った。彼は岩登りを止めてから35年程たち、今年の夏からフリークライミングを始めたばかりである。私はというと、一昨年からフリークライミングを始めたが、天性の才能が無いばかりではなく下手の横好きである。
 カンテから眺めるダム湖は美しく、白い橋が青いダム湖を横切るラインが素敵だ。カメラを忘れたため、撮影するにはザックを降ろしてカメラを出さなければならないので面倒くさい。
 2ピッチは私がリードし45mザイルを伸ばし、本来3ピッチ目終了点近くに着いた。ここからは美しいジェードルが上へと伸びるKGカンテの核心部で、傾斜が強くはないがホールド、スタンスとも細かく、フリーで登ると5.10aのグレードがある。
 4ピッチ目を私がリードし、30m登ってピッチを切る。5ピッチ目は終了点を過ぎ、下降点付近まで登ってもらい登攀を終了した。岩はカラカラに乾いてフリクションはバッチリ効くが、私の足と気持ちが細かいスタンスには効かなく、冷や汗がとめどなく出ていた。天候は爽やかな秋晴れで、景色も美しく楽しいクライミングだった。
 下山は心配していたクライミングシューズでの下りであるが、歩き始めて横向きで下るとさほど滑らなかった。どうやらクライミングシューズは、下山にも使える靴のようだ。宿泊はつぶ沼のキャンプ場とし、私だけ町に買い物に行き食料とズックも購入した。
 テントで飲む酒は美味しく、語り合い、藤原君がクライミングに戻ってきてくれたことに感謝しながらほどほどに飲んだ。明日は右ルートで楽しみだ。猿岩では右ルートを登らないと、猿岩は語れないのである。


ダム湖展望台から見る猿岩


駐車場から登る猿岩のピーク方面


猿岩神社


KGカンテ 2ピッチ目


3ピッチ目 核心ピッチのジェードル


3ピッチ目のジェードル


4ピッチ目


5ピッチ目 終了点の下


25日(晴れ)
 標高が高いせいもあり冷え込み、朝には霜がはっていた。ゆっくりと朝食を食べ、朝霧のダム湖を横切っていく。KGカンテの終了点から、右ルート沿いを4回の懸垂で右ルート取付きに下る。今日も良い天気だ。
 私がトップで登り出すが、久しぶりに使うアブミに手間取り時間ばかりかかる。20m登ったところで残置支点が見つからず、やむを得ずピッチを切りトップを変わってもらう。草付きの中に残置ハーケンはあり、私が探しても見つけれなかった。
 つるべ式でトップを交代し、3ピッチ目の中間部で難しいフリーで詰まり、またしてもトップを交代してもらう。このルートは人工とフリーのミックスで登られていたが昔からフリーは難しい。今の私ではきついルートであるが、このルートを登らないと猿岩は語れないのである。
 5ピッチ目は私のトップであり、時間も押しているのでKGカンテにエスケープして登ることにし、右にトラバースしてKGカンテに入りピッチを切る。結局下降点まで7ピッチでザイルを伸ばし終了した。
 私のリード部分は情けない登り方になってしまったが、これからはフリークライミングに力を入れてスキルを高め、来年はもっと楽しみながら登れるように頑張りたいと思う。
 若い時には1日で3本を連続登攀したが、今回は次回までに課題が残ったクライミングで、しかし難しさの中にも楽しいさがあった。
 駐車場で藤原君と別れ、この2日間を振り返りながら、下道で矢巾へと帰っていった。


下降点


右ルート 1ピッチ目


2ピッチ目
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