P6南壁上半部全容 イメージ
1983年10月9日〜10日
パーティ/L 小田中 智、藤原 豊
明星P6南壁は、富山県明星山頂上から南に下る尾根の最後のP6から、小滝川に切れ落ちている岩壁で、高距約600m、幅約300mの石灰岩質の岩場である。
壁は明るく、スケール、困難度とも日本を代表する岩壁で、壁の右側はオーバーハングになっている。フリーと人工のミックスしたフリーの難易度が高いルートが多く、ピッチも10数ピッチある。
取付きは駐車場から近く、展望台から登っているところが見え、観光地にもなっている。会では初めての山域である。
前に、仙台RCCの藤原さん達と2回来たが、2度とも雨で登れずに帰った。この壁は、雨に当たる壁だった。
右フェースルートは、人工とフリーがミックスしたルートで、下部はほとんどがA1〜A2の人工で、上部のフリーは難易度5級のルートである。
10月9日
二戸の藤原は仕事が終わってから車で盛岡に来て、8時過ぎ4人で出発する。高速道路を仙台南で降り、国道286号を山形に向かって走る。
山形から新潟に出て、糸魚川の市内から小滝川ヒスイ峡への林道に入る。運転は2時間交代とし、2人は後ろで眠り、休憩なしで夜通し走り、9時間ほどで明星の駐車場に着いた。
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明星山周辺概念図 |
10月10日(晴れ)
駐車場のすぐ下に小滝川があり、浅瀬を探して靴を脱ぎ徒渉する。徒渉するとすぐに正面壁の取付きがあり、右に回り込みながらルンゼを詰めると右フェースの取付に着いた。
ジャンケンで負けたので、1ピッチ目小田中トップでツルベ式で登ることにする。ハング下のバンドを左にトラバースするが、ハング下の登り出しがぬれていて悪い。垂壁から傾斜の緩いハング状を人工で登る。
2ピッチ目は藤原にトップを交代し、垂壁のスラブを人工で登って行った。
左隣のルートで手を振っている者がいる。ダイレクトルートを登っている安藤だ。千葉と安藤は我々の左隣りのダイレクトルートを登っているのである。
小滝川のせせらぎの音で合図の声が聞こえなく、笛の音とザイルの流れで相手の動きを予想する。
下部城さいのハング帯を越え、フェースを右上気味にフリーで登ると上部城さいのハング帯下に着く。
5ピッチ目、ハング帯を藤原トップでA2の人工で越える。6ピッチ目は緩傾斜のフリーで、ザイルいっぱい伸ばしてもビレイ点が見つからず、ゆるゆるのリスに気休めでハーケンを1本打ち、座って腰ビレイで藤原を迎える。
この上からは難しいフリーが始まり、このルートの核心部だ。強いショックがかかると抜けてしまうビレイ点なので、早く確実なランニングを取ってくれることを願って藤原を送り出す。
ホールド、スタンスは細かく、傾斜も強いフリーに、気合いを入れながら乗り越える。
11ピッチを7時間ほどで登攀を終了し、松の木テラスで千葉と安藤を待つ。
登り終わって、ようやく秋晴れの清々しい天気と紅葉しかけた辺りの景色をながめる余裕が出てきた。そして素晴らしいルートを登ったことに大満足だった。
しばらく待つと、ニタニタと笑いながら奴らが登って来た。
左岩稜を下り、大岩から樹林帯の踏み跡を右に下って行くと小滝川に出て、小橋を渡ると駐車場に着いた。
今日これから帰らなければならない。1日のためにここまで |
P6南壁右フェースルート図 |
来るのはもったいないが、1日だけの登攀に皆満足げだった。
糸魚川市で温泉に入り、盛岡へと帰る。
右フェース上部岩壁 イメージ
右フェース下部岩壁
9ピッチ出だしの藤原
9ピッチ上部
終了点にて
コース:駐車場〜右フェースルート〜大岩〜駐車場
盛岡山想会山懐10号より掲載 記:小田中 智 |