五ノ宮岳から望む皮投岳
2014年3月15日(土)〜15日(日) メンバー:嶋脇さん、小田中 智
コース:八幡平市民センター〜薬師神社〜五ノ宮岳〜皮投岳鞍部〜皮投岳〜三倉山〜花輪スキー場
4月に1日で縦走する予定であったが、休みの都合で早めの計画となった。コースは五ノ宮岳から登り、皮投岳鞍部付近に幕営し、皮投岳から花輪スキー場に下るルートとした。
五ノ宮岳は鹿角発祥の伝説に関係深い山で、その山名は継体天皇の五ノ宮皇子がこの地に下向し、のちに五ノ宮岳の神として祀られたことに由来する。
山頂には五ノ宮権現を祀る神社、中腹には眼病に効くとされる薬師神社が建立されており、古来から信仰深い山として多くの人々の崇敬を集めている。峰続きの北隣には伝説の山、皮投岳がある。
皮投岳の山名は「二戸より鬼が来たりてこの山で鹿を八百獲って皮をはいで投げた」という伝説に由来するという。
私は前日の午後に立ち、道路状態を確認して、道の駅かづのに車中泊した。嶋脇さんとは翌朝6時の待ち合わせである。
15日(曇り時々晴れ)
道の駅を2台の車で出発し、嶋脇さんの車を花輪スキー場の駐車場にデポする。山は小雪が舞っている。ここ最近、街中でも雪が積もっているので、今回はきついラッセルが予想される。
コンビニで朝食後、登山口となる市民センターへ向かう。身支度を整え、民家を過ぎた所でスノーシューを履き、高速道の下をくぐって出発となる。
20cm程のラッセルで林道から別れ、尾根道へとつづら折れの夏道を登って行く。スギ林をラッセル交代しながらしばらく登って行くと、ようやく雪に埋もれかけた五合目の薬師神社に着いた。
しだいに雪が多くなり、雪は重くラッセルはきつくなってきたが、上空には青空が見えるようになってきた。小枝に付着した樹氷は、青空を背景に白く輝く光景はとても美しく、今回も山に来て良かったと思うのであった。
八合目付近から展望がよくなり、北方にはどっしりとした皮投岳が見えた。望む皮投岳は遠く、宿泊予定の鞍部まではしばらく時間がかかりそうだ。14時なのに、まだ五ノ宮岳にさえ着いていないのである。
白い樹幹をひと登りするとやっと山頂に着いた。さっきまでは青空と太陽が見えていたが空は曇り始め、皮投岳はどんよりと灰色の雲に覆われいる。前は山頂にあった神社は無かった。
風雪が吹き始めてきたが、進行する方向の視界は効いたため鞍部への下降路は容易に見つかった。吹雪かれたらここの下降路を見つけるのが大変そうだ。
しばらく下降後の924mピークの登りにさしかかると、そんなに重くない16kg程のザックであったが、湿雪のラッセルで体はだいぶ疲れていた。嶋脇さんは今度単独で来ると言い、迷いやすいポイントに目印のテープを結んでいた。
予定の鞍部に着いたのは16時を過ぎており、整地のための足踏みではよろけていた。今まではツエルトであったが、今回は会の先輩から2〜3人用の内張り付きのゴアのテントを借りてきていた。
西側は晴れており日がかげり始めていた。美しい夕日が期待できそうである。テントに入りコンロに火をつけると、内張りがある室内はすぐに熱くなった。まずは熱いコーヒーを飲み、疲れた体を癒す。
夕食は嶋脇さんの要望したペレスカトーレ(海鮮パスタ)のため、コンロは3台持ってきた。メニューはペレスカトーレ、鶏肉のソテー、チキンライスである。水作りは嶋脇さんにお願いし、私は調理にかかる。
ペレスカトーレの味付けはバター、塩、コショウ、ガーリック、白ワイン。中身はホタテ、イカ、エビ、アサリで、嶋脇さんからは美味しいとの好評をいただいた。パスタをつまみに飲む白ワインはことのほか美味しく、疲れた体に酔いはすぐにまわりはじめた。
今月末は和賀連峰の錫杖キレットを通過するため、食事後ザイルの結び方の練習をする。目覚ましを4時半にセットしシュラフにもぐる。トイレに外に出ると、大きな丸い月がこうこうと輝いていた。
除雪終了地点 ここから歩き始める
五合目 薬師神社
五合目から雪が多くなってきた
白く輝く小枝の樹氷
白く輝く小枝の樹氷
対峙する皮投岳
五ノ宮岳はもうすぐだ
五ノ宮岳山頂
山頂から望む皮投岳
皮投岳へ続く尾根
テン場上の雪庇
鞍部のテン場
タイム:市民センター(7:30)→五合目(10:10)→五ノ宮岳(14:30〜40)→皮投岳鞍部(16:30)
16日(風雪時々雷) 視界:最悪5m、風速:15m程
目覚ましに起こされ、思い切ってシュラフから抜け出す。ツエルトであれば真っ白に霜が付いているのであるが、さすがゴアの内張り付きテントである。霜は全く付いてない。
うどんとチキンライスの朝食をすませ、パッキングをして外に出る。天気は曇りであり、このままの天気が長引くことを期待する。今日の天気は悪くなる一方なはずで、早くに皮投岳を抜け下山路の尾根に入りたい。
尾根筋を登って行くと上空で雷が鳴り出した。三本岳に続く大きい尾根に出ると風が出始め、間もなく風雪となり急に視界が悪くなってきた。登るごとに風も強くなり視界は5mから10m位となり、また雷が鳴り出した。
雷は上空の高い位置のためまだ心配はないが、前が見えないのには困った。右側には小さな雪庇があるためストックで確認しながら、ゆっくりではあるが確実に登って行く。
山頂は平坦な所のためわかりずらく、GPSで確認して埋もれかけた山頂の標識を見つけた。まずは握手であるが、これからが最大の山場である。この視界が効かない状態で1,016mへ続く尾根を見つけれるかである。
地図とGPSをにらめっこして下り始めると、一瞬ではあるが視界が効き下山路が見えた。しかし、すぐにまた視界は効かなくなったが、見えた尾根に沿って下って行く。
雪はますます重くなり、スノーシューの踵に雪が詰まって歩きにくい。1,016mピークを過ぎた頃、また雷が鳴り出し雪はますます激しくなってきた。
三倉山鞍部からは花輪駅方面に向かう登山道と花輪越の登山道があるが、どちらも林道歩きが長いため、花輪スキー場に続く尾根コースを選択したのである。
下るにしたがい、風でスキー場の音楽が途切れながら聞こえるようになってくると、いくらか元気が出てきた。よやくスキー場のリフトに着くと、吹雪ではあったががリフトは動いていた。
ダメもとでリフトに乗車できるか尋ねると、やはりダメだった。風雪の誰もいないゲレンデを下って行く。スノーシューを外してツボ足になると下りやすく、下るごとに晴れ間が見えてきた。
スキー場の下の方は晴れているが、リフトに乗っている人は1人もいなかった。上部はまだ灰色の雲がかかり、吹雪いている様子だ。
重いラッセルから解放され、今日の行動を振り返ってみると、あの状況で下山できたことに大いに満足するのであった。
稜線への登り
稜線
皮投岳山頂
ブナ林に育つサルノコシカケ
三倉山
スキー場最終リフト
花輪スキー場
タイム:皮投岳手前鞍部(7:10)→皮投岳(9:30)→三倉山(11:50〜12:05)→スキー場の上(14:35)→スキー場駐車場
(15:50)
花輪の街でラーメンを食べ、私の車を回収に向かう。途中で初めて五ノ宮岳の全容が見え、五合目の薬師神社が見えた。
思い返すと、どちらの山も11,00mクラスの山ながら、山は大きく谷も深く、縦走をすればロングコースになるのでおもしろかった。
今年は寒く、まだ新雪も積もっているので、3月中旬にしては真冬並みの厳しさがあった。
★嶋脇さんからの声
皮投岳、五ノ宮岳縦走はネットの記録でみて知ったので今回、冬場にガイドを依頼した。夏道を行くとばかり思っていた僕にとって、最後はスキー場に下るという発想力には驚いた。
そして、皮投岳山頂から視界5mの状態で確実に下山する小田中ガイドは、やはり凄いと感じた。
この、縦走路に単独で挑戦したいという目標ができたが、まだ自身はないのでもっと経験をつみ、登山地図を確実に読めるようになってから挑戦するつもりだ。 |