古寺山付近から望む大朝日岳
2014年7月5日(土)〜7日(月)
メンバー:Yさん、Mさん、小田中 智
コース:古寺鉱泉〜ハナヌキ峰分岐〜古寺山〜大朝日小屋〜大朝日岳 往復
昨年秋、プレミアム登山の企画をネットに載せて間もなく、大朝日岳のヒメサユリを見たいのでお願いしたいとのご依頼をいただいた。
大朝日岳のヒメサユリは、6月下旬から古寺鉱泉のコース上に群生し、7月の中旬で終わってしまうユリ科のピンク色の素敵な花だ。
大朝日岳山頂まではコースタイムで約6時間もかかる長大なコースで、日帰りするには健脚者でなけば難しい。
山頂手前には大朝日小屋があり泊まると楽に行動できるが、避難小屋のため寝具と食料・装備を背負って登らなけばならない。
申し込んでいただいた方は、早く歩けないし、1泊する荷物を背負っても歩けないので、プレミアム登山をお願いしたいとの申し込みだった。
プレミアム登山とは、避難小屋泊やテント泊の場合、寝具や食料・装備をガイドが背負い、お客様は軽い荷物で行動でき、食事の用意もガイドがする企画である。
料金的には高目の設定であるが、年齢を重ねるごとに体力的にあきらめていた山やコースを1泊や2泊で歩くことができ、叶えられなかった山やコースをのんびりと歩ける。
5日(曇り)
3人分の寝具と装備、生の食材をクーラーボックに入れ、90Lザックに詰め込み計量すると21kgあった。最近は装備が軽くなったため、冬山の1泊でもこの重量は背負うことがない。
お客様は東京の方で、13時に仙台駅で待ち合わせる。矢巾を10時半に出発するが、仙台駅までの国道が混んでいたため、待ち合わせ時間遅れてしまう。
やっとお客様をお迎えし、山形自動車道に乗り月山I.Cで高速道を降りる。天気は回復に向かい日差しはあるが、車窓から眺める月山は雲がかかり裾野しか望めなかった。
県道27号線をナビの案内で走り、古寺鉱泉へと進んで行く。駐車場のずっと手前から道路脇には車が駐車しており、駐車場に止めれなかった車が戻って道路脇に駐車しているようだ。やはり、ヒメサユリ目当ての登山者たちなのだろう。
今の時間は16時を過ぎているので駐車場は空いており、今夜泊まる朝陽館まで5分程荷物を背負って歩いて行く。
宿は混んでいるため1部屋しか取れなかったので、女性ともに1部屋で過ごすことになる。温泉につかり、夕食を部屋でいただく。お客様は飲まないので私だけ飲みながら、初めて会うお客様としばらく語り合う。
早めに布団に入ると、ほろ酔い気分に古寺川のせせらぎの音が眠気を誘ってくれた。
6日(晴れ)
宿の朝食を終え、お客様の荷物を詰め込むと、ザックの重量は23kg程となった。この重量は昔の若い頃には背負ったが、それ以来背負ったことのない重量で、自分が小屋まで背負って歩けるか心配だ。
温泉の脇を通り、ゆっくりと登って行く。樹林帯の隙間からは日がこぼれ、上空は晴れているようだ。登りは間もなく急登となり、ハナヌキ峰分岐へと尾根を登って行く。
歩き出しは30分で一息いれると気持ちが楽になり、高度を稼いでいくと太いブナ林が立ち並び、上空には青空が見えていた。今はまだ樹林帯の中で涼しいが、古寺山の稜線は暑そうだ。
一服清水の冷たい水で喉を潤し、ようやくハナヌキ峰分岐手前あたりから可憐な花が見られ始めた。急な登りを登って行くと、17人ほどの団体さんが追い越して行った。荷物を見ると小屋泊まりみたいだ。
掘れた登山道を登って行くとイワカガミやアカモノガ咲き、やっと薄いピンク色のヒメサユリが現れ始めた。初めて見るヒメサユリはピンク色で美しい。
やがて尾根の視界が開き始め、多くの残雪をいただいた大朝日岳と、寒江山に続く稜線が見えてくると古寺山に着いた。素晴らしい展望は重いザックも軽くなる思いだ。
下ってくる登山者からの情報では、上はヒメサユリの群生がすごいという。小朝日岳や大朝日岳を眺めながら、温泉で作っていただいた昼食とする。
古寺山を過ぎるとヒメサユリも増え始め、ミヤマキンバイや他の花々も目に着く。小朝日岳を巻き鞍部に下るといちだんとヒメサユリが多くなり、感動の声が湧きあがる。お客様はこれを見るために東京からいらしたのだ。
急な登りから緩い稜線になると両側にヒメサユリが咲き、前方には大朝日岳が見える。素晴らしいシチュエーションにただただ感動する。ここはまさしくヒメサユリロードである。
銀玉水で水を7L持つと30kgの荷物となった。銀玉水からの登りは残雪が残り、いくぶん傾斜もある。昨日は下りでガンガラ沢側へ滑落し、ヘリで救助されたそうだ。
ステップを慎重に辿り1,769mピークに立つと、月山にかかった雲が流れ白く輝く月山の山容が見えた。道脇にはヒナウスユキソウの群落が咲いていた。小屋は間もなくである。
緩やかな尾根をたどると大朝日小屋に着いた。8時間少々かかって着いた小屋ではあるが、みんな元気である。管理人さんにスペースを割り当てられ、少したってから頂上に向かう。
山頂への緩やかな登りは、重い荷物から解放された腰が宙に浮くような感じで歩きづらい。ちょっと雲行きが悪くなった15時50分、360度の展望がきく大朝日岳に立つ。
北西に西朝日岳から竜門山、寒江山から以東岳は雲の中だ。北には月山、東には通ってきた小朝日岳、南に鋭鋒の祝瓶山、ピークを結ぶ峰々は長く朝日連峰は広大だ。
山頂は無数の小バエが飛び交っている。下の方はこんなに居なかったので、頂上で多いのは不思議だ。今年はどこの山でも虫が異常に多いようだ。
小屋に入り荷物を整理して食事の支度にかかる。今夜のメニューは、サラダ、ビーフシチュー、パスタである。ザルはかさばるのでゴム製のザルを100円ショップで見つけた。
牛肉と野菜を炒め、人参、ジャガイモとしばらく煮込む。ルーを入れさらに煮込むと美味しいビーフシチューが出来あがった。ライスの替りにパスタをゆで、シチューに入れて食べていただく。
周りの人達からは羨望の目で見られながらも、匂いだけをおすそわけし、お客様から頂いたワインを飲みながら食べる。山ではどんなものを食べても美味しいのだが、このシチューは格別である。
残り物を持って管理人さんの所に行くと、団体さんのガイドさんや単独の女性が集まって飲んでいたので混ぜていただく。時間が経つのは早いもので消灯の19時半になった。寝るにはおしいので、外に出て暗くなった空と街の明かりを眺めながらしばらく話し込む。
古寺鉱泉 朝陽館
ハナヌキ分岐手前のブナの大木
古寺山の稜線
シロバナニガナ
アカモノ
ヒメサユリ
小朝日岳
大朝日岳と西朝日岳
ミヤマキンバイ
ハクサンチドリ
ハクサンシャクナゲ
色が濃いヒメサユリ
ヒメサユリロード
群生するヒメサユリ
大朝日岳への稜線
銀玉水
銀玉水の上の雪渓
ヒナウスユキソウ
大朝日岳と大朝日小屋
大朝日小屋
小屋から望む月山
小朝日岳へ続く稜線
祝瓶山
西朝日岳から竜門山
ヨツバシオガマ
タイム:朝陽館(6:50)→ハナヌキ峰分岐(9:10)→古寺山(11:15〜35)→銀玉水(14:25)→大朝日小屋(15:15〜30)→
大朝日岳(15:55〜16:10)→大朝日小屋(16:30)
7日(曇りのち小雨)
4時に起床し、外に出て御来光を待つ。下の雲が多いため、小朝日岳の真上の雲が赤く染まり始めてきた。
やがて真っ赤になり、上方の丸い雲の切れ間から日が差すと、あたかも太陽はそこにあるかのように見えるが、太陽はまだ下にあるので不思議な光景に見ている方々から歓声があがる。なんと素晴らしく美しい光景だろうか。
朝食は、シャケとベーコンエッグ、赤飯と味噌汁である。またもや羨望の眼差しの中、美味しくいただく。
パッキングをして外に出ると、残っているのは私たちと女性の単独行者、女性の5人パーティだけだった。管理人の阿部さんにお別れを言い、ゆっくりと下っていく。食べ物と水が無くなったので大分荷物は軽くなっていた。
銀玉水への雪渓は軽アイゼンを着けてもらい慎重に下る。今日の天気は高曇りで、寒江山から以東岳がはっきりと見えた。おだやかな天気である。
再び素晴らしいヒメサユリロードをぬけると、昨日よりもいっそう色が濃くなっているように見える。今回の日程は昨年の秋頃から決めていたので、正直こんなにぴったりヒメサユリに日程が合うとは思っていなかった。お客様の喜ぶ姿を見るのがガイドとして一番嬉しいし楽しい。
早い登山者はもう登ってきていた。小朝日岳の巻道で女性パーティに追い越されると、最後は私達だけだった。
古寺山を下り始めると小雨が降り出してきた。いつものことながらカッパを着ると雨は止むのである。そして、脱ぐとまた降り出すのだから困ったものだ。
ゆっくりゆっくりと下って行くと沢の音が聞こえ始め、温泉の発電機の音が聞こえてきた。温泉は間もなくである。着替えなどの預けた荷物を受け取り、駐車場に向かう。
大井沢温泉「ゆったり館」で汗を流すと、体重は4kg程減っていた。入浴料は300円と格安で、木造りの温かみのある温泉だ。
途中の手打ちそば屋でそばをご馳走になり、仙台へと向かって走る。駅のロータリーでお別れし、盛岡へと走って行く。
ヒメサユリの大群落を見つめ、素晴らしい朝焼けを眺め、美味しいものをいただき、感動ばかりした初めてのプレミアム登山が終わった。
お客様にはとても喜んでいただき、たくさんご馳走になり、楽しい素敵な登山だった。今は、正直ホッとした気持ちである。
朝焼け
朝焼け
竜門山から以東岳
月山
ヒメサユリロード
ヒメサユリと大朝日岳
タイム:大朝日小屋(6:30)→古寺山(9:25〜35)→一服清水(11:00)→朝陽館(13:00)
来年、ヒメサユリロードを歩きたい方は、今の時期にフリー宿泊登山、プレミアム登山のご予約をください。
ヒメサユリは6月下旬から咲き、7月中旬には来年のために花は摘み取られてしまいます。やはり一番の時期は7月始めです。
ガイドできる日程は年には1〜2回しか行けないと思いますので、今から来年の先行予約を承ります。 |