神室山〜火打岳縦走 敗退
 


2022年3月23日(水)〜25日(金)
 メンバー:嶋脇 光男さん、小田中 智
 コース:役内集落〜パノラマコース〜前神室〜神室山避難小屋〜東稜〜役内大橋


 神室山は「みちのくのアルプス」と呼ばれ、神室連峰は東北一と言われている痩せ尾根が南北25kmに及び続いている。主峰は神室山、最高峰は小又山、鋭鋒の火打岳から南端の杢蔵山に至る連峰の東面には、偏東積雪により生じた急峻な断崖が連なる。
 真冬の神室山は日本海の影響を受け雪深く湿雪で風も強い。稜線には大きな雪庇が張り出し、細い尾根はナイフリッジとなり、厳冬期は晴れる日はほとんどない。そのせいか1月から2月の間は、登山者の姿を見ることはほとんどない。

 3月になり嶋脇さんから、神室山から杢蔵山への縦走の依頼があった。3月下旬になると雪も締まり天気もだいぶ穏やかになる。八戸からの往復を考えると日程は3泊4日にならざる負えない。

23日(晴れ)
 自宅に5時半に来てもらい、下道を走って役内に向かう。天気予報では、中日は天気が悪そうだが前後は好天の予報である。役内に入ると美しい神室山が見えたが、今までこの山容を見た記憶がない。
 出だしの道路を間違って歩いてしまい、戻るのも面倒なのでそのまま尾根を登り、登山道の831mピークに合流するように登って行く。天気は晴れで、まだ3月ではあるが暑いくらいだ。
 ブナ林の中をだいぶ登って行くとようやく登山道に合流した。近日に積もった新雪でスノーシューでも少しのラッセルがあったが、ここからは単独者のトレースがありラッセルから解放された。
 第一ピークに出ると展望が開け高松岳が見えてきた。第二ピークを過ぎると森林限界となり、この先は山頂小屋まで行かないと風をしのげないので、鞍部にテン場を求めた。天気は下り坂になってきたようだ。


神室山はブナ林が豊富な山だ


高松岳(右)


テン場付近

タイム:役内集落(9:20)→第二ピーク鞍部(15:05)


24日(風雪のちホワイトアウト)
 4時半に起床し外に出ると風があり視界も良くない。トレースは風に飛ばされながらも残っておりたどって行くと、前神室でトレースは無くなった。しだいに視界も悪くなり慎重に下り口を探す。
 鞍部から1,325mのピーク付近に登ると、いよいよホワイトアウトになった。視界は2mでほとんど見えないので、稜線で30分ほど待つ。幸い風はゆるくなったが一向に視界は回復しないので、神室山への尾根を探すが来た道に迷い込む始末だ。
 視界が一瞬5m程に回復した時に行先の尾根を見つけ進んで行く。所々にはクレバスが隠れており、ハマるごとにお互いに笑い合う。しかし所によっては深いクレバスもあり思わずのぞき込んだ。
 夏なら30分ほどの距離もなかなか進まず、3倍ほどの時間がかかってようやく山頂に着いた。風雪で何も見えないが、それでも視界は5m程に回復していた。
 山頂直下にある避難小屋の入り口は埋まっており、冬期入り口も鍵がかかっていた。スコップで掘り起こし中に入りホッと一息ついた。小屋には銀マットと毛布がたくさんあり、石油ストーブもあるので2リットル程の灯油を持参するとぬくぬくの生活ができる。
 テーブルとマットで食卓を作り二口のウイスキーを飲むと、物音がし登山者が入ってきた。こんな天気でも登山者が来るのかとうれしくなり、訊ねると単独で縦走すると言う。私たちと同じである。
 まだ時間も早いのでシュラフに入り夕寝を楽しむ。6時頃から単独者と一緒に宴会を始めると、なんと10年ほど前に縫道石で一緒になった方だった。山形県の和田さんで、お互いの現況のことや雲表倶楽部の仲間のことで盛り上がり楽しすぎる一夜となった。


左側は雪庇


クレバスにはまる


神室山山頂


避難小屋

タイム:テント(6:50)→前神室(9:00)→神室山(13:20)→避難小屋(13:30)


25日(ホワイトアウトから晴れ)
 私たちは縦走を諦め、東稜を下山することにする。和田さんは7時前に視界が悪い中を縦走へと出て行った。今日は9時頃から晴れる予報なのでゆっくりの出発とする。
 小屋を出てアイゼンを装着していると、やはり天気は回復し始め急に青空が出てきた。今日は展望が良い山頂で写真を撮り、東稜へと向かって行く。
 東稜は、火打岳への縦走路の出だしから東にある軍沢岳に伸びる尾根で、私は鬼首道路から数度登ったり敗退したりした尾根である。しかし距離的には長く、火打岳への距離とほぼ同じくらいある。
 この尾根はの上部は主稜線に比べて?せ尾根で、雪庇の張り出しや急斜面もあるので気がぬけない尾根であるが、その分雪庇の稜線は美しく達成感もある。
 2ヵ所の急斜面を慎重に下ると後は傾斜が緩くなり、雪庇に注意すれば安心となる。ふり返ると天狗森と小又山の稜線は美しく、太陽に照らされて輝いて見える。
 軍沢岳分岐までは2つのピークがあり、荷物のせいか体力不足のせいか登りはきつく、天気が良いせいでのんびり歩いて行く。やっと軍沢岳分岐に着いた頃は、のんびりし過ぎたせいで16時になっていた。
 この1,154mピークからは2つのルートがある。1つは軍沢岳を経て国道108号かもしか橋に下る尾根と、1,035mピークから役内大橋へ下る尾根があるがどちらも登山道はなく、軍沢岳ルートは長くバックカントリーには最適なルートだ。
 役内大橋に下るルートは短いが急で、ラッセルが多い時の登りは苦しい。尻滑りを交えながら暗くなり始めた頃橋に着いた。車は役内の登山口にあるのでタクシーを呼びたいが、携帯が通じないため残念ながら秋ノ宮温泉まで歩かなければならない。
 やっと秋ノ宮山荘の手前で電波が通じ、タクシーに乗ることができた。ヘッドランプをつけ、夜のため交通量が少なかったが1時間半ほどの暗い国道は車が怖かった。
 嶋脇さんはこれから八戸に帰るのは無理なので、湯沢の旅館に泊まることにした。


後方は神室山


山頂から 後方は天狗森と小又山


天狗森と小又山


前神室(左)


鳥海山


神室山と前神室 後方は鳥海山


天狗森と小又山、右に火打岳


栗駒山(左)、虎毛山(中央)、軍沢岳(右端)


下ってきた急斜面


クレバスにはまる


下って来た尾根


山頂から下ってきた尾根


1,154mピークより 後方は神室山

タイム: 小屋(8:40)→1,154mピーク(16:15)→役内大橋(18:25)→秋ノ宮山荘(20:00)
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