高下岳から和賀岳
 


2020年1月25日(土)〜26日(日)

 メンバー:居谷さん(神奈川県)、下野さん(高下岳日帰り)、佐藤 博さん、小田中 智
 コース:大荒沢集落〜高畑コース〜高下岳の下(テント泊)〜高下岳〜根菅岳〜和賀岳 往復


 3年前下野さんと和賀岳に訪れた時には、悪天のため根菅岳で引き返していたので、リベンジとして居谷さんを加えた4名で和賀岳向かうことにした。4名だとラッセルが深くても比較的ラッセル交代のローテーションが長くなるので楽になる。
 しかし歩く距離は長いので、テント泊を高下岳の下から根菅岳の鞍部にできるかで成功の確率が変わってくる。

和賀岳(1,440m) 日本三百名山、花の百名山
 和賀岳は真昼山地の主峰で、岩手県西和賀町と秋田県仙北市の県境に位置する。ブナの原生林が広がる高下岳、薬師岳とともに和賀川源流域を構成し、国の和賀岳自然環境保全地域に指定されている。 古名は阿弥陀嶽で、一等三角点名は和賀岳である。
 和賀山塊は、高山帯性から低地性までのさまざまな植物が混在し、希少植物に富む。最高峰の和賀岳でさえ1,500mに満たない低い山であるが、山が深いためほとんどの山は登山対象としては至難であり、マタギや専門の山菜採りなどをのぞけば、核心地域における人的活動は皆無に近かった。
 奥羽山脈に間欠的にあらわれる非火山性地域であることから、急激な火山活動に見舞われることがなく、動植物にとって比較的安定した生息環境が保たれてきため、動植物の宝庫でありブナ林の大木も豊富にある。
 夏山登山コースは、岩手県側の和賀川を渡渉し急登を登るコースと、秋田県側の真木渓谷から往復約15kmのロングコースがある。
 冬山では、岩手県側の西和賀町は雪が深く林道のアプローチも長く、高下岳から根菅岳を回り込む尾根は距離が長く、最低テント泊で1泊2日を要するロングルートで、ラッセルの度合いによっては2泊3日を要する。そのためか真冬の登山者は皆無に等しく、静かでハードな登山を貸し切りで楽しむことができる。

25日(曇り)
 盛岡駅前で居谷さんを迎え自宅に集合したところ、下野さんが仕事の都合で高下岳までの日帰りとなった。
 除雪終了点である大荒沢集落に着くと例年になく雪が少なく、これはラッキーなことだ。林道の正面には高下岳が見え、天気と展望は申し分なく幸先が良いスタートだ。
 林道は雪が締まっており大して潜らず楽に歩けた。登山口からも潜りは少なく、15分間隔でラッセルを交代する。登るにしたがいブナの原生林は太くなり、中には直径が1mを越える大木もあった。この辺の山はブナが太く、大荒沢岳に向かう貝沢ルートもブナの大木が多い。
 泊まり組のザックは16kg程の重量であるが、日帰りの下野さんのペースは速く、高下岳を往復しなければならないので先に進んで見えなくなった。
 ダケカンバの木が出始めると尾根状となり早池峰山が見えた。間もなく高下岳から下ってきた下野さんと会い下山していった。上空は風が強く短い間隔で風の轟音がしていた。
 高下岳が見えてくると森林限界で、上部は風が強いことを理由に高下岳の下にテントを設営することにする。荷物は軽めでラッセルもほとんどないにも関わらず体だけは疲れていた。
 テントに入りチビリチビリとウイスキーを舐めていたが、佐藤君手作りの肉の燻製が出てくると、居谷さんはワインボトルを出したので本格的な宴会となった。夕食は刺身、キムチホルモン鍋、ジビエ鹿肉の焼肉であり、急に下野さん不参加になったので4人分の食料だ。
 日本酒の熱燗を飲んで楽しい話語りをしていると腹も苦しくなり、18時前にはシュラフに潜った。話をし美味しいもの食べる登山は楽しいのであるが、美味しいものを食べるには荷物が重くなるので、最近になって荷物を背負うのが大変になってきた。


前方には高下岳方面が見える


ブナの樹林帯を越えていく


標高が高くなるとブナの樹高も低くなってきた


右のピークが高下岳


岩手山の山容が美しい


高下岳の下に張ったテント

タイム:大荒沢集落(7:15)→登山口(9:00)→高下岳の下(13:25)


26日(曇りのち時々晴れ)
 今朝まで強い風が吹いていたが、風は弱くなり曇りで視界が良好だ。最低限の荷物を背負い高下岳への急な斜面を登って行く。
 稜線に出ると和賀岳方面が見え、和賀岳の山頂には雲がかかっていたが、これから向かう根菅岳はしっかり見えている。天気予報は晴れであるので、これからの景色を満喫できることを期待する。
 根菅岳手前の鞍部で一休みする。この場所は風があまり当たらないみたいで、昨日ここまで上がっていれば今日の工程が楽になるのであるが、風のせいにしてしまったので今日は長い一日になりようだ。
 根菅岳に立つと羽後朝日岳の山頂には雲がかかっていた。しかし、和賀岳に続く尾根に下っていくと日が差し始め、一気に雲の位置も高くなってきた。ラッキー、今日は私の65歳の誕生日なので、そのお祝いなのだろう!
 和賀岳山頂にかかっていた雲も取れ、山頂方面は青空の中にある。急な登りで稜線に立つと、二ノ沢畚の左には田沢湖が見えた。羽後朝日岳にかかった雲も取れ、時間が過ぎるごとに、進むごとに展望がはっきりしてきた。
 稜線はほとんど潜らず歩きやすく、カメラのシャッターを切るごとに立ち止まっていた。こんな天気の良い日に、これから先の時間を気にしてはつまらないので、下山は暗くなってもかまわないのである。
 一つ二つとピークを越すが山頂はまだで、越えるごとに先にはピークがある。しかし天気は良いので気分は最高だ。5年前に嶋脇さんと来た時はやはり天気が良く、田沢湖がもっときれいだった。
 やっと山頂の標識が見え、青空の中の山頂に立った。和賀岳の山頂は遠く、なかなか山頂に立つことは好条件が重ならないと無理なので感無量である。鳥海山や焼石岳、岩手山はは見えなかったが、近くの山々だけで十分すぎた景色だった。
 嶋脇さんからは和賀岳から白岩岳の縦走を依頼されているが、2泊3日の縦走であるので、今の私ではもう体力的に無理だ。この山頂すらこれからの冬は来れないかもしれないので、この素晴らしい景色を心に焼き付けカメラに収めた。
 あとは下りであるが根菅岳の登り返しが難である。時間計算をすると早くても車に着くのは19時だ。今日もくたびれているのでもう少し遅くなることだろう。
 下りは楽であったが根菅岳の登りでは空腹で一気にスピードが落ちてしまった。根菅岳からは日に照らされた羽後朝日岳と秋田駒ヶ岳が輝いていた。和賀岳もしっかり見えていた。誕生日のプレゼントは、好天をいただき最高の一日だった。
 テントを撤収して下り始めると暗くなり、ヘットランプを点けて見え隠れするトレースを探しながら下っていく。林道に出ると車まであと1時間半である。集落の明かりが見えてはきたが、車まではものすごく遠く感じられた。


高下岳から根菅岳


高下岳にて


和賀岳山頂は雲がかかっている


高下岳から見る根菅岳


根菅岳


樹霜が美しい


これから向かう和賀岳への尾根


ふり返った根菅岳


左から羽後朝日岳、大荒沢岳


和賀岳方面


錫杖キレットと白岩岳


和賀岳方面と小杉山


白岩岳方面


和賀岳山頂


山頂にて 後方は羽後朝日岳


山頂にて 後方は荒沢岳


小杉山から白岩岳への稜線


左から羽後朝日岳と大荒沢岳


根菅岳から見る和賀岳


左から羽後朝日岳と大荒沢岳 右奥に秋田駒ヶ岳


高下岳からの和賀岳

タイム:テント(6:35)→高下岳(7:15)→根菅岳(8:15)→和賀岳(11:55)→根菅岳(14:55)→テント(16:20〜50)→
    車(20:35)
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