剣岳 源次郎尾根・八ッ峰

剣沢と剣岳 イメージ

1973年4月28日〜5月6日
 パーティ/CL 岩淵 一雄、佐々木 正、野川 康夫、土門 一男、小田中 智


4月28日
 盛岡16時34分発の列車で秋田へ。秋田からは寝台特急「日本海2号」で富山へ向かう。

4月29日
 2時57分、静まり返った富山のホームに降りた。立山行きの電車の発車までかなりの時間があったが、目がさえて眠る気もしない。夜でも起きていれば腹が減り、いつも通り駅前の屋台そばに行って「ニンニク中華」を注文した。
 電車とケーブルを乗り継ぎ、美女平に着くと荷物の計量があり、全員30kgはオーバーしていた。
 バスはブナの美林帯をほどよく蛇行してドンドン高度を上げる。やがて見慣れた山容が次々と現れ、間もなく展望の良い天狗平に着く。
 天狗平から雷鳥沢の雪渓を登って剣御前小屋に行くと、剣岳が見え、素晴らしい展望を楽しみながらゆっくりと昼食をとった。
 剣沢小屋の近くにBCを設営したが、全員快調で、明日からの行動が楽しみだ。
剣岳・立山概念図

タイム/富山駅(2:57)→ケーブル(6:40)→雷鳥沢(10:20)→剣御前小屋(12:20〜13:00)→剣沢BC(13:40)


4月30日(晴)
 夜明け前の剣沢は、不気味なほど静まり返っている。ラジュースの音だけが勢い良く響く。
 軽い朝食後、いよいよ源次郎尾根を登るべく、期待を胸に秘めテントを出る。剣沢を下って平蔵谷の出合まで来ると、無残なデブリだ。平蔵谷を少し登った所から、源次郎尾根に突き上げるかなり傾斜がきつい雪渓を登る。
 上部は日光もささないので、氷と岩がミックスした急斜面を、緊張しながらステップを切ったが、思ったより時間がかからず、尾根筋に出ることができた。
 第1峰までは岩とハイマツ
で、苦労の多い割には面白い所はない。第1峰から見る第2峰はドッシリとそびえている。第2峰の登りも思ったより大したことはなかったが、展望は素晴らしい。剣岳の頂が目前に巨大にそびえ立ち、八ッ峰も鮮やかに望まれ、左には平蔵谷、右には長次郎谷が深く落ち込んでいる。
 第2峰の下りは、源次郎尾根の一番の悪場だろう、私たちは懸垂で下る。ここから上は雪稜が続き、腐った雪のためラッセルで苦労しながら、これといった所もなく剣岳頂上に着いた。
 頂上では穂高連峰、後立山連峰など360度の大パノラマを楽しんだ後、長次郎谷をグリセードしながら下ったが、さすがに長い。出合いで腹ごしらえをして剣沢を登ったが、疲れた体にこの登りは厳しく、遅々として進まなかった。


源次郎尾根 イメージ

タイム/BC(7:00)→平蔵谷出合(7:25〜7:50)→尾根筋(10:10)→剣岳頂上(14:05〜14:25)→長次郎出合(15:40〜
    16:00)→BC(17:20)


5月1日(晴のち曇り)
 八ッ峰上部を登る予定でBCを後にしたが、天気が良いので予定を変更し、マイナーピークから登ることにする。
 私たちは他の2パーティと分かれ、一ノ沢を登ったが、ブッシュ混じりの岩場はザイルが引っかかり、苦労しながらも約2時間で稜線に出た。
 1峰から2峰まではブッシュが多く、お世辞にも快適とは言い難い。2峰から3峰もほぼ稜線通りで、難なく通過した。4峰の下りは三ノ窓側を絡む嫌な箇所で意外に悪い。5峰へは急斜面の雪渓を渡り、16時20分に着いた。 天候は本曇りで、時間も大分オーバーしていたので上部は明日にすることにし、5・6のコルから下り、長次郎谷の出合に着いた時ときは天気はすっかり崩れ、明日の天気を気にしながらBCに帰った。


八ッ峰 イメージ

タイム/BC(7:00)→八ッ峰取付(8:30)→稜線(11:10〜11:55)→1峰(13:45)→3峰(14:40)→5峰(16:20)→5・6コ
    ル(17:15)→長次郎谷出合(17:40)→BC(19:20)


5月2日(雨)
 昨夜から雨が降り続き、停滞する。朝食も取らず11時頃まで寝ていたが、雨が漏り始めてゆっくりもしていられない。テントにたまった水を出したり、将棋したり、退屈な狭いテントもなかなか大変だ。

5月3日(雨)
 雨の音で目を覚ます。今日も停滞しなければならないだろう。停滞も2日目ともなれば、あきらめとでも言おうか、変に落ち着いてトランプ、将棋を楽しむ。
 夕方から幾分天気が回復する兆しが見えはじめ、いくらか気が楽だ。

5月4日(曇りのち晴)
 停滞で貴重な2日間を費やし、予定を変更して今日は三ノ窓に向かうことにする。
 朝のうちは曇っていたが、しだいに晴れ間が広がってきた。
 BCから前剣を経て頂上に登る。時折ガスの間に見え隠れする八ッ峰が印象的だ。記念写真を撮り三ノ窓に向かう途中、剣尾根を登るパーティを見ながら下ったが、チンネは相変わらず多くのパーティが取付いている。
 三ノ窓雪渓を下り、二股に出て剣沢を登ってBCに帰った。

タイム/BC(7:30)→前剣(8:40)→平蔵のコル(9:25)→剣岳(10:05)→三ノ窓(11:40〜13:00)→二股(14:00)→長次
    郎谷出合(16:00〜16:30)→BC(17:15)


5月5日(晴)
 いよいよ下山の日である。テントを撤収後、別山の岩稜に取付く。別山の上では雷鳥の歓迎を受ける。
別山でゆっくり展望を楽しんだ後、剣御前小屋を経て天狗平へ下る。富山では、風呂に入ってサッパリしたところで「カニ平」に寄り、たっぷり栄養補給した後、最終列車の3等寝台で東京に向かった。

タイム/BC(8:55)→別山(10:45〜11:10)→剣御前(13:00)→天狗平(16:00)


5月6日
 早朝上野着。スポーツ店の開店まではかなりの時間があるので、上野公園で時間待ちをし、都内のスポーツ店をはいかい後、夜遅く盛岡に着いた。

                              盛岡山想会山懐10号より掲載 記:岩淵 一雄
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