ニペソツ山 ツアー登山 《ヒグマとの出会い》
 


2016年7月30日(土)〜8月3日(水)
 メンバー:渡邉さん(盛岡)、加藤さん(千葉県)、櫻田さん(盛岡)、小田中 智
 コース:ニペソツ山登山口〜天狗のコル〜天狗平〜ニペソツ山 往復

 ニペソツ山の往復はコースタイムで10時間30分ほどかかるため、我々のペースでは日帰りは無理で、途中にテント泊をすることによって余裕ができ、ゆっくり楽しみながら登ることができる。
 もう1山は日高山脈北部の芽室岳で、芽室町の宿から日帰りができる山である。
 ニペソツ山は北海道きっての鋭鋒で山容の素晴らしさ、高山植物の宝庫、ナキウサギの出現など、のんびり楽しみながら登らないともったいない山だ。
 しかし、テント泊になると装備、食料、飲料水を背負わなければならず、行動自体も大変となる。テントを張る場所は天狗のコルと天狗平であるが、天狗平から見る朝日が素敵なので天狗平に泊まることに計画した。
 共同装備、共同食料をガイドが背負うと、メンバーの方々は個人装備と飲料水をテント場まで背負えばよいので、ザックに重量はそれほどでもない。私の友人の渡邉ちゃんが同行してくれるので、病みあがりの私にとっても荷物の重量は軽くなる。
 ニペソツ山=テント泊登山、芽室岳=日帰り登山という計画を立てた。
 私は冬から膝の調子が悪くなり、70日間の入院と手術をしたため、今回のツアーは今年初めてのツアー登山だ。このツアーの日程に合わせ、リハビリとトレーニングをこなし、なんとか間に合わせることができた。

30日
 渡邉ちゃんは5日前に怪我をして急遽参加できなくなった。共同装備、共同食料全てをザックに詰めると23kg程の重量になり、ちょっと不安であるが頑張るしかない。
 盛岡18時半頃、八戸道に乗る。皆さんとは昨年の8月以来の再開で約1年ぶりである。気心が知れた方々との登山は気兼ねなしで行動できて楽しさも倍増する。
 夏休みともあり、船内には合宿であろうか高校生の団体が多い。天気は終日曇りの予報であり、大きく崩れないよう祈るしかない。

31日(曇り)
 道東道の音更帯広ICで高速道を降り、241号を糠平湖めざして北上する。曇り空ではあるが時々日が差し空は明るい。
 ぬかびら源泉郷で買い物するが、コンビニがなくお目当ての食料が買えなく代用品で我慢する。実を言うと、家を出るとき冷蔵庫に今夜のシチューの肉を忘れてきたのであった。
 十六ノ沢の林道を走っていると道の真ん中に痩せたキタキツネが待っていた。餌を求めているのか逃げる気配はなく、少しの間見つめ合っていた。
 登山口には5台の車が止まっていた。沢に架かる丸木橋を渡り、急な登りで尾根を目指して行く。20分も登ると勾配は緩くなり、歩きやすい登山道が続く。樹林帯のため風はなく、大粒の玉汗を流しながら登って行く。
 1,484mピークを過ぎると急登となり、ようやく高山植物が現れ始めた。ニペソツ山の上部には幻の花「トカチビランジ」が咲いているらしいので、それを見るのも今回の楽しみの一つである。
 渡邉さんは地質、鳥、花に詳しく、それぞれの説明を聞きながらゆっくりと登って行く。小天狗岳の肩には岩場があり、荷物を背負った我々にはちょっとシビアな通過だった。
 鞍部へと下って行くと天狗のコルに着いた。もうすでに16時をまわっており、予定の天狗平まではあと2時間はかかる。天狗平に泊まる目的は明日の朝焼けを見るためであるが、天気予報では無理みたいなので、無理せずこのコルに泊まることにする。
 登る途中から雷が鳴っていたが、テントを張り終えると雨がパラパラと降ってきたがすぐに止んだ。雨は降らないはずだったので、軽量化のためフライは置いてきていた。
 テントに入り、まずはお湯を沸かしてドリップ式のコーヒーを入れる。疲れた体に香ばしいコーヒーがとても美味しい。
 今夜のメニューは、シチューとパスタである。今回は珍しくも軽量化を図りインスタント食品としたが、シチューには玉ねぎとソーセージを入れた。本来であればベーコンのはずであったが、家の冷蔵庫に忘れてきてしまったので、ベーコンは安いソーセージに化けた。
 夜は長いはずであったが、まだ19時ではあるがシュラフに入ると寝てしまった。


登山口


ウサギギク


キソチドリ


小天狗岳の肩手前の岩場


マルバシモツケ


天狗のコルにて

登山口(12:10)→天狗のコル(16:05)


1日(曇りのち雨)
 朝4時起床。雨は降っておらず、うっすらと赤く染まった雲が見える。テントはそのままにし、最小限の荷物を持って出発する。
 間もなく、ほけたチングルマが多く残るお花畑があった。20日程も前だったらチングルマが一面に咲くお花畑だったことだろう。
 尾根筋に出ると後方におっぱい山と称されるクマネシリ岳、西クマネシリ岳の双耳峰が見える。北方には石狩岳がチラリと見えている。まずまずの天気で、ニペソツ山が見えることに期待する。
 前天狗岳を回り込み始めるとイワブクロが多く咲き、前方には1,888mピークの岩場帯が見えてきた。間もなくピピッと鳴くナキウサギの声が聞こえ始めた。やがて遠目に姿を現してくれた。渡邉さんは一眼レフの望遠でねらっていた。
 天狗平には携帯トイレ用ブースがあり、三角形の天狗岳、その奥に雲に隠れたニペソツ山の素晴らしい光景が現れた。山頂が見えたらどんなに感動する光景だったことだろう。
 下り始めると再びナキウサギが現れ、鞍部にはお花畑が広がり、ナキウサギを追いかけ花に見とれているとアッという間に時間だけが過ぎていった。もうすでに登山口から登って来た単独行者が先へと追い越していった。
 高度を上げるにしたがいガスが出始め、視界が悪くなってきた。急登から右にトラバースして稜線に出ると、うっすらと山頂方面が見え始めた。もう少しガスが流れてくれると山頂が見えるんだけどと念じながら歩を進める。
 やっと山頂の標識が見えた。ガスは上がり薄日がもれていたが、残念ながら大パノラマを眺めることはできなかった。フタマタタンポポが咲く山頂で握手を交わす。
 下り始めると単独行者が登ってきて、この下にクマがいると教えてくれた。どこにいるのかと不安を抱えながら下って行く。トラバースを終え少し下った1,850m付近の小鞍部の右の谷筋にクマがいた。距離は40m程あり草を食べているようだ。
 騒がず静かにカメラに収める。コンパクト一眼レフは持ってきていたがザックの中にしまったまんまであった。私のバカチョンではどの程度写っているかたよりない。今までヒグマとの出会いを願っていたが会えず、やっと念願の出会いとなった。
 望遠で撮影した渡邉さんは、クマの目だけはこちらを見ているので我々を認識しているという。40m離れた距離はクマにとっても安全圏の距離なのだろう。クマが居る所に我々が来ており、ここはクマの縄張りである。しずかに別れを告げそっと立ち去る。
 前方に見える前天狗岳と天狗平の景色は素晴らしい。天気はイマイチではあったが、それなりの景色は眺められ、一番良い天気の時間に登ったことと思う。午後からは雨が降る予報らしい。
 天狗のコル手前から小雨が降ってきた。下からは若いアベックが登ってきて、今日は天狗平付近に泊まるという。
 小雨降る中テントを撤収する。あと1時間待ってくれたら撤収が楽だったのにと思うが、それは贅沢というものだろう。今まで天気が持ってくれただけでもありがたいことなのだ。
 下るごとに雨は強くなり、滑りに気を付けながらゆっくり下っていく。今夜は芽室町での宿泊なので、宿への到着は遅くなりそうだ。
 ずぶ濡れ状態でやっと車に着いた。着替えをして車に乗り、国民宿舎 新嵐山荘に向かう。北海道の道路は真っ直ぐだ。周りは畑が広がり一直線に伸びる道路はどこまで行っても真っ直ぐである。20時過ぎやっと宿に着いた。
 入浴して部屋に置いてくれた食事をいただく。冷たいビールが疲れた体に染み渡っていく。気持ち良い心地よさだ。


天狗のコルに張ったテント


チングルマの実


クマネシリ岳と西クマネシリ岳


この辺からナキウサギの声が聞こえる


イワギキョウ


イワブクロ


ウメバチソウ


天狗岳とニペソツ山


ナキウサギ


ナキウサギ 目に太陽が写っている 《渡邉氏撮影》


リンネソウ


エゾツツジ


エゾノツガザクラ


アオノツガザクラ


タカネシオガマ


チングルマ


天狗岳


ニペソツ山


奥が山頂


イワツメクサ


山頂にて


フタマタタンポポ


天狗岳


谷にいたヒグマ


谷にいたヒグマ 目はこっちを見ている 《渡邉氏撮影》


前天狗岳と天狗平


ナキウサギ


ナキウサギ 《渡邉氏撮影》

テント(5:25)→天狗平(7:25)→ニペソツ山(10:20〜40)→天狗平(13:25)→テント(15:30〜16:00)→登山口(18:20)

2日(曇り) 
 芽室岳に出発しようとしたら小雨が降っており、午後すぎからも雨予報のため協議の結果、芽室岳登山は中止にすることにした。
 さっそく観光の予定を立てる。今朝は早く出発するため朝食は頼んでないので、8時まで朝風呂に入ったりとのんびりとした時間を過ごす。
 観光は、池田町のワイン城、幕別町のナウマン象記念館、苫小牧市の市場で遊ぶことにする。コンビニで朝食を食べ池田町に向かう。雨は止み暑い日差しになった。ワイン城の酒蔵は涼しく気持ちがいい。
 ナウマン象記念館は休館日のようなので、昼食に恵庭の札幌ビール園に向かう。車の中は冷房を入れてるにも関わらず暑く眠気が襲って来る。
 恵庭のビール園は肉の種類が多く美味しく、札幌のビール園に比べると雲泥の差である。遅い昼食であったが肉を腹いっぱい食べるが、私はビールをいただけないのが残念だった。
 苫小牧の市場は止めにして支笏湖に向かう。湖のほとりからは噴煙を上げている樽前山、恵庭岳が見えた。もうしばらく待つと山に夕日が沈むところが見えただろうが、小雨が降ってきたので車に戻る。
 「苫小牧温泉 ほのか」に行き風呂に入り仮眠する。
 1日目一杯観光し楽しい一日であったが、私のツアーで登山を中止して観光するのは珍しいことだ。たまにはこんな観光も楽しい。
 23時59分発のフェリーで八戸港へ向かう。  今回のツアーは、何といっても念願のヒグマに出会えたのが嬉しい。景色もある程度は見え、ナキウサギと初めての出会い、多くの花との出会いとたくさんの出会いがあり、心に残るニペソツ登山となった。
 膝の手術で直前まで不安を抱えていたが、リハビリからトレーニングまで日程に合わせて回復してくれた体に感謝したい。



芽室町 国民宿舎 新嵐山荘
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