十和利山から見る戸来岳
2014年2月26日(水)〜27日(木) メンバー:嶋脇さん、小田中 智
コース:宇樽部〜十和田山〜三ッ岳〜鞍部〜大駒ヶ岳〜鞍部〜アグリ峠〜十和利山〜西線〜迷ヶ平〜田代平
十和田三山とは、十和田山、戸来岳、十和利山の3つの山をさし、十和田湖の外輪山で冬は雪深い。
十和田山は、十和田湖東岸の宇樽部から登山コースがあり、十和田湖の眺めは最高であるが、近年登山道の半分は背丈以上の藪がかかり廃道となってしまっている。
戸来岳は、三ッ岳と大駒ヶ岳の2山を総称した呼び名で、三山の中では一番標高が高く、コースは2コースあり、見ごたえのある美しい山である。十和田山から三ッ岳への登山道は無い。
十和利山は、遠望するとピラミッド型の山で、迷ヶ平から2コースある。十和利山から三ッ岳への縦走コースはあるが、最近アグリ峠までが笹がかぶるようになっている。
この十和田三山の冬期縦走に目をつけたのが嶋脇さんである。昨年初冬から依頼をいただき、当初1月の予定であったが、1泊2日で1月のスノーシューでの縦走は無理があったので、2月後半の日程となった。
26日(快晴)
朝5時田代平の除雪終了点を待ち合わせにしたが、朝自宅出発では大変なので前日の夕方に現地に入って、道路状態を確認しながら車に泊まった。
島脇さんの車を残置し、私の車でスタート場所の宇樽部へ向かう。最近は夜明けがだいぶ早くなり、十和田湖に降りる時には明るくなっていた。
民家奥の除雪終了点に車を止め、身支度を整えながら朝食のカップラーメンを食べる。スノーシューを履きスタートすると、スキーの跡があったが右へと消えていった。
庭園跡を左へと進み登山口へ進むと間もなく、カモシカが出迎えてくれた。挨拶を交わし話しかけるが逃げようともせず、じっとこちらを見つめていた。
積雪はさほど多くはなく、雪は締まっており、10cmも潜らなく歩きやすい。急な登りで尾根に上がると梢の間から十和田湖が見えた。しばらく登って行くと尾根に日が当たり、太陽を浴びた雪面が眩しい。
樹林帯が開けてくると八甲田連峰の山々が、青空の中に白く輝いて見える。高田大岳から櫛ヶ峰まで北八甲田から南八甲田の頂きが見渡せた。
登るにしたがい新雪があり、それでも10cm程しか潜らなく、ぬけるような青空を背景にして、ダケカンバの木に付いた雪が輝いて美しい。
樹木が低くなり樹氷の先には十和田湖の全容が見渡せ、その右奥には八甲田連峰が見えるのである。白と青のコントラスト、見るもの全てが美しく感動と喜びが絶えないくらいだ。
平らな山頂からは、これから向かう三ッ岳ピークとそこへと続く尾根が見えている。これからのルートは未知の部分であるが、地図ではしっかりとした尾根が三ッ岳へと続いている。そして、十和利山。道のりは遠い。
今は12時前、今日はどこまで行けるのだろうか?雪の状態にもよるが、三ッ岳を越えて大駒ヶ岳の鞍部まで行きたいと思う。山頂にはスキーのトレースがある。朝、スタート地点で別れたスキーの跡である。沢沿いのコースを登ってきたのだろう。
緩やかな尾根は鞍部へと続き、三ッ岳山頂手前へと緩やかな尾根は続いている。なかなか良いルートである。雪のある時期はどこでも歩け、夏に通れないコースでも自由自在に歩けるので楽しい。
特に深いラッセルもなく森林限界を越え、青空の中に三ッ岳の頂きが見えてきた。日差しは強く暑いので上着は脱いでいるが、風も弱いので寒くはない。
思ったよりも早くに山頂に着いた。山頂からの眺めは素晴らしく、十和田湖と八甲田連峰は特に美しい。目の前にはピラミッド型の大駒ヶ岳が見えている。
今歩いてきた尾根の先の十和田山は、こちら側から見ると素敵な山容をしている。秋田県・岩手県方面の山々にはモヤがかかり遠望できないのが残念だ。
時間があれば大駒ヶ岳にも登りたいというので、テン場を大駒ヶ岳の鞍部と決め、雪面がカリカリになった斜面を下って行く。鞍部ではまだ時間が早いので、荷物を置いて大駒ヶ岳を往復することにする。今日に大駒ヶ岳を登ると明日の行動がだいぶ楽になる。
荷物のない体は軽く、走っても行けそうであったが、しだいに息があがってきた。今日はずいぶん頑張って歩いているのである。山頂はタラタラと遠く、やっとピークに立って握手を交わす。
鞍部は平坦で硬いので整地をすることなく、ツエルトを張る。熱いコーヒーを飲み、水作りをする。今日のメニューは、カレーライスに豚ステーキ入り目玉焼き乗せである。
しばらく野菜と肉を煮込む。水作りが終わるとご飯を温め、ステーキを焼き、目玉焼きを作る。ようやく出来上がったので皿に盛り付ける。ご飯の上にステーキを乗せカレーをかけ、その上に目玉焼きを乗せたスペシャルカレーである。
私はホットウイスキーを飲みながら、単品づつの物をつまむ。今日の好天は明日も続く予報である。酔いがまわり、とても幸せな気持ちでいっぱいである。
夜トイレに起きると、風でツエルトがあおられているが、夜空には満点の星が輝き北斗七星が見えていた。
カモシカと見つめ合う
日が当たり眩しい尾根筋
八甲田連峰を見渡す
木々の樹氷も美しい
十和田湖の全容
山頂手前の樹氷
十和田山山頂
三ッ岳から北に伸びる稜線
三ッ岳から北に伸びる稜線
明日向かう十和利山
八甲田連峰の全容
三ッ岳へ向かう
三ッ岳へ向かう尾根
木々と峰が美しい
ダケカンバの樹氷
三ッ岳を目指して
三ッ岳山頂
大駒ヶ岳
十和田山から登ってきた尾根
三ッ岳をバックに
大駒ヶ岳山頂で
三ッ岳と北に伸びる稜線
タイム:宇樽部車駐車地点(6:40)→十和田山(11:10〜20)→三ッ岳(14:45〜55)→大駒ヶ岳鞍部(15:15〜20)→大駒ヶ
岳(15:55〜16:00)→大駒ヶ岳鞍部(16:25)
27日(快晴のち晴れ)
5時半に目覚ましの音で目が覚める。この時期になると夜明けもだいぶ早くなってきて、うす明るくなり始めている。風がありツエルトはバタめいている。
朝食は焼きそばに目玉焼き乗せである。食後にコーヒーを飲んで、出発の準備をする。ツエルトを撤収して出発したのは7時半を過ぎており、日はすっかり高くなっていた。
今日も快晴である。三ッ岳の斜面を左にトラバースして行くと、前方に岩手山が見えた。モヤがかかっていてスッキリとした姿ではないが、こちら側から望む山容は美しい。
間もなくアグリ峠から十和利山へ続く尾根に合流し、下って行くと十文字山の登りにかかる。十文字山からは三ッ岳の左に、遠く岩木山の勇姿が見えた。嶋脇さんと来年の冬は岩木山だねと話す。
十文字山のヘリからは急な下りでアグリ峠へ下る。今回は天気が良いので休むたびに地図を広げて見ているが、特に冬場の天気が悪い時は地図を見る余裕がない。だから間違いの元であるが、もっぱらGPSに頼りっきりとなる。
遠くに見える峰も歩き始めると割と早いもので、緩やかな登りで一つピークを越えると十和利山がもうすぐである。しかし、若者と一緒に歩くのはきつく、スピードの無さをつくづく感じる。下りは西線を下るので山頂手前でザックを置き、空身で山頂へ向かう。
最後のピークの十和利山山頂に着いた。ここから眺める戸来岳は、三ッ岳よりも大駒ヶ岳の方が存在感が大きく感じられる。ここからは迷ヶ平への下りとなるので、八甲田連峰や戸来岳の眺めも最後である。
下りは1月に嶋脇さんが付けた目印を確認しながら、のんびりと下って行く。迷ヶ平へは迷わないようGPSで確認しながら下って行く。
青空の空はしだいにどんよりとした曇り空となってきた。迷ヶ平はスノーモービルの跡がいく筋もあり、田代平へと続いている。あと1時間半の辛抱である。
スノーモービルの跡を歩いていると、スノーボーダーを引っ張っているスノーモービルが過ぎて行った。そして、やっと十和田三山の縦走が終わった。
出発時の三ッ岳
岩手山はかすんで見える
三ッ岳をバックに
三ッ岳と岩木山遠望
十和利山から見ると、十和田湖の左に見える山
十和利山
十和利山山頂
三ッ岳と大駒ヶ岳
田代平から見る十和利山
タイム:大駒ヶ岳鞍部(7:40)→十文字山(9:00)→十和利山(11:35〜45)→迷ヶ平(13:50〜14:00)→田代平車(15:25)
嶋脇さんの車で宇樽部に置いた車に戻り、荷物の整理をしていると近くに住むおじいさんがやって来て、しばらく話し込む。十和利山の登山道が廃道化したことにより、時おり道に迷って遭難騒ぎがおきると言う。
十和利山は山と渓谷社発行の「青森県の山」に掲載されているので、廃道化を知らずに県外から登山者が登りに訪れる。私も昨年NHKカルチャー登山の偵察で行き、この現状を知り行政に電話したら、「登山道の廃道化は知っているが予算がない」と言われた。
ここは十和田湖の観光地の一角の山であるからにして、行政が責任をもって管理すべきである。事故が起きてからでは遅いのだが、お役所仕事には困ったものだ。
嶋脇さんと別れ、大湯温泉で2日間の汗を流し帰路につく。
十和田三山の縦走は22km程の道のりであるが、雪多い冬山はラッセルが厳しい。今回は天候と条件に恵まれルンルンの縦走であった。今年のガイドは3連敗しており、ようやく1勝することができた。
もう3月となる。これからは天候もいくらか安定し、ますます楽しい冬山の後半と春山に向かうのである。
★嶋脇さんからの声
3年前位から冬場の戸来岳を登り初めた僕にとって、十和田三山縦走は憧れの道のりだった。が、登山地図を読む力がまだない自分にとって単独では難しいので、今回ガイドを依頼した。
幸にも2月の時期としては、春山にも近いコンディションに恵まれた今回の登山はとても楽しかった。
来年は、より厳しいラッセルや天候が安定しない1月や2月の上句に、今回縦走した逆コースを単独で踏破したい。
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