縫道石山東壁 緑友ルート・南東柱状岩稜

縫道石山東壁と西稜 イメージ

1981年10月9日〜11日
 パーティ/藤原 雅一(仙台RCC)、加藤 正一(仙台RCC)、小田中 智

 縫道石山は、青森県下北半島の西に位置し、標高300m程の樹海からそそり立っている岩峰だ。登攀対象になるのは西側の西稜と東面の東壁で、高さは約200mあり、岩は硬くクラックが発達している。
 岩場には、北半球にしか生息しないと言われる天然記念物の「オオウラヒダイワタケ」が生えている。ルートは4ピッチから6ピッチあり、既成ルートは7本程ある。
 仙台RCCの藤原さんから誘われ、ルート開拓できそうな南東稜を目標に行くことになった。盛岡山想会では、この山域は初めてである。

10月9日
 登山口まで7時間程かかるというので、藤原さんの車で盛岡を7時頃に出発する。
 国道4号を北上し、野辺地から279号、更に、むつから338号に入り仏ヶ浦に向かって走る。川内町から地方道に入り、かわうち湖を通り野平林道に入る。むつを過ぎると交通量はグッと少なくなり快適に飛ばす。
 舗装されていない林道をしばらく走ると峠に着き、縫道石山への登山道がある。すでに夜中を過ぎており、7時間近くかかってようやく目的地に着いた。車のそばにテントを張り仮眠する。
縫道石山周辺概念図

縫道石山東壁ルート図

10月10日(曇り時々晴れ)
 なかなか起きれず、7時過ぎに出発する。登山道を30分程歩くと初めて縫道石山の岩壁が見えた。今まで見たこともない異様な姿である。
 さらに20分程登った所から左のブッシュ帯に入り、東壁の基部へとブッシュをこぐ。藤原さんは前にも登っているのでルートは知っている。
 緑友ルート取付から上を見上げると、草付きは少なくスッキリしている壁だ。藤原さんトップで登り出し、後続は少し間隔をあけて同時に登る。
 1ピッチ目、凹角から左のコーナーにトラバースし、直上してテラスに立つ。2ピッチ目、フェースを左上から快適なフェースを直上し、チムニー下のバンドで終わる。
 3ピッチ目、トップを加藤さんと交代し、右向きのチムニー状を登り、ブッシュを登ると中央バンドの右に出て終了する。4ピッチ目、フェースをやや左から右に登り、快適なフェースを直上する。フェースは残置ピンが少なくフリーも難しい。
 5ピッチ目、小田中にトップを交代し、フェースを直上する。ここも残置ピンが少なく気合いを入れながら越える。6ピッチ目、フェースから傾斜の落ちたフェースになり、ザイルいっぱい伸ばして頂上稜線で終了する。
 天気が良くなったので眺めも良くなり、ようやく津軽海峡から北海道が近くに見えた。さわやかな海風が気持ち良い。
 ルートは残置ピンが少なく、ナッツやフレンズでランニングをとったが、使用するのは初めてなので良い経験をさせてもらった。
 頂上から裏側につけられた登山道を下り、急な下りが終わると朝登って来た登山道に出た。
 テントで宴会をし、寝不足なので早目に寝る。
緑友ルート図


東壁上部壁 イメージ


緑友ルート イメージ

タイム/駐車場(7:20)→緑友ルート取付(8:10〜30)→緑友ルート→縫道石山(13:00〜20)→駐車場(14:10)

10月11日(曇り)

 今日は南東稜のルート開拓だ。そして、7時間かけて帰らなければならない。明るくなると同時に出発する。
 緑友ルートから更にブッシュを左に行き、南東稜の末端に着く。
 1ピッチ目、藤原さんトップで岩が突き出した所から登り出すが、出だしが難しい。傾斜が緩くなる頃、錆びた残置ピンが見つかった。もしや初登と思っていただけにちょっと残念だ。
 2ピッチ目、岩たけの生えたフェースを直上する。
 3ピッチ目、トップを小田中に交代する。真上のフェースを5m直上すると、右手のコーナーに走るクラックとなる。残置ピンは無く、フレンズにアブミを掛け替えして人工で越えるとハングがあり左上になるが、小さいリスにハーケンの先端だけ打ち込み、出口は5mm程しか入らないラープにアブミをかけそっと体重移動する。
 フェースを割ったジャムクラックにフレンズでランニングをとり終わる。藤原さん達は、レイバックのオールフリーで登って来た。
 4ピッチ目、疲れたので加藤さんにトップを交代する。ピナクル裏側のチムニーを登り、上部を左から回り込み、大ツルムの上に立つ。
 5ピッチ目、ツルムから15mを懸垂で下る。6ピッチ目、緩傾斜をコンテで歩く。7ピッチ目、小田中にトップを交代し、ボルトラダーがあるむつルートを人工で登る。
南東柱状岩稜ルート図
 8ピッチ目、真上に伸びるジェードルを直上する。途中左に行くむつルートと別れ、ジェードルを登る。出口はかぶり気味なので、ハーケンを2本打って越える。
 9〜11ピッチ、トップを藤原さんに交代し、やさしい岩稜を3ピッチで終了する。
 下部の2ピッチまでは残置ハーケンがあったが、それ以降は残地を確認していないので、上部は初登かと思われる。ルート名を、南東柱状岩稜と命名する。
 急いで登山道を下り、7時間のドライブとなる。


西稜と南東柱状岩稜 イメージ


南東柱状岩稜下部 イメージ

タイム/駐車場(5:30)→南東柱状岩稜取付(6:30〜50)→南東柱状岩稜→縫道石山(16:00〜15)→駐車場(17:00)

                            盛岡山想会山懐10号より掲載 記:小田中  智
↑ページの先頭に戻る