岩手山御神坂沢大滝 アイスクライミング
 


2021年2月28日(日)
 メンバー:松田 幸久さん、中軽米 一さん、佐藤 博さん、小田中 智
 コース:御神坂駐車場〜御神坂沢〜大滝 往復
 難易度:傾斜=80度〜90度、高さ=40m、グレード=5級−


 岩手山南面にある御神坂沢には、標高1,050m付近に大滝と呼ばれる落差50m程の滝がある。夏は水が涸れた沢で、昔は沢登りというよりもクライミングの対象として登っていた。大滝には左の側壁を登るルートがあり、その上には8つ程の滝があり楽しんでクライムできる沢である。
 アプローチは、御神坂駐車場から夏道沿いに登り、標高900m地点から左に折れて沢へと下っていく。沢に降りるとちょうど最後の堰堤の上に出て、後は沢を登って行くと1,050m付近に大滝がある。
 大滝の氷瀑は2月から登攀できるようになるが、氷が成長してしっかりアイススクリューを打てるようになるのは、2月後半から3月上旬が良い。
 氷が薄くてアイススクリューが打てない場合は、滝の左の雪の斜面を登り、太いダケカンバの木を支点にして沢に降りる。滝の出口までザイルを伸ばし、そのザイルを支点にして50mザイルでトップロープを設定できる。滝の出口にはしっかりした支点が無いので、ザイルを回収するには登ってから雪の斜面を下りなければならない。
 氷のでき具合によって上部が90度になるが、発達していないと85度にしかならない時もある。しかし、40mの高さを一気に登るのは距離が長く、楽しんで登ることができる。氷瀑の幅は4mほどであるが、中央と左右に3ルートとれる。

 山友会の松田さんから連絡があり、彼らは日帰り、我々は1泊で一緒に行くことになった。
 年を取ると、せっかく行くのだから1日ではもったいないという欲が出てしまう。しかし体力的にはアプローチでさえ早く登れず、ましてや荷物を背負ってはトロく、体力よりも登りたいという気持ちだけが先行してしまう。

28日(快晴)
 御神坂駐車場6時に集合する。朝はキンキンに冷え込んだので、さぞかし氷の状態は抜群と思われる。若者にザイルを背負ってもらったので、私のザックの重量は18kgとまだなかなか重い。
 日曜で天気が良いとあってすでに車が数台止まっており、歩いている間に数人が追い越していった。雪は少なめで雪面は硬くツボ足で歩けるほどだ。私のスノーシューは新品で、今日が魂入れである。この年で41,000円の新品はと思ったが、東北の冬山はスノーシューが無いと登れないので仕方ない。
 切接の標識を過ぎ、900m地点から左にトラバースしながら沢へと下って行く。堰堤の近くにテントを設営して軽い荷物になるが、ここまでのうちに疲れかたは半端ない状態だ。
 いつもならスノーシューを着けてもラッセルがあるのだが、今日はカンコ雪で潜らない。進むごとに先頭からは離されるが、マイペースで行くしか仕方ない。前方の大滝が見えてくると、滝には眩しいばかりの日がさしていた。
 大滝の氷瀑は手前からは岩の陰に隠れて見えなく、かなり近づかないと氷の状態は分からない。取付きに着くと、氷は残念ながらアイススクリューが打てないほどの薄さだ。
 今年は例年になく寒かったのだが、どうしたことだろうか?考えられるのは、寒すぎて溶ける水が流れなかったため、氷が成長できなかったものと思われる。大峠や岩泉のドラゴンは完璧に氷が成長していたが、標高の高低差で違うことがあるとは思いもよらなかった。
 これではリードで登ることはできないので、左から回り込んで登り上に支点を作ることにする。急な斜面をラッセルしながら登り、太いダケカンバの木に最初の支点をとった。
 シングルロープで沢へと懸垂する。滝の出口までザイルを伸ばし、そのザイルを支点にしてザイルを降ろした。登る人が懸垂で下降し、上でビレイされて登るシステムとした。
 上空は青空で風は爽やかで暖かく、2月末の冬山とは思えないような天気だ。さっき下った支点の上から雪崩がおきたが、ここまでは来ない規模だったがビックリした。滝の下部からはガレ場から落ちる落石の音が聞こえ、雪崩と落石のオンパレードだ。
 一番手は松坂さんで、下って行った。私がビレイしたが50mザイルの余りは3mほどしかなく、引っ張るザイルは重い。それに休まずに登って来るもんだからビレイも疲れた。次に私、次に中軽米さん、最後に佐藤君の順番になった。
 取付きから登り出すとやはり氷は薄く、強くたたくとピックの歯が岩に当たってしまう。厚くなってる氷を狙ってアックスを振ると一発で効く。刺さりやすいぶん氷は柔らかめである。
 大峠と岩泉ドラゴンの90度の傾斜を登ってきたので、80度は緩く感じられ登りに余裕があった。上部になると氷から雪に変わり、アックスの効きはイマイチであるが、先頭者のステップがあるので問題はなかった。いつもであればここから90度ラインであるが、氷が発達していないため85度と残念だ。最後の7mは雪壁で終了となった。
 中軽米さんも一気に登り、佐藤君は40年前の腐れたヘルメットにビデオカメラをつけて下って行った。時間が経つごとに落石の音は大きくなってきた。かなり気温が高くなっているんだろう!
 一通りみな登り、次はと問いかけると誰もいないので、私が半分登ることにした。左側のルートの氷が白く光っているのでそこを登ることにした。20mほどビレイで下らせてもらい登り始めると、氷は硬くアックスが弾かれる部分もあり楽しんで登れた。
 私と佐藤君は明日もあるのだが、この氷の状態の氷とビレイシステムでは明日も登る気にはなれないので撤収することにした。皆が登ってきた斜面を下るのもつまらないので、回収班2人、懸垂班2人に分けるべき、ジャンケンで班編成を決めた。
 松田さんが負け、次に私が負け、2人が回収班になり、佐藤君と中軽米さんは懸垂で下って行った。昔むかし仲間でリンゴを食べる時、ジャンケンで大きさを競っっていた。勝ちは半分、次は4分の1、次は次は8分の1、最後はヘタだけと差をつけてジャンケンしたことが思い出された。ジャンケンに強くないと食事にありつけないのである。
 下る斜面は柔らかくアイゼンがダンゴになって滑りやすい。やはり勝って懸垂で下りたかった。みんなと合流してテントへと下って行くと、脇の斜面から雪崩れた雪玉がけっこう落ちていた。
 テントで2人と別れ、私たちはこれから宴会である。帰るのがもったいないのと家に帰りたくないとが合わさって泊まるのである。
 まずは乾杯と酎ハイを飲む。持ち寄った食材を分け合って食べ、さっきのクライミングを語り、山を語り、少しの量で酔うとお寝んねだ。まだ7時前ではあるが、酔ったら寝ることにしている。


駐車場から望む岩手山


御神坂沢から


左奥に大滝の岩壁が見えてきた


大滝の岩壁


大滝


大滝拡大


左の斜面から上に出る


大滝の上に降りたところ


最後の雪壁 おまえは誰だ!


中間部から上部の氷


最後の雪壁を登る佐藤君


登る小田中
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