岩木山 嶽コース登頂 ガイド登山
 

岩木山山頂避難小屋前

2015年1月10日(土)〜11(日)

 メンバー:居谷さん、下野さん、嶋脇さん、佐藤 博、小田中 智
コース:嶽温泉〜リフト乗り場〜鳳鳴ヒュッテ〜岩木山 往復


 嶋脇さんから岩木山の依頼をいただいたので参加者を募ったところ、総勢5名で行くことになった。
 コースは春スキーを楽しむコースの嶽コースとした。このコースは分かりやすく短いコースで、冬に登るには最適である。
 七合目付近の森林限界付近にテントを張り、泊まって翌日サブザックで登ることにした。雪の条件が良ければ嶽温泉から日帰りも可能なコースである。

10日(風雪)
 4時に下野さんを迎え、佐藤君をひろって滝沢インターから高速道に乗る。嶋脇さんは小坂インター、居谷さんは弘前駅の待ち合わせである。
 秋田県に入ると高速道中にも雪があり、慎重運転で弘前に向かう。青森市内の積雪は80cmあり、年初めにしては雪が多いという。
 天気は曇りで岩木山の姿が全然望めないまま嶽温泉に着く。積雪は多く、1mもあろうかというくらいだ。嶽ホテルの駐車場をお借りして、身支度を整える。
 積雪があるわりには下雪が硬いため25cm位の潜りだ。10分ほど進んだ頃に、テントのポールを車に忘れたことに気がついた。佐藤君に取ってきていただく。
 駐車場では青空がのぞいていたが、時間がたつごとに小雪となった。ラッセルを交代すると、人数がいるのでしばらくは自分の番には回ってこない。
 岩木スカイラインへの分岐を過ぎると積雪が増え膝下までとなる。森林限界が間じかになった頃、今夜の宿泊地をさがす。
 3人用のテントとツエルトを持ってきているが、雪の状態が良ければ雪洞を掘るつもりでスコップを3丁持参していた。
 夏道の左の沢状の斜面を利用して掘ることにした。雪洞掘りは結構重労働のため、まずは腹ごしらえをする。
 まずは入口を決め、一旦下に掘り下げてから奥へと掘って行く。掘り師と運び師に分かれ、交代しながら掘っていく。
 お客様3名は雪洞が初めてなので要領が悪かったが、やがてコツをつかっできた。掘りだしたブロックは入口に積み、いくらかでも風雪をしのげるようにした。
 奥へ掘っていくとブッシュが出てきたので横に掘るが、横は木があるため少し狭いが我慢して整地をする。入口にツエルトを吊るすと、1時間半ほどで岩木山ホテルが完成した。
 まずは荷物の整理をし、雪を溶かして水をつくりティータイムとする。コンロは3台あるので効率よく雪を溶かし、夕食の支度にとりかかる。
 メニューは海鮮鍋と焼き肉である。佐藤君特性手作りのソーセージを焼いて、ビールで乾杯する。若干1名はジュースである。
 家ではなかなか食べれない豪勢な鍋を食べながら、居谷さん持参の日本酒はうまい。やっぱり冬は鍋にかぎります。トイレで外に出ると風雪になっていた。
 コンロの熱で雪洞内の気温が上がったため、一部の天井からはポタリポタリと水がしたたり落ちてきた。コッフェルを置くと結構水が溜まった。
 酒の量はさほど飲んでいないが酔いが回り、18時過ぎではあるが寝る準備をする。少し狭いのでびっちりくっつかってシュラフに潜る。私の冬シュラフは源太ヶ岳で焼いたため修理に出しており、夏シュラフとシュラフカバーである。
 ダウンジャケットとダウンズボンを着こんでいるのでたいして寒くもなく眠りに着く。雪洞の中の温度は-2℃以下には下がらないので、テント泊にくらべると案外温かいものなのだ。

嶽温泉登山口にて
嶽温泉登山口にて

歩き始めの積雪
歩き始めの積雪 居谷氏撮影

樹氷に囲まれた登山道
樹氷に囲まれた登山道 居谷氏撮影 

雪洞の作り始め
雪洞の作り始め 居谷氏撮影

交代で掘り進む
交代で掘り進む

入口を締めると完成だ
入口を締めると完成だ 居谷氏撮影

雪洞の中で食事の準備
雪洞の中で食事の準備 居谷氏撮影

タイム:嶽温泉登山口(9:00)→1,140m付近雪洞(13:40)


11日(風雪)
 4時半起床。昨夜来の天井から滴る水はシートに溜まり、水びだしに悩まされている人もいた。入口の天井は20cm程下がっていた。
 日本そばとチャーハンの朝食を済ませ、身支度を始める。不要の荷物はそのまま雪洞に残し、今日は軽い荷物で頂上に向かう。
 6時半を過ぎても外はまだ暗いが、雪はやみ視界も良いみたいだが、昨夜からの積雪は20cm程積もっていた。
 雪は膝下までのラッセルで、前方には鳥海山が霞んで見えている。このまま天気が持続することを祈る。
 登るにしたがい雪は固くなり、さほど潜らなくなってきた。残り少なくなった短い木に、下山用のマーキングをつけながら登って行く。
 スカイラインに出る直下には雪庇が張り出しており、亀裂が走ったので左上して直登しリフト乗り場に出る。思ったより風は強くなく、視界も50m程はある。
 氷化した真っ白いリフトのワイヤーに沿って登って行く。再びラッセルは膝下までとなった。時おり青空が見えるが、視界が悪くなったり、風が強くなったりと天候の変化が激しい。
 リフト頂上駅に着くと風は強くなり視界も悪くなった。アイゼンに履き替え、スノーシューはデポする。ここから私が先頭に立ち鳥海山を巻き気味に登って行く。
 風は風速10m〜15m、視界は5m〜10mとかなり条件は悪ったが、GPSで現在位置と方向を確認しながら山頂を目指す。雪は柔らかい所があり潜ったりと疲れる雪質だ。
 鳳鳴ヒュッテから夏道が明瞭となったが、天候条件はますます悪くなっていた。しかし、まだ戻る気持ちはなく、佐藤君と2人で方向を確認し合いながら登っていった。
 急な登りを登りきると山頂避難小屋が目の前に見えた。山頂は何故か先程までの風が弱まり、一番高い所で握手を交わす。視界は20m程で何も見えないが、この条件下で山頂に立ったことだけで十分であった。
 今回は佐藤くんがいたためここまで来たが、私一人だったら途中で引き返したように思う。しかし、これからの下山にはポイントが3つある。
 私のカメラは何故かバッテリー切れになり、予備バッテリーに取り替えるがそれも放電していた。行動食で空腹を満たし、佐藤君先頭で下って行く。
 風はさらに強まり風速20m程となった。しかし、登りのトレースは見えているので心配なく、やがて鳳鳴ヒュッテに着いた。1つのポイントはクリアしたので、あとはリフト頂上駅とリフト乗り場からの下りである。
 GPSと地形を確認しながら鳥海山を回り込むと山頂駅に着き、スノーシューに履き替えてリフト沿いに下って行く。風のためトレースはほとんど消えていた。
 リフト乗り場から最後の鉄塔を過ぎると、また視界が悪くなり、勘で進むとコースから右に逸れていたため鉄塔まで戻り、GPSで確認しながら下る。
 間もなく朝つけたマーキングを確認し左によると、またもや雪庇に亀裂が入った。この付近は視界が3mと最悪の条件だったが、確実な地形を確認するとともにマーキングも確認した。
 ほどなく雪洞に着き危険地帯は終わった。みんなの顔にはようやく笑顔が戻った。雪洞内の荷物を全部出し、外でパッキングをする。
 昨日のトレースは完全に消えており、膝下までのラッセルとなった。しかし、悪条件下で山頂をゲットできた思いで気持ちは最高である。
 この連休中に登山者には合わず、途中までスキーのトレースがあったのみだった。下っていくと空からは薄日が差すところもあった。

リフト乗り場目指して
リフト乗り場目指して

リフトに沿って交代でラッセル
リフトに沿って交代でラッセル 居谷氏撮影

一瞬、青空が見え視界が開けた
一瞬、青空が見え視界が開けた 居谷氏撮影

吹雪の中、山頂を目指して
吹雪の中、山頂を目指して 居谷氏撮影

山頂避難小屋にて
山頂避難小屋にて 居谷氏撮影

下り始めると風が強くなった
下り始めると風が強くなった 居谷氏撮影

鳳鳴ヒュッテにて
鳳鳴ヒュッテにて 居谷氏撮影

撤収した雪洞
撤収した雪洞 居谷氏撮影

樹氷のトンネルを下る
樹氷のトンネルを下る 居谷氏撮影

覆いかぶさる樹氷
覆いかぶさる樹氷 居谷氏撮影

タイム:雪洞(7:00)→リフト頂上駅(8:35〜50)→岩木山山頂(10:40〜11:00)→鳳鳴ヒュッテ(11:25)→
    雪洞(13:15〜14:15)→登山口(16:20)

 居谷さんが乗る新幹線の時間がないため、すぐに弘前駅に向かう。小坂インターで嶋脇さんと別れ、盛岡へと向かう。今日は暖かかったのか道路の雪は溶けていた。
 今年初めての岩木山登山は、条件が悪い天候ではあったが、佐藤君という往年のザイルパートナーが同行したことで、雪洞泊を体験し、吹雪の山頂に立てたと思う。
 皆さんに大満足していただいたことは、年頭からうれしいことだ。

★嶋脇山からの声
 津軽富士と言われる岩木山。夏場は何回か登った経験があった。
 厳冬期の岩木山に挑戦したいが、僕は冬山はまだ未熟だ。今回はガイドを依頼し、冬の岩木山に挑戦した。
 八合目からの強い風雪と、視界が悪い状況での登頂は無理かなと思っていた。しかし、皆、無事に山頂を踏み、下山できたことは自慢できるはすだ。
 やはり、吹雪かれるかどうかで、標高が低くても冬場は特に難易度が上がると改めて思った。
 最後に、ラッセルの交代、雪洞作りの協力など、小田中ガイドは勿論、まだまだ冬山は未熟者の僕とご同行して下さった居谷さん、佐藤さん、下野さんには改めて感謝したい。
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