岩手山イタザ沢 アイスクライミング
 


2020年4月12日(日)
 メンバー:佐藤 博さん、藤原 豊さん、小田中 智
 コース:イタザ沢〜大滝 往復


 イタザ沢は、岩手山屏風尾根の北面に位置する沢で、夏には水流が無く大小の滝が続き、登攀を対象とした困難度の高い沢である。
 滝はF18まで数えられ、大きい滝はF6 25mがあり人工で登るが、登りがいのある登攀を楽しめる沢だ。
 氷瀑がないかと昨年偵察に入ったらF6の大滝が氷瀑になっており、右の滝をトップロープで登った。F6の大滝は6mと15m程の氷瀑が左右に分かれており、2本登れるので楽しいクライミングができる。
 先週は御神坂沢大滝に入ったが氷が薄く、アイススクリューで支点が取れないため登れなかった。イタザ沢は北面にあるためと昨年も同じ時期に登っているので、期待を込めて行ってみることにした。

 朝早くに盛岡を出発するのは大変なので、東八幡平にある佐藤君の別荘で前日宴会をしてから出かけることにした。今回のメンバーに加え砂子君も飲み会だけに参加をし、4人揃ったのは久しぶりなので楽しい宴会となった。

12日(曇り時々晴れ)
 朝食を食べて出発する。道路には雪が少ないので、刈屋から上部の林道に通じる林道へ入っていく。所々雪は残っていたがイタザ沢取り付きまで車が入れた。今年の冬は登山口付近は雪が少ないが、2月を過ぎると中腹から上部は雪が多くなり、4月になっても雪が降っているので例年よりも多いようだ。
 ワカンを付けて林道を登っていくと、直ぐに林道は終わり沢へつながった。土石流を防ぐ防護柵が沢を横切っているのが異様な感じだ。雪が締まっているので潜らず、時折横切るカモシカや小動物の足跡が点々と続いている。先週は御神坂沢で佐藤君が熊を見たと言っているので期待して登っていく。少し離れて登っていたので、残念ながら私は見ていない。
 朝早くには雪が舞っていたが、今は日差しがある天気になった。風が吹き寒い時でも、クライムしている人は汗をかいて登っているが、ビレイしている人は寒くて大変である。
 5m程の滝を左から高巻きし、天狗岩を過ぎると50分程で大滝に着く。2つの氷瀑はしっかりと氷がついているようで安心した。
 登攀準備を整え、氷にアイススクリューを差し込むとしっかり効いているのでリードで登ることにする。トップロープにする場合は、滝の手前を右から高巻きし、滝へ一度下り氷瀑の上の立木に支点をセットするとよい。
 右の氷瀑の上部は雪が付いていなく立木まで行けそうにないが、垂れ下がった枝に支点をとれるかもしれない。登る高さは12m程あり下部5mは垂直で、一旦緩くなり上部は80度くらいの傾斜に見える。
 スクリュー2本で下部を越え、もう1本差し込んで登ると上部は岩との接点が空洞になっており、ヤバそうなので一旦下る。氷は水分を含んで割れやすいが、アックスは刺さりやすいので結構登りやすい。先週は氷を見ながら登れなかったので、今日はアックスが刺さる感覚が楽しい。
 リードでは右寄りに登って行ったが、佐藤君はトップロープで真ん中を真っすぐ登っていった。上部にスクリュー1本をセットし下ってきた。彼は岩登りは好まないが、アイスクライミングは好きなようだ。岩はスタンスとホールドに制約はあるが、アイスは刺さる所がフリーなのでそのせいらしい。
 再び登り、最終支点から最後の氷に1本スクリューを刺すと、氷が空洞になりスタンスが悪い。スタンスに立つと垂れ下がった枯れ枝まではあと1mあり、岩にはホールドがなくアックスも利かない。枯れ枝にアックスを打ち込み一気に岩の出っ張りにしがみついて安定したスタンスに立った。
 枯れ木は十分な強度がありトップロープ用の支点を作り、その下のスクリューは残し、他を回収しながら下る。氷が崩れる恐さと枯れ枝が折れる恐さで緊張感は最悪で、冷や汗が流れた。しかし、この冷や汗も下に下ると楽しさに変わった。
 佐藤君が登り、いよいよ藤原君の番になった。40年前に使ったトロールのハーネスを腰に巻き、アイゼンは10本歯である。さすがに昔登っただけあってスルスルと登っていった。さすがには二人とも終了点までは登らなかった。
 カップラーメンを食べ、支点の回収に左から登って行く。トップロープだと安心感があり精神的に楽で登るのも楽しい。支点に使った細引きは残置し、ザイルを結び直してスクリューを回収して下る。
 左の氷瀑は5m程の高さで垂直である。上部は氷が無くなり雪なので、上の立木まで行くのは難しいかもしれない。とりあえず下部に1本支点をとるだけ、と騙して佐藤君リードで登らせる。
 左の雪の斜面から登り始め、右に回り込んで氷の取り付きに出る。予備にスクリューを1本持たせたら、1本刺しても登って行き、2本目をセットする。あと1本あれば氷部分は終わりだったが、スクリューは無いので下ってきた。
 私は氷の下部から取り付き、凍っていないような所を登りだす。ここは傾斜が緩いが凍っていれば楽しめそうだ。佐藤君が差した最初の支点を見ると、氷は空洞でスクリューの先端が3cm程見えた。取りあえず利いてはいるようだが、落ちれば抜ける可能性がある。
 もう1本支点を作ると氷は終わりとなり、傾斜は緩いが支点が取れない雪を10mは登らないと立木に着かず、その立木もかなり左になるのでトップロープの支点としては使えないので、3本目の支点そばに下降用の支点を作ることにする。
 下降用の支点はV字スレットで、氷にV字にスクリューで穴を開けて細引きを通して結ぶ。下降はそれだけに体重を預けて下るのである。もう一度佐藤君が登るので、W支点にして下る。
 佐藤君も下部から登って行き、スレットで下るように言ったら「えーっ」と言っていたが、しぶしぶ下ってきた。V字スレットを初めて下るのは怖いが、これも慣れである。
 これで今日のアイスクライミングは終わりとなったが、氷の状態を見ると所々空洞になっているので、今回が今シーズン最後のアイスクライミングである。昨年から始めたアイスクライミングも、今年からはリードができるようになり、いっそう楽しくなってきて、今日の登りには十分満足することができた。


イタザ沢 土石流防護柵


左を高巻く


大滝まで中間付近


F6 大滝


大滝の拡大


右の滝 12m


左の滝 5m


右の滝 小田中リード


中間部


佐藤君登る


上部


藤原君登る


中間部


左の滝 トップロープ


リード


佐藤君登る


終了点

タイム:車終点(6:45)→大滝(9:30〜14:20)→車終点(15:45)
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