2021年2月7日(日)〜8日(月)
メンバー:嶋脇さん(青森県)、小田中 智
コース:大野平キャトルセンター入口〜馬留〜又一滝手前〜1,290m幕営〜薬師岳〜又一滝手前〜大野平
冬のお客さんである嶋脇さんから、遠野側から薬師岳に登りたいとの依頼があった。冬の遠野側からの登山記録はないらしく、小田越からでは林道歩きが長いため、遠野側からを選んだという。
嶋脇さんとの付き合いはもう8年になり、私と一緒に登った冬山の後には同ルートを春や冬に単独で登っている。いわば単独で登るための下調べの意味もあるみたいだ。未知の冬山ルートを後日に単独で登るのには最良の方法だと思う。
薬師岳
早池峰山と小田越の峠をはさんで対峙する三角形の端整な山は、早池峰山の大展望台である。高山植物も多く小田越から簡単に登れるが、民話の故郷として知られている遠野市側の大出から、又一滝を経由して薬師岳に登る夏道がある。
山体を構成する岩盤は花崗岩で、蛇紋岩の早池峰山とは隣りの山ながら異なり、植物相も異なっている。
真冬に遠野側から登る登山者はごくまれで、ラッセルをしながらの日帰りは難しいが、途中でテント泊すれば、何の音もしない静かな冬山を楽しむことができる。
早池峰神社
大同元年(806)の春3月8日、来内村の四角藤蔵が神霊を拝し早池峯山大権現の宮を建てた。その後いく多の時代の変環を経て、現在早池峰神社として昔日の威容をしのばせている。
早池峰山(1,913m)は日本八景の一つである。古くより山嶽信仰の聖地として崇敬された山霊であり、それを祀る神社であった。
早池峰神社は末寺20社を持ち格式を有する神社である。広大な境内と杉、桧、一位の古樹が繋茂して風致が霊玄のごとき深く荘厳の感を受ける。
社殿規模も鳥居、山門、拝殿、神殿、深宮と続き、修験場の又一の滝、大横通り、河原の坊、天狗のすべり岩と不思議な神秘的な話がある。
7日(曇り)
6時に自宅に来てもらい遠野に向かう。大迫を過ぎるとコンビニが無いので、仕方なく遠野市街まで行く。雪は思ったより少なく、除雪終了点となる大野平キャトルセンターに車を駐車した。
天気は風雪まじりであるが積雪は少なく、スノーシューを履くと昨日の雨でたいして潜らない。1時間少しで登山口の馬留に着いた。
昨年から20kg近くを背負って雪道を歩くのが辛くなってきたので減量に心がけ、今回のザックの重量を14kgにした。山行形態や山によって重量は変わるので一概には軽くできないが、軽くする努力をしなければ歩けなくなってきた。
又一滝までの道は、細い登山道に山側から雪がかぶっており、片斜面が続くのでスノーシューでは歩きづらい。
又一滝手前で滝川を渡った所から夏道と別れ、左の尾根沿いを登ることにする。前方にうっすらと滝が見えたが凍ってはいないようだ。
夏道は滝の側を沢通しに登って行くので尾根状を登った方が楽で、いずれ上で夏道に合流するのである。
深い所でも20cm程度の潜りで、下雪が硬いので潜りが少ない。スノーシューを履いて膝まで潜ったら最悪のラッセルである。
小雪が降ったり、日が照ったりと変な天気で、風の音もなく小鳥の声も聞こえず静かな山の中だ。一人だったら静かすぎてラジオでもかけたくなりそうだ。
急な登りが続き夕方になってようやく、幕営予定地である1,290mの平坦地に着いた。冷えてきたので整地も早々にしてテントを張る。テントに入った頃にはすでに暗くなり始めていた。
下雪が硬かったのでここまで登れたが、深いラッセルだったらもっと下の幕営となり、翌日の行動がきつくなることになる。
荷物を整理してコンロに火をつけると、すぐにテント内は暖かくなった。まずはウイスキーをふたくち飲む。これが感激するほどに旨いのである。
私のコンロは、冬はガソリンコンロにしていたが、今回はガスのジェットボイルにした。ガスは冬用を買うと高いので、カセットガスをOD缶に器具で移してきたので原価は100円をきっている。ただしカセットガスは寒さに弱いので心配だったが、お湯で温めて使う工夫をしたらそこそこの火力になった。
ジェットボイルもメーカー品は高額なのでAPG製にしたら7,000円位で買えた。物は大してメーカー品と変わらないように思う。安いぶん儲けである。
雪を溶かして水を作り、各自それぞれに食事を作る。私の夕食は刺身、ハンバーグ、牛焼肉と豪勢で、こんな食事は自宅ではめったに食べれない。山ならではの食事だ。
ほろ酔いになったところでシュラフにもぐる。近年はトイレの回数が多くなってきたが、このテントはトイレ付なので安心だ。
馬留への林道
馬留
前方に又一滝 ここから左に登って行く
ブナ林の尾根
20cmほどのラッセル
1,290m幕営地
3人用テント
タイム:大野平キャトルセンター入口(8:55)→馬留(10:10)→又一滝手前(11:40)→1,290m幕営地(16:10)
7日(風雪のち曇り)
5時30分起床。夜中にはずいぶん強い風が吹いていたようだ。ラーメンもちの朝食をすませ身支度にかかる。身支度に手間取りテントを出発したのは8時を過ぎてしまった。いつものことではあるが、かなり身支度に時間がかかり過ぎている。もっと早く仕事できる工夫が必要なのだが!
5cm程の新雪であり、軽いザックでの歩行は楽だ。山頂まで350mの標高差なので2時間程度と思われる。夜中はずいぶん強い風が吹いていたようだが、今は大した風でもなく視界も良好だ。
森林限界を過ぎると風も出てきて前方の山容は見えなく、雪は硬くなってきたので更に歩行は楽になった。嶋脇さんは竹赤布を持ってきたので使わせてもらう。往復コースにはあると楽で、吹雪いた下りに威力を発揮する。
所々に夏道のロープが見え隠れしている。前方に石垣みたいな岩場が見えてきた。そこが山頂と思ったら、その隣に山頂の標識があった。風速10mほど、視界50mほど、気温氷点下14度。冬にしては穏やかな方な天気である。しかしながら体感温度は氷点下20度を下回っているので寒い。
下るごとに風も無くなり、熱いお湯で空腹を満たす。小枝の樹霜が美しく、まばらな樹林の雪景色も素敵だ。登りに比べると下りはあっという間にテントに着いた。
テントを撤収して下山していく。馬留への片斜面では、右足のスノーシューの調子が悪く思うように歩けず余計に疲れた。
昨年の冬でスノーシューの底が破れ、自分で補修して今回初めて使用したのだが、どうやらそこの部分が悪いようだ。新しいスノーシューは45,000円程するので痛手だ。しかし、これが無いと冬山は歩けないので買うしか仕方がない。
車で帰る途中、嶋脇さんの要望で早池峰神社に立ち寄った。山を下りたら寒さが身にしみ、参道は氷状態で恐る恐る歩いてお参りをした。
幕営地の前方
雪の造形
森林限界
山頂はまだ先
山頂右の石垣
薬師岳山頂にて
薬師岳山頂にて
枯れ木の造形
樹霜
中門
早池峰神社本殿
境内案内図
タイム:テン場(8:10)→薬師岳(10:30)→テン場(12:10〜13:00)→又一滝手前(14:30)→馬留(16:05)→車(16:40) |