和賀岳 白岩岳〜薬師岳縦走
 


2020年3月30日(月)〜31日(火)
 メンバー:嶋脇さん、小田中 智
 コース:白岩岳登山口〜白岩岳〜錫杖の森(泊)〜小杉山〜和賀岳〜小杉山〜薬師岳〜真木渓谷休憩所


 嶋脇さんから1泊2日で、白岩岳から和賀岳を経て真木渓谷へ縦走する依頼をいただいた。問題は薬師岳から下山する真木渓谷の林道と白岩岳へ登る入角林道が、どこまで入れるかである。調べると真木渓谷は登山口まで車が入れ、入角林道は分からないが半分は入れると思われるので依頼を承った。
 嶋脇さんは冬期に和賀岳から白岩岳の縦走を目標としており、数年前にトライしたが、錫杖の森の雪の状態が悪かったため敗退していた。冬は林道が入れないので、沢内側から和賀岳へ入り白岩岳から抱返り渓谷に下るルートになる。

和賀岳(1,440m) 日本三百名山、花の百名山
 和賀岳は真昼山地の主峰で、岩手県西和賀町と秋田県仙北市の県境に位置する。ブナの原生林が広がる高下岳、薬師岳と共に和賀川源流域を構成し、国の和賀岳自然環境保全地域に指定されている。 古名は阿弥陀嶽で、一等
三角点名は和賀岳である。
 和賀山塊は、高山帯性から低地性までのさまざまな植物が混在し、希少植物に富む。最高峰の和賀岳でさえ1,500mに満たない低い山であるが、山が深いためほとんどの山は登山対象としては至難であり、マタギや専門の山菜採りなどをのぞけば、核心地域における人的活動は皆無に近かった。
 奥羽山脈に間欠的にあらわれる非火山性地域であることから、急激な火山活動に見舞われることがなく、動植物にとって比較的安定した生息環境が保たれてきため、動植物の宝庫でありブナ林の大木も豊富にある。
 国土地理院の地図では登山道があるものの、部分的には廃道となってしまったコースも多々あり、和賀岳へはどのコースを通っても距離が長く往復するとなるとかなりの時間を要する。小杉山から錫杖の森間はブッシュ漕ぎを強いられ、錫杖の森は岩場があるため、夏でも通る登山者はかなり少ない。
 ましてや冬期ともなると雪が深く、長い林道は車が入れないため入山下山ルートは制約があるため、入山する登山者はほとんどいない。しかし、だからこそ魅力がある山である。

真木渓谷
 秋田県大仙市太田地域にある約7km続く深く荒々しいV字型渓谷で、奥地には和賀山塊の一部を形成する薬師岳や甲山、小杉山などの山々があり、支流の七瀬沢や金堀沢には七瀬滝や四十八滝などが存在し、真木真昼県立自然公園に指定されている。
 途中には袖川立岩や大倉岩の大岩壁があり、断崖にはクロベ、キタゴヨウマツ、カエデ等が自生し、新緑と紅葉が美しい。沢が深いため外界から孤立しているような錯覚を覚える渓谷で、道路に面して真木白滝が落ちてきたり、崖すれすれを通行したりとある意味自然の醍醐味と脅威を感じる。

30日(晴れ)
 嶋脇さんと真木渓谷入り口で待ち合わせ、お互いの車で林道に入って行く。しばらく進むと左に大倉岩があった。この壁は100m程の高さがある柱状節理の岩で、40年程前には盛岡山想会の仲間と登ったことがある。
 休憩小屋の駐車場に下山用に嶋脇さんの車を置き、私の車で入角林道へ向かう。この林道は崖崩れで時々通行止めになる林道であり、残雪の他に道路状態も心配だ。状態が悪いながらも登山口まで車で入れたが、小枝が垂れ下がっており車には耐えがたい道だった。
 真木渓谷と入角林道とも車で入れたため、和賀岳への道のりが近くなった。林道の入れ方によっては小杉山から和賀岳の往復はできない可能性もあったのだ。
 登山道には雪が無かったが、道を間違えて登っていく。シシ小屋跡を過ぎると雪が出てきてワカンを付ける。樹間からは秋田駒ヶ岳と岩手山の迫力ある山容が見えた。今日は良い天気で暑すぎるくらいだ。
 まっ平らな白岩岳からは、羽後朝日岳から和賀岳へ続く真っ白い稜線が見えたが、先はまだかなり遠い。天気が良く風も爽やかで、ようやく春山になった陽気だ。
 兎森までは緩やかに下り、錫杖の森への下降点手前で昼食にし、アイゼンに履き替える。雪はグサグサではあるがこれからは岩場の下りとなる。樹間から見える秋田駒ヶ岳の山容はどっしりと迫力がありすばらしい。
 下り口でザイルを付ける。8mmで20mのザイルをもやい結びでお互いをつなぎ、急な斜面を下っていく。2ピッチ下っても岩場の下降点に着かないので登り返し、尾根伝いに下ると下降点を見つけた。少し右寄りに下ってしまった。
 ここの下降は垂直の岩場を右寄りに下っていくのであるが、荷物が重いとぶら下がるようになり、岩は脆いので下りずらい。下降は嶋脇さん先頭で下り、ザイルをピンと張り確保する。岩と雪が交互にあり、急ではあるがブッシュがあるので下りやすいが、終始スタカットで行動する。
 時間だけがドンドン過ぎるわりに中々先へは進まないが、安全第一で下っていく。急な斜面の登りを私先頭で登ると918mピークで、うす暗くなり始めてきたのでテン場をここに決める。ここからは和賀岳がちょうど見える所だった。
 少し傾斜のある雪のピークであるが、スコップで削って平らにする。テントに入るとすでに6時半である。急いで水を作り夕食にする。私の夕食は刺身と牛ステーキである。ウイスキーのお湯割りでほろ酔いとなり、酒が無くなったのでシュラフに潜る。トイレに起きると風もなく満天の星空だった。


白岩岳登山口


間もなくブナ林となる


岩手山と秋田駒ヶ岳


白岩岳に向かって


白岩岳から和賀岳(天辺に雪がないピーク)


小杉山(右)と和賀岳


錫杖の森から和賀岳への尾根


錫杖キレットへの最初の下降


手前が918mピーク、奥が錫杖の森


918mピークへ向かって

タイム:白岩岳登山口(7:50)→白岩岳(11:30)→兎森(13:10)→918mピーク(17:50)


31日(快晴のち晴れ)
 たいして気温は下がらなかったが雪はカチカチに硬くなっており、雲がない良い天気だ。天気に恵まれた和賀岳へは最高の一日になりそうだ。
 ここからまた急な斜面であるが、ザイルを結びスタカットで下る。鞍部まで下ればあとは緩やかな雪の斜面が小杉山へと続く。空には雲一つなく風も無いので暑い。
 登っていくと和賀岳の稜線が見え、山頂部分には雪が付いていない。三角に尖った羽後朝日岳の左には、今日も勇壮な山容の秋田駒ヶ岳が見えている。こういう所でビールを飲みながら、一日をボーッとしていたら気持ちが良いことだろう!
 登るごとに景色が広がり、山全体が真っ白い鳥海山が大きく見え、どっしりとした真昼岳と女神山が見え背後にはかすむ神室山が見えていた。いい眺めだ。雪は日に照らされて柔らかくなり、時折潜るのでワカンに履き替える。
 小杉山からは、これから向かう和賀岳方面の山稜が見えるが、山頂はけっこう遠い。南には下山方向の薬師岳、真昼岳に向かう遠い山稜が続いている。風が出始め雲の量も増えてきた。
 重い荷物を小杉山に預け和賀岳へ向かう。緩い稜線ではあるが、今まで荷物を背負って歩いてきたせいか、空身での歩行はそんなに楽ではない。もう疲れていることは間違いない。
 山頂一帯には雪がなく、大荒沢岳へ続く稜線の雪が眩しいくらい白い。風が冷たいので、ここから見える山々は今まで眺めて来たので写真を撮って戻っていく。
 薬師岳ではすでに15時を過ぎたが、昨日は登山口手前まで車が入れたので余裕はある。薬師岳から真木渓谷への急な下り口までは、雪庇とブッシュで歩きづらく余計に疲れた。
 急な斜面は尻滑りに手ごろな斜面で、これが春山の楽しさの一つでもある。しばらくして雪が切れ始めると赤テープの目印が出てきた。春山では、雪の斜面から夏道の入り口を見つけれないと藪漕ぎになってしまうの要注意である。
 雪が途切れ途切れになって、頻繁にある目印に助けられながら林道に出ることができた。両方の林道を登山口まで入れたので助かったが、状態が悪ければ小杉山から和賀岳はパスしなければと思っていた。天候は2日間にわたって晴れで、素晴らしい景色と春山をじっくり味わうことができた。
 入角林道に入る時には暗くなり、ヘットライトを頼りに悪い道のりを往復した。温泉ゆぽぽで食事をし、汗を流して嶋脇さんと別れた。彼は八戸へと帰らなければならない。


キレットを越えて錫杖の森へ向かう


錫杖キレットを振り返る


羽後朝日岳(左)、大荒沢岳(右)


和賀岳(真ん中)


小杉山へ向かって


鳥海山


真昼岳と女神山 後方は神室山


小杉山から和賀岳に向かって


秋田駒ヶ岳、羽後朝日岳(右)


和賀岳へ向かって


森吉山と田沢湖


和賀岳


バックは岩手山と秋田駒ヶ岳


バックは岩手山と秋田駒ヶ岳


左から羽後朝日岳、大荒沢岳、モッコ岳、根菅岳


大荒沢岳と岩手山


羽後朝日岳と秋田駒ヶ岳


錫杖キレットと白岩岳 左奥は太平山


錫杖キレット


薬師岳から見る和賀岳


左から 1,108mピーク、甲山、中ノ沢岳


薬師岳から下る雪庇


甲山

タイム:918mピーク(6:20)→小杉山(11:20)→和賀岳(12:55)→薬師岳(15:15)→真木渓谷駐車場(16:05)  
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