猿岩 KGカンテルート登攀
 


2019年10月13日(日)〜14日(月)
 メンバー:山根木さん、小田中 智
 コース:猿岩神社〜ピーク〜KGカンテ終了点〜懸垂下降〜KGカンテ取付〜KGカンテ 往復


 猿岩は奥州市胆沢ダム湖からそそり立つ岩壁で、標高549mピークの西側に形成された柱状節理の岩壁帯である。高さは約200m、幅は300m程に広がる柱状節理の安山岩質の岩場で、山頂直下から一気に胆沢ダム湖に落ち込んでいる。
 胆沢ダムは5年ほど前に建設された大きなダムで、その前は小さな石渕ダムがありそれを拡張したダムである。当時は集落や温泉があり、ピークの下には猿岩隧道があり林道が一関方面へと続いていた。
 クライミングするには隧道の手前に車を止め、山を右から回り込むようにダム湖のわきを通って岩場の取付へ向かっていた。登攀するピッチは4ピッチ〜6ピッチあり10本のルートがある。グレードは4級下〜5級下で、人工はA1〜A2ある。
 岩は岩質の性質上クラックはなくリスも少ないためボルトが多く使われ、フリクション主体の岩のためオーバーハングでなくても人口になる部分が多い。上部帯は柱状節理がぶら下がるオーバーハング帯で、逆階段状の登りとなる。大ハングルートでは4mの庇がありボルトにぶら下がりながら登る。
 胆沢ダムができてからは前にあった林道と隧道が水没してしまったため、ピークから急斜面を下り4回の懸垂下降をしないと各ルートに取付けなくなってしまった。
 私はダムができてからは登っておらずというか、ザイルパートナーがいないため登ることができなかった。今回、階上のクライミングジムのオーナー萬徳氏からパートナーを紹介され、ようやく登れることになった。
 若い時は猿岩に通いトレーニングし、穂高、谷川、剣の岩を目指したものだった。私にとって猿岩はゲレンデとして親しんだ岩壁だった。

13日
 私の家に15時に集合し胆沢ダムへ向かう。山根木さんは八戸の大学の学生で、40年と少しの年齢差があり、私がついて行けるか不安でもあった。
 東成瀬村に向かう県道397号をツブ沼から左の道に入る。ツブ沼は焼石岳に登るつぶ沼コースの登山口である。この道は栗駒山に向かう342号に合流する道で、奥州湖大橋から左の猿岩橋へと左折する。奥州湖大橋付近からは異様な姿の猿岩の全容が見渡せる。
 細い林道を10分ほど走ると行き止まりとなり駐車スペースがある。ここから歩いてすぐの所に猿岩神社があり、そのための駐車スペースと思われる。ここにテントを張ると夕暮れとなり宴会を始める。


胆沢ダムに浮かぶ猿岩の全容


14日(曇り時々小雨)
 6時に起床し出発する。夜中には星空であったが今は曇り空だ。昨日の天気予報では晴れの予報であったのだが、雨が降らないことを願う。
 石段を登ると間もなく猿岩神社がある。胆沢ダムができる前は駐車スペースまでの林道はなく猿岩のピークから神社を経て隧道があった林道まで山道だった。神社付近はユキツバキの群生地で岩手県の天然記念物に指定されている。
 神社から先は踏み跡となりユキツバキをかき分けるように道がついている。急な登りを終えるとピークになり、少し行くと左にロープが続いている踏み跡がある。ハーネスを付けて急な下りをロープを頼りに下って行くと、KGカンテの終了点となる。
 ここからは眼下に胆沢ダム湖が見えるが、前日の台風のため水は茶色く濁っていた。8.7mm50mロープを2本で懸垂下降する。2回目の下降からはカンテから離れて中央ルンゼ側に下って行く。4回の懸垂で取付へ下って行くが濡れている部分はツルツルと滑り、登るルート上は濡れていないことを願う。
 準備をして医大ルートを小田中リードで登り始める。細かい霧雨が舞っているため、黒い岩苔の所はツルツルと滑る。ボルトにクリップし、滑るのでA0で登って行く。このKGカンテルートは雲表倶楽部の藤原氏がフリー化し、1ピッチ目は5.10aのグレードであり、岩が乾いていると楽しく登れる。
 医大ルートは途中から少し左に寄って直上するのであるが、岩の状態が良くないので右寄りの草付きおう角へ入って行く。35mザイルを伸ばして太い木でピッチを切る。
 2ピッチ目は山根木さんのリードであるが小雨が降り出し、岩はますます滑るようになった。胆沢ダムができてからは、エスケープすることはできなくなったので登りきるしかない。10m直上後は左のブッシュからバンドに出ると医大ルートに出るのだが、真っすぐ登ったため派生ルートに入った。
 医大ルートに合流すると5.9のフリーになり支点が少なくなるので、この滑る状況では人工混じりの方がかえって良かったと思う。小雨はすぐに止んだが滑るのには変わりはない。
 3ピッチ目は小田中リードで、ブッシュラインからカンテに抜けるが、岩が滑るので支点が少ないフリーが怖い。ザイルの伸びが悪いのでおう角の手前でピッチを切る。
 4ピッチは目は核心部のおう角が真っすぐ25m続き、乾いているとフリクションで面白い。続く古いハーケンに部分的にスリングをかけアブミ代わりにして登って行った。私は中間地点で突然ぶら下がって岩に顔をぶっつけた。しかしザイルが張られているので1mも落ちなかった。
 トップが使ったハーケンではあるが、私の番になって途中から折れたためだった。初登されてからもう50年ほども経ち、ハーケンはすっかり錆ているので劣化したのである。下部でもハーケンが緩んで抜けそうなものもあった。
 5ピッチ目は登っているルート部分が崩壊しておりルートを見失い、岩にスリングを引っかけてザイルで下降し左のルートに戻った。20mほど登るとブッシュでザイルが流れなくなったのでピッチを切り、カムでビレイする。
 6ピッチ目、いよいよ最後のピッチである。?角を10m登りやや左上する岩であるが、ツルツルでイヤラシイかったそうで、ハーケンも手で抜けたと言う。もう暗くなり始める時間で、かなりの時間を費やしてしまった。アブミを持参しなかったことを悔やんだ。
 私がそのまま上までザイルを伸ばし、ザイルを解いた。岩の状態が悪くかなり時間がかかってしまったが、しばらくぶりに登った猿岩に感動した。今度は黒伏南壁を登ろうと握手を交わす。
 登って来た道を下り神社で安全に登れたお礼をし車に戻った。


駐車場から猿岩ピーク方面


猿岩神社 イメージ


下降点への下り


1回目の下降


一ノ壁ダイレクトルートの上部壁


2回目の下降


KGカンテ医大ルート1ピッチ目の下部壁


2ピッチ目下部壁


2ピッチ目を登る山根木さん


4ピッチ目を登る山根木さん


4ピッチ目上部を登る山根木さん


右側が5ピッチ目から6ピッチ目のルート


6ピッチ目下部を登る山根木さん


6ピッチ目終了点で


6ピッチ目から見た胆沢ダム湖


6ピッチ目終了点でビレイする山根木さん

タイム:駐車場(7:00)→下降点(7:50)→取付(9:20〜45)→4ピッチ目(12:40)→6ピッチ終了点(16:30)→
    駐車場(17:40)
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