2021年4月11日(日)
メンバー:佐藤 博さん、小田中 智
コース:洞ヶ沢駐車場〜洞ヶ沢〜栂尾根〜屏風尾根〜東八幡平リゾートスキー場
しばらくぶりに洞ヶ沢を屏風尾根まで登ることを目的に佐藤君と行くことにする。もうひとつは、上部の氷柱の状態を確認する意味もある。
下山は、から赤倉岳をへて七滝登山口に下山する予定である。近日に新雪が積もったようなので雪の状態が不安でもある。
洞ヶ沢は、岩手山屏風尾根の北面に位置する沢で、夏には水流があり大小の滝が連続し、登攀を対象とした困難度の高い沢である。
昭和33年頃盛岡山岳会により初そ行されたが、昭和39年に盛岡山想会が全ての滝を登る完全そ行がなされた。
大きい滝は20数mあり、オーバーハングやシャワークライム、急傾斜のツルツルの滝などがあり、人工でなければ登れない滝が5ヵ所ある。滝はF16まで数えられているが、小さい滝も合わせると30を数え、登りがいのある登攀そ行が楽しめる沢だ。
3月からは、廊下の側壁や滝には氷が張り、アイスクライミングができるが、アプローチが遠くラッセルも強いられるので、アイスクライミングを楽しむためだけの登攀には時間がかかりすぎる。
残雪の時期は、雪が滝を埋め尽くしているので歩きやすく、急な雪壁を登る登高を楽しめる。雪の状態により滝の下や出口はシュルンドが開いているので、部分的には緊張感も味わえる。
11日(快晴のち星空)
七滝登山口に集合し、私の車で洞ヶ沢へ向かう。今朝は冷えて車のガラスが凍っているほど寒く、雲一つない快晴である。今まで日曜日が天気が悪かっただけに、ひさびさの日曜の好天気だ。
洞ヶ沢に向かう林道から望む北面の沢は、白と黒のコントラストでとても美しい。例年に比べ残雪が少なく、土石流防護鉄塔の駐車場まで車で入れた。
少ない残雪は朝の冷え込みで硬く、ツボ足でも潜ることがなく歩きやすい。しばらくすると岩小屋手前の滝に着いたが、例年より雪が無いため岩が露出していた。例年であればロープなしで登れたが、今日はちょっと難しそうだ。
リードジャンケンをしたら負けたので私がリードだ。いつもは左から登っていたが無理で、右から取り付く。ザイルを胴に巻いて登り出し、岩の穴にスリングで中間支点をとるが、出口が嫌らしいので一度下ってハーネスを着ける。若い頃は、勝ちがリードで登れるのが嬉しかったが、年を取るとセカンドの方が嬉しい。
出口に小さなチョックストーンを見つけランニングをとり、雪にアックスを刺して乗り越えた。私のザックを吊り上げセカンドを向かえた。モタモタしてしまい1時間も費やしてしまった。
沢の奥に進むにつれて上下の起伏が出てきて、沢幅も狭くなってきた。大きいチョックストーンの石に行く手を遮られたので、少し戻って右から高巻き、懸垂下降で沢に戻った。
一昨日積もった新雪が10cmほど潜り、下雪が硬いので歩きづらい。ひんぱんに滝の急斜面が出てきて、登るのは楽しいが雪が少なく、下が釜で水がたまっている所は巻かなければならないので時間がかかってしまう。
今の時期は滝に雪があれば登りやすいが、雪が少ないと岩肌が出ておりシュルンドの口も大きく開き、ザイルを使用すると時間をくってしまうので極力ザイルは使用したくない。
沢の両側が切り立った岩でおおわれてきたら、氷壁になっている所が出てきた。間もなく15mほどの氷壁が出てきて、もう少し氷が厚ければ楽しいアイスクライミングができる所だ。
その先は滝で行く手を遮られて登ることはできなく、戻らなければならない。急な斜面を登ってきたので下りは懸垂下降であるが支点がない。太いツララがあったので、それにザイルをかけ懸垂した。
高巻くところは急斜面しかなく30mほどの高さがあり、中間支点をとれるブッシュもない。登る所はそこしかなく、中間支点が取れないためザイルをつけても意味がないので、ノーザイルで登って行く。
傾斜は60度から70度あり、岩のところもあるのでしっかりとアックスも効かなくダマしながら登って行った。高度もだいぶ上がったので沢に戻らず、このまま栂尾根を登って行く。
尾根はブッシュ漕ぎはなく快適であるが、傾斜が急なためそろそろふくらはぎが疲れてきた。しばらくすると左に岩手山山頂と屏風尾根三峰の岩峰が美しく見えた。屏風尾根の稜線はまだ先である。
これからクラウンピークの登りになるが、そこは左から回り込まなければならないのが分かっていながら、登ってしまった。懸垂下降で洞ヶ沢右俣に降りたが、ザイルが引っかかり下降器を外した時に、買ったばかりの下降器を落としてしまった。探したが残念ながら見つからず諦める。
クラウンピークは稜線側は岩壁になっているので、手前から左に回り込むと楽に稜線に出ることができる。夕日で赤く照らされた三峰はとても美しい。
もうすでに18時になろうとしている。これからの下りでは間もなく暗くなってしまう。屏風尾根から七滝登山口に下るには時間がかかりすぎるため、赤倉岳から八幡平リゾートスキー場に下ることにする。
スキー場へは赤倉岳から下に伸びる尾根を下るのであるが、明るいうちに尾根の取り付きまで下りたい。しかしながら、すでに12時間行動しているのでクタクタに疲れ腹も減っていた。まずは腹ごしらえであるが、食い物も大して残ってはいない。
下り始めると新しいトレースがあった。七滝に下っているかスキー場に下っているか分からないが、どちらにしてもこれをたどれば暗くても迷うことはない。なんとラーキーなことだろう!
下りはずいぶん左寄りにトラバースしながら下っているので七滝へ下っていると思ったら、GPSはスキー場をさしていた。足がもつれないようにゆっくりと下って行くとスキー場に出た。
スキーで下ると早いゲレンデも、やはり前に暗くなってエスケープした時も、スキー場の下りで1時間かかった記憶がある。上空には一面にちりばめられた星空であるが、美しいと思う余裕もなく、ただひたすら足を前に出すだけだ。
やっとスキー場の駐車場に着いたが、車は七滝登山口と洞ヶ沢入り口にある。今夜は佐藤君の別荘で宴会予定だったので、車の回収は明日にしてこのまま別荘に向かった。30分して長すぎた登山がやっと終わった。
先週の13時間をさらにバージョンアップしてクタクタであったが、この年で15時間歩けたのは嬉しい気持ちもある。これからの山行はゆっくりのんびりの山行にしよう!でないと早死にしそうだ(笑)。
コップ一杯の焼酎が美味いこと、冷豆腐は今までで一番おいしい食べ物だったとは知らなかった。食事をし、風呂に入るともう酒はいらなかった。
岩手山北面の全容 こんなにきれいに見えることは少ない
土石流止め
けっこう雪が少ない
真ん中の穴が開いているところを登った
左の出口がイヤラシイ
釜の水は凍っていた
ここはいつも登ることはできないが、夏はどこかを登れる。
ここも登れない
ノーザイルで中央を登る
ここも登れない
佐藤君リードで左を登る
氷が厚くなればクライミングがおもしろそう
この上が登れないので戻る
太いツララを支点にした
右側をノーザイルで登る
岩手山山頂と屏風尾根三峰
三峰の岩峰
栂尾根上部のクラウンピーク
屏風尾根の夕日
タイム:洞ヶ沢駐車場(6:40)→チョックストーン(9:50)→氷壁(6:40)→屏風尾根(17:50)→スキー場駐車場(21:25)
→別荘佐藤邸(21:50) |