鳥海山 滝の小屋コース
 


2021年3月7日(日)〜10日(水)
 メンバー:嶋脇さん(青森県)、小田中 智
 コース:大台野〜滝の小屋(泊)〜七高山 往復


 嶋脇さんから6連休の休みがあるので飯豊連峰に行きたいと言われたが、私の体力に問題があるので鳥海山にしていただいた。
 冬の鳥海山は、日本海の影響をまともに受けるので風が強烈に強く、冬に姿を見せるのは稀にしかないと言われるほど天候が悪い山である。3月後半にもなると天候も落ち着いてきて、スキーやボードを担いだ若者が集まりだす。
 我々はスノーシューで、前泊2泊3日の工程で行くことにした。

鳥海山(2,236m) 日本百名山、花の百名山
 鳥海山は、山形県と秋田県境にそびえる成層火山で、東北を代表とする高山である。秀麗な山容から出羽富士、秋田富士の名で親しまれている。
 山は中央火口丘の新山(最高峰)を中心に、行者岳、伏拝岳、七高山の比較的新しい東鳥海火山と、火口湖だった鳥ノ海(鳥海湖)、中央火口丘の鍋森を中心とする、笙ヶ岳、月山森、扇子森の西鳥海火山、および山腹に付随する寄生火山からなる複式火山である。
 有史以来度重なる噴火活動が人々の畏怖の的となり、山そのものが火を吹く荒ぶる神としてあがめられ、山岳宗教が発達した。山頂には、大物忌神を祭る「大物忌(おおものいみ)神社」がある。
 日本海から山頂部まで、わずか約15kmの独立峰で、冬の季節風をまともに受けるため、山の方位によっては積雪や風に大きな違いが見られる。そのためチョウカイフスマ、チョウカイアザミ、チョウカイチングルマなどの鳥海山特有の植物をはぐくみ、植生を規制してきた。
 1963年国定公園の指定を受け、山岳観光道路「鳥海ブルーライン」開通などにより、山岳観光地として全国的に脚光を浴びるようになった。なかでも、スキー登山の地として人気が高く、ゴールデンウィークなどは全国から集まる。
 1974年には、153年ぶりに火山活動も見られた。しかし、宗教登山からスポーツ登山へと変わっても、日の出の力強い陽光を浴びた鳥海山が日本海上に写し出される「影鳥海」や冬の外輪山の内側の岩肌を飾る「岩氷」などは、単なる美しさを通り越して、今でも充分に神々しい。
 鳥海山は、山岳信仰の息吹を残しつつ、東北の山特有の落ち着いた雰囲気と温もりのある山である。

7日(晴れ)
11時に自宅に来てもらい、私の車で象潟へと下みちを走って行く。嶋脇さんは盛岡まで2時間かかり、更に登山口となる大台野までは高速道を使っても3時間半かかる工程である。
 今夜は酒田市の若葉旅館を予約していただいたので、のんびりと国道を走って行った。途中の象潟から見る鳥海山は、快晴の青空に真っ白い山体がとても美しかった。
旅館にチェックイン後、すぐ近くにある山居倉庫へ買い物に行った。旅館で入浴し夕食をご馳走になり、早々と布団にもぐった。


象潟から望む鳥海山

8日(曇り)
 5時半に起床し、コンビニで買い物をし、大台野に向かう。湯の台温泉手前から右折して間もなく、大台野の除雪終了点となり駐車する。すでに車1台が駐車しており、山へ向かったようだ。
 鳥海公園青沢線の乾いた舗装道路を少し歩くと車が止まっており、大きなカメラをセットしていた。訊ねるとイヌワシの生態調査をしており、時には滝の小屋まで登ると言う。
 曲がりくねった道路をショートカットしながら歩いて行くが、天気は曇りで山容は見えない。明日は快晴の予報なので展望は明日に期待だ。雪は締まっているが、スノーシューを担ぐと重いので履いて登る。
 長野台を過ぎ、澄郷沢と荒木沢の中間の尾根を登って行くが、細めのブナ林が美しい。2人の長靴おじさんが追い越していった。
 今回私のザックの重量はピッケル、アイゼンを入れて16kgだ。このくらいの重量では大丈夫だが、これに登攀具を背負ったらもう駄目である。
 右の沢越しに駐車場が見えてきて、滝の小屋は間もなくだ。このコースは急な登りが少なく、下りのスキーがさぞかし楽しいことだろう。8年程前に梅ちゃんと来た時には駐車場を通って行った記憶がある。
 小屋に入ると長靴おじさんが休んでおり、コースの状況などを聞きながら話をする。ここから帰るというのだが、散歩に来るにはちょうど良い場所なのかもしれない。
 まだ昼少し前なので、朝盛岡発でもここまで来れる時間であるが、ラッセルを考えて余裕をもってやってきた。ラーメンを食べ、時間も早いので昼寝をする。最近は眠くて眠くて仕方がない年齢である。
 16時を過ぎても誰も来ないので、夜の寒さをしのぐためツエルトを張り中に入る。ツエルトはペラッとした薄い生地ではあるが、ガスストーブに火をつけるとたちまち暑くなった。
 私の今夜の食事は、ホルモンのてっぽう、レトルトハンバーグ、レトルト卵焼きである。ウイスキーのお湯割りで乾杯であるが、嶋脇さんは飲まないので静かに乾杯する。彼とはもう8年ほどの付き合いであり、話すことはあまり少ないが、お客というより友達みたいな付き合い方をしている。


除雪終了ゲート


イヌワシ生体調査の方


鳥海公園青沢線から鳥海山を望む


ブナ林の緩やかな尾根


前方に滝の小屋が見えてきた


滝の小屋にて

タイム:大台野(7:30)→滝の小屋(11:45)


9日(快晴)
 不要な荷物を小屋に置き外に出ると、ちょうどご来光の時間だった。低い雲はなく直接山稜から飛び出した太陽は、周りのうすい雲をオレンジ色に染めゆっくりと昇ってきた。なんと美しい光景だろうか。これからの展望も楽しみである。
 これから登るコースは、直接行者岳に向かって登るので右寄りに登って行く。ふり返ると小屋の奥に月山そびえており、遠くの山々が望めそうな天気だ。気温はマイナス2度だが、空気はひんやりしており風も冷たい。
 中沢雪渓から岩が露出している方に向かって登って行く。やがて湯の台コースを単独者が登って来るのが見えた。雪は多少硬くなっているが氷とまではいかなく、前に来た時には氷になっていたので緊張感が多少あったが、今回は所々に柔らかい雪もあるので滑るという緊張感はない。
 稜線に出ると正面には真っ白い新山が見え、ボコボコの稜線の七高山が見えた。間もなくボードをくくったザックがデポしてあり、下に見えた単独者の物みたいだ。空は濃い青色で日差しが眩しく、風は風速10mほどと冬にしては穏やかだ。
 単独者とすれ違い、明日は月山に行くと言っていた。七高山の少し手前から内院にスノーブリッジがあって、そこから新山に行きやすいと聞いたが、スノーブリッジは小さいみたいなので新山はあきらめ七高山へ向かう。
 七高山は新山に遮られているせいか風はなく、写真を撮り合い展望図により見える山の名前をを確認する。北東方面に岩手山が確認でき、左方向には駒ヶ岳、八幡平、八甲田が見えた。右方向には和賀岳、早池峰山が見えた。東方には焼石岳、栗駒山神室山と続き、朝にはっきり見えた月山は日に霞んでいた。
 確かに岩手山から鳥海山を見ているのだからそうなのだろうが、岩手山が見えたのには感動した。こんな天気に恵まれたことに感謝し下山にかかる。
 帰りは湯の台コースを下り始め、途中から左にトラバースして急な斜面を後ろ向きで下る。こんな天気の良い日に登ってきたのは1人だけだったのは意外だった。
 登りに疲れペースが遅くなってしまい、下まで下山できなくなってしまったが、もともと滝の小屋に泊まる予定で来ていたので予定通りだ。
 小屋に入りツエルトを張り夕食にする。今夜はジンギスカンであるがウイスキーは控え目分しかないので、薄めにして最後の夜を楽しんだ。
 夜から風が強くなり、朝方にはかなり強い風の音がしていた。

タイム:小屋(6:25)→稜線(11:00)→七高山(12:05〜25)→滝の小屋(15:30)


小屋からのご来光 朝日の右から栗駒山、神室山、禿岳


昇った朝日


滝の小屋 後方は月山


後方が行者岳と外輪山


伏拝岳をバックに


行者岳へ向かう


行者岳へ向かう


外輪から見る新山と七高山


七高山


七高山と新山


七高山にて


七高山にて 小田中


行者岳


左から八甲田山大岳、八幡平、秋田駒ヶ岳、岩手山、和賀岳、早池峰山


左から焼石岳、栗駒山、神室山


新山と七高山


滝の小屋、後方は月山


小屋脇から見る外輪


10日(強風のち曇り)
 6時に起床したが、風が強く視界が悪いので再び眠る。8時に起き下山の支度にかかる。 風はいくぶん弱くなり視界もだいぶ回復した。小屋からの下り口に気をつけて進む。
 下るごとに風は弱くなり、着こんで出発したので薄着になる。ときおり日がさし始め天気は回復してきたようだ。明後日まで休みという嶋脇さんは、明日から早池峰山に行くという。さすがに若いだけはある。私はたぶん明日は寝て曜日だと思う。
 下って行くとスノボを担いだ若者が登ってきた。行ける所まで行って滑って帰るという。これも若者だ。
 思ったより早くに車に着いた。もう冬には来ることはないだろうが、最後に山容を見たかったが雲の中だ。
 風呂に入り食事をして、にかほ市にある白瀬南極探検隊記念館へ向かった。閉館まで50分しかなく、少々物足りなかったがオーロラ館の映像がきれいだった。
 一路高速道も走り家に向かい、着いたのは20時過ぎだった。


小屋を出ると地吹雪が舞う


林間に入った樹霜


鳥海山は雲の中

タイム:小屋(10:25)→大台野(13:00)
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