黒岳〜トムラウシ山縦走
 


2015年7月17日(金)〜22日(水)
 メンバー:三浦 功(盛岡山想会)、横沢 一則(盛岡山想会)、小田中 智
 コース:黒岳登山口〜黒岳〜北海岳〜白雲岳分岐〜白雲岳避難小屋〜忠別岳〜五色岳〜化雲岳〜ヒサゴ沼避難小
     屋〜トムラウシ山〜前トム平〜東大雪荘


 盛岡山想会の大雪山ツアーが人数不足のため急きょ中止になったため、山想会の仲間3人でトムラウシ山を縦走することにした。その後盛岡から別動隊3人が来て、カムイエクを登る計画だ。
 連休のため船は混んでいたが、キャンセル待ちで人の席だけは確保できた。交通は、車を八戸港に置き、先に帰る横沢さんが車を持って帰ることにした。
 苫小牧港からはレンタカーを借りて旭川で乗り捨て、タクシーで層雲峡へ行くことにする。縦走後トムラウシ温泉からバスで新得に出て、電車で帯広に向かい、レンタカーで苫小牧に戻ることにした。
 車を持って行っても車を回してもらわなければならず、3人ならこのほうが割安になる。
 白馬岳から返って翌日からのトムラウシ山縦走、そしてすぐにカムイエクとかなりハードスケジュールのため、私の足がもつか心配でもある。

17日
 横沢さんの車で迎えに来てもらい、三浦さんを迎えて滝沢ICから高速道に乗る。運転しないのはしばらくぶりで、なんと楽チンなことか。
 八戸港に車を置き、乗船し天気祭りをする。

18日(曇り)
 苫小牧港でレンタカーを借り、旭川駅に向かう。予約していたタクシーに乗り込み層雲峡に向かう。天気はまずまずであるが、明日は雨の予報である。
 ロープウエイを降りた駅で昼食し、リフトに乗り込む。食料を2人に割り当て、私のザックには全装備が入っているが18kg程と軽い方だ。しかし、最後まで重量が減らないのには後半きつい。
 登り出すと午後ということもあり、多くの下山者とすれ違った。間もなくチシマノキンバイソウが現れ始めると、ウコンウツギが一面に咲いていた。後ろを振り返るとニセイカウシュッペ山の山並みがあり、昨年感動したお花畑を思い出させてくれた。
 黒岳からは花の数がグッと増え、群落やお花畑は白雲岳分岐まで続いた。黒岳石室の岩場では横をキタキツネが歩いて行った。人慣れしているのかゆっくりと通り過ぎていく。
 黒岳石室から北鎮岳方面と別れ、北海岳に向かう。シャクナゲやツガザクラが一面に咲き、お花畑の中に登山道がついているようで、なんとも美しい光景だ。終わっている花もあるが、一番花が美しい時季のようだ。
 緩い傾斜ではあるがアップダウンを繰り返しながら登って行くが、白雲岳は遠い。見渡す山には雲が多く、旭岳がボンヤリ見えていて展望はあまり良くはない。
 白雲岳分岐に着くと、ようやく前方にトムラウシ山がうっすらと見えた。トムラウシ山はずいぶん遠く、明後日にあそこまで行くのかと思うとため息が出る。
 雪解けでグチャグチャの沢沿いを下って行くと、ようやく白雲岳避難小屋が見えてきた。小屋には管理人がいて、2階建の小屋は満杯だったが何とか入ることができた。今回は連休のため小屋に入れない場合を考えてテントは持参していた。
 今夜のメニューは、ビーフシチュー、野菜サラダ、ウナギ蒲焼きであるが、8時消灯のため静かに乾杯し、急いで食事を終える。


黒岳リフト


チシマノキンバイソウ


ウコンウツギ


ウコンウツギの群落


トカチフウロ


ニセイカウシュッペ山


メアカンキンバイ


チシマキンレイカ


イワブクロ


コマクサ


凌雲岳と北鎮岳


??


イワウメ


エゾツガザクラ


エゾコザクラ


キタキツネ


ヨツバシオガマ


ハクサンシャクナゲ


チングルマとエゾツガザクラ


キバナシャクナゲ


エゾノハクサンイチゲ


イワヒゲ


烏帽子岳


北海岳


エゾオヤマノエンドウ


キバナシオガマ


白雲岳


烏帽子岳


やっと見えたトムラウシ山

タイム:黒岳登山口(12:40)→黒岳(14:20)→北海岳(16:55)→白雲岳分岐(18:10)→白雲岳避難小屋(18:45)


19日(晴れ)
 昨夜は雨が降り天気予報が当たったと思ったが、明け方から晴れあがった。すがすがしい朝である。今日は暑くなりそうだ。
 白雲岳には誰も行かないと言うので、忠別岳を目指して下って行く。さっそく2パーティに追い越され、敬老会パーティはのんびりと歩いて行く。
 花は昨日たくさん撮っていて、同じものはカメラを向けないようにし、展望重視で進んでいく。高根ヶ原では左下に空沼などの湿地帯が見えている。美しい所ではあるが、クマが出没するため入れなくなっていた。
 忠別岳が近くなってくると忠別沼が見えてきた。沼に向かって下って行くと、笛が鳴り頻繁に吹いていた。向かってくるパーティに訊ねると、一番先頭の人がクマを見たらしいと言う。それで笛を吹いていたようだ。
 ここは動物たちにとって良い水場である。クマが出てもおかしくはない。クマのいる所に我々が押し入っているのだから、クマも「くまった」と言っているのだろう。今回我々はクマスプレーを持ってきていた。
 昨日黒岳への登りは急だったが、一旦稜線に上がってしまうとそんなに急な登り下りはなく、今日も緩やかなアップダウンが多い。その分距離は長いが、のんびり歩けて展望が良いコースだ。
 忠別岳は西側が断崖で化雲沢川に切れ落ちている。前後するソロ3人組も休んでいて、我々ものんびり休む。
 五色岳で石狩岳コースが合流し、下って行くとようやくトムラウシ山の特徴あるピークが見えた。木道付近は残雪が解けたばかりの池塘で、エゾコザクラとチングルマの大群落だ。
 チングルマのお花畑は化雲岳山頂分岐まで続いた。ピークには10m程の岩峰があり、特徴的なピークだ。天気が良いわりにはモヤがかかったような状態で、大雪の山々さえかすんでいた。
 化雲岳から下り始めるとそこは「神遊びの庭」と呼ばれるお花畑だ。木道の両脇にはチングルマが咲き乱れ、極楽にいるような感じだ。極楽があるのであれば、こんなだったらいいなと思う。しかし私の場合、極楽へ上がれるかが問題である。
 斜面を下ると一面に雪渓となり、足跡をたどって行くと階段状の木道となり、雪解け水でグチャグチャだ。目の前にはヒサゴ沼が見えてきた。
 沼の脇にはキャンプサイトがあり、その上には朽ちかけたような避難小屋があった。今夜はテント泊まりの予定だったが、テント場は湿っているので小屋泊まりとする。
 1階は満員だったが2階は誰も入ってなかったので、冬期入口の鉄梯子を登って中に入る。中は外観と違ってまあまあの居心地だ。少し時間が早いので横になる。
夕方になり2パーティが2階に入ってきた。今夜の夕食は、ステーキと焼魚、野菜サラダだ。まずは残雪で冷やしたビールで乾杯する。
 昨日隣り合わせた若いご夫婦に焼魚を少しあげたら、ソーセージとパンが返ってきた。エビで鯛を釣ったようなものである。後から来たパーティには40度の焼酎をいただいた。こんな触れ合いも山での楽しさの一つだ。


白雲岳小屋にて


白雲岳


タカネシオガマ


忠別沼と忠別岳


忠別沼


忠別岳


トムラウシ山


エゾコザクラ


エゾヒメクワガタ


化雲岳


チングルマのお花畑とトムラウシ山


化雲岳にて


ヒサゴ沼


ヒサゴ沼避難小屋

タイム:白雲岳小屋(5:45)→忠別岳(9:40)→五色岳(12:00)→化雲岳(14:00)→ヒサゴ沼避難小屋(15:15)


20日(晴れ)
 ラーメンとモチの朝食をすませ、外に出ると今日も青空がある良い天気だ。沼の脇を通り少し急な雪渓を登って行く。
 稜線に出て小ピークに登るとトムラウシ山が見えた。だいぶ近くなっている。この辺は湿地帯に沼があり、岩とハイ松があり、日本庭園と呼ばれる場所だ。
 大きい岩の乗り越えて歩くロックガーデンは歩きにくいが、岩の中を歩くより岩の頂点を越えながら歩く方が楽だ。ロックガーデンを登り終えると目の前には一段高い稜線があり、急な登りが待ち受けていた。
 急な岩場の登りを越えると緩やかな登りの奥に、岩場のトムラウシ山が見えた。やがて山頂直下にある北沼が見えた。北沼に降りると美しい池で、キャンプ指定地でないのが残念な場所だ。
 あとひと登りすると山頂だ。手前の岩峰を右から巻き岩場を登って行くと、山頂の人盛りが見えた。山頂は間もなくだ。
 やっと着いた。遠く長い道のりを経て山頂に立ったのだ。山頂には20人ほどの人がおり、順番に記念写真を撮る。遠方の山は雲とモヤで朝日岳すら見えなかったが、南東方向にひときわ大きいニペソツ山岳が見えた。
 雄大な展望は望めなかったが、それでも良い条件の山頂だ。そうしていると、泊まりが一緒だった若いご夫婦も登ってきた。今日の宿はトムラウシ温泉東大雪荘であるが、コースタイムで6時間の距離がある。今日の道のりはまだまだである。
 岩場の急な所を下って行くと間もなく、オプタテシケ山に縦走する分岐があり、南沼のキャンプサイトがあった。天気のいい日にここにキャンプしたら気持ちいいだろうと思う。
 トムラウシ公園はチングルマのお花畑で、いたる所にお花畑がある。北海道の山はほんとうに広大で大きい。公園から岩場を登って行くと前トム平に着く。いよいよトムラウシ山ともお別れである。美しい景色と素晴らしい山だった。私にとってトムラウシ山は北海道で一番素敵な山である。
 こまどり沢への下り口では、チシマギキョウとイワブクロが見送ってくれた。花もここが最後になるかもしれない。後はひたすら下るのみで、目の前にビールがチラツイテくる。
 雪渓をしばらく下り、カムイサンケナイ川を渡ると急な登りとなる。汗を流し流し登り終え後は下るのみであるが、温泉までまだ3時間ほどかかる。
 休み休みひたすら下ると短縮コース分岐だ。若い女性がいれば短縮コースに下ってヒッチハイクもできようが、ムサイ老人クラブ3名では無理とあきらめ、ビール目指して温泉へと下って行く。
 着いた、やっと着いた。湯気が立ち上る川辺の公園の一角に東大雪荘があった。玄関ホールに入り、まずは缶ビールで乾杯する。これを飲むために、味わうために、岩手からやって来たのかもしれない。
 ゆっくり入浴して、生ビールで乾杯する。隣同士だった若いご夫婦、前後しながら歩いたソロ3人組も食卓に座っていた。
 明日の朝はゆっくりなので、ソロ3人組を部屋に呼んで2次会をする。楽しい楽しい夜だった。


キャンプサイトとヒサゴ沼


ロックガーデンとトムラウシ山


日本庭園


ハクサンシャクナゲ


ミヤマリンドウ


北沼とトムラウシ山


北沼


トムラウシ山へ向かう


トムラウシ山にて


トムラウシ山を振り返る


トムラウシ公園


前トム平からトムラウシ山


チシマギキョウとイワブクロ


トムラウシ温泉の公園


東大雪荘

タイム:ヒサゴ小屋(5:50)→日本庭園(7:30)→トムラウシ山(10:25〜50)→前トム平(12:00)→トムラウシ温泉
    (17:15)

 温泉から定期バスで新得駅に出て、南千歳駅で乗り換え苫小牧駅に着く。予約していたビジネスホテルに荷物を預け、市場に昼飯を食いに行く。苫小牧はホッキが名物だと横沢さんがいうので、それをビールのつまみにいただく。
 市場で買い物をしてホテルで横沢さんと別れる。横沢さんは1人で盛岡に帰るのだが、三浦さんと私は山想会別動隊と明日合流して、カムイエクに登るため今夜苫小牧に泊まるのである。
 部屋で寝ているとカムイエクは雨のため中止となったので、別動隊は来ないことになった。あと4時間早く決定してくれていれば横沢さんと一緒に帰れたのであるが、判断の遅さにムカつく。
 仕方ないので明日は函館経由で盛岡へ電車の旅をすることにし、苫小牧、函館とグルメツアーを楽しむことにする。

 トムラウシ山、それは私にとって北海道で一番好きな山だ。そして縦走コースは長く、小屋と小屋の間はコースタイムで8時間ほどある。花はいたる所にお花畑があり、素晴らしい景観とお花見で、こころ踊るコースだ。
 仲間との語らい、知り合った方たちとの語らい、居合わせた方との宴会とどれをとっても山の素敵さを倍加させてくれる。山って素晴らしい場面である。骨折して山に帰れたことが、心から良かったと今になって深く思う。
 今度プライベートで訪れるならば、石狩岳からオプタテシケ山へ縦走したいと思う。
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