2020年3月6日(金)〜8日(日)
メンバー:嶋脇さん、小田中 智
コース:金山滝登山口〜中岳〜剣岳手前(泊)〜弟子還〜奥岳 往復
前回の2月は雪が深く剣岳の手前で敗退したので、リベンジとして1泊2日で挑むことになった。盛岡から登山口までの道のりは150kmあり、車で2時間30分ほどかかるため、前日に秋田入りをして朝早めに出発することにした。
初日は剣岳付近にテントを張り、翌日山頂を往復して下山予定で、さらに予備日を1日設けた。今回は雪も締まってラッセルは少ないと考えワカン歩行とする。金山滝登山口から奥岳までは約10kmの道のりである。
太平山(1,170m) 日本三百名山
太平山は、秋田県中央部、秋田市と上小阿仁村とにまたがる山で、太平山地の主峰である。古くから信仰の山として知られ、現在でも大小の社殿や登山道のかたわらには多くの石仏が残っており、奥岳には太平山三吉神社の奥宮が設置されている。
山頂からは西方に弟子還、宝蔵岳、剣岳、鶴ガ岳、中岳、前岳へ続き、北方へは旭岳、笹森、赤倉岳、馬場目岳へと1,000m前後の山が続いている。登山道が整備されているので前岳から馬場目岳への長い距離を縦走もできる。
太平山地は日本海側の影響で冬は雪深く、奥岳まで近いコースの旭又登山口への林道は除雪されていないので、金山滝登山口から前岳、中岳、剣岳を経て奥岳に達するルートしかない。
しかし、真冬は前岳までは登山者が多いが、その先からはトレースもなく入る登山者はほとんどいないようだ。3月になると雪が締まってくるので中岳までは登山者も入るようだ。
6日(風雪)
昨夜は秋田交流センターユフォーレに宿泊し、早朝に登山口に向かう。昨夜は雨で、朝も小雨が降っているので車で止むのを待つ。
雪がだいぶ溶けたので登山口までの林道には雪が無く、登山口まで入ることができた。間もなく雨が止んだので歩き出すが、登るにつれて雪が降り始め、進むごとに風も強くなってきた。
スキー場からの登山道と合流する手前まで来ると、急に雪が深くなり風で吹き溜まりとなっていた。昨夜は雪が降ったみたいで、この先の積雪が思いやられる。所々ワカンで膝下まで潜るが、雪は新雪で軽いためスノーシューよりは歩きやすい。
女人堂まで来るとすっかり冬の景色であるが、下雪が硬いため潜りはそれほどでもない。中岳では前回と同じような積雪状態で、小屋は頭だけ残して埋まっていた。
鶴ガ岳へ向かっていくと木の枝に積もった雪が美しいが、風が強くなりすっかり吹雪状態だ。鶴ガ岳を越えたあたりからテン場を探すが、尾根の南側は雪庇が張り出し、北側は斜面なので中々適した所が見つからない。
地図を見ると剣岳を越してしまうとテン場はなさそうで、手前付近しかないようだ。997mピークを越したあたりに適当な所が見つかり設営する。気温は下がっており寒く、明日は晴れる予報だ。
食料は各自で、分け合いながら食べるが、今回は乾杯はなしである。嶋脇さんは酒を飲まないので彼の分まで酔った。
夜にトイレに出ると風は止み秋田市街の明かりが見えた。
金山滝登山口
金山滝
女人堂
前岳にて
中岳避難小屋
雪の重みで枝が下がり、柳幽霊みたいだ。
尾根は雪庇が張り出している
タイム:登山口(6:45)→前岳(10:10)→中岳(11:45)→幕営地(15:45)
7日(快晴)
今朝は冷えてストックには霜が張り付いており、樹間から見える空は青空だ。太陽を浴びて白く輝く樹霜が美しい。昨日とはうって変わっての好天だ。
サラサラの新雪を踏んで剣岳に立つと、宝蔵岳、弟子還、奥岳が青空を背景に朝日に輝いている。たどる尾根はいたる所に雪庇が張り出しており、その眺めも素敵だ。標高が低い山域ではあるが、このような尾根もなかなか珍しい。
宝蔵岳からの下りは急で、このコースでここが初めての急場だ。宝蔵岳に立つと目の前には弟子還の急斜面がそびえ、行く手を遮るように威圧的な斜面だ。夏場は岩場でクサリが張ってあるみたいだ。
ワカンを外しツボ足になる。今回私はアイゼンを持参していないので、確実なステップを切らなければならない。嶋脇さんは弟子還を見て帰りたさそうだが、帰るのはいつでも帰れるので、まずは取り付いてみることだ。離れて見るより近くから見ると突破口があるものだ。
これから奥岳を目指すと今日は帰れなくなるので、予備日を使って今日もう1泊テントに泊まることの了解を得て、山頂を目指すことにした。このルートは金山滝登山口から奥岳まで約10kmあり長いので、ラッセルがある冬場は2泊3日かかってしまう。
深い潜りから徐々に硬くなり、部分的にはかなり硬い所もある。登りやすいルートを見つけながら、ピッケルを刺しステップを大きめに切っていく。彼はアイゼンを付けているので心配はないが、落ちると弟子還沢へと一直線だ。
さすがに息が切れ呼吸を整えながら登っていく。ピークに立つと目の前には奥岳山頂に立つ神社が真っ白い姿で見えた。ラッセルを交代してキラキラ輝く雪の結晶を見つめながら歩いて行く。
山頂に立つと神社はほとんど埋まっておらず、風の強さを物語っていた。北西に続く稜線の先に赤倉岳から馬場目岳、たどってきた南西へは弟子還のピークから剣岳、鶴ガ岳、中岳と太平山一帯のピークが見えた。遠くでは東側に早池峰山、和賀岳がうっすらと見え、残念ながら鳥海山は見えなかったが日本海が見えた。
嶋脇さんが憧れた太平山山頂は登ったが、弟子還の下りが今回の山場である。登りは登れても急な斜面を下るのが本人の技量である。ザイルを持参しているので問題はないのであるが。
登りに硬かった雪も、2時間ほどの間に照らされた太陽熱でいく分柔らかくなっていた。傾斜が強い部分は後ろ向きとなり、大きなステップを切りながら下っていく。ピッケルを根元まで刺して下る彼の動作は確実なのでザイルは使用しなかった。
鞍部に下ってしまうと後はテントまで緊張する箇所はない。のんびりと下り剣岳に立つと、今日の新しい足跡があった。単独者がここまで来たみたいだ。天気もいいしトレースがあったので来たのだろう。
2人とも予備食があるので食事は問題ないが、アルコールは舐める程度しか残っていないので、ただただそれだけが残念だ。もう1泊することになるなら、もう少し残しておくのだったと思ってもすでに遅い。
幕営地
旭を浴びる樹霜
雪庇と樹霜
枝に付着した樹霜
雪庇と奥岳
宝蔵岳、弟子還、奥岳
右から赤倉岳、馬場目岳
弟子還と奥岳
弟子還
雪庇を背景に
弟子還 トレースは兎の足跡
弟子還の上部
弟子還ピークから見る奥岳
雪庇と奥岳
奥岳の神社
三吉神社奥宮
神社を背景に
馬場目岳を背景に
弟子還ピーク、剣岳、鶴ガ岳、中岳
赤倉岳と馬場目岳
登ってきた尾根
弟子還ピークからの下り
下ってきた弟子還
タイム:テント(7:05)→剣岳(8:15)→宝蔵岳(8:55)→弟子還(9:45)→奥岳(11:45〜12:00)→テント(15:30)
8日(晴れ)
今朝もいい天気だ。テントを撤収してトレースをたどる。まだ3月上旬にも関わらず、2日間も晴れるなんて珍しいことだ。今年の冬は暖かく雪も少なく、年々暖かくなっているように感じる。
中岳に着くと2人の登山者がいたが次々と登ってきた。ここで奥岳ともお別れだ。リベンジの今回は晴れてくれてよかった。やはり今の時期が登頂の確率が高いのであるが、冬山とこだわれば1月〜2月である。
秋田駒ヶ岳から岩手山の姿を最後に見て、登山口へと下り始める。下からは次々と登山者が登ってきて、踏み跡はしっかりと固まって舗装道路状態になっていた。女人堂では10人近くの方が休んでおり、前岳から中岳の人気の高さが物語っていた。
スキー場への分岐を過ぎると道はグチャグチャ状態で滑って転びそうだ。登ってくる方々はほとんどが長靴姿であるのはこのためだったのかと今さらにして思った。登山靴とスパッツは泥だらけになっってしまった。
急な下りから沢を渡り梯子を下りると登山口だ。1日余計にかかってしまったが、リベンジを達成して本当に良かったし好天に恵まれたことに感謝する。
駐車場近くの食堂で遅い昼食をし、角館温泉ねこの鈴で3日間の汗を流して矢巾へと帰っていった。
中岳から眺める奥岳への尾根
秋田駒ヶ岳と岩手山
タイム:テント(8:10)→中岳(10:55)→登山口(13:45) |