岩手山 焼走り〜網張縦走ガイド 敗退
 


2016年1月16日(土)〜17日(日)
 メンバー:嶋脇さん(青森県)、佐藤 博、小田中 智
 コース:焼走り駐車場〜第一噴出口跡〜外輪〜岩手山山頂〜岩手山神社奥宮〜不動平〜八合目小屋〜馬返し


 昨年は、鬼ヶ城の雪の状態が良くなかったため鬼ヶ城を通過せず、お花畑から網張に縦走したが、冬の鬼ヶ城を通過したい嶋脇さんはリベンジとして今年も依頼をいただいた。
 昨年は、御神坂から登ったので今回は焼走りから登り、岩手山内輪内にテント泊することを提案して計画した。
 友人の佐藤君が参加することになり、3名での登山となった。下山時の車を網張スキー場に置くため、車2台で移動しなければならない。

16日(曇りのち風雪)
 網張スキー場で嶋脇さんと待ち合わせ、私の車で焼走り登山口に向かう。最近になってようやく雪が降り始めているが、スキー場までの道すがらは例年に比べるとかなり雪が少ない。
 登山口の積雪は20cm程で溶岩帯は通れないため、先週と思われるトレースがある夏道をたどることにする。天気は穏やかで薄日が漏れているが、山頂付近の天気は曇りで風速が17mの天気予報である。
 徐々に雪が深くなってきたのでワカンを着ける。今回は試として私のみワカンで、他の者はスノーシューである。第一噴出口跡が近くなると膝下までのラッセルとなるが、積雪が少ないためブッシュに邪魔されて歩きずらい。
 噴出口跡からは外輪に向かって真っすぐ登って行くのであるが、ブッシュがこまいため右から回り込むように斜面に入って行く。スノーシューの後を歩くとワカンでは更に10cm程潜り、この潜りが体力を奪っていった。
 今回は鬼ヶ城の通過を考えてワカンにしたのであるが、この斜面がこんなに雪が柔らかいのは誤算であった。やがて視界は悪くなり始め、岩稜状になると風も出てきて冬山らしくなってきた。
 岩稜状に入ると雪が締まり歩きやすくなったが、体力的にはペースが落ちた登りとなった。登り出しを左に回り込みすぎ、通常ルートより左の岩稜状に入ったため、外輪の出口は「故 杉村君」が眠るレリーフ付近が間じかに見えた。
 杉村君に手を合わせ、出口の急な雪壁を登る。先頭の佐藤君は安定した登りですぐに登ったが、ラストの私は躊躇しながら越えた。もうすでに17時に近く、風も強くなってきた。
 ようやく山頂に着き握手を交わす。風速は20m近くあり暗くなり始めてきた。こんな天気のため不動平の避難小屋まで行きたいので、写真を撮るのも止めて先を急ぐ。
 ところが、山頂を越えると一段と風が強くなり、ツルハシの分岐を過ぎると風は風速25mとなった。登りでの25mなら歩けるが下りではかなりよろけ、転ぶ危険性がある。このコースは風が弱ければヘッドランプでも歩けるが、この状態で下ることはかなりの危険性がある。
 迷うことなく戻ることにし、風が弱い登ってきた方から内輪に下ることにする。山頂から右回りの外輪は、鬼ヶ城を越えて吹く西風が冬は特に強いため、逆回りの方が風がいくぶん弱いのである。
 外輪に登ってきた辺りから内輪に入るため、少し急な雪の斜面を下って行く。もうすでに薄暗くなっていたが風も弱まり、内輪の中はすぐそこだ。ヘットランプを出し岩手山神社の方に向かう。
 風はだいぶ弱くなったが、雪が無いため雪庇がなく風を避ける所は無い。若い頃は、冬山ビバーク訓練と称して、シュラフなしで各自がツエルトで一夜を過ごしたのであるが、なつかしい思い出である。
 この状態で風の当たらない所と言えば奥宮しかない。妙高岳を回り込んで行くと神社の石塔があり、神社のスペースに入る。急いで整地してテントを張る。
 荷物を整理してコンロに火をつけるとすぐに暖かくなった。まずは熱いコーヒーをすする。水を4L作り食事の支度をする。今回は嶋脇さんの買い出しで、すいとん、ホルモン焼き、野菜サラダである。
 食事しながらアルコールをいただくが、登りで疲れ、たいして飲まないうちに定量を迎えていた。今夜のトイレは寒い、一度出ると体が凍ってしまいそうである。


登山口の上付近


第一噴出口跡から溶岩流を望む


第一噴出口跡にて


第一噴出口跡の上


お鉢の直下


故 杉村君が眠るレリーフ付近

タイム:焼走り登山口(7:50)→第一噴出口跡(11:50)→岩手山山頂(16:50)→奥宮(17:40)


17日(晴れ)
 昨日の疲れで誰も起きてくれなく寝坊してしまう。だいぶ遅い出発となったが、今日は黒倉山付近に泊まる予定なので問題はない。外は青空であるが風は強そうだ。
 外輪に出るとやはり風は強く風速20m程だ。不動平へと下り始めると鬼ヶ城に遮られた風は徐々に弱くなってきた。5人パーティの若者が登ってきたので、上の状態を知らせる。
 不動平で鬼ヶ城通過は止めにして、お花畑へコースを変更する。しかし、間もなくまたもや風が強くなり、風速は20m程ある。30分も下って行くと風は弱くなるはずであるが、この状態では無理は禁物だ。
 小屋裏で状況を整理し、嶋脇さんに馬返しに下山することの了解をえる。明日は今日よりも風が強い予報だったので、最低でも今日は黒倉山まで行かないと明日帰れなくなってしまう。柳沢からはタクシーを利用して網張に置いた車を回収することにする。
 八合目の小屋まで下ると風が弱くなり、穏やかな天気になった。しかし雪が少ない。例年であれば小屋から外輪に直登できるのであるが、ブッシュやザレが出ている状態だ。
 山頂に向かった5人組はどうしているだろうか?少し待ってみるが来ないので下って行く。七合目付近は穏やかな天気で、外輪付近での強風が信じられないくらいだ。
 六合目に向かって下って行くと、上から5人パーティが下ってきた。話をすると、風は風速25m程で戻ってきたと言う。彼らは東北大学の山岳部のメンバーだった。どおりで若いはずだ。こういう若者が冬山に登っている姿を見るととても嬉しい。
 五合目からの岩場帯は、南側ということもあり例年雪は多くはないが、雪はパサパサで硬くなっている所は全くない。例年であれば四合目から上は硬くなっているのである。
 春山みたいな天気の中のんびりと下って行く。馬返しから見上げる岩手山は穏やかではあるが、厳しく縦走できなかったことを思うと残念ではあるが、また一つ貴重な経験をしたと考えると爽やかな気持ちだ。
 駐車場まで車の跡があったが、ここまで入れるのはジープ系の車であろう。柳沢まで歩くことを考えて車道を歩いて行く。ついさっきから膝の調子が悪く、今後の山行が気になる。
 20分ほど歩くと自衛隊の上口ゲートがあり、タイヤの跡が多く残っているのでタクシーを呼ぶ。網張に向かう途中の春小谷地から眺める岩手山は素晴らしく美しかった。


岩手山神社奥宮


奥宮から妙高岳


テントを張った奥宮にて


八合目から見る不動平方面


八合目小屋にて


八合目小屋と鬼ヶ城から続く稜線


馬返しから望む岩手山

タイム:奥宮(8:40)→八合目小屋(10:15)→馬返し(13:55)→上口(14:30)


 明日までの食料が余っているので、八幡平にある佐藤君の別荘に泊まってのんびりすることにした。
 厳冬期の岩手山はさすがに厳しい。多くの登山者は日帰りで登っているようであるが、山は夏でも冬でも1泊が楽しい。冬は荷物を背負って登るためより厳しさが増すが、その分登った時の感慨も大きい。
 今回は強風のため敗退となったが、厳冬期の山は敗退を覚悟して入らないと危険が伴う。
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