早池峰山 剣ヶ峰縦走敗退 ガイド登山 冬に成功したら素晴らしい!
 
冬の早池峰山山頂
冬の早池峰山山頂

2014年2月9(日)〜11日(火) メンバー:嶋脇さん、小田中 智

 コース:早池峰林道〜握沢登山口〜垢離取場〜七合目〜早池峰山 往復

 早池峰山門馬コースから剣ヶ峰を経て高桧山への縦走は、昨年11月から嶋脇さんより依頼をいただいていた。
 早池峰山の北面に位置する門馬コースは、コースが長く、樹林帯のため展望も悪いせいか、夏でも登山者は少ない。
 山頂から東に派生する稜線には剣ヶ峰があり、その三角系姿は美しく、登山道は高桧山へと続いている。
 夏はタイマグラ方面から登山口があり、登山者もいるようであるが、高桧山から平津戸へ抜ける吉部沢林道は歩く人はほとんどいない。
 今回は、門馬コース〜垢離取場〜早池峰山〜剣ヶ峰〜高桧山〜吉部沢林道〜平津戸という早池峰山の北面を一周する縦走が目的であった。
 しかし、雪の状態が悪く山頂までやや2日間を費やしたため、縦走を諦め山頂から同ルートを戻ることになってしまった。
 このコースは、七合目から山頂までの距離が長く、泊まる所は風を避けれる七合目の上しかなく、雪の状態と体力で1日で山頂に立てるかどうかで、縦走成功の可否があるように思う。
 先週も入山したが、1泊2日では山頂にさえ立てなかった。3月も末になり雪が落ち着けば1泊2日でも可能であるが、冬山を目指すのであれば3月上旬に登りたい。

9日(曇り)
 5時半に平津戸駅で嶋脇さんと待ち合わせる。全国的に荒れ模様の天気で、東京では20数センチの大雪とのニュースがラジオから流れており、区界を越えると雪が降っていた。
 私の車で早池峰林道除雪終了点まで行き、まだ暗いので少し待つ。先週もこのコースに来ていたが、歩き始めると雪は止み、今日の林道では20cm程の新雪が積もっていた。
 登山口から垢離取場までのコースには雪壁のトラバースが数カ所あり、底が氷の上に親切が積もっているため足場が悪く、思わぬ時間をくってしまった。
 垢離取場を過ぎると雪も深くなり、つま先が前に上がらなくなってきた。七合目に着いたのはすでに15時になろうとしていた。ここからが山頂までの距離的に長く、七合目半の尾根上に出ると樹林帯を抜けるので風がありテン場はなくなる。
 16時になったので尾根上の手前の平坦な所をテン場に決める。先週より少し下の所で、30cmの新雪のラッセルは苦しかった。
 ツエルトを張り、熱いコーヒーを飲むとホッと一息ついた。荷物を整理して水を作る。今夜の夕食は、目抜けの焼魚、エビ焼き、きりたんぽ鍋、ライス、コーンスープである。
 嶋脇さんはアルコールを飲まないので、私はホットウイスキーを飲みながら明日のことやこれからの山行の話に花が咲く。
 明日は山頂に何時に着けるかによって、縦走の可能性が決まる。明日の積雪状態と好天を祈りながらシュラフにもぐる。

早池峰林道は新雪のラッセルだ
早池峰林道は新雪のラッセルだ

握沢登山口
握沢登山口

垢離取場
垢離取場

七合目上のテン場
七合目上のテン場

タイム:早池峰林道(7:05)→登山口(8:50〜9:00)→垢離取場(12:30〜40)→七合目(14:50)→テン場(16:10)


10日(晴れのち風雪)
 5時半起床。ツエルト内は霜で真っ白になっていた。ラーメンもちを食べて、パッキングを始める。下界の方は晴れているようなので天候的には期待が持てる。
 稜線上に上がるまで2時間を費やすが、残念ながらその上も雪は締まっておらずラッセルは続く。しかし、遠く岩手山の姿が望まれたのはとても嬉しい。
 底雪は硬いのであるが、新雪は風で湿気を含み中途半端な硬さで疲れる雪質である。八合目上の岩峰から差し込む太陽は眩しく、小枝の樹氷や雪紋はキラキラと輝いている。なんと美しい光景だろうか、ワクワクした気持ちになってくる。
 九合目の樹氷帯に入ると、またラッセルとなる。もうすでに11時近くになっている。今日はどうやら時間的に頂上まで行くのが精一杯みたいだ。この時点で剣ヶ峰の縦走は諦め、今日は山頂小屋に宿泊して、明日来た道を下山する計画に変更する。
 樹氷帯を抜けると視界が悪くなり風も強くなってきた。しかし、雪面は締まってきたのでようやくラッセルから解放された。間もなく岩峰群が見え、剣ヶ峰への稜線に出た。
 もう山頂は間もなくだ。高い岩峰に向かって進んでいくが、山頂のお宮が見えない。GPSは山頂を指しているので岩影に進むと、屋根の一部だけ出した山頂小屋があった。
 山頂のお宮はエビのしっぽに隠れ、跡形もなく雪の塊になっていた。上空は晴れている様子で陽の光はあるが、展望は全然望まれなかった。
 冬期入口から小屋に入り、まずは熱いコーヒーを飲む。暖かい夜を迎えるためツエルトを張り、荷物を整理して水を作る。
 今夜のメニューは、カレイの焼魚、牛肉炒め、ライス、味噌汁である。コンロに火をつけるとすぐにツエルト内は暖かくなり、昨夜に比べると快適な生活だ。
 夕方から食事を始め、ゆっくりと語り、早めに休む。

出だしのラッセル
出だしのラッセル

八合目付近の岩峰
八合目付近の岩峰

岩手山を望む
岩手山を望む

日に輝く小枝の樹氷
日に輝く小枝の樹氷

八合目上の岩峰
八合目上の岩峰

樹氷と中岳方面
樹氷と中岳方面

九合目付近の樹氷
九合目付近の樹氷

風雪の稜線
風雪の稜線

早池峰山山頂
早池峰山山頂

山頂避難小屋
山頂避難小屋

タイム:テン場(7:45)→稜線(13:15)→早池峰山(13:30)


11日(風雪のち曇り)
 6時半に起床し朝食の支度をする。身支度を整え外に出ると、風雪ではあるが時おり日が差している。小田越え方向へと下ると、昨日つけた赤布を見つけ、そこから北方向へと下り始める。
 昨日の踏み跡は風に吹かれて見えないが、風雪の中を磁石とGPSを頼りに下って行く。しばらく下ると視界が100m程となり、一瞬下の岩峰が見えた。
 また深いラッセルとなり、しばらく樹林帯を下って行くと、昨日のテン場にぶつかり七合目に着いた。下界は晴れているようであるが、トレースをを見失い左よりに下ってしまい、右へと方向修正し、垢離取場下の沢に出た。沢を渡ると一昨日のトレースに戻り、30分程のロスタイムとなった。
 山頂からの下りだけでも結構な時間がかかり、登山口に着いた時には16時を過ぎていた。暗くなり始めた頃やっと車に着いた。
 エンジンキーを回すと音もなくエンジンがかからず、バッテリーがあがってしまっていた。このすぐ下には民家があるので歩いて訪ね、事情を説明して車を出してもらい、バッテリーケーブルを接続していただいた。
 どうやらルームランプの消し忘れみたいだった。民家のおじいさんにお礼を申し述べて、平津戸駅で島脇さんと別れる。
 冬の剣ヶ峰の縦走は残念ではあったが、この雪の状態の2月に、時間はかかったが北面コースから山頂に立てただけでも良かったと思わねばならないのかもしれない。

朝の山頂
朝の山頂

九合目付近
九合目付近

九合目付近
九合目付近

登山口
登山口

タイム:山頂小屋(8:45)→五合目下(14:30)→登山口(16:15〜25)→車(17:50)


★嶋脇さんからの声
 今回は自分の寝不足や体力不足で山を楽しむ余裕がなかったが、厳冬の2月に門馬から山頂に立てたことは貴重な体験となった。と、同時に改めて冬場の山の辛さを身を持って実感した。
 いつになるかは、わからないが厳冬に門馬から単独で山頂に立ちたいという目標ができた。来年は今回のリベンジを含めて、北面縦走をしてみたいのでその時はまた小田中さんに改めてガイドを頼みたい。
↑ページの先頭に戻る