2018年1月6日(土)〜8日(月)
メンバー:下野さん、小田中 智
コース:岳〜鶏頭山〜中岳〜早池峰山〜小田越〜岳
このルートのポイントは、中岳鞍部付近で踏み抜きがあるか、山頂からの下りで風の強さがどうかである。
ラッセルは少ないにこしたことはないが、冬山の場合はラッセルがつきものである。中岳鞍部付近の踏み抜きとは、雪が安定していない場合樹氷の根元付近で腰まで潜ることがあるが、回数が多いとかなりの体力の消耗につながる。
山頂への登りでの強風は逃げ場がないので、行くか戻るかのどちらかになる。山頂からの下りはかなりの強風の場合、小田越ルートを利用し梯子から下に向かって左の沢状に入ると風が弱まる。
今回の下山ルートは、山頂から中岳側に少し戻り、川原坊に続く尾根を下る予定だ。下から見て川原坊コースの左の尾根である。
6日(曇り)
自宅に5時半に集合してもらい岳へ向かう。大迫に入ると雪が少なくなり、岳集落でも10cm以下の積雪だ。
一昨日のトレース跡があり、鹿の足跡も無数にあった。近年になりかなり鹿が増えて食害も深刻化しているようだ。今回の重量は20kg程だ。
スノーシューを背負っていても重いので着けて歩く。畳岩の急登を登りきると雪の量が増えてきた。まだ正月を過ぎたばかりなので、これからが雪が積もる季節だ。
鶏頭山避難小屋に入り、カップラーメンの昼食とする。風をしのげる場所での温かい食べ物はことさらに美味しい。
ニセ鶏頭への岩場の登りはスノーシューを着けたまま、前爪を利用して梯子を登る。鶏頭山には一時的に日が差したが、山頂部だけに薄い雲がかかっていた。
いつもであればこの付近からはラッセルであるが、下雪が硬いためかさほど潜らない。明日からもこんな調子で登れることを願う。
鶏頭山からは中岳と薬師岳はクッキリ見えていたが、早池峰山頂方面は雲に閉ざされて見えない。さて今日はどこに泊まろうか?鞍部に下り適当な所を探そう。
少し風はありそうだが、1,415mピークの手前の小高い場所をテン場と決める。設営中は風が強くなり寒いほどだ。冬用テントに外張りがあるので、風の寒さは軽減されるはずだ。
荷物を整理してガソリンコンロを炊くとテント内は一気に暖かくなった。ふた口のウイスキーと暑いコーヒーが体の中からも温めてくれた。
夕食は焼肉、刺身、野菜サラダ、漬物、釜飯で、まずは日本酒で乾杯する。下野さんとは5月の剣岳以来だ。酔もまわり眠くなったので6時過ぎにはシュラフにもぐる。
夜中は風雪が吹いている様子だった。
岳集落から
小屋への尾根
鶏頭山避難小屋
ニセ鶏頭の岩場
左から回り込んで登る
ニセ鶏頭から鶏頭山
鶏頭山
毛無森
中岳と薬師岳
テン場付近からの鶏頭山
タイム:岳(7:10)→鶏頭山避難小屋(10:45〜11:25)→鶏頭山(13:15)→テン場(14:10)
7日(曇りのち強風)
ラーメン炒飯を食べて外に出る。積雪は5cm程であり、テントを撤収して出発する。今日も下雪がしっかりしているので15cm程しか潜らない。
中岳の手前あたりまでは穏やかな天気だったが、標高が上がるごとに視界が悪くなり始め風も出てきた。中岳の手前あたりからは雪は硬くなったが、時々ハイマツに潜るようになってきた。
中岳付近は風が強く山頂は確認せず、樹氷帯に入ると風が弱くなったぶん樹氷で視界が悪くなった。GPSで現在地を確認しながら下っていくと鞍部となり風が強くなった。
前回の時は中岳から鞍部の間で腰までの踏み抜きに悩まされ体力を消耗したが、今回はさほどの踏み抜きはなかったが、高齢のせいで体力は消耗した。
登るごとに風が強くなり、斜面は硬くなったので歩きやすくなった。天気予報では風速が20m弱だったが、さらに高度を上げると風速25m、視界50mと風が強い割には視界があるので気分的には楽だ。
ここからさらに風が強くなってももう戻ることはできない。視界がある限り風速30mまでは大丈夫、山頂はもう少しなのだ。
やがて見覚えのある岩が現れると真っ白いお宮が見えた。屋根だけ出して雪に埋もれた山頂小屋も見える。お宮の前だけが何故か不思議に青空で天気が良かった。
小屋の側面を少し掘り起こすと冬期入口がでてきた。炊事用の雪をナイロン袋に詰め、ヘッドランプを出して小屋の中に入る。
急に風のないところに入ったので小屋の中は暖かく感じたが、気温は外とほぼ同じで体感温度がそう感じさせたのだ。
板間にテントを張り、コンロを炊くとすぐに暖かくなった。雪を溶かし炊事用の水を作り夕食の支度をする。
今夜はホルモン焼き、野菜サラダ、漬物、釜飯で、ホットワインで乾杯する。山に泊まって食べる食事やお酒はことのほか美味しい。間もなく62歳になってしまうが、もうしばらくはこんな冬山登山がしたいと思う。
中岳への樹林帯
中岳の手前
山頂へ向かって
早池峰山山頂
山頂避難小屋
タイム:テン場(7:10)→中岳(11:30)→早池峰山(15:20)
8日(地吹雪のち晴れ)
外に出ると風で雪が舞い上がり視界が悪い。しかし風の隙間からは青空が覗いているので、天気が悪いのはここだけのことと思う。
下山ルートは西コメがモリ沢の右の尾根を川原坊に向かって下る予定だったが、状態が悪いので小田越コースを下ることにした。このルートは中間部で暴風になることがあるが、その時は梯子を下らず左の沢に入りながら下ると風を避けることができる。
山頂から少し下ると風は岩稜で遮られ天気が良い状態だ。後方には岩手山も見えていて、樹氷帯が日に当たって美しく輝いている。
剣ヶ峰分岐では、遠く鳥海山、焼石岳、栗駒山、五葉山、片羽山が青空の中に見えている。鳥海山が見えることは珍しいことだ。
一昨日あたりのトレースがあったが、小屋に入った形跡はなかったので日帰りでの登山者のようだ。昨今では1泊して冬山を登る登山者を見かけなくなったのは淋しいことだ。私は酒につられて1泊以上の登山しかしないのだが。
岩に食い込み岩をとらえるアイゼンの音が小気味いい感じだ。2段の鉄梯子は雪に埋まっており、脇の斜面をゆっくりと確実に下っていく。
こんなに天気が良い日ではあるが登山者の姿は見えなく、もったいないことだ。一合目からは夏道の右に入っていき小田越への林道の途中に出るように下っていく。
林道から見上げる山頂も天気が良くなったみたいで青空の中に浮かんでいた。川原坊を過ぎたあたりでようやく、男女5人のツアー者に出会った。
今回の早池峰山は私たちの貸切だった。今回はラッセルが少なく、天候的にも恵まれた縦走だった。登りは暴風だったが終わりよければ全て良しだ。
山頂から少し下ると地吹雪がおさまった
樹氷と風雪
薬師岳
鉄梯子から下ったところ
岩峰群
薬師岳
山頂方面
タイム:山頂(8:25)→川原坊(11:15)→岳(13:15) |