秋田駒ヶ岳 晴れるまで停滞
 


2017年2月25日(土)〜28(火)
 メンバー:佐藤 博(25〜26日)、小田中 智
 コース:仙岩トンネル駐車場〜国見温泉〜横長根〜横岳〜阿弥陀小屋〜駒ヶ岳 往復


 秋田駒ヶ岳として知られる名前は総称の名前で、最高峰男女岳、男岳、女岳、横岳のピークがあり、その一帯を秋田駒ヶ岳と呼ばれている。
 最高峰の男女岳には、アルパこまくさからパノラマツアーの雪上車が八合目まで運行しているので、天気が良いとボーダーが訪れ滑っている。
 男岳は、西側に田沢湖スキー場があり、リフトで登山者やスキーヤーが登ってくるが、男女岳に比べると数は少ない。
 横岳へは南方に国見温泉があり夏は登山者で賑わうが、冬は冬期閉鎖になるため、8.5km林道を歩いて登ってくる物好きは誰もいない。しかし、ショートカットルートを使用すると林道歩きは4.5kmも短縮され、出だしから国見温泉までの距離は3.5km程になる。
 私にとっては誰もいないからこそ魅力的で、林道を歩き国見温泉から横長根を経て登るのにロマンを感じる。特に冬はラッセルがあるので、1日で阿弥陀池小屋に入るのは条件しだいである。
 12月にトレーニング登山で単独で入山していたが、1日で小屋まで入れなかったので敗退している。今回は友人が同行してくれるので、阿弥陀小屋での宴会が楽しみである。
 月・火曜日は天気が良い予報なので、私だけ残って冬の好天の景色を眺めたいと思っている。それは心からの念願の楽しみでもある。

25日(曇りのち暴風)
 仙岩トンネル手前の駐車場で佐藤君と待ち合わせる。今日の予報は曇りで風速は15m程であるが、明日はさらに天気が悪い予報である。
 砂防ダム建設のため作られた橋を渡り、上にある林道目指して急登する。最近チマチマ雪が降っており、サラッと新雪があるものの下雪は硬いのでスノーシューでは10cmも潜らない。
 林道に上がると上空は青空で春みたいであるが、吹き溜まりには多くの雪が積もりかなりの積雪量だ。このまま天気が悪くならないことを願う。
 国見温泉まで2ピッチの林道歩きも仲間がいると早い気がする。青空は灰色の雲に変わり、森山荘からの急な登りに入る。底雪が硬いので10cm程しか潜らないので、トップの交代は1ピッチごとにしていく。
 横長根では風も強くなり風雪となる。ムーミン谷分岐を過ぎると結構な風の強さになることが予想される。泊まるところは阿弥陀小屋か横長根しかないので、進んだら行くしかないが時間的には余裕だ。
 やはり分岐を過ぎると徐々に風が強くなり、風速は20mを越えた。強いところは25m程となり、「戻るべー」と言う声を待っているがその声は無いのでソロリソロリと登って行く。きっと佐藤君もその声を待っていたと思うが、どちらかが発すると戻ったに違いない。
 横岳の手前は横岳が風を遮り、いくぶん弱くなった。横岳に新しいトレースがあったので小屋に泊まるのかと思ったら、足跡は男岳に向かっていた。田沢湖スキー場から登ってきた登山者と思われる。
 阿弥陀池に下る分岐は雪庇があるので、注意しながら少し急な斜面を下っていくと小屋が見えた。小屋は雪が張り付き真っ白になっていた。
 冬期入口は少し雪で埋まっているので、掘り返して中に入ると風がないのでずいぶん暖かく感じた。ツエルトを張り、常備されている毛布を借用し、熱いコーヒーを飲むとホッとした。
 椅子と毛布でコタツを作り、日本酒を飲みながら各自の夜食を半分こしながら語り合う。気を使わない仲間、ある程度お互いを理解し合える仲間は、特に山で一緒だと楽しい。彼も3月で定年を迎え、これからの思いを話してくれた。


国見温泉への林道


国見温泉 森山荘


横長根への樹林帯


横岳にて


阿弥陀池小屋

タイム:仙岩トンネル入口(6:25)→国見温泉(9:05)→横長根(10:55)→横岳(13:45)→阿弥陀小屋(14:10)


26日(風雪)
 佐藤君は今日下山するが、男岳から馬ノ背を通って帰るという。私は軽装で外に出るがガスで周りは見えず風も強い。
 少し男岳方向へ向かうが視界は3mとかなり悪いので男岳は諦め、このまま帰る佐藤君と分れ、私だけ小屋に戻った。彼はそれなりの登山を経験してきているので、この程度の天気と地形では心配する必要もない。
 佐藤君は必要のない食料と燃料を置いていってくれた。明日から天気が良くなる天気予報ではあるが、もしかすると明日も泊まって天気待ちをするかも知れないからだ。
 シュラフに入りながら一眠りする。小屋にある雑記帳と登山用具のカタログを読むと昼になった。暇な連泊をするのであれば、文庫本があれば天気が悪くても暇を持て余さずに済むことだろう。
 午後も眠り夕方から晩酌をする。何がなくてもアルコールだけは忘れられない。何しろ酒を飲むために山に泊まるようなものなのだ。


朝の出発時


27日(ガス時々晴れ間)
 天気予報では良い予想であったが今日も悪い。明日は間違いなく天気が良いので、このまま帰るのは忍びないので今日も泊まることにする。ここからでは携帯の電波が入らず家に泊まる連絡ができないので、午後にでも男女岳へ登って連絡することにする。
 昼過ぎになると時々青空が見え始めた。男女岳東の小山に2人の姿が見えたので待っていると、小屋には来ずに男女岳に登っていった。
 家に電話をするために男女岳に登って行くと、1人がボードで滑る準備をしていた。下界はよほど天気が良いとみえ、滑るために登ってきたようだ。冬は小屋には泊まる人は居ないのだろうか?ちょっと残念なことだ。
 ウイスキーが無くなったので寝るが、今日も寝てばかりいたのでなかなか寝付けなかった。


午後の出発時


男女岳 つかの間の晴れ間


28日(快晴)
 目覚ましで起こされ外を見ると岩手山が赤く染まり出していた。5月中旬にここから見た時には、太陽は岩手山のすぐ右に見えたのだが、この時期は横岳に隠れて朝日は見れなかった。男岳の後方もうっすらと赤く染まっていた。
 予想通りの快晴である。今日はのんびり展望を楽しみながら、男岳から馬ノ背を通って下山することにする。
 空には雲一つない快晴である。男岳に近づくと手前のピークから張り出した雪庇が美しい。今回はアイゼン、ピッケルを持ってきてないので、慎重に登下降しなければならない。
 とにかく見えるもの全てが美しく素晴らしい。この天気を待って2日間過ごした甲斐があったというものだ。
 上部の雪が5cm程柔らかくスノーシューでは滑りやすいので、雪庇を右から回り込み硬い部分を選んで登って行く。
 山頂の鳥居はすっかり埋もれてコブになっていた。すぐ下には田沢湖がきらめき、岩手山の姿は素晴らしく美しい。先月登った屏風尾根のラインが特に素敵だ。
 下りながら見る、これから通る馬ノ背のラインも格好よく、全てが格好よく美しく素晴らしい。最後の急な下りは左から回り込み鞍部に降りる。立ち止まっては景色を眺め、写真を撮りながら歩いているので殆んど先へは進まないくらいだ。
 男女岳に10人ほどの人がいる。アルパこまくさから一番の雪上車で登ってきた人達だろう。前に山頂から小屋までスキーで滑ったことはあるが、快適な斜面であった。
 横岳で最後の展望を楽しむと後は来た道を下るだけだ。時間が過ぎても暖かな春の日差しは変わることはなかった。


岩手山の朝焼け


男岳の朝焼け


岩手山の全容


男岳に向かって


男女岳


出発時の小屋


男岳コルの雪庇


コルからの男岳


雪稜から男岳へ


岩手山全容


男女岳


馬ノ背から横岳の稜線


男岳へ向かって


男岳山頂の鳥居


田沢湖

女岳と和賀連峰


和賀連峰拡大


馬ノ背の稜線


乳頭山への縦走路と岩手山


馬ノ背からの男岳


女岳と田沢湖


馬ノ背と男岳


阿弥陀小屋と男女岳


横長根


ムーミン谷


男岳


横長根下の樹氷


国見温泉

タイム:小屋(8:00)→男岳(8:50)→横岳(10:05)→国見温泉(12:25)→仙岩トンネル入口(14:00)
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