岩手山〜網張縦走 ガイド登山
 

切通し付近から眺める岩手山

2015年3月7日(土)〜9日(月)

 メンバー:嶋脇さん、小田中 智
 コース:御神坂駐車場〜傘締〜不動平避難小屋〜岩手山〜奥宮〜不動平〜鬼ヶ城ピーク〜Aルンゼ下降〜お花畑
     〜切通し〜黒倉山〜姥倉山〜犬倉山〜網張スキー場


 嶋脇さんから、岩手山御神坂コースから登り鬼ヶ城を経て網張への縦走依頼が昨年の冬にあったが、昨年は日程を見つけれず今年の遂行になった。
 冬の御神坂コースを1日で不動平まで入れるかがポイントで、このコースは雪深くトレースは全くない。展望台上の傘締を越えると雪は硬くなるが、そこまでは苦しいラッセルが続く。
 鬼ヶ城の通過は雪がある程度雪が締まってた方が方が歩きやすいので、総体的には1月・2月よりも3月始めが条件的には良い。車は、1台を下山する網張に置く必要がある。
 雪の状態や天候は山に入ってからでないと分からないので、入山してからの判断となる。

7日(曇りのち風雪)
 5時半に網張スキー場の駐車場に集合し、嶋脇さんの車を置いて御神坂駐車場に向かう。どんよりとした空模様で岩手山の姿は見えない。
 駐車場から右の沢沿いに真っすぐ林道に向かって歩いていく。最近雪が降り出しているので今回はスノーシューにした。たいして潜らないが、中途半端な硬さでズスーッと10cm潜るのでかえって疲れる。
 左側からは岩手高原スキー場の音楽が風に乗って聞こえてくる。嶋脇さんに先頭を変わると、10kgの体重差のためか彼はほとんど潜らず、私だけ潜った。
 やっと展望台に着いた時には昼になっていた。ここからが勝負である。コースを右にとり、ガレ場に入らないように雪の斜面を登って行く。重い雪で潜ったりと体力は消耗していった。
 傘締の岩峰は左の岩場帯に入り、そのままスノーシューで岩場を登る。岩場を越えると尾根上となり、雪が硬くなり潜らなくなった。
 時間はドンドン過ぎてゆき、不動平着は暗くなる頃になりそうだ。登るにしたがい風が強くなり視界も悪くなってきた。ようやく分岐に着いた時は17時半で、不動平の下りの急斜面では足元しか見えない状態だ。
 後ろ向きになりながらスノーシューのまま下っていくと、暗くなってきてた。ヘッドランプを付け現在位置を確認しながら進むと、目の前に避難小屋があった。
 冬期入口は凍っていてなかなか開かず、どうにかこじ開けて中に入る。さっそくテントを張り荷物を整理し、熱いコーヒーをすする。今日は長い一日だった。そして、疲れる登りだった。
 今夜の食事は嶋脇さんからのオーダーで、牡蠣鍋である。味噌仕立てのスープは美味しく、体は塩分と暖かいものをほしがっていた。
 疲れていたので後片づけをしてすぐにシュラフに潜る。


展望台へ向かう


展望台にて


傘締めの岩峰


傘締めの基部


傘締め下の岩場


鬼ヶ城分岐

タイム:御神坂駐車場(6:50)→展望台(12:15)→傘締(14:55)→鬼ヶ城分岐(17:30)→不動平避難小屋(18:00)


8日(快晴)
 6時に起床すると小屋には明るい陽射しがもれていた。ラーメン炒飯の朝食をすませ、パッキングする。小屋泊まりだと荷物の整理整頓をしなくて済み、パッキングも楽である。
 外に出るとお鉢の向こうは真っ青な空が広がり、お鉢への斜面の雪は日にあたり輝いていた。アイゼンを履き、非常食と水だけサイドバックに入れ、山頂に向かう。
 先週来た時はここから先は硬くなっていたが、それから新雪が積もったせいか所々もぐった。見るもの全てが日に当たり輝いている。歩くより写真を撮っている時間の方が長いくらいだ。こんなチャンスは1年に1度あるかないかである。
 登山道には今朝歩いたばかりの足跡があったので、八合目小屋から登って行ったトレースだろう。お鉢に上がると、山頂部だけの岩木山、森吉山、秋田駒ヶ岳、鳥海山、和賀連峰の山々が真っ白く輝いていた。この景色を先週一緒に登った居谷さんにも見せてあげたかった。
 これから向かう鬼ヶ城の稜線は、後ろに勇壮な秋田駒の山容を従え、岩場部分が白くなるほどに雪が付き、迫力ある稜線になっていた。
 景色に見とれながら歩いていると、3人パーティが下ってきた。県南の方々みたいで、昨日馬返しから登ってきたという。しばらく話をし別れる。先週といい、若い方々の登山者に出会うことはうれしい。
 山頂で握手を交わし、思い思いに写真を撮る。今日は天気が良いので左回りでお鉢を一周することにする。故 杉村君が眠った近くの岩に花をたむけ、手を合わせる。
 岩手山神社奥の宮に安全祈願をし、不動平へと下って行く。さっき食事したばかりであるが、もう腹が減っていた。荷物を背負い鬼ヶ城のピークへと登って行く。
 稜線に出るとガスり始めたが間もなくすると、さっきのごとく青空と美しい風景となった。雪の状態は柔らかい部分と硬い部分が入り混じり、状態はあまり良くない。
 第一尾根の頭まで下るが状態はやはり良くなく、危険を感じるので、残念であるが鬼ヶ城を下るのを断念する。これからどのルートをとるか思案すると、稜線の右にAルンゼが焼切れ沢へと落ち込んでいる。下り口の急な部分は40度程の斜度で、雪質はわりと硬くしっかりしているのでこれを下り、お花畑を経由して黒倉山に行くことにする。
 下り始めは後ろ向きでステップを刻みながら下って行くと、徐々に傾斜が緩くなる。30分ほどでお花畑への夏道に合流する。山頂付近は雲が立ち込めていた。
 スノーシューに履き替え、右寄りに樹林帯に入りお花畑へと下って行く。お花畑からは山頂から続く屏風尾根、鬼ヶ城の岩壁群が快晴の青空の中に浮かんで見える。
 鬼ヶ城は、私にとって県外の壁を登るにあたっての青春時代の基礎を作った壁であった。本峰には3本のルート、フェースには5本のルートがあり、40年前を懐かしく振り返った。
 お花畑はいわゆる高山植物が咲くお花畑と紅葉を楽しむ所であるが、冬は誰も入らない入れない場所である。今日は鬼ヶ城を下れなかったことに感謝の気持ちだ。
 焼切れ沢を下り、黒倉山の鞍部である切通しを目指して歩く。前には黒倉山の東壁、右には赤倉岳の南壁、後ろを振り返ると鬼ヶ城の稜線と山頂が見え、素晴らしい眺めである。
 鬼ヶ城末端の尾根が近くなった時、嶋脇さんが斜面に動物がいると言う。言われる場所を見ると、大きな黒いものが動いていた。カモシカだろうか?それにしても大きい、まるで牛みたいだ。下山してからズームアップするのが楽しみである。
 急な登りを真っすぐに登り稜線に立つ。さらに展望はよく、感動する光景だ。目の前には黒倉山が目と鼻の先で、この切通しを越えてしまうと姥倉山を下った樹林帯にしかテン場はなくなるので、時間はまだまだ早いが景色が良いこの場所に泊まることにする。
 さっそく整地をして、入口から眺めれる位置にテントを張る。入口から覗きながらちょっと舐めるウイスキーは、今までになく最高の味である。
 今夜のオーダーは、ビーフシチューとホットケーキである。まだ時間が早いので、おやつにホットケーキを焼く。紅茶にはウイスキーを入れてのティータイム、格別の味だ。
 ビーフシチューに入れる具材は、30分以上煮込んでからルーを入れる。ベンチレーターから覗くと陽が沈みかけてきたので外に出ると、陽は木陰に沈みかけており、岩手山がアーベントロートに染まった。なんと美しい光景だろうか。たぶん、これを見るのは初めてのことのように思う。
 感動的瞬間はすぐに終わり、赤く輝いた岩手山は灰色になっていった。美味しい夕食が終り、ホットケーキの粉がまだ残っているのでデザートにまた作る。
 外に出ると満天の星空には北斗七星が輝いていた。


不動平から見るお鉢


八合目小屋方面 面白い雲のライン


不動平避難小屋


鬼ヶ城のピーク


お鉢から山頂を望む


鬼ヶ城と秋田駒ヶ岳


黒倉山と森吉山


間もなく山頂


岩手山山頂にて


屏風尾根と姥倉山


妙高岳


和賀連峰と鳥海山


妙高岳と岩手山


花をたむける


岩手山神社奥の宮


妙高岳と岩手山


鬼ヶ城ピーク


第一尾根と山頂


鬼ヶ城を下り始める


鬼ヶ城から黒倉山、姥倉山


下降したAルンゼ


Aルンゼ上部の斜面と風紋


樹氷と岩稜


お花畑から望む山頂


屏風尾根三峰と二峰


お花畑から見る鬼ヶ城


本峰の岩場


フェースの岩場


黒倉山と東壁


鬼ヶ城と山頂


屏風尾根と山頂


鬼ヶ城稜線直下を動物が動いている


大きなカモシカ


鬼ヶ城と山頂


屏風尾根赤倉岳


黒倉山


切通し付近に設営


沈む夕日


アーベントロートに輝く山頂

タイム:不動平小屋(7:40)→岩手山山頂(7:40)→不動平(9:50〜10:00)→鬼ヶ城ピーク(10:40)→お花畑(12:20)→
    切通し(14:10)


9日(風雪のち曇り)
 外に出るとガスっていて風が吹いている。スノーシューを履いて黒倉山に登る。スノーシューを脱ぐのが面倒くさいので、ガレをそのまま歩く。視界は先は見えるし、風もそれほどではない。
 姥倉山の鞍部へと下って行くとスキーのトレースがあった。昨日嶋脇さんは黒倉の上部で人影を見たと言っていたのでそれだろう。鞍部から姥倉山への登りになると足跡は増え、スノーシューの跡もあった。
 登るに従い風が強くなり、山頂直下では風速25m程となった。歩いているとよろけてしまうので、少し前かがみになりストックの幅を広げて登って行く。山頂はどこだか分かりにくいが、奥の高い所に立つ。
 下りは山頂の南斜面を犬倉山の鞍部を目指して下って行くと、スキーツアーのトレースがあった。しばらくトレースをたどると、途中から逆方向に向かっていたので修正し、犬倉山の山頂を目指す。
 山頂は広くどこだかわからないが高い所に立ち、今回ピークを踏むのはこれで終了となる。網張元湯からは、風に乗って硫黄の臭いが鼻をかすめた。分岐から展望台を越えると間もなく第三リフトの下り口に着いた。
 ここでも天気はあまり良くないが、平日にもかかわらずスキーヤーの姿はあった。左の端の方を下って行く。私は途中でスノーシューを脱ぎ、滑るように?下って行く。


黒倉山


姥倉山


犬倉山


網張スキー場

タイム:切通し(8:20)→黒倉山(8:45)→姥倉山(10:00)→犬倉山(11:45)→スキー場上(12:15)→網張駐車場(13:25)
 
 2年越しの御神坂コースから網張への縦走は、雪の状態が悪く鬼ヶ城通過ではなくお花畑通過で終ってしまったが、Aルンゼの下降と素晴らしく美しい光景を堪能でき、最後には強風の姥倉山で締めくくってくれた。
 きっと忘れることはできない、登山の一幕だった。


★嶋脇さんからの声

 2年前、夏に始めて鬼ヶ城を訪れた時に、積雪期に鬼ヶ城をこえてみたいという目標が芽生え、今回ガイドを依頼した。
 1日目の山行は体力的に厳しかったのは事実、2日目の雲ひとつない快晴の山頂、雪で覆われた鬼ヶ城の稜線、Aルンゼの急な下りなど、結果的には鬼ヶ城はこえることは出来なかったが,お花畑コースで網張へ下れたことは今後の単独で挑戦する参考になった。
 小田中ガイドありがとうございました。
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