岩手山 焼走り〜網張へ縦走
 


2018年2月20日(火)〜21(水)
 メンバー:嶋脇さん、小田中 智
 コース:焼走り駐車場〜第一噴出口跡〜岩手山〜不動平〜鬼ヶ城〜姥倉分岐〜網張スキー場

 嶋脇さんにとって焼走りから網張への縦走は、もう5年越しにもなる目標だ。今まで三度挑戦したが、天候の状態や雪の状態でいづれも断念していた。

20日(晴れのち風雪)
 網張スキー場に4時に集合し、嶋脇さんの車を駐車場に置き焼走りへ向かう。今年は例年にないくらい雪が多く、道路はすでに除雪車が走り回っていた。
 天気がよく岩手山の山容が見えているが、山頂部だけは雲の中だ。スノーシューを履いて出発すると、一昨日のトレースがあり、ありがたく使わせていただく。最近はトレースがあったことはなく、いつも自分達でラッセルしているが、今回は必ず不動平まで入りたいので助かるトレースだ。
 朝日を浴びた雪面はキラキラと輝き、青空の中を歩くのは気持ちがいい。トレースは第一噴出口跡までしっかり付いており、早い時間に着いた。ラッセルがないときは噴出口に着くのは昼過ぎになってしまったこともあった。
 噴出口跡からは足あとは風に飛ばされて消えているが、雪は固くなり潜らないので登行は楽だ。登るごとに風が出始め寒くなってきた。お鉢直下に近づくと斜面は急になってきて、雪面は氷になってきた。
 これくらいの状態であれば我々にはスノーシューでも十分であり、岩をひろいながら一歩一歩確実に登っていく。嶋脇さんはガイド登山が終わると、同じルートを一人で歩く人なので、先頭で歩いてもらう。
 お鉢では更に風が強くなるが、視界は良好なので山頂部は見えている。アイゼンの足跡が残っているのでラッセルした方々も登ったようだ。山頂の標識には厚いエビの尻尾がくっついており、風の強さと寒さを物語っている。
 山頂から右回りで外輪を下り始めると一層風が強くなり、風速20mはある感じだ。ここの一部分だけは風が強いところで、ここを過ぎると少し弱くなるのだ。
 外輪から不動平へと下り始めると避難小屋が見えてきた。視界は良好なのでそれだけでも助かる。小屋は例年より埋まっており、やはり今年は雪が多いみたいだ。
 冬期入口は押しても開かない。扉に隙間があるくらい空いているのでそこから中に雪が入り、ドアを圧迫して開かないようだ。少しずつ何回も押してやっと開くと、やはり中に雪が入り込んでいた。閉める時には付着した氷をすっかり取り除いてから締めて欲しいものだ。開かなければ中には入れず生死にもかかわるのである。
 1階に降りてテントを張り、ストーブをつけるとすぐに暖かくなった。やっと一息つき熱いコーヒーが冷え切った体の中を温めてくれた。
 夕食は嶋脇さんが用意してくれた、寄せ鍋とホルモン焼きだ。小屋の中のテント内は暖かく心地よく、ホットウイスキーが眠気を誘ってきた。


焼走りの朝


溶岩流から岩手山


溶岩流から岩手山


第一噴出口跡から


第一噴出口跡から外輪へ一直線に登る


外輪直下は氷状になっていた


外輪から山頂


岩手山山頂


不動平避難小屋

タイム:焼走り駐車場(6:40)→第一噴出口跡(10:40)→岩手山山頂(15:00)→不動平避難小屋(15:40)


21日(風雪のち曇り)
 今日も風が強く、雪が降っているのか雪面から雪が飛ばされているのか分からないが、視界はそんなに悪くないのでこれだと網張へ進める感じだ。あとは行ってみないと分からない。
 アイゼンをつけスノーシューを背負うと昨日と変わらない重量だ。鬼ヶ城のフェースの頭付近からはスノーシューに履き替えの予想だ。東北の冬山はスノーシューをなくしては語れないのである。北アルプスだと稜線上は風に飛ばされて雪は少なく硬くなっておりアイゼンの世界なのだが。
 ラッセルして鬼ヶ城の頭に上がると、雪は硬くなっておりアイゼンの足跡があった。冬に鬼ヶ城を歩く登山者がいるとはビックリだ。風は風速10mそこそこで小雪が降っているみたいで、それにブリザードが混じっているが、視界は50m程もあるので網張へと決行だ。
 夏道は岩場を巻くようになっているのであるが分かりにくいところがあり、雪が付いた急な6mの岩場を下る。岩に付着した雪が柔らかく手掛かりがないので不安定であるが、8m下は平坦になっているので落ちても問題ないと思うと気持ちが楽になる。
 チムニー状の岩場を下ると鬼ヶ城の核心部は終わりで、あとは岩場を巻くように夏道が付いている。下っているのであるが風はしだいに強くなってきていた。
 1,654mピーク(フェースの頭)で道を間違った。その時は気付かなかったが下りの足跡につられて下っていくと、急に風が強くなり風速は20mを越え、ブリザードが顔に張り付きかなり冷たい。夏道から外れているようだがトレースがあるので、10分ほど下りGPSで現在位置を確認すると、岩手高原スキー場に下る尾根筋だった。
 スキー場のゴンドラ終点は1,220mの標高があり、岩手山に登るのであれば一番近いルートなのだ。夏道があるわけではないが雪があればどこでも歩けるので、夏と比べて最短の距離を歩くことができるのである。
 30分のロスタイムを経て夏道に戻ると、あれほど強かった風は弱くなっていた。沢の方に下ったので吹上げの風で強かったのだろう。ピークを一つ越したところでスノーシューに履き替え、間もなく嶋脇さんが窪みの深みにはまり逆さまになった。もがくほどに頭は深みに入っていくが、手を差し伸べて脱出した。
 冬山の事故は滑落が一番多いが、ブッシュの切れ目がクラックになっており隠れていると見えないし、沢沿いだと踏み抜いて川にハマって脱出できなくなることがある。2人だと助け合うことができる可能性が高いが、単独だと脱出できない場合がある。やはり冬山は2人以上で登るのが一番であるが、冬山の単独登山は魅力的な要素が大きく楽しさもあるのである。
 尾根は緩くなり間もなく黒倉岳の鞍部に着いたので遅い昼食にする。この辺では日が照っていた。時間計算するとスキー場の上に着くのは日暮れ間近になりそうだ。犬倉山の肩に暗くなる前に着くと、スキー場は暗くなってもヘットランプで歩けるのに問題はない。
 黒倉山を巻き姥倉山の手前の夏道の分岐点から、犬倉山に向かって斜面を下っていく。ここから犬倉までは結構長いのである。ようやく犬倉への登りに入ると肩はもうすぐだ。
 風が強くなり薄暗くなった頃に肩に着いた。視界もよくスキーの跡も見えている。ここまで来ればスキー場の下りは暗くなっても問題ない。
 ヘットランプを点け下っていく。このスキー場は滑走距離が長いので歩く となるとけっこう時間がかかる。朝歩き始めてから12時間が経ちさすがに疲れた。
 条件はあまり良くはなかったが、5年越しになった焼走りから網張への縦走はようやく完走することができた。今年で63歳になり、1年ごとに体力・気力が落ちてきている。いつまで歩くことが出来るか分からないが、歩けるまで頑張って歩こうと思う。
 翌日になると両方の上瞼が凍傷になっており、ちょうど綺麗なアイラインができていた。嶋脇さんは両頬が凍傷になったと言う。


鬼ヶ城の最高点


下っている所から振り返って見た鬼ヶ城


鬼ヶ城の末端


鬼ヶ城と黒倉山の鞍部


黒倉山と姥倉山の鞍部

タイム:不動平小屋(7:45)→黒倉鞍部(13:50〜14:10)→姥倉分岐(15:50)→網張スキー場駐車場(19:20)
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