神室山東稜 ガイド登山
 

山頂と避難小屋

2015年3月22日(日)〜23日(月)

 メンバー:嶋脇さん、小田中 智  
 コース:鬼首道路かもしか橋手前駐車場〜1,154mピーク〜天狗森分岐〜神室山〜避難小屋 往復


 2月に訪れたが悪天のため途中で引き返したため、3月リベンジとなった。今回も予備日があるので天候待ちができる。
 前回は軍沢岳経由の冬道ルートで行ったが、今回は距離が短く急な1,154mピークを経由するルートで行くことにする。

22日(晴れ)
 自宅に4時に集合し、高速道に乗り秋の宮温泉郷に向かう。今日の天気予報は晴れであるが、明日からは風が強い予報である。
 駐車場裏手の急斜面を登って行くのであるが、部分的に急な所があるので右から回り込むように登って行く。
 雪はザラメ状であるが潜るのでワカンを履く。このルートは神室山の東側に続く尾根で、登山道はないため冬限定の冬道である。
 急斜面を登り切り尾根状になるとブナ林となり、見事な大木も見うけられた。急な雪庇を乗り越し1,154mピークに続く尾根に出ると、前方に神室山が見えた。
 東方向には虎毛山、高松岳が見え、前回全然見えなかった分、美しい景色が望めた。緩い傾斜の尾根をしばらく歩くと、1,154mピークに着いた。
 ここまで来ても神室山ははるか遠くに見える。ここまでは古いトレースがあったが、ここから先はなく、冬は誰も入山していない様子だ。
 前回泊まった鞍部を過ぎ、ひと山越すと尾根が3つに分かれる。真っすぐ行きたいが急角度で右に曲がると県境で、神室山がより美しく見える1,115.4mの展望台だ。
 山頂がだいぶ近づいてきたが、先は徐々にナイフリッジとなり、これからが核心部である。小さなピークを2つ越えると雪庇の張り出しとともに尾根が細くなってきた。
 雪庇は冬路沢側に張り出しているので雪の状態を見ながら登って行く。登るにしたがい亀裂が走っている所があり、近い日に崩れ落ちると思うと気持ちが悪い。しかし、今日明日は大丈夫である。
 1,160mピークに立つと尾根はさらに細くなり、てっぺんを歩くのが気持ちいい。南南西の方向には天狗森と小又山が聳え、そこに至る稜線も痩せ尾根だ。
 細くなった稜線には2ヵ所ほど悪場がありそうに見える。歩いて行くと急なコブの斜面が切れている所があり、ピッケルを根元まで刺して慎重に通過する。下りがイヤな場所だ。
 時計を見ると4時半をまわっている。あと1時間で山頂に立ちたい。今度は急なピークの登りで、所々雪がなくなり短いブッシュが出ている所がある。ブッシュの根元を掴みながら登る。ここも下りが悪そうだ。
 九合目の標識があり天狗森への縦走コースに合流する。1つピークを越すと山頂だ。そしてやっと小屋が見えた。急な登りを終えると山頂で、三角点の頭だけが出ていた。
 小屋はすぐ下にあり、古い足跡が残っていた。パノラマコースから登ってきた足跡であろう。握手を交わし、小屋へと下って行く。やっと着いた、遠かった。もう6時になろうとしている時間だ。
 小屋の中は小ぎれいで、マット、毛布、テーブル、石油ストーブがあった。マット、毛布、テーブルを使わせてもらい、食事の支度を始める。今回は嶋脇さんの買い出しで、サラダと焼き肉、せんべい汁である。
 ここは電波が入るので梅ちゃんに電話し、明日の高層気象を聞く。明日から天気が悪くなり風も強くなり、風速は20mを越え、この悪天は3日間続くと言う。
 1日は予備日があるが3日も待ってられない。ここからの下りは、風速20mを越えれば歩けそうにない。悪場が2ヵ所とナイフリッジがあるからだ。そんなことを今気にしても仕方がない、明日風が弱くなることを祈るだけだ。
 快適な夜を過ごし、トイレに出ると、視界が悪くなり風が吹き始めていた。夜中には風は凄い音で吹き荒れていた。


急な登りを行く嶋脇さん


ブナの美林が続く


神室山が見えた


虎毛山と高松岳


1,154mピークへの尾根


1,154mピークから見る神室山


虎毛山


山頂に続く尾根


天狗森と小又山


まだ山頂は遠い


雪庇が張り出す尾根


1,160mピーク


本格的なナイフリッジが始まる


悪場へと続く


亀裂と崩落した悪場


天狗森と小又山


天狗森への縦走路合流点


山頂と避難小屋


もうナイフリッジは終了


山頂にて


避難小屋

タイム:駐車場(7:30)→1,154mピーク(12:25)→1,160mピーク(16:15)→神室山(17:45〜50)→避難小屋(17:55)


23日(風雪)
 朝には風はだいぶ弱くなっていた。梅ちゃんに電話し風の様子を確認すると、2時間ほど弱くなる時があるという。その2時間と下山時間が合うことを祈るのみだ。
 朝食をすませ、パッキングを始める。掃除をして外に出ると風はそんなに強くなく、雲の切れ間から太陽の光が見えた。アイゼンを履き山頂に立つと、風速は15m程で視界は50m程ある。
 下るなら今しかない。この状態なら十分である。下り始めると風は20mと強くなり視界も悪くなった。下れるところまで下り、ダメなら小屋に戻ればよい。
 しかし、この状態は一時的なもので、進むごとに天気は回復していった。陽ざしが現れ、ずっと離れた尾根まで見えている。あと2時間、せめて1時間もってくれと願う。1時間あれば悪場の2ヵ所は越してしまうからだ。
 最初の悪場は思ったほどでもなく、次はブッシュを掴みながら登った所だ。ここは下れないと判断して、右の雪の急斜面を下ることにする。斜面は下にずっと続いているが、50mを左寄りに下れば稜線に戻れるのである。
 後ろ向きでしっかりとしたステップを刻み、ゆっくりと下って行く。嶋脇さんはしっかりとした足取りで下ってくる。ここを越えればあとはナイフリッジの稜線で、トレースをたどれば落ちる心配はさほどない。
 予想どおり2時間弱でナイフリッジも通過すると、天気は悪くなってきた。梅ちゃんが予想した2時間にピッタリあてはまって下れたのはラッキーだった。あとはいくら天気が悪くなろうが問題はない。
 雪庇を尻滑りで下ると稜線からはずれ、あとはドンドン下るだけだ。カップラーメンの昼飯を食べ、ワカンに履き替えて下って行く。最後の急な所は左の小沢を下り、まもなく駐車場に着いた。


朝の山頂 この視界なら大丈夫だ


先のピークからナイフリッジになる


風に巻かれて


天気が回復した


間もなくナイフリッジが終る


1,154mピークからの山頂方面

タイム:小屋(7:20)→1,160mピーク(11:40)→駐車場(14:05)

 今日はかえらず車に泊まりたいと言うので、来た道は通らず、鬼首温泉経由で宮城県に出て帰ることにする。
 国道108号を鬼首温泉に向かう途中、丸森トンネル内で車が停まっていたので降りてみると、単独の事故車だった。トンネル入り口が凍っていたのでハンドルを取られ、対向車線の路側帯にぶつけて動けなくなったという。怪我がなかったので幸いである。来た車に警察への通報を頼んだと言うので、家族への通報を頼まれて別れる。
 鬼首温泉はすっかりさびれて冬季閉鎖しており、スキー場に行って食事し、ホテルの温泉に入る。浴場からは禿岳の山容が美しい。あ・ら・伊達な道の駅に泊まり、翌日自宅へと帰る。

 冬の神室岳東稜は後半ナイフリッジが続き、緊張感を味わえる素晴らしいルートだった。冬の北アルプスを歩いた時代を思い出させてくれて、しばらくぶりに気持ちが熱くなった。
 1日目は天候に恵まれ神室連峰の全容が見渡せ、翌日は悪いながらも2時間のスポットにうまくはまり、緊張感を十分楽しませてもらった。
 来年は縦走してみたい。
↑ページの先頭に戻る